株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ(所在地:東京都港区、代表取締役:大竹 健)がマスターライセンスを保有する「きかんしゃトーマス」は、ファミリー向け大規模展示・アトラクションイベントを巡回中です。10月14日(土)の「鉄道の日」には新たに山梨県立リニア見学センターでイベントも決定いたしました。同イベントではトーマスが引く客車に乗れるアトラクションや、トーマスのなかまたちと一緒に写真が撮れるフォトスポット、どきどきリニア館3Fにあるリニアジオラマではトーマス車両も走行します。また、愛知県の日本モンキーパークでは「きかんしゃトーマスとなかまたち わくわくフェスティバル!」が3年ぶり115日間の日程で開催中です。その他、きかんしゃトーマスの屋外テーマパーク「トーマスランド」、蒸気機関車のきかんしゃトーマス号が走る公式イベント「DAY OUT WITH THOMAS(TM) 2023」では期間限定でハロウィンイベントも開催中です。今年の秋は全国各地でトーマスと世界の仲間たちのイベントをお楽しみいただけます。きかんしゃトーマスとなかまたち in 山梨県立リニア見学センター■イベント概要・イベント名: きかんしゃトーマスとなかまたち in 山梨県立リニア見学センター・会期 : 2023年10月14日(土)~11月20日(月)・開催時間 : 9:00~17:00・会場 : 山梨県立リニア見学センター・公式HP : ・入館料 : 一般・大学生420円 高校生310円 中学生・小学生200円※毎週土曜日は高校生以下の入館料無料※未就学児無料きかんしゃトーマスとなかまたち わくわくフェスティバル!・イベント名 : きかんしゃトーマスとなかまたち わくわくフェスティバル!・会期 : 2023年9月16日(土)~2024年1月8日(月・祝)※期間中休園日(15日間)あり・開催時間 : 営業時間は時期により変動いたします。詳しくは公式サイトをご覧ください。・会場 : 日本モンキーパーク 催事館(屋内)・公式HP : ・入館料 : 入館料400円(税込) ※2才以上、入園料別途必要■トーマスランド25周年 ハロウィンイベント概要富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)にある日本で唯一の“きかんしゃトーマス”の屋外テーマパーク「トーマスランド」 は「トーマスランド25周年アニバーサリーイヤー」。9月16日(土)~10月31日(火)までの期間は、「ハロウィンイベント」を開催。トーマスモニュメントやエントランスがたくさんのパンプキンでデコレーションされるほか、人気フォトスポット「願いの井戸」も「パーシー&レベッカ」バージョンにリニューアルいたします。さらに、大人気のダンスショーイベント「トーマスランドPLAY ON!」のハロウィン特別バージョンの開催や、見た目も可愛いハロウィン限定メニューの販売、そしてハロウィン直前の10月末には仮装してパーク内を練り歩く「仮装パレード」も開催するなど、ご家族そろってお楽しみいただけるイベントが目白押しです。・会期 : 2023年9月16日(土)~10月31日(火)・詳細 : ハロウィン期間中の開園概要は詳しくは公式サイトをご覧ください。・公式サイト : ・トーマスランドに関しての問い合わせ先:富士急ハイランドTEL: 0555-22-1000URL: トーマスランド■「DAY OUT WITH THOMAS(TM) 2023」ハロウィン特別企画蒸気機関車きかんしゃトーマス号が走る公式イベント「DAY OUT WITH THOMAS(TM) 2023」の運行10年目を記念し12月25日(月)まで週末を中心に過去最多の122日間運行中。ハロウィン期間中はお客様参加型のプレゼント企画を実施いたします。期間中にハロウィンらしい仮装やメイクをしてトーマス号にご乗車いただいた5歳以下のみなさまに、大井川鐵道オリジナル「2023ハロウィン限定 フォトプロップス」をプレゼント。・会期 : 2023年10月6日(金)~10月30日(月)・詳細 : ハロウィン期間中の運転概要とチケット販売・予約方法について詳しくは公式サイトをご覧ください。・公式HP: ・問い合わせ先:大井川鐵道株式会社 SLセンター(電話 0547-45-4112 9時00分~17時00分)ハロウィン期間中に配布予定のフォトプロップス特別ヘッドマークを装着した きかんしゃトーマス号ハロウィン特別ヘッドマーク■TVアニメ「きかんしゃトーマス」NHK Eテレにて放送中【公式サイト・NHKオンライン】 ■きかんしゃトーマスについてきかんしゃトーマスは2020年に原作出版75周年を迎えた、未就学児に大人気のキャラクターです。イギリスの牧師、ウィルバート・オードリーが描いた「汽車のえほん」シリーズに登場すると「きかんしゃトーマス」は人気キャラクターになり、その後、イギリスの映像プロデューサー、ブリット・オールクロフトにより1984年に映像化されました。現在までにエピソード数は500話以上にのぼり、世界200以上の地域で放送されています。日本でも、絵本出版から45年以上、テレビ放送から30年以上の歴史があり、現在はNHK Eテレで毎週土曜日に放送されています。また、玩具・絵本・アパレルといった商品に加えて、多様なイベント・テーマパーク・映画など、多数のタッチポイントで展開を行っています。公式サイト「きかんしゃトーマスチャンネル」 ●ご掲載に関してのお願いご掲載に際しては原稿の確認をさせていただきたくお願い致します。また、きかんしゃトーマスの写真使用の場合には下記のクレジットを付記してください。(C)2023 Gullane (Thomas) Limited. 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年10月13日株式会社G-Place(本社:京都府長岡京市、代表取締役社長:綾部 英寿、以下「当社」)の株を100%保有し、その株式配当を社会に還元する事業を行う一般財団法人 辻・山中財団(所在地:京都府長岡京市、代表理事:山中 利一、以下「当財団」)は、建築家・安藤 忠雄氏が設計し、大阪市に寄贈した子どものための文化施設「こども本の森 中之島」に対し2023年9月14日に寄付を行いました。こども本の森 中之島 イメージ■一般財団法人 辻・山中財団について当財団は、保有する企業が得た収益の一部を社会へ還元することを事業目的としており、運営のために必要な最低限の事務経費を除き、株式配当で得られた資金を基本的には全額寄付することにより「より良い社会・より良い未来を創る」「今、困っている人を助ける」活動を行う団体を支援しています。当財団では「資本主義社会の持つ二極化構造こそが全ての社会不安の根源的要因であり、これを反転させる継続的な収益還元の仕組みが必要である」と考え、この収益還元に取り組むことが企業オーナーの社会的責任だと捉えています。その責任を果たすべく新たな企業経営の形を示し、今後も意味のある収益の還元方法を模索し、実行し続けてまいります。当財団公式HP: tsujiyamanakazaidan_logo■「こども本の森 中之島」に寄付を行った理由建築家の安藤 忠雄氏が「子どもたちに多様な本を手に取ってもらい、無限の想像力や好奇心を育んで欲しい。」との想いから自ら設計し、建設費を負担し「こども本の森 中之島」が実現したとのこと、大病を患ってなお、その後も変わらず前向きに必要だと信じることを実現していく強く生きる姿勢に大変感銘を受けました。また現代の子どもたちに対し「多様な本を手にとる」機会を提供することに非常に大きな価値があることも強く感じており、当財団ではこのような「未来」の子どもたちの可能性をはぐくむ取り組みを支援したいと考え、寄付を行いました。こども本の森 中之島公式HP: 当財団代表理事 山中 利一■株式会社G-Placeについて1968年に「日本グリーンパックス」として事業をスタート。2019年5月、創業50周年を機に現社名に変更しました。「アイディアで未来をつくる、創造総合商社」を掲げ、さまざまな分野で独自性のある商品やサービスを提供しています。創業から一貫して、全国自治体のごみ減量を支援する事業をひとつの柱にしており、現在では、高所安全対策製品や再生樹脂製品の販売、天然成分由来にこだわったオリジナルの化粧品や雑貨類の企画・販売、海外家電製品の輸入販売なども行っています。海外にも拠点を設け、積極的に事業を展開中です。2020年からは当社の株の100%を一般財団法人 辻・山中財団が保有する体制に移行しており、当社の得た収益の一部は配当金として財団に支払われたのち、社会に対し意義のある事業に寄付される仕組みになっています。【財団概要】名称 : 一般財団法人 辻・山中財団(正式表記では辻は一点しんにょう)所在地 : 〒617-0835 京都府長岡京市城の里10-9設立 : 2020年10月8日代表理事: 山中 利一公式HP : 【会社概要】商号 : 株式会社G-Place(読み:ジープレイス)所在地 : 〒617-0835 京都府長岡京市城の里10-9創業/設立 : 1968年5月7日/1969年5月16日代表取締役社長: 綾部 英寿公式HP : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年10月12日「インクルーシブ教育システム」のよいところインクルーシブ教育とは、障害のある子どもと障害のない子どもに別々の教育を行うのではなく、全員が共に学べるような形で教育を行うことを意味しています。文部科学省では、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学べる環境と、障害のある子どもが個別に学べる環境をどちらも整備し、すべての子どもがどちらの環境も活用できるようにしていこうと提唱しています。これは合理的な考え方で、そのような環境設定をすることに対して、私は全面的に同意しています。学校に多様な学習環境が用意されていて、子どもたちが自分の状態に合わせて環境を選べるようになれば、誰もが学びやすくなるでしょう。「一度しか言わないから」は多様性を否定する指導方法文部科学省はインクルーシブ教育システムの確立に向けてさまざまな取り組みを実施していますが、現在の学校教育にはまだ課題もあります。例えば、学校で先生が子どもたちに「いいですか、一度しか言わないからよく聞いてくださいね」と呼びかけることがあります。これは、インクルーシブ教育システムの定義にある「人間の多様性の尊重」を否定する指導方法です。このような指導では、「口頭の指示を一度で完全に理解できる」という子どもしか学習できません。それ以外の子どもは、学習する機会を失います。現在の学校教育にはまだ課題がある人間には、口頭の指示を理解するのが得意な子どももいれば、聞くことよりも視覚的な文字などの指示を理解するのが得意な子どももいます。それ以外の方法が得意な子どももいるでしょう。どのようなタイプの子どもも学習できるように指導方法を工夫するのが、先生の仕事であるはずです。指導が上手な先生は、口頭で一度指示するだけではなく、黒板に同じことを書いて示したり、指示を繰り返したり、手本を見せたりして、子どもたち全員が学習できるように工夫しています。そのようなちょっとした工夫で、学習環境を整えていくことは大切なことです。「学校の標準」をゆるやかにして、みんなが学びやすい環境をつくっていくのです。出典 : 「学校の標準」が狭すぎるのではないか?発達の特性がある子どもは学校生活において、何かと困りごとに直面しがちです。ほかの大多数の子どもよりも、困難が多いように感じます。それはなぜでしょうか。私はその要因の一つに「学校の標準が狭すぎること」があると考えています。いまの日本の学校には、子どもが「標準的にやるべきこと」が多すぎます。私は、いまの学校では子どものやるべきこと、守るべきことが多すぎて、「標準」が狭くなっているように感じます。その「標準」をこなせる子どもはよいのですが、発達の特性がある子どもは、すべての活動を「標準」に合わせるのは難しい場合もあります。ローカルルールは少ないほうがいい学校には多くの子どもたちが集まっています。集団で活動するためには、一人ひとりが一定のルールを守ることが欠かせません。ですからなんらかの「標準」は必要です。子どもたちが学校で集団行動のルールを学ぶことには、意味があると思います。しかし、ルールが細かくなりすぎると、それがいじめの温床になることもあります。例えば「校舎内の廊下は左側を歩きましょう」という決まりをつくることは、衝突を避け、人の流れをスムーズにするためには有効です。しかし、それを破ったら罰を与えるような厳しいルールにしてしまうと、ある子どもが右側を歩いたときに、ほかの子どもがそれを強く注意したり、先生に言いつけたりすることが出てきます。ルールから少しはずれただけで、非難するような風潮ができていくわけです。私は、学校内のローカルルールは、少なければ少ないほどよいと思っています。「学校の標準」に苦しむ子どもたち「学校で、みんなと同じようにできない」ということに悩み、登校できなくなった子どもたちを、私は大勢みてきました。私は「学校の標準」が狭いこと、大人たちが学校をきっちりとつくりすぎてしまったことが、一部の子どもたちを苦しめているのではないかと思っています。また、学校のように大勢で集まって活動する場所では、「一緒に遊ぶと楽しいよ」「全員一丸となってやれば、必ずうまくいく」というふうに、「みんなで一緒にやるのがいいこと」という価値観を強く押し出し、しかもそれを目標にしてしまうことがあります。出典 : 学校で「みんなで一緒に」を目標にしないグループをつくってお互いに協力し、それぞれの長所を生かして一人ではできないことをするというのは、よいことだと思います。しかし、そこで大事なのは「なんらかの成果を上げる」ということであって、「みんなで一緒に」「全員一丸となって」行動することではないはずです。集団に対して「みんなで一緒に」という目標を立てると、その集団に「標準」が生まれ、そこから外れることをよしとしない風潮ができていきます。学校のように、子どもたちが一人ひとりのびのびと学習していく場には、そぐわないものだと思います。学校を小さな「共生社会」にするために私は社会全体が、多種多様な人たちが共存できる「共生社会」になっていくことを願っています。学校も一つの小さな共生社会になっていってほしいと思います。ただし、私が共生社会としてイメージするのは、先ほど述べたような「みんなで一緒に」を目標とする社会ではありません。世の中には「みんなで仲良くできるように努力しよう」「立場が違っても分かり合える」と考える人もいますが、私は現代の社会をそんなに甘いものではないと思っています。「相性が最悪の人とも共存できる社会」に私が思う共生社会とは、「相性が最悪の人とも共存できる社会」です。そのくらいのことができないと、本当の意味での共生社会はつくれないと思います。人間誰しも、「この人とは合わないな」という相手がいます。見るのも嫌だという相手もいるわけです。共生社会をつくるためには、きれいごとではなく、そういう相手とどうやって共存できるかを考えていくことが必要です。自分とは違う人への恐怖心や攻撃心を認めたうえで、その人とも共存できる仕組みを、理性的な社会の枠組みとしてつくっていく。それが、共生社会をつくる道です。「理解しきれない相手もいる」という現実多くの場合、人は他人のことを理解しようとするとき、過去のさまざまな経験から相手の立場や考えなどを想像します。しかし、人のあり方は多様です。自分が「ふつう」だと考えていることが、相手にとっては「ふつう」ではないこともあります。だからこそ、人が分かり合うのは難しいわけです。「世の中には、自分には理解しきれない相手もいる」という現実をきちんと認識し、そういう相手がいることを認めたうえで、その人とどうやって共存するのかを考えること。それが共生社会をつくるということだと思います。「みんなで一緒」よりも「お互いにリスペクト」私は、共生社会をつくるために必要なのは「みんなで一緒に」ではなく、「お互いにリスペクト」という姿勢だと考えています。相手の考えをすべて理解できるわけではないけれど、認めてはいる。けっして無視をしない。そのような関係性をつくっていけば、どのような相手とも共存していけるのではないでしょうか。学校のように大勢が集まる場でも、発達障害のある子どものような少数派の論理を認め、けっして軽視しないこと。その姿勢が共生社会や真のインクルーシブ教育の実現へとつながっていくはずです。
2022年09月28日支援が必要な学生により早い段階で支援を提供したい2005年に施行された発達障害者支援法では、「大学及び高等専門学校は、個々の発達障害者の特性に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする」と明示されました。そこで発達ナビでは、実際に大学でどのような支援が行われているかについてお届けしていきたいと思います。このコラムで紹介する中央大学では、2007年から一部の教員が「軽度発達障害の縦断的研究」を開始。これを引き継ぐ形で2016年から「発達障害者傾向を有する大学生についての縦断的研究」を行い、このたび『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開(中央大学人文科研究所研究叢書)』に活動の記録をまとめました。今回は、同研究チームの主査を務めた山科満教授に、キャンパスにおける学生支援の現状や発達による特性がある学生、保護者の方への願いについて伺いました。参考:発達障害者支援法 | 文部科学省編集部(以下――)現在注力されている研究について教えてください。山科先生:中央大学では、未診断ながら発達の特性がある学生への支援体制の構築と、支援のノウハウについての臨床研究を続けています。従来型の学生相談室、あるいは支援室というのは、いくら「箱」を充実させても、支援が必要な学生の多くはそこにたどりつくことなく、大学からドロップアウトしていきます。そのような学生により早い段階で支援を提供できるために必要なことは何だろうと、手探りで活動を続けてきました。――山科先生は、精神科医から大学教員に転身されたのですよね。山科先生:はい。大学教員、それも臨床心理学の教員になろうと思った理由は2つあります。私は1989年に医学部を卒業して精神科医になり、最初の十数年は統合失調症の入院治療に力を入れていました。臨床経験を積む傍らで、次第に薬物療法の対象とはならないパーソナリティ障害や神経症の治療、すなわち個人精神療法、とりわけ精神分析の勉強もするようになりました。これが自分としては興味深かったのですが、脳科学全盛の大学病院の精神科で精神分析を実践することや、まして研究することはできないことだったのです。端的に、居場所がないわけです。もし研究を続けたければ、文系の大学の教員になるしかない、という状況がありました。より直接的には、大学病院で臨床心理士を目指す大学院生の実習指導を引き受けるようになったところ、実習生たちがとても熱心で、その人たちに基礎的な精神医学と精神分析学の両方を教えることに、やりがいを感じるようになったのです。そこで、大学教員を目指すなら臨床心理士養成のための大学院をもっているところにしようと、思い定めました。2006年に文教大学人間科学部に就職したのは、こういう経緯からでした。その後、2010年春に中央大学文学部に移りました。――現在の支援体制について、どのようにお考えですか。山科先生:少しずつ支援体制をつくりつつあるのですが、私のやっていることはどうしても支援者ないし教員の目線での発想に傾きがちです。支援対象当事者の気持ちや困りごとをより具体的に知るために、今は学生さん当事者の人たちに協力してもらいインタビュー調査を積み重ねているところです。また、ピアグループの運営をサポートするようにもなりました。――そのほかの研究はいかがですか。山科先生:東日本大震災にまつわる臨床研究を行っています。中央大学文学部に移った約1年後、2011年3月に東日本大震災が発生しました。以来私は岩手県の北リアス地域に通い、病院臨床や地域の精神保健活動に携わりながら、津波被災者の心理過程と、過疎地域におけるひきこもりの支援に関する臨床研究を続けています。――ひきこもりには発達の特性も影響しているのでしょうか。山科先生:そうですね。その地域で家庭訪問を行っていて、大学中退、あるいは卒業後早期に社会からドロップアウトして、実家に戻りそのままひきこもっているという人たちに少なからず出会いました。その人たちの生きにくさのベースに、多くの場合で発達の特性が絡んでいることが見いだされました。まだ論文化できるほどのデータはたまっていないのですが、実感としてはそういうことです。3/4が支援開始時点で発達障害未診断というデータも出典 : ――大学に通う発達に特性がある学生の傾向や、支援状況について教えてください。山科先生:中央大学の一学部のデータですが、発達の特性があるために適応に困難を来して支援を受けることになった学生のおよそ4分の3は、支援開始時点で未診断でした。多くは幼稚園・保育園時代から多少なりとも「発達が気になる子ども」ではあったのですが、よく護られ、あるいは勉強ができるために周囲から一目置かれ、大学まではさほど不適応にならずに来ているのです。――そのような学生は、大学入学後に困り感が生じているということですね。山科先生:そうなりますね。大学では高校までの生活とはタスクが全く異なります。また、コロナ禍で普及したオンライン授業にはメリットもありますが、時間管理や同時並行処理など、発達の特性を有する人には高いハードルとなることもありました。さらに、授業はこなせても、就職活動で「筆記は通るのに面接でことごとくはねられる」といった経験から、自身の特性について気づくこととなる学生さんも少なからずいます。――学生自ら支援を求めることができているのでしょうか。山科先生:支援対象者となっている学生のうち、自ら支援機関や支援者に直接コンタクトを取った学生は半分以下です。ドロップアウトしかかったところで、ゼミの教員や、キャリアセンターの職員、学部事務室の職員などが関与し、そこから支援者につながることが多いです。ということは、支援機関・支援者は、学生からみてアクセスしやすいだけでなく、一般の教職員にとってもアクセスしやすい存在でなければなりません。これは「箱」を整備すれば良いというものではなく、支援者の「顔」が多くの学生や教職員から認知されることと、支援システムが柔らかいものであることが必要と考えられます。――現在、キャンパスで支援している学生はどれくらいですか。山科先生:中央大学では、私の推計では概ね全学生の1%ほどの学生を支援対象としていると思われます。他方、私たちはいくつかの学内調査から、発達の特性を有し、本人なりに困り感を抱きながら過ごしている学生が1割弱いるだろうと見積もっています。以前行った調査で「自閉症スペクトラム指数(AQ)」という質問紙では、カットオフポイント(その点数以上であれば自閉スペクトラム症の傾向がある可能性が高い)を超える人が数%ほどいました。もちろん、カットオフポイントを超えた人がみな困っているわけでも、まして発達障害と診断されるわけではないのですが、私は、今支援を受けているのは本当に支援を必要としている人の一部に留まっているのではないかと、危惧しています。また、今困っていないから支援の必要がない、とは必ずしも言えません。問題が先送りされ、会社員になってから不適応に陥っても、企業の中では大学のように手厚い支援はありません。それは、私がクリニックや企業内の健康管理センターで精神科医として働いていて実感することです。――さまざまな課題を感じられているのですね。発達の特性がある学生には、どのように過ごしてほしいとお考えですか。山科先生:できることなら、発達の特性がある人は、学生時代に自身の特性と向き合い、この複雑で曖昧な世の中を生き抜く戦略・戦術について考え始めてほしいと願っています。「障害は社会の側にある」のですが、その社会と自分との相性を客観的に分析する視点をもつこと、その前提となる柔軟な自我が育つような支援を一人ひとりに提供することが、私たちの最終目標です。ただし、本人にその自覚が無いまま支援者が人の人生や心の中に踏み込むことなどできません。どうやって気づいていただくか、気づいたときに強い不安や孤独感を抱くことなく支援を開始するにはどうすれば良いのか、学生の成長に寄り添い「伴走」する支援者のあり方とは、など課題はつきません。大学・学部選びでは「本人の興味・関心」を優先させてほしい出典 : ――ここまでお話を伺い、発達の特性による困り感がある大学生の多さを再認識しました。発達に特性がある場合、どのようなことを大学・学部選びで大切にしたほうが良いとお考えでしょうか。山科先生:大学・学部選びに関しては、何よりもまず「本人の興味・関心」を優先させてほしいと思います。大学の勉強は、高校時代よりはるかに複雑でレベルも高くなります。「好き」という原動力がないと、ただただ苦しいだけの日々を送ることになりかねません。就職に有利だからという理由で学部を選んだり、大学のネームバリューに惹かれて「その中で入りやすい学部」といった選択をしたりすると、入学後に壁に当たった際に乗り越えることは難しくなります。――「好き」という原動力が、困難を乗り越える力にもなるということですね。山科先生:大学時代に学んだ「知識」など、卒業後数年したら古びてしまいます。大学で身につけるべきなのは、「調べる力」「長い、構造化された文章をつくり上げる力」「ディスカッションの力」「プレゼンテーションの力」などです。仮に会社員として生きていこうということになった場合に、これらの力があれば、支援を受けながらになるかもしれませんが、それなりの仕事ができる可能性があります。好きな勉強を通してなら、こういう経験を積みスキルが向上することが可能になるかもしれません。コミュニケーションが苦手な人でも、自分の好きなことなら話せるかもしれません。まず楽しんで話す、その次に「相手に伝わる話し方」を考える、ということで、この順番でなければコミュニケーションスキルの進歩などありえないと私は思います。――大学卒業後、つまり「将来の自立」にも関わってきますよね。山科先生:自立ということでいえば、当たり前のことですが生活スキル、自己管理能力の強化は、どうしても必要と思います。大学生活で躓くのは、実はこの点が大きいのです。ただし、朝起きられないとか、時間にルーズだとか、片づけができないといったことが、全て「心がけ」の問題として本人が叱責されてしまうというのは残念でなりません。これらはいずれも発達の特性がベースにあって生じることなのですから、本人を傷つけずにどう意識づけをやっていくか、ということについては、いろいろな工夫が必要でしょうし、薬物療法を検討すべき場合もあります。――保護者はどのようなことを意識すれば良いでしょうか。山科先生:より根本的には、「自己」を育てていく、ということが大事かもしれません。「これが好き」「あれがやりたい」という願望を持ち、その実現に向かって努力するとか、自分が頑張った結果どういう良いことが待っているかということがイメージできるように、親は気長に関わっていく必要があると思います。発達の特性によってイマジネーションが難しいからこそ、そのような頭の使い方を、地道に教えて行く必要があるのではないでしょうか。やがて経験を積み、親しい人に導かれながら内的な経験を言語化する営みを重ねると、少しずつ「自己」が複雑化していきます。そうなると、異なる視点でものを見比べるとか、思考実験的なことを頭の中で行えるようになります。発達の特性を有する人たちにはそういうことは苦手なのですが、将来を考えるときに、不安感と嫌悪感ではなく希望に根ざした発想ができるように、ということを親は意識している必要があるように思います。執筆/LITALICO発達ナビ編集部
2022年06月15日特別支援教室のガイドラインが変更に出典 : 東京都では、平成28年度から小学校、平成30年度から中学校の特別支援教室の導入を進めてきました。この導入期に合わせて「特別支援教室の導入ガイドライン」が作成され、ガイドラインに沿って各校で特別支援教室の導入が進められました。そして、令和3年4月に東京都の全ての区市町村立小中学校において特別支援教室の導入が完了しました。それに伴い、令和3年3月に「特別支援教室の運営ガイドライン」が作成されました。このガイドラインには、あらたに指導期間の考え方や指導目標の設定の仕方などが記載されました。東京都教育委員会|「特別支援教室の運営ガイドライン」を作成しました「特別支援教室の運営ガイドライン」は、導入時のガイドラインとどのような点が変わったのでしょうか。東京都教育委員会の教育庁都立学校教育部特別支援教育企画調整担当の方にお話を伺いました。新ガイドラインでは、指導期間や指導目標について明確に。そのねらいとは?出典 : 発達ナビ編集部(以下――)特別支援教室の導入時のガイドラインと、最新の 「特別支援教室の運営ガイドライン」の違いはなんでしょうか?東京都教育委員会:特別支援教室の運営に必要なことだけではなく、特別支援教室での指導以外の場面での役割の重要性など、これまでの導入ガイドラインの内容をさらに充実させています。特に、指導期間の考え方、指導目標の設定(読み書きチェックリストの活用、連携型個別指導計画の作成)の仕方、指導による達成状況の確認、指導目標を達成した後の在籍学級での支援などについても記載を充実するなど、発達障害のある児童・生徒への支援について総合的に記載しています。ーーガイドラインが発表されたことにより、支援者や保護者からどのような声がありましたか。東京都教育委員会:保護者の方や学校の先生方から、指導期間の考え方について教えてほしいといった声などが寄せられました。発達障害のある児童・生徒は、学校生活での多くの時間を通常学級で過ごしています。こうしたことからも、特別支援教室での学びを通じて、学習上や生活上の困難さを低減し、学校生活を有意義に過ごしてほしいと考えています。そのため、一定の指導期間の中で、どの程度、指導目標を達成できたのかを確実に評価すること、その上で、引き続き指導の継続が必要なのか、それとも指導を終了し、通常学級の中での配慮や工夫をしていくことが良いのかなどをしっかりと判断して実践していくことが重要だと考えています。指導期間は、一つの区切り。大切なのは、子どもの困りに着目すること出典 : ーーガイドラインの中の「原則の指導期間 は1年間とする」「延長する場合、再設定する指導期間は最長1年間とする」という指導期間について具体的に教えて下さい。それ以降は在籍できないということなのでしょうか?東京都教育委員会:そのような声が保護者の方や先生方からもありました。期間をはっきり記載したのは、「基本的に1年間しか在籍できません、最長2年間までしか在籍できません」ということではありません。1年、2年というのはあくまでも一つの区切りなので、期間を設けた上で「本当にその子が困っていることは何なのか」「指導法は合っていたのか」などを確認しよう、2年間の指導に対し、指導目標の達成まで至らなかった場合は、改めて適切な支援の在り方から考え直そう、ということです。そこでやはり特別支援教室での指導が必要であれば、再度在籍することもできます。また、特別支援教室を退室したお子さんが、やはり指導が必要だとなれば、改めて特別支援教室で指導を受けることも可能です。ーーありがとうございます。指導期間の考え方についてよく分かりました。最後に子どもたちへのメッセージをお願いします。東京都教育委員会:発達障害による困難さで、さまざまなつまずきを感じているかもしれません。また、うまくいかないなどの経験から自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。特別支援教室は、みなさんのスキルを向上するための教室です。発達障害による困難さを少しでも低減することができるよう、先生方が寄り添ってくれます。先生方を信じて頑張ってくださることを願っています。取材協力:東京都教育委員会教育庁都立学校教育部特別支援教育企画調整担当
2022年06月14日発達障害のある子どもにどんな対応をすればいいのか私は児童精神科医として30年以上、発達障害のある子どもたちの診察を続けてきました。今回は、発達障害のある子どもの育て方を考えるきっかけとして、3つのクイズを用意してみました。お子さんをイメージして「うちの子の場合は」「自分だったら」と考えながら、答えを選んでみてください。Q1. 集団遊びに入ろうとしないときは、どう対応する?幼稚園に、いつも一人で遊んでいる子どもがいます。みんなで園庭に出て遊ぶとき、ほとんどの園児は自然に集まってボール遊びなどを始めますが、その子どもは一人で虫を探したり、葉っぱを集めたりします。クラスメートや先生に誘われても、集団遊びに入ろうとしません。どんな対応をすればよいでしょう?A1. 全員参加型の遊びを企画して誘うA2. その子の興味を引けるよう、いろいろな遊びに誘ってみるA3. 一人で遊びたい気持ちを尊重する出典 : 親や先生は一人遊びをしている子を見ると、「友達づき合いが苦手なのかな」「どうすれば、みんなと仲良く遊べるようになるだろう」などと考えてしまいがちです。でも、「楽しく遊ぶこと」と「仲良くすること」は分けて考えましょう。遊びの目的は「楽しむこと」です。「仲良くすること」ではありません。楽しく遊んでいるうちに、気の合う仲間と親しくなることがありますが、それはあくまでも結果です。最初から仲良くしようとして遊んだわけではありません。遊びの場面では「楽しむこと」を大事にしましょう。というわけで、正解は3です。子どもが一人で虫を探したいと思っているのなら、その思いを尊重してあげてください。ただ、2のような対応も決して悪くありません。いろいろな遊びに誘ってみると、子どもが興味を示すこともあるでしょう。そうやって遊びの幅が広がっていくこともあります。無理やり誘うのはよくありませんが、声をかけるのはよいと思います。1の全員参加型も、機会をつくること自体はよいのですが、強制参加にならないように注意しましょう。Q2. 一人だけ先に給食を食べてしまうとき、どう対応する?小学生の例です。給食のときに、ある生徒は、一人だけ先に食べ始めてしまいます。先生には「みんなの準備が終わって、全員そろって『いただきます』と言ってから食べるんだよ」と言われていますが、自分の分が準備できると、つい手が出てしまいます。どんな対応をすればよいでしょう?A1. イラストや写真で手順表をつくって、それを見せながら教えるA2. マナーを覚えていけるように、何度でも同じことを教えるA3. 別室で待機してもらい、給食の準備が終わったら呼んでくる出典 : おすすめの対応は1と3です。口頭で何度も指示をしても伝わらない場合、1のような形で別の伝え方をしてみるとうまくいくことがあります。発達障害のある子どもには、話し言葉よりも書き言葉やイラスト、写真などのほうが理解しやすい場合があります。また、暗黙の了解を察するのは苦手だけれど、しっかり説明されれば理解できるという場合もあります。いろいろな伝え方を試してみてください。2のように、じっくりと対応するのもよいのですが、話し言葉を聞き取るのが苦手だったり、聞いて覚えても時間がたつと忘れてしまったりということもあります。何度試しても難しい場合には、別の方法に切り替えたほうがよいでしょう。3は一見、教えることを放棄した対応のように見えるかもしれませんが、これもひとつの正解です。教わったことを忘れてしまう場合や、好きな食べ物が目の前にあると衝動に負けて手が出てしまうケースもあります。その場合には環境を変えるのも一つの対応法になります。発達障害のある子どもは、さまざまな困難があるから、発達障害だと診断されます。何度教えてもうまく伝わらない場合には、「この子にとってなにが難しいのだろう」「どんな伝え方をすれば理解しやすくなるのだろう」と考えることが大切です。そうやって考えていった結果、伝え方ではなく環境を変えようというのも、一つの解決策になるわけです。「環境を変える」という意味で言うと、私は「みんなで一斉に食べ始める」というルール自体を変えてしまってもいいのではないか、とも思います。Q3. 勉強が苦手で宿題に時間がかかる場合の解決策とは?勉強が苦手で、宿題にすごく時間がかかってしまう小学生がいます。親や先生にいろいろとサポートしてもらってもうまくいかず、鉛筆を持つことさえ嫌になってしまいました。子どももストレスを抱え、親や先生もイライラするようになってきています。どんな解決策があるのでしょうか?A1. 親も疲れてしまうので口出しをやめて、本人のペースを見守るA2. 難しすぎるので親が手伝うA3. 宿題が多すぎるので、親から先生に「減らしてほしい」と相談する出典 : おすすめの対応は3です。この場合、子どもはなにも悪くありません。宿題の設定の仕方に課題があります。宿題が適切な量や難易度で出ていれば、子どもは30分もかからずにパパッと済ませられるでしょう。宿題に時間がかかり、鉛筆を持つことさえ嫌になるということは、宿題の設定を見直すべき状態です。3のような形で先生に宿題を減らしてもらうか、それが難しければ、親が宿題の量を調整することも考えましょう。私はそもそも子どもたち全員に同じ量の宿題を出すことは意味がないと思っています。勉強が好きであれば、宿題がなくても自分から勉強するでしょう。勉強が嫌いならば、宿題が負担で勉強がさらに嫌いになってしまうかもしれません。「宿題はいらない」という解説を読んで、みなさんは「そうは言っても勉強はしっかりさせなくては」「宿題で学習習慣をつけることは大事」と感じたかもしれません。確かに、常識的に考えればそうでしょう。「着替えや食事のようなことはあとで学んでいけるけれど、勉強で遅れが出てしまっては将来に響く」と考える人もいるかもしれません。しかし私はそのような考え方を聞くと、「まずは身のまわりのことを教える必要がある」と思います。子どもにとってもっとも大切なのは、基本的な生活習慣です。発達障害のある子どもの場合、生活習慣は特に大事です。着替えや食事などの基本的な生活習慣を自分なりにできるようになっていかないと、それこそ将来に響くと考えています。発達障害のある子どもにとって、一番大事なことクイズと解説のなかには「給食に手が出てしまうなら別室で待機する」「宿題が嫌なら量を減らす」といった、やや極端な対応法も紹介しました。そんな極端に思える対応の根底にあるのは「子どもを主役にする」という考え方です。発達障害のある子どもには、さまざまな特性があります。大多数の子どもたちと同じやり方をしていては、うまくいかないこともあります。そんなとき、親や先生が常識的なやり方や、大人がよいと思うやり方を優先して、子どもに無理をさせていては、その子どもはいつまでたっても自分らしいやり方を見つけられないのではないでしょうか。発達障害のある子どもの個性はさまざまです。このような解説を参考にしながら、使えそうなアイデアをピックアップしてみてください。
2021年12月02日なんだか、世の中「反省モード」になっていませんか?出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。私の気のせいだといいのですが……。新型コロナウイルスの影響下での不安感や緊張状態が続き、外出を控える自粛生活が長引いたことや、人との接触機会が減っていたこと、息抜き手段が限られたこと。あるいは、第三者の客観的な意見が聞きにくい状況や、少数の極端な意見や否定的な言葉などが拡大・拡散しやすい状況……などなどの影響もあるのかもしれませんが、内省的で内向きな思考パターンに陥っている人が増えている気がします。そして、文部科学省の調査(R2年度)では、子どもの自殺・不登校も過去最多。うちの子たちの小中高それぞれのクラスでも、「ずっと休んでる子が数人いる」などと聞いています。また、経済協力開発機構(OECD)のメンタルヘルスに関する国際調査(2021.6.8公開)によれば、世界的にもうつ病などの精神疾患が急増しているとのこと。私の身近でも、いつもは朗らかなママさんが、先日久しぶりに会ってお話ししたら、ご自身とお子さんの「できないこと」ばかりを気にされていました。自粛期間中に視力が低下した子どもが増加したと報道などで聞きますが、もしかしたら、家にいる時間が長くなり、いろんな人と話しながら外側に目を向ける機会が減ったことで、物理的な面だけでなくて、「心の視力」も視野が狭くなりがちで、ピント調節がしづらくなっている子・方もいるかもしれませんね。「自分や子どものできないことばかりを責めてしまう」「あれも、これも、できないといけない気がして、落ち込んでしまう」……なんて、つい思いつめてしまう方は、ほんの少し肩の力を抜いて、発想の転換と心の柔軟体操をしてみませんか?かつては私も、子どもが学校に行きたがらないことが続いた時期に、自分を責めて子育てに自信をなくしたり、「ちゃんとさせなくては!」「あれも、これも、できるようにしなくては!」とプレッシャーを感じて抑うつ的な気分になり、外出をつらく感じたこともありました。でも、ちょっとだけ、物事を見る視点を変えたり、部分と全体を柔軟に切り替えたりするクセをつけることで、今では(本来)真面目で思い詰めやすい性格の自分と上手に付き合えるようになりました。こういったものの見方は「リフレーミング」といって、発達障害のある子のペアレント・トレーニングや、うつ病の治療での認知行動療法などでも取り入れられている手法ですが、ご家庭で自分自身・お子さん自身でも手軽に取り入れることができます。今回のコラムでは、図解を交えてできるだけ分かりやすく、発想の転換法のコツを直伝します。文部科学省|児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査経済協力開発機構(OECD)|ニュースルーム「失敗の点つなぎ」からの脱出法まず、子育てや、自分自身になんだか自信をなくしがちなときには、「自分や子どものできないことだけを見つめていないかな?」と自問するといいでしょう。私はこの「つい、できないことばかりを責めてしまう」状態を客観的に見るために、「失敗の点つなぎ」と独自に名付けています。では、「失敗の点つなぎ」とは、一体どんなものでしょうか。一つ、例え話をして解説しますね。出典 : うちでも長らく、おうちごはん・テイクアウト・宅配ディナーばかりが続きましたが、少しずつ、外食などへ出かけてみるご家庭も増えていることかと思います。もし、久しぶりにファミレスに行った時には、周りをよく観察してみるといいでしょう。家族や友人と食事やおしゃべりに夢中になっているときや、ぼっち飯でスマホ画面に集中しているとき……誰も周りのことは、そんなに意識していないのではないでしょうか。ところが、突然店員さんが「ガシャーン!」と大きな音を立てて、お皿を割ってしまったら……?たぶん、お店にいる人達は、一斉に注目しますよね。きっと、それまでその店員さんは、次々と注文を取り、できた料理を運び、空いたお皿を回収して……といった努力を地道に続けていたことでしょう。でも、それはお客さんにとっては「レストランでは当たり前」に思える光景なので、お店の内装やBGMと同じような背景になっていたのかもしれません。ところが、大きな音がしたときだけ、なにかあったときだけ、失敗したときだけ、人は気がついてしまうもの……ではないでしょうか。そして、そんな瞬間だけを集めてつなげていくと、いつの間にか「いつも失敗ばかり」であるかのような印象になってしまいます。こうやって、失敗したときだけ気づいて注目し、できなかった瞬間の点と点を結んで、その部分だけを拡大して見つめ続けている状態を、私は自戒を込めて「失敗の点つなぎ」と呼んでいるのです。元々真面目で完璧主義傾向の強い子・方に加えて、現在のように社会的に余裕のない状況が続くと、どんな人でも「失敗の点つなぎ」をしやすくなってしまうように思います。だって、目の前のことで手一杯だったりすると、周りが見えにくくなってしまいますから……。この状態から抜け出すための第1歩は「客観視」です。今、自分が「ああ、失敗だけを見つめているな」と気づくことが、まずは大事なのです。そのために、以下のような解説図をつくってみました。Upload By 楽々かあさん以前、子育てや自分に自信をなくしていたとき、私は毎晩、子ども達の寝顔を見ながら「今日も結局また怒ってしまった」「優しくできなくてごめんね」と、自分の「できなかった」ことばかりを思い出しては、一人反省会をしていました。わが子に対しても「あれも、これも、できなくては!」「ちゃんとさせなくては!」と思い詰めていて、人並みにほめて育てたくても、特に不器用な長男は失敗ばかりのような気がして、ちっともほめるところを見つけられず、結局怒ってばかりになっていました。……でも、果たして当時、本当に私は「怒ってばかり」のダメな親で、長男は「失敗ばかり」のできない子だったのでしょうか?できなかったことや、失敗した瞬間だけをつないで、その部分だけを拡大して何度も何度も反芻しながら見返していたら、自己イメージが低くなって、落ち込んでしまうのは当たり前だったように思います。ところが、少し視野を広げて全体像を眺めてみるとどうでしょう?一日をトータルでよくよく思い出してみれば、さすがに私だって24時間怒りっぱなしではなかったし、子どもだってできたことが少しはあったはずです。もし、全体像を眺めても、成功体験の点をあまり見つけることができない状態の子・方は、「できた!」のハードルを下げてみるといいでしょう。分かりやすい例だと、テストで100点取れたときにしか「できた!」と認めることができなければ、90点のときでも失敗体験になってしまうかもしれません。でも、70点、30点……あるいは5点や0点のときだって、ものの見方次第で「できた!」にカウントできるのです。具体的なコツは……・「大体はできた」「ここまではできた」「これだけはできた」……などと、できなかったことより、部分的にでもできたほうに注目する。・「少しだけでもやってみた」「苦手だけど参加した」「最後までやり遂げた」……などと、挑戦した意欲を認める。・「努力した」「自分なりにがんばった」「下手でも続けている」……などと、良い結果につながらなくても、その過程での努力に気づく。・「前よりもできた」「一年前に比べれば進歩している」……などと、できる子・人と比べずに、自分・その子自身とのタテ軸の比較で見る。……こうして「できた!」のハードルを柔軟に下げていくと、自然と成功体験の点が増えていくのではないでしょうか。そうすると、図のように、できない部分だけをつないで拡大していたときとは、全体像のイメージはずいぶんと違って見えるはずです。「失敗の点つなぎ」状態から抜け出す第2歩は、物事を「0か、100か」で捉えずに、「100以外」の全てを失敗にしないことなのです。そして、当たり前のようなことではありますが、日常生活を形つくるのは、「成功か、失敗か」「できたか、できなかったか」だけでは勿論ありません。子育ての場面でも、子どもを「ほめた/叱った」の二択ではありません。……というよりも、「それ以外」の時間のほうが圧倒的に大部分を占めているのです。「それ以外」の時間とは、毎日の生活の背景にある「ルーチンワーク」「通常運転」「いつも何気なく続けていること」「一見やって当たり前のようなこと」などを、特に意識せずに淡々とこなしている時間もあれば、「何もせずにぼーっとする」「平穏無事にダラダラと過ごす」「不要不急のことに費やす」時間などもあるでしょう。これらの「フツーのとき」は、以下のように、日常生活の背景になってしまっていて、意識しないと見えてこないかもしれません。Upload By 楽々かあさんこの、日常生活の背景に当たり前のように存在する、毎日の小さな頑張りや、ささやかな喜び、密かな楽しみ、何気ない時間の価値に目を向けるように意識すると、特別に何かを頑張れなかった日でも、何ができてもできなくても、ただ一日を普通に終えただけでも、自分なりに満足できるのではないでしょうか。例えば、主婦/主夫であれば、給食・お惣菜・レトルト・宅配込みでも、家族に最低限の食事を出せたなら、十分ヨシとしませんか。お子さんだって、例え学校に行けない日があっても、三食食べて寝るだけでも、昨日よりも確実に成長しているはずです。(※万が一、日々の食事の確保すら困難なほど、精神的・経済的に疲弊している場合は、動けるうちに早めに医療機関や行政サービス、非営利団体などを頼っていただけるよう、お願いします)そうして、自分への目線と子どもへの目線を下げて、「一日を終えただけでも、私は今日もよく頑張った」「(うちの子なりに)毎日よく頑張ってるね」……などと、例え誰もほめてくれなかった日でも、寝る前に一人反省会なんてしなくていいから、自分でご自身とお子さんをほめて認める声かけをしてあげませんか?「失敗の点つなぎ」からの出口である第3歩は、大きな音がしたときだけ注目せずに、日常生活の背景に隠れている「フツーのとき」に目を向けるように意識することだと、私は思っています。何ができても、できなくても……出典 : 最初に新型コロナウイルスのことが報じられてから、もうすぐ2年になりますね。この2年間で、毎日の普通で当たり前の日常が、どれだけ多くの人の膨大で地道な、見えない努力で成り立っているのかを、私は痛感しました。そして、不要不急でムダで何気ない時間にこそ、子育てや長い人生を続けていくために必要なエネルギーが詰まっていることを、再発見しました。一日の終わりは、何ができても、できなくても、親子で「お布団、温かいね」と思えたら、まあ、いいじゃありませんか。文:大場美鈴(楽々かあさん)(監修者:三木先生より)「良いこと」「できたこと」に注目するのは存外大変なものですが、日々の暮らしを通じて少しずつ癖づけていくことはできると思います。ここに書かれているのはある種のマインドフルネス的な考え方ですね。こういう「日々の一つ一つをかみしめる」ような方法を試してみるのも良いかもしれません。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年11月20日家族旅行での、食べもの問題こんにちは。加藤路瑛です。僕自身、感覚過敏の特性があることから13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。感覚過敏があると家族旅行で親がどのような工夫をしているのか、僕の視点を通して感じることをお伝えします。前回、感覚過敏の僕が小学校や中学校での宿泊学習でどのような苦労をし、そのような支援をうけたのかをコラムに書かせていただきましたが、今回は「家族旅行」ならではの問題などを書いてみたいと思います。Upload By 加藤路瑛味覚過敏による偏食があると旅先での食事に悩むと思います。3、4歳のころは、子ども歓迎のペンションや民宿に泊まることが多かったようですが、宿で出される食事がほぼ食べられず、おやつで空腹を紛らわせながら、親は観光の途中で僕が食べられるメニューがあるレストランを探すことに苦労したそうです。そのような経験を数回経て、親は旅行では食事がつかない素泊まりできる宿を探すようになったようです。部屋にキッチンがあるタイプのホテルやコンドミニアムを探し、朝と夜は親が料理をしてくれました。どんな食事だったか思い出せませんが、親の話では、ご飯を炊いてハムやたまご、レトルトカレーなど簡単な献立だっだそうです。部屋で食べる安心や親が作ってくれる安心感を感じていたのだろうと思います。僕が食べられないことで、親がそのような苦労や工夫をしていることには気がつけませんでした。旅行先では、部屋で(親が)料理してくれるものを食べるか、ファミリーレストランで食べていたので、実は、ホテルで食事が出るということを知らないでいました。旅行で食べ物に困ったという記憶もありませんでした。中学生になったころ、ようやく周囲が見えるようになり、多くの人がホテルや旅館では料理も楽しみの1つであることを知るようになりました。そして、ホテルを探している親が、「この料理おいしそう!」とスマホやパソコンを見ながら話しているシーンを何度も見るようになりました。「こういうところは、路瑛が大きくなったら2人で行こう」と言うような会話もしていて、「あ、両親はホテルや旅館の料理を食べたいのに僕のために我慢してくれているのだな」と気づきました。出典 : 中学に入ってからの家族旅行では、心の中で「ごめんね」と思う回数が増えてきたと思います。せっかくの旅行にきているのに、昼ごはんに食べたいものがなく、コンビニで食べ物を買って車の中で食べているときなどは特にそう感じました。僕は、レストランなどに入らずに車の中で食べられるものだけを選んで食べていられる状態がストレスがなく快適です。でも、いつでも食べられるコンビニ食やファーストフードのハンバーガーなどを車の中で食べている様子を見ると、「親には美味しいものを食べてもらいたいな」と心が少しチクッと痛みました。その土地でしか食べられないものや、その場所にしかないお店もあります。それなのに僕は、そのようなお店に入るのは嫌だなと思ってしまう。親は僕の好き嫌いの傾向は理解してくれているようで、「この店に入ろう」と無理やり連れて行くようなことはしないので、「行きたくない」というようなワガママを言ったこともないのですが、せっかく旅行にきているのに、その土地の名物を食べようともしない自分を残念に思うこともあります。味覚が過敏で偏食傾向が強いと旅先での食べ物には困ると思います。親は、子どもが食べられるものを探し、自炊できる宿泊先を探したり、素泊まりにしたりすることが多いと思います。食べられるもの、食べ慣れたもの、知っているお店の食べ物があると安心です。せっかく旅行に来たのだからと土地の名物を食べることを強要しないようにしてもらいたいと思います。出典 : でも、矛盾していますが、せっかく旅行にきたその土地の名物が何なのかは教えて欲しいなと思います。広島に行ったときに広島焼きを見ました。大阪に行ったときは、僕は食べなかったけど、親はたこ焼きを食べていました。自分は食べられないけど、その土地の名物を実際に見ることは知識にも経験にもなると思います。小学生のころの旅行の食べ物の記憶は少ないですが、中学1年で福岡に行ったときに、博多ラーメンに挑戦しました。熱海に行ったときに、刺身も挑戦してみました。このように食べ物に挑戦した記憶は、ほとんど食べられなかったとしても、自分から挑戦した記憶としてよい思い出になりました。子どもが自分から挑戦してみようかなと思えるような、土地の名物紹介は大事だなと思いますし、僕の親は食べられなくても、「ナイス挑戦!」と褒めてくれ、嬉しく感じていました。周囲の状況や自分の状況が把握できるような年齢になると、自分が食べられないことで、親が旅行での食事を楽しめていない現実に気がつくかもしれません。とはいえ、自分自身はなかなか食べられないのですが…。子どもが小さいときは難しいと思いますが、親が旅先での食事を楽しめる方法があるといいなと思います。例えば、コンビニやスーパーなどで子どもが食べられるものを買って、親は、テイクアウトできるその土地の名物を買ってホテルの部屋で食べるのもありだと思います。旅先での、ニオイの問題出典 : 中学生のころ、温泉旅館に泊まったときに、脱衣場に芳香剤やアロマオイルのような香りのするものが置いてあって、気持ち悪くなったことがあります。連泊している宿でしたが、次の日は僕は大浴場には行かず、部屋のシャワーですませました。せっかく温泉に来ているのにもったいないことです。これは、自分で不快の原因が脱衣場のニオイだと判断でき、また自分でシャワーでいいと対策を考えらえる年齢だったからできたことです。もし、これが小学生での出来事だったとしたら、僕は気持ち悪くなった理由も分からず、ただ「気持ち悪い」しか言えなかったかもしれません。そうしたら、体調が悪いのかとか、食べ物にあたったのかなどと親は焦ってしまうかもしれません。または、「早く出たい」とお風呂に入ったばかりなのに出ようとして親をイライラさせてしまっていたかもしれません。子どもが温泉を嫌がるとき、脱衣場のニオイが嫌だったのかもしれませんし、温泉のニオイ自体が苦手なのかもしれませんし、シャンプーなどの香りがいつもと違って嫌なのかもしれません。ニオイではなく、湿度やお湯の温度、照明やシャワーの圧力、反響する音などが不快なのかもしれません。出典 : 僕はニオイの弱めの温泉は結構好きで露天風呂も入るのが好きです。でも、やっぱり、部屋のお風呂に入るほうが気が楽でした。ちょっと大きくなってから、露天風呂が部屋についている宿があることを知りました。まだ泊まったことはありませんが、部屋に露天風呂があったら、落ち着いて入れるように思います。家族風呂もいいと思います!ほかにも、古い旅館やホテルの埃っぽいようなニオイが苦手でした。レンタカーのニオイも苦手でした。ただ、小さいころは、不快な理由は表現できなかったので、今、振り返って「そう言えばあのときに嫌だったのは、車のニオイだ!」と気がつくことがあります。僕の親は旅先でたくさんの体験をさせてくれました。カヌーやシュノーケリング、ゴーカートや乗馬などの体を動かすものから、金箔貼りや草木染め、和紙作り、ガラス吹きなどのクラフトもたくさんしました。工場見学もたくさんしました。Upload By 加藤路瑛たいていは楽しい記憶として残っているのですが、つらかった記憶として残っているのは醤油作りです。発酵した大豆の香りなのでしょうか?体験中に気持ち悪くなって休ませてもらったことがあります。醤油は普段も使っていたので、自分で作るのを楽しみにしていた分、最後までやれなくて悲しい気持ちになりました。Upload By 加藤路瑛嗅覚は記憶を司る脳の領域に近く、香りと思い出はセットで記憶されやすいと言われているそうです。楽しい旅行の思い出が嗅覚過敏があることで、少し嫌な記憶になってしまうのは残念なので、お出かけの前にニオイの想定もして回避できるものは回避できるといいと思います。浴衣は着られない。肌触りの問題旅館に泊まるときに宿泊客のために用意されている浴衣。ちょっと憧れるのですが、生地が痛く感じました。シーツの素材も「なんか嫌だな」と思ったこともあります。生地に敏感な子どもの場合は、パジャマは持参がいいでしょうし、タオルケットなど普段使っているものを持っていくと安心して寝られるかもしれません。僕は小さいころは「服は痛いもの」だと思っていました。みんな我慢して着ていると思っていたので、旅先で服が嫌だと抵抗したり、怒ったりした記憶はありませんし、親に聞いても、特に問題がなかったと言っています。旅行先の体験として、シュノーケリングをしたり、乗馬をしたり、ゴーカートに乗ったりと衣服やマスク、ヘルメットなどを装着していました。親から見て嫌がった様子はなかったそうです。不快感がありながら着ていたのか、不快感を認知できていなかったのか、それとも不快感は感じてなかったのかは記憶がありません。ただ僕の場合は靴下以外は、我慢しなければならない状況なら我慢して身につけられる状態です。ですので、楽しみのほうが強くて衣服やヘルメットなどの不快感は我慢できる状態だったのかもしれません。Upload By 加藤路瑛ただ、このように書くことで、感覚過敏は我慢できるものと勘違いされることが心配です。僕の場合は、触覚にくらべ、味覚、嗅覚に関しては我慢することが難しいです。そもそも味覚と嗅覚の刺激を避けて行動しています。人によって、過敏の度合いも違いますし、我慢できる範囲も違います。レジャーで身につけなければならないものが耐えられない苦痛という場合もあります。ライフジャケットやヘルメットなど命を守るものをつけるのが難しい場合もあります。子どもが着用を嫌がったら、無理せずその体験は諦めるということも大事だと思います。Upload By 加藤路瑛テーマパークでの、光や音の問題Upload By 加藤路瑛遊園地やテーマーパークは楽しい音楽が大音量で流れています。僕はテーマパークのパレードの音が大きすぎて、見終わったころはかなり疲れてしまいます。頭痛もあったと思います。はじめてパレードを見た時は僕は泣き出したそうです。それを見て親は僕のことを「怖がりやさん」と判断したようです。真実はわかりませんが、大音量にびっくりしたのでしょう。視覚過敏は僕はあまりないと思っていますが、テーマパークや遊園地の夜は明かりがキラキラと光っています。人によっては眩しいだけでなく、目に刺さるような痛さでしょう。でも、光や音が刺さるように痛いなんて親は気が付けないでしょう。親はテーマーパークは子どもが喜ぶものと思っているようですが、僕は5歳の時に「もう行きたくない」と自分で宣言したそうです。楽しく家族旅行をするためにUpload By 加藤路瑛小さいときは、自分の不快感の原因に気が付けないことが多いです。そして、不快感を伝える言葉も知らないので、「嫌だ」「帰る」みたいな表現になってしまうかもしれません。僕も旅先で「おうちに帰りたい」と泣いて親を困らせていたようです。親の立場になれば、子どものためにと連れてきたのに、楽しんでくれずに帰りたいばかり言えば、がっかりすると思います。でも、小さいときのアルバムを見るのは僕は好きです。小さいころの記憶は少ないほうですが、アルバムを見ながら、自分が行った場所の景色や体験したものをリアルに想像して楽しんでいます。感覚に関しては本当に人によって違いますし、逆に、「これは無理だろう」と思うものが大丈夫な場合もあるかもしれません。なので、あまり心配したり神経質にならずに、親が子どもに体験してもらいたいこと、見せたいもの、連れて行くたいものは是非やってみてほしいと思います。そういう繰り返しの中で、家族旅行のいいパターンが見えてくると思います。Upload By 加藤路瑛やはり、親との旅行は安心できますし、楽しめることも多いです。友達と行くとなると「せっかくの旅行なのにレストランで食べられないかもしれない。遊園地には行きたくないな」と楽しいイベントに水をさしかねません。そういう不安が友達との外出にはあります。でも、親との旅行は、自分の苦手な部分をわかってくれているので安心です。そして、神経質とも思われがちな感覚過敏のある僕に付き合ってくれて、いろんな場所に連れていってくれた両親には感謝しています。いつか、高級旅館の料理を部屋で家族と一緒に食べて、部屋についている露天風呂にゆっくり入るのが僕のささやかな憧れです。執筆:加藤路瑛出典 : (監修:鈴木先生より)感覚は一般には五感として知られています。医学的には聴覚・触覚・嗅覚・味覚・痛覚です。電車に乗ると聴覚・触覚・嗅覚(+視覚も)の問題があり、自家用車でしか移動できない人もいます。聴覚過敏は今回の事例では大音量だけでしたが、ほかには学校の音楽の授業や先生の怒鳴る声、赤ちゃんの泣き声、集合住宅の近隣の音、映画館や運動会のスピーカーの音、バイクや工事現場の音、さらにセミの鳴き声まで嫌がるお子さんが多いです。触覚過敏は身に着けるものが多く、腕時計や学校の制服・靴下を嫌い、半袖から長袖への衣替えを嫌い、いつも同じジャージを着て登校しています。逆に古い毛布の感触が良くて手放せなかったりします。嗅覚過敏は今回の事例のような脱衣場や車内等のニオイの他、香水、食べ物、コップ、魚など一般には気づかれないようなニオイにも反応します。味覚過敏は給食の好き嫌いで残すことが多く、特にサラダやキノコ類が苦手なお子さんが多いです。味というよりはご飯の見た目や臭いなど様々な感覚過敏が複合している場合があります。この場合、学校の許可が得られれば保護者が作ったご飯を持たせることで解決しています。無理やり食べさせるのではなく、どうしたら食べられるかの工夫が重要なのです。偏食があっても無理はしないでください。最近ではニオイのない納豆や野菜も出回ってきました。自分なりのルーティーンを見つけ、不安なく生活できる工夫をしていけばいいのではないでしょうか。
2021年08月31日読み書きが苦手な子の勉強がめっちゃラクになる簡単小技出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。毎日の宿題に、定期テストや受験勉強、夏休みの課題…特に、LD(学習障害/学習症)や、そのグレーゾーンの傾向があって、読み書きに苦手さがあるお子さんの場合は、肝心の「問題を解く」以前のハードルが高くて、大変な思いをされているかもしれません。宿題にものすごく時間がかかってしまったり、「なんでこんな簡単なことができないんだ」って自分にイライラしたり、あるいは、無茶苦茶がんばっているのに結果がついて来なかったり、周りの人から「努力が足りない」「サボっている」なんて思われたり…。でも、既にスマホ・タブレットで誰もが使える音声アシスタントなどの先端技術が、LDのある子の凹を補い、勉強をめちゃラクにしてくれるんです。実は「LDxAI」の相性って、すごくいいんですよ(うちの経験上!)。LDがある子も、そうでない子も、今のうちからスマホ・タブレットを身近な学習サポーターとしても「手足の延長」「脳の外付け」くらいのつもりで、自由自在に使いこなせるようになっちゃいましょう。今回のコラムは、お子さん自身が「自分でスグできる!」スマホ・タブレットの音声アシスタントや基本機能、無料アプリの活用術を中心に、読み書きがめっちゃラクになる簡単小技・裏技を7つ、具体的に紹介しますね。スマホの音声アシスタントが即戦力の学習サポーターに!出典 : まず、LDがある子は、AT(Assistive Technology )という言葉を、頭の片隅で覚えていてくれると嬉しいです。なぜなら、これから受験や進学・就職の際に、キミ達の未来を切り開くキーワードになるかもしれないから。「AT」とは、分かりやすく言えば、「障害などがある人をサポートする、ありとあらゆる技術すべて」のことです。例えば、広い意味では、メガネや補聴器などの身近なものから、パラリンピックのアスリートの義足…あるいは、最近の自動車に搭載されている、自動ブレーキやクルーズコントロールなどの運転アシスト技術なども、一種のATといえるでしょう。要するに、その人の「凸凹の凹」を補って(更には+αして)くれる、便利グッズ&テクノロジーなのです。そして、読み書きが苦手な子の学びをぐっとラクにする、「勝手にATとして即応用できる技術」は、身近なところに既に沢山あるんです。実は、ひと昔前まで、LDがある子のためのATは、「特別な機器が必要で少々敷居が高い」というイメージが私にはあったのですが、今では「そんなのスマホで簡単にできちゃうじゃん!」ということが本当に多くなりました。その最たるものが、「音声アシスタント」の登場と進化です。「字を読むのが苦手」「読書に時間がかかってしまう」「音声で聞いたほうが内容が頭に入りやすい」「ながら勉強のマルチタスクのほうが得意!」…という子は、まずは、スマホやタブレットの音声アシスタントをONに設定してみるといいでしょう。・iOS → 設定>Siriと検索・Android → 全ての設定>全般>GoogleアシスタントUpload By 楽々かあさんすると…「Hey Siri画面を読み上げて」「OK google, このページを読んで」等と声かけするだけで、今開いているwebサイトなどのテキストを、全文音声で読み上げてくれます。これで調べ学習などもずっとラクになるでしょう。部分的な選択テキストだけを読み上げて欲しい場合には、・iOS→設定>アクセシビリティ>読み上げコンテンツ・Android → 設定>ユーザー補助>選択して読み上げで、設定を有効にすればOK。こうしておくと、PDF書類のテキストなども読み上げることができます(スキャナアプリで、カメラ撮影した紙のプリント等をPDF化することも簡単にできますよ)。Upload By 楽々かあさんまた、うちでは3-4年前から、スマートスピーカー(画面付き ※)に搭載の「Alexa」とも暮らしています。実は、最初の頃は「カップラーメンを作るときに便利なタイマー」という程度の認識だったのですが(笑)、最近ではかなりスキルが充実してきて芸達者になり、手軽な学習サポーターとしても、とても使いやすくなってきました。例えば、宿題中にちょっと漢字が出てこないときに、「アレクサ、興味のキョウを漢字で」とお願いすると、大きめに見やすく表示し、親切に書き順まで教えてくれます。英語学習の場合も同様に、ちょっと単語のスペルに自信がないときに、「アレクサ、”興味深い”を英語で」とお願いすると、正しいスペルを表示した上、さすが「本場のいい発音で」読んでくれ、翻訳・スペル・発音が、声かけだけで同時に瞬時に分かります。早い!便利!※現在Amazon.co.jpで販売しているディスプレイつきEchoシリーズは、Echo Show 5、Echo Show 8、Echo Show 10となります。進化する検索機能がヤバい!そして、LDのある子は宿題などにすごく時間がかかってしまうことが、大変な負担やストレスになっている場合もあると思いますが、音声アシスタントだけでなく、便利な検索機能も進化しているので、使いこなせば学習効率が格段とUPできるでしょう。特に、文字の正確な認識が苦手な子にとって、キカイが凹を補って文字を認識してくれるOCR(※)を応用した技術は、まさに「魔法の杖」になるはず。しかも、待望の「紙のテキストの即読み上げ」だけでなく、身の回りのありとあらゆるものが、その場で一瞬で検索できる時代になってしまいました。※光学的文字認識。カメラやスキャナで紙の文字やモノの情報を読み取って、コンピューターが認識できるようにする技術のことUpload By 楽々かあさんまずは、ちょっとした裏技から。既にご存知の方も多いとは思いますが、スマホやタブレットで読書や調べ学習などをしているときに、「あれ、この熟語、なんて読むんだっけ?」などと、部分的に「読み」や「意味」が分からない言葉が出てきたら…。えいッ!テキスト長押し!すると、Androidスマホの場合は気になる単語を長押しし、画面の下に現れるタブを上にスワイプすると、日本語の読みを音声で読み上げてくれます(意味が知りたい場合は「ウェブ検索」を)。長文の選択テキストもOKなので、音声アシスタントなしの読み上げにも便利です。英訳なども可能ですし、本格的な発音で英語の音声を聞くことも出来ます。同様に、iPhone/iPadでも、テキスト長押しすると出てくるメニューの「ユーザ辞書」から、瞬時に文字で読みや意味が分かります。また、自分が珍しい名前の子や、よく読み間違える熟語などは、ユーザ辞書に単語登録しておくと、文字入力や確認がラクになりますよ。さて。問題は、やっぱり紙ですよね、紙!Upload By 楽々かあさん"読み"の苦手な子にとって、「紙」の教科書、テストやプリント、ワークへの対策は、死活問題でしょう。でも、少なくとも、家庭での紙ベースの宿題やテスト勉強は、紙…いえ、神アプリ&機能の「Google レンズ」が、強力な学習サポーターになってくれます。宿題等のときに、「Google レンズ」アプリ(または、アイコン)から、カメラ機能を使って対象物を見ると、こんなことがいとも簡単にできてしまいます。<紙のテキスト読み上げ>教科書、ワーク、先生が配布したプリントなどのテキストを認識して、選択部分を「聴く」ボタンで読み上げ!(しかも、先生の温かい手書き文字での手作りプリントも、ちゃんと認識できます)…だけでなく、選択したテキストをコピペしたり、即時に分からない言葉を検索・翻訳なども可能。<実物・印刷物の画像検索>道端の雑草や昆虫の名前から、テストや資料集の名前が思い出せない偉人や、謎の建造物の写真など、「えーと、これ何だったっけ?」という疑問を、パパッと画像検索して特定。<「解き方」検索>「宿題」モードで、解けなかったワークやテストの問題を見ると、「解答そのもの」ではなく、問題文を分析して、「解き方」の検索結果を表示し、わかりやすい解説動画や参考サイト、用語の説明などをスグ確認(これは、親も助かりますね)。他、教科書や参考書に記載のQRコードやURLの読み取り→Webサイトへの移動も早いですよ。なんか、便利過ぎて、おばちゃんちょっとコワイ…。デジタルxアナログの合わせ技も大活躍!さて、ここまで、主に読み書きの苦手なお子さんが、自学自習をする際にスグに「自分でできる!」技をお伝えしてきました。でも、「うちの子は、まだ1人でそこまでIT機器を使いこなせないかも…」といったお子さんにも、「デジタルxアナログ」でのちょっとした合わせ技で、読み書きのハードルを下げることができます。例えば…Upload By 楽々かあさん以前、うちの長男は、「文字の形を正確に認識して書くこと」が苦手だったため、漢字書き取りの宿題サポートに、拡大ルーペなどを使っていましたが、同じことがスマホ・タブレットのカメラ機能でもできることにフと気づきました。「博」の点は1つなのか2つなのか、「美」の横棒が何本なのか、「シンニョウ」のうにゃうにゃは一体どうなっているのか、自由自在に拡大して確認できますね(これは、そろそろ老眼が入ってきて、時々「字が小さくて読めなーい!」となる私にも、便利な小技です)。出典 : 音読の宿題の負担が大きな子や、あんまり楽しくできない子も、スマホ等の「ボイスレコーダー」で、録音してみてはどうでしょうか。字を読むのが苦手な子は、最初におうちの方に国語の教科書を読んでもらった録音を聞きながら、文字を目で追いつつ一緒に声に出したり、繰り返し録音を聞いたりすることで、読みや内容が頭に入りやすくなるかもしれません。また、自分で録音した音読の音声を、仕事や家事・育児で忙しいパパ・ママの時間があるときに、ゆっくり聞いてもらうこともできますね。更には、「ボイスチェンジャー」アプリなどを使って遊びながら読むと、単調でつまらない音読の宿題も、案外楽しくなるかもしれません(うちの長女も時々ラップ調で音読をこなしています)。出典 : 宿題で分からない問題などは先述のように、ササッとキカイで検索することもできますが、「ビデオ通話で友達に聞く」って手もあります。うちの次男などは、ZoomやLINEのビデオ通話で、友達と一緒にお互いの苦手分野を教え合ったり、持ち帰り忘れたプリントや、なくしたワークの解答を写真で送ってもらったりしながら、助け合って宿題やテスト勉強を片付けています。一種の互助会…?誰かと一緒だとやる気が出るタイプの子には、合っているかもしれませんね(ただし、いつの間にか、オンラインゲームが始まっていることも…)勉強は人に教えることで理解が深まりますし、なかなか1つの部屋で皆で密に集まりにくい今の状況下で、オンラインでも顔が見えれば人とのつながりが感じられるので、子ども達の精神面の安定にも役立っている気がします。まさに次世代スタンダードな勉強法でしょう。LDのある子は、現在進行形で進化しているのかも…?出典 : 現在、一般的には、LDがある子は、学習に関する脳の認知機能に「局所的・限局的」な障害がある、と考えられています。でも、これだけ「LDxAI」や先端技術との相性がいいと、私はそんな子達の凹の部分を、「ひょっとして、来るAI時代に向けて、人類最速でプラグインできるように進化しているんじゃないの?」なんて、つい想像してしまいます。とはいえ、まだまだ、LDがある子の学びや、進学・進級には、「紙」を始めとする数々のハードルが存在し続けているのも現実でしょう。それでも、AIの音声アシスタントさんだけでなく、周りの人達の理解とサポート、そしてLDのある子自身の「学びたい!」という強い意志があれば、現在進行形で道を切り開いていけると信じています。未踏の地で「最初の1人」になるのは大変だと思いますが、応援しています。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年08月03日小学5年生の宿泊学習は途中離脱こんにちは。加藤路瑛です。僕自身、感覚過敏の特性があることから13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。感覚過敏があると修学旅行でどんな困ったことが起きるのか、またどんな対策ができるのかを、僕の経験を通してお伝えします。Upload By 加藤路瑛小学4年生のとき、学校で宿泊学習があり、2泊3日で山に行きました。それほど高い山ではありませんでしたが、2日間とも山の中をトレッキングしました。僕は味覚過敏や嗅覚過敏があり、食べられるものが限られています。給食もほとんど食べられません。ですから、宿泊先のご飯は食べられるものがないだろうと不安でした。1日目のお昼は家から弁当を持って行き、夜から宿泊先の食事になります。もちろん事前に、親と担任も食事の件は話し合っていました。「無理に食べなくていいので、食べられるものがあれば」という感じだったので、それなら食べられなくても怒られないし、大丈夫だろうと考えていました。1日目の夜ごはん、2日目の朝ごはん、お昼ごはん……食べられるものがありませんでした。白米だったら食べられるのですが、混ぜごはんだったので主食も食べることができませんでした。問題は飲み物でした。1日目は家で水筒に水を入れていきました。2日目は、宿泊先で生徒全員の水筒に麦茶を入れてくれました。ですが僕は、麦茶は飲めません。ホテルを出てトレッキングしているときに、喉が渇いて水筒の水を飲もうとしたら…麦茶だということに気がつきました。1日目の夜、2日目の朝と昼も夜も、僕は何も食べられませんでした。そして、トレッキング中は水筒に入っている麦茶も飲めず水分補給ができませんでした。僕は栄養不足と脱水で気持ち悪くなり、動けなくなりました。保健の先生と相談し、親に迎えに来てもらうことになりました。夜、おそらく22時くらいだったと思いますが、両親が車で迎えに来てくれました。とてもほっとした記憶があります。車にのったら、僕が食べられるおにぎりや飲み物やお菓子がたくさん買ってありました。僕は夢中で食べました。とても美味しく感じました。水分もとれて元気になりました。途中で父が車を止めて、家族で外に出ました。見上げると、星がいっぱいキラキラ光っていて、こんなに空には星があるのだとびっくりしました。そして、父が「よくがんばった」と頭をなででくれました。小学6年生の修学旅行。去年の反省を活かそう!出典 : 小学6年生の修学旅行では、日光に2泊3日で行きました。もちろん、僕の心配事は食べ物についてでした。小学6年生のときの先生は、事前に親に連絡してきてくれました。母から聞いた内容は以下のような感じです。「5年生のときの宿泊学習の件、聞きました。まず、飲み物ですが、水が飲めるということなので、必要な分だけペットボトルを持たせてください。重いと思うので私が代わりに持ちます。次に食べ物ですが、食べられるパンを持たせてください。おなかが空いて困ることがあれば、教職員の部屋で食べられるようにします。」話を聞いて、こんなことができるんだ!とびっくりしました。この担任の先生は、以前、給食が食べられない僕に弁当持参を提案してくださったこともあります。食べられない僕のことを本当に考えてくださる先生でした。Upload By 加藤路瑛先生は修学旅行中の食事のメニューをすべて調べて、事前に教えてくれました。それを母が見ながら、「2日目のお弁当の焼きそばなら食べられかも」など、先生と打ち合わせてくれました。さらに、宿泊先のホテルの料理長と母が電話で話ができるよう取り計らってくれました。料理長は「お食事がご不安だとお聞きしました。できるだけ食べられるものをお出ししたい。」と言ってくれたそうです。母は、白米があれば大丈夫なことや、豚肉はしゃぶしゃぶにして、できれば焼肉のタレがあれば食べられることなど、僕が食べられる食材や調理方法を伝えてくれました。料理長の「安心して食事の席につけるようにします」という言葉がとてもうれしかったです。(担任も調理長も神対応です!)おかげで僕は、小学6年生の修学旅行では、“まったく食べられるものがない”という状況にはなりませんでした。水筒の中身も持参した水を入れて飲むことができました。お菓子も持っていっていたので、非常食のパンを出動させることはありませんでした。ちなみにパンは、チョコチップのついたスティックパンを持って行きました。こうして2泊3日の修学旅行は、親に迎えにきてもらうこともなく、楽しむことができました。中学1年生。入学オリエンテーリング。中学校では、入学式の翌日からオリエンテーリングで宿泊がありました。入学前の説明会で、オリエンテーリングで食事について相談したいと親が学校に言ったところ、「それなら養護教諭が担当します」と保健室の先生が相談にのってくれることになりました。この時点でも僕も親も感覚過敏という言葉を知りません。「味に敏感なため食べられるものがあまりありません。飲める飲料も限られているので、脱水にならないか心配です」と言うと、先生は「それなら栄養補助食品を持参されるのはどうでしょう?お腹が空いたとき、食べていただいて大丈夫です。それから、飲み物はホテルの自動販売機を自由に使って大丈夫です。まだ、担任が決まっておりませんので、決まり次第、担任には伝えておきます」と1分くらいの相談で解決しました。小学校の時は一大事件みたいな扱いだったのに、中学では、“たいした問題ではない”という感じで、僕はうれしかった記憶があります。実際、オリエンテーリングでは、食べられなかったら栄養補助食品もあるし、お菓子もあるし、なんなら自販機で飲み物を自由に買えるし、なんとかなりました。ただ、結局、オリエンテーリングでは体調が悪くなりました。当時は理由がわからなかったのですが、今、感覚過敏という知識を持って振り返れば、聴覚過敏による体調不良ではないかと思います。味覚過敏についての対策はできていたけれど、聴覚過敏についての対策はできていなかったからです。入学直後のオリエンテーリングだったので、「友達をつくろう、みんなと仲良くなろうと」生徒たちのテンションも高く、騒がしい状態が続いていました。その音の洪水にやられてしまったように思います。Upload By 加藤路瑛もう宿泊学習は行きたくない。出典 : 感覚過敏が強い人の宿泊学習・修学旅行で気をつけたいこと中学1年の秋にも宿泊学習がありました。海のフィールドワークというもので、海辺で生物をさがしたり、グループワークをするようなものでした。入学後のオリエンテーリングと同じような感じで、念のため栄養補助食品を持って行きました。飲み物は自動販売機が使えるのも同じでしたので、困ることはありませんでした。この頃は、教室の騒がしさで体調が悪くなることが多く、保健室に駆け込むことが多いころでした。保健室の先生から「聴覚過敏」という言葉を聞き、自分の体調不良が聴覚過敏からくるものではないかと調べているころでした。宿泊学習でも、やはり具合が悪くなりました。海でフィールドワークをしているときは問題ないのですが、ホテルの自由時間や食事の時間は、音の洪水で頭が痛くなって、気持ち悪くなるのです。中学2年の4月。また2泊3日のオリエンテーリングがありました。宿泊学習のあの雑踏にいるような騒がしさを思い出し、「行きたくないな」と思いました。食べるものも限られてしまうので、気持ちが乗りませんでした。親にオリエンテーリングに行きたくないことを伝えました。オリエンテーリングを欠席することのメリット、デメリットも話し合いました。メリットは、「とりあえず行きたくないので気持ちが安定する」です。話し合った結果、デメリットは「学校での思い出が1つ減ること。オリエンテーリングの話題に入れないこと」だと思いました。僕は、思い出が1つ減ろうが、その会話に入れないことがあろうが、それよりも、宿泊学習に行くストレスの方が高いと思いました。親には、自分で先生に相談するようにいと言われたので、自分で先生にオリエンテーリングを欠席することを伝えました。1年生の3学期は、オリエンテーリングの班決めや準備の時間もあるので、当日は欠席してもよいが、準備には参加するようにと言われました。自分が行かないと分かっていて、班のメンバーにも伝えている中で、準備に参加するのは多少の罪悪感や面倒臭さがありましたが、オリエンテーリングを欠席することに後悔はありませんでした。これまでの宿泊学習を振り返って思うことは、まず、子ども本人は、感覚過敏のある自分が宿泊学習に行くことによって、どんな困った状況が起きるかについて、想像することが難しいので、親や先生が起こる状況を想定して対策を考えて欲しいということです。また、「1日、2日くらい我慢すればよい」という考え方も危険だと思います。僕は小学5年生の宿泊学習で、丸1日食事をとれず、トレッキング中に水分を取れなかったことで具合が悪くなりましたが、低血糖や脱水などで生命に関わる可能性もあったのではないかと思います。家や学校とは違う環境で逃げ場もありません。心配だと思うことは、1つずつ先生と親と生徒で確認していくのがいいと思っています。そして、修学旅行などは学校行事の中でも大きなイベントです。「思い出のために」「みんなと一緒に」という気持ちを親や先生が子どもに押し付けているかもしれないと、考えてみてもらいたいと思います。小学生時代の僕は「学校行事は参加するもの」と思っていました。休むという選択肢を持っていませんでした。僕は中学1年の終わりに、「宿泊学習は行かない」という選択をしました。クラスの話題に入れなくなっても、学校の思い出が少なくなったとしても、それでもいいと思えるようになりました。最後の切り札として「行かない」という選択肢があること、たとえ、一つの行事に参加できなかったとしても、そのことで損なわれるものは思っているほどはないことをみなさんに知っていただきたいです。出典 : 小6の時の先生や宿泊先の神対応が素晴らしいですね。また、必要な支援や取り組みのメリット・デメリットをしっかりと自分で考えられるようになった成長にも目を見張ります。このように、困っていることを整理して皆で相談できるようになると良いですね。(監修:児童精神科医 三木 崇弘先生)
2021年07月25日発達凸凹男子が、授業参観で初めてほめられた日こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。小学校時代は「ワガママ」「協調性がない」と見られて、実年齢より精神的に幼いように扱われることが多かった、うちの長男。でも、中学校に進学して出会った外国人の先生の視点からは、同じ1人の子が全く違う姿に映ったようです。今回のコラムは、ある授業参観日での目からウロコのエピソードと、そこから私が気づいたことをお伝えしたいと思います。出典 : 授業参観日…それは、それまでの私にとって、正直憂鬱な学校イベントに他なりませんでした。だって、小学校時代のうちの長男ときたら、低学年ではキョロキョロよそ見したり、足をモゾモゾしたり、消しゴムを三角定規でみじん切りにしたり…。そして、机の上のピタゴラ装置からうっかり鉛筆を落としては、ガタガタと1人で忙しそうにしていたので、私は少々肩身が狭かったのです。…あ、こっち見てニッコニコで手を振っている。ヤ・メ・テ〜!高学年では、じっと座ってノートを取れるようになったものの、実験やグループワークでは「余計なことをしないのが、自分ができる最大の協力」だと学習してしまい、班行動の蚊帳の外で終始つまらなそう…。本来は好奇心とアイデアいっぱいの長男の、そんな大人しい姿を見るのは親として忍びなくもありました。そして、授業終わりの休み時間などに、担任の先生から「あ、〇太郎くんのお母さん!ちょうど良かった。ちょっとお話したいことが…」なんて声をかけられると、ギクリとしたものです。ところが、私立中学に進学した長男の、ある日の授業参観日のこと。長男の学校は「授業参観週間」があり、その中でならいつ参観してもいいので、長男が「外国人の先生の英語の授業が超楽しい」というから、その時間に合わせて授業を見に行くと…。あの長男が見違えたように、活き活きと挙手をして積極的に発言し、グループワークの時間も皆の意見を不器用ながらもまとめて、リーダーシップの欠片を発揮しているではありませんか!そして、授業が終わると、外国人先生が私のほうに”Hello!"とフレンドリーに近づいてきたので、過去の経験から、思わず身構えそうになりましたが、私が長男の保護者だと分かると、とても親しげに嬉しそうに、先生は長男のことをほめ始めました。出典 : 「彼は素晴らしいね。自分の意見がしっかり言えて、とても大人びていますね」なんとか聞き取れた外国人先生のそんな言葉に、私は我が耳を疑いました。…え!?人違いでは?小学校時代、長男は「ワガママ」「協調性がない」と見られて、同級生達より精神的に幼いように扱われることが多かったので、私は「うちの長男は口は達者だけど、精神面では凸凹の凹があるのかな?」と、思っていました。だから、彼が「大人びている」なんて評されたのは、私の育児史上初の出来事だったので、わが子がほめられた嬉しさよりも、驚きのほうが大きかったのです。でも、母の目から見れば、長男は中学で突然精神的に急成長したわけでもなく(多少は、まあ)、相変わらずのマイペースな宇宙人ぶりで、正直、小学校時代と中身はほぼ同じ。これは一体どういうこと!?その後も、外国人先生は、長男が休み時間などに積極的に話しかけて来て、ゲーム好きな先生と身振り手振りを交えた英語で楽しく雑談をしていることや、長男がどんどん意見を言ってくれるので、授業がしやすいことなどを教えてくれました。私はそこで、フと気がついたのです。「これは、長男自身が変わったのではなくて、この外国人の先生のものの見方や価値観が、小学校の日本人の先生方とは180度違うから、長男の個性をとても好意的に受け止めてくれているんだ」と。文化や価値観の違いで、短所は長所になる出典 : 以前私は、海外在住歴のある知人から、「外国では、はっきり意思表示しなかったり、周りを見ながら自分の態度を決めるのは、”幼稚”だと思われる」と聞いたことがあります(お国にもよるでしょうが…)。確かに、私が見学した、ある小学生向けの体験講座では、遠慮がちな子ども達の態度に、外国人講師の方が「周りを見ないの!自分が思ったことを言えばいいの!」って、少々ムッとされていたことも。日本だと、自己主張せずに周りに合わせることは、「我慢強い」「協調性がある」「大人の対応」等と評価されることが多いでしょう。実際、小学校時代の長男も、たまには先生からほめらることもあったのですが、それは大抵「よく我慢したね」「苦手なことをよく頑張ったね」といった内容がほとんどで、辛抱強く周りとの衝突を避けられたら「〇太郎君、成長しましたね」と喜ばれました。そして長男は、授業中に元気よくトンチンカンな質問をしたり、「おれはこう思う!」と自分の意見を強く主張したり、あるいは他の人の意見に異議を唱えたりすると、失笑されたり、少々困惑されることが多かったようで、だんだんと発言自体をしなくなっていきました。ところが、中学の外国人先生の目から見れば、多少的外れな意見でも黙っているよりはずっとマシで、はっきり自己主張したり、人と違った意見を言えることのほうが、「大人びている」ように映るのでしょう。こういった空気感の教室では、長男は自分の個性を無理に抑え込む必要はなく、失敗を恐れずに遠慮なく発言できるので、授業参加が楽しくなったのだと思います。この日の出来事で、「その環境の文化や価値観、相手のものの見方の違い次第で、短所は長所になるのだ」と、私は改めて実感しました。出典 : ただし、私は日本式の価値観や学校教育を批判したいわけではありませんし、主に欧米的な外国式の価値観による教育が、全てにおいて「優れている、進んでいる」とまでも思いません。なぜなら、日本式の我慢強さや協調性の豊かさに価値を置いた、和を重んじる文化があるからこその、利点やいい面もたくさんあるからです。例えば、日本では、新型コロナウイルスの感染拡大が、都市部の人口密度の高さや高齢化などの不安要素が多い中でも、大部分の諸外国に比べて、これまでかなり抑えられてきたといえるでしょう。それは、「他人や家族に迷惑をかけてはいけない」と、一人ひとりが地道にマスク・手洗いを続け、大部分の人が自分勝手な行動を控えて、(暗黙を含む)ルールや順番を律儀に守って社会的な混乱や衝突を避けてきたことが、大きく貢献しているからではないでしょうか。こういった規律の高い国民性は、幼児教育・義務教育の間から、長年に渡って園・学校での集団行動等を通して、根気よく地道に培われてきた成果だと私は思います。現在高校生になったうちの長男も、以前は「日本は同調圧力が強くてオレには生きづらいから、将来外国で働きたいな〜」なんてボヤいていたのですが、コロナ後の経験を通して、日本の清潔で衛生的で、安心・安全度の高い環境の価値を見直したようで、「やっぱり、地元で進学・就職しようかな」なんて思い始めています。ですから、「どちらがより優れているか」ではなくて、ただ単に「文化や価値観の違い」によって、全く同じ1人の子の個性の見え方・受け止められ方が大きく変わってくる…というだけなのではないでしょうか。たとえ今、わが子が学校でほめられなくても出典 : ただ、今置かれている環境とその子の個性との相性次第で、周りから好意的・肯定的に受け容れられることもあれば、"問題児”として映ってしまうこともあるでしょう。ですから、わが子が学校でほめられる経験が少なかったり、集団行動が苦手で注意や叱責を受けやすいお子さんを育てている方は、お子さん自身と同じように、子育てに自信をなくしがちかもしれません。「協調性」や「我慢強さ」に価値を置く環境の中では、のびのびと個性を発揮できないお子さんも少なからずいることでしょう。でも、それは「1つの価値観」の中での「1つの見え方」に過ぎないのだと思います。たとえ、今いる場所でわが子がほめられなくても、環境次第・相手のものの見方次第で、その子の短所が長所に変わる可能性はいくらでもありますから。きっといつか、お子さんの素晴らしい個性のいいところを分かってくれる人や、その子に合った環境に出会えるはずです。それまで凸も凹も、大事に大切にされますように…。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年06月11日特別支援教育コーディネーターとは?特別支援教育は、発達障害を含めた障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けて、校内外の関係機関のネットワークやチームワークによって一人ひとりのニーズに合わせた支援を実現するという教育の考え方です。改正学校教育法の施行に伴い、平成19年4月1日より全国の学校・園で特別支援教育が本格的に実施・推進されています。特別支援教育コーディネーターは各学校や園に配置され、特別支援教育の推進のため、主に以下の役割を担っています。・校内委員会の企画・運営・関係諸機関・学校内関係者との連絡・調整・保護者からの相談窓口特別支援教育コーディネーターは、教諭が兼ねています。小学校・中学校の場合は担任をしている先生、養護教諭の先生、特別支援学級の先生が、こども園・幼稚園の場合、役職上の主任である教諭が特別支援教育コーディネーターを担当することが多いようです。自分の学校や園における特別支援教育コーディーネーターがわからない場合、学校や園に問い合わせてみてください。特別支援教育の推進について(文部科学省)特別支援教育コーディーネーターの具体的な仕事内容は?出典 : 特別支援教育コーディネーターは、保護者や関係機関に対する学校の窓口として、また、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担う者として位置付けられます。(1)学校内の関係者との連絡調整・校内委員会の推進特別支援教育コーディネーターは校内委員会(※)の企画・運営を担い、協議を円滑にできるようにしていきます。また、支援を必要とする児童・生徒の情報を収集し、必要に応じて特別支援教育支援員 、スクールカウンセラー等、学校内の専門スタッフとつなげる連絡調整役を担います。保護者や担任の先生とともに具体的な支援内容や方針の確認等を行うケース会議を実施したり、児童・生徒の個別指導計画を作成し、実施、評価、改善を行う役割も担います。※校内委員会:児童生徒の担任の先生のほか、校長、教頭、学年主任等、養護教諭などで組織され、効果的な指導や対応に向けて情報を共有し、全校的な支援体制をとるもの(2)外部の関係機関との連絡調整特別支援教育コーディネーターは、外部の専門家チームや、医療・福祉の関係機関等との連絡調整が必要になった場合の窓口となります。地域の医療・福祉の関係機関等やそれらが提供している支援内容について情報を収集・整理し、必要に応じて教員や保護者へ情報を伝えます。(3)保護者に対する相談窓口保護者に対する学校の相談窓口となり、保護者を支援します。併せて、通常学級の中で教育上特別の支援を必要とする児童・生徒に効果的な教育的支援を行うために、対象児童の保護者だけでなく全ての保護者に対して特別支援教育の重要性についての理解の推進を図っていきます。(4)担任への支援・進級時の引き継ぎ調整担任の先生に対して相談に応じたり、助言したりするなどの支援を行います。また、児童・生徒の進級時には、新旧の各学級担任間で教育上特別支援を必要とする児童などに対する指導方針が異なることのないよう、校長の指示のもと、その調整を行います。(5)巡回相談員や専門家チームとの連携巡回相談員及び専門家チームとの連携を図り、支援内容の改善につなげていきます。特別支援学校においても特別支援教育コーディネーターは、保護者や関係機関に対する学校の窓口、また、学校内の関係者や福祉、医療等の関係機関との連絡調整の役割を担います。加えて、各学校の教員の専門性や施設・設備を活かし、地域における特別教育に関する相談を受けるセンター的役割があります。地域の小・中学校への支援や、地域内の特別支援教育の核としての関係機関との連絡調整を行い、ネットワークの構築や協力関係を推進するための情報収集・情報共有を行います。特別支援教育コーディネーター実践ガイド(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 )発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン(文部科学省)保護者から相談してもいいの?合理的配慮を受けたいときは?出典 : 特別支援教育コーディーネーターには、保護者からの相談窓口を担う役割があります。子どもの学校の様子が気になるときや支援内容を相談したいとき、担任の先生以外にも、特別支援教育コーディーネーターに直接相談するという方法があります。通常学級に通っていても、発達の気になる子どもへの配慮や支援、特別支援学級への移籍についての内容等も特別支援教育コーディーネーターに相談することができます。また「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」(文部科学省)には、以下のような記載があります。特別支援教育コーディネーターは、各学級担任とともに、児童本人や保護者等から、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明を受けるなど、合理的配慮の提供に当たっての相談窓口としての役割も果たします。特別支援教育コーディーネーターは保護者から合理的配慮についての相談を受けると、その内容を担任の先生へと共有し、配慮を受けられる環境づくりを助言することになります。合理的配慮を受けたいが担任の先生に相談しづらい、どのように伝えるべきかわからない、などあれば、特別支援教育コーディネーターに最初に相談してみると良いでしょう。まとめ出典 : 特別支援教育コーディーネーターは保護者や関係機関に対する学校の窓口として、また、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担い、子どもたちのニーズに合わせた支援をサポートします。発達の気になる子に対する支援や合理的配慮について、保護者から相談を受ける窓口でもあるため、必要に応じて相談してみてください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年05月30日ロゼレムとは出典 : ロゼレムは、不眠症で入眠に難しさを抱えている成人に処方される睡眠改善薬です。不眠症とは、睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が現れる病気のことです。不眠といっても症状はひとつではなく、4つのタイプに分けられます。眠りに就くことが難しい「入眠障害」、寝ている途中で何度も起きてしまう「中途覚醒」、朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに睡眠の質が悪く休んだという実感が得られない「熟眠障害」です。睡眠に問題があると、日中に眠くなってしまって勉強や仕事に集中できないなど、日中の活動にも影響を与えてしまいます。さらに、発達障害のある人は幼少期から睡眠に問題を抱えることが多いことが分かっています。ADHDのある人の85%が日中の眠気か睡眠に問題を抱えていることも報告されています。睡眠の問題はADHDのある人だけでなく、自閉スペクトラム症のある人も同様に睡眠の問題を併せ持つ場合が少なくありません。発達障害のある人の睡眠問題には、体内で分泌されるホルモン「メラトニン」が特に有効であると考えられており、ロゼレムはメラトニンと同じ働きで睡眠を改善する効果があります。 Young Rosalia Yoon et al.(2013). Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences. Sleep Med . 14(7):648-55.厚生労働省『e-ヘルスネット不眠症』どのような仕組みで効果があるの?それではメラトニンは、睡眠にどのように作用するのでしょうか。睡眠には2つのメカニズムが関わっています。ひとつめは「脳が疲れたから眠くなる」メカニズムです。起きて活動すればするほど脳は疲れ、老廃物の一種である睡眠物質が蓄積されていきます。この睡眠物質がたまってくると、脳神経に働きかけて催眠鎮静作用が発揮されて眠くなるのです。もうひとつは「夜だから眠くなる」メカニズムです。私たちは普段寝ている時間になると、自然と眠くなりますよね。これには、脳の視床下部の視交叉上核というところに存在する体内時計が関わっています。夜になると体内時計が指令を出すことで、メラトニンが分泌されます。メラトニンが分泌されると、体の内部の体温や血圧が少しずつ下がり、眠りやすい状態に導き睡眠を促してくれるのです。反対にいつもと同じような時間に目覚めるのも、この体内時計の働きによるものです。体内時計の指示でメラトニンの分泌が止まって体の内部の体温が少しずつ高まり、一定レベルを超えると目覚めます。つまり、メラトニンが分泌されると自然な眠りを誘い、メラトニンの分泌が止まると目覚めるようになるんですね。このようにメラトニンは睡眠に大きく関わっていることから、睡眠ホルモンとも呼ばれています。人は目覚めて朝陽を浴びると体内時計がリセットされ、目覚めから14時間~16時間くらい経つと、体内時計が指令を出してメラトニンを分泌し、自然な眠りにつくことができます。ところが、光を発する電子メディアの見過ぎなど何かの理由でこのメカニズムがくずれてしまうと、睡眠に問題が生じて不眠症を引き起こしやすくなってしまうのです。メラトニンは光によって抑制されます。ロゼレムの有効成分ラメルテオンは、メラトニンを受け取るタンパク質の「メラトニン受容体」にくっついて作用し、メラトニンと同じ働きをします。つまりロゼレムを服用すると、体内時計の針を調節することができるわけです。たとえば望ましい就寝時刻よりも前にロゼレムを服用すると、体内時計の針が早まって体内での夜が早く訪れます。結果として、いつもよりも入眠時刻が早まり、眠りにつくのを改善します。眠りのリズムを整えることで睡眠の問題を改善するのです。武田薬品工業株式会社『体内時計と睡眠の仕組みメラトニンとは』ロゼレムの使用方法・用量は?・用量:1錠(ラメルテオンとして1回8mg)・用法:1日1回就寝前に経口投与・成人※監修者注:通常15歳以上からの適応となるが、18歳以上からが望ましい以下に該当する人には、ロゼレムは使用できません。・ラメルテオンに過敏症となってしまったことのある患者・高度な肝機能障害のある患者(肝臓で代謝されるため、有効成分の血中濃度が上昇してしまい、作用が強くあらわれる恐れがある)・フルボキサミンマレイン酸塩(SSRI)を服用している患者(販売名:ルボックス、デプロメール)また使用するにあたっての注意事項は、以下の3つです。・服用開始から2週間後をめどに、効果があるかを医師が確認します。効果が認められない場合には、服用を中止するかどうか医師が判断することとなっています。・服用は、必ず就寝前です。寝たい時間の直前に服用することで効果がみられます。なお、少しだけ寝たら起きて仕事をするなど、途中で起きる予定のある場合には服用を控えます。・服用する際は、食事と同時・食事直後は避けることです。食事と同時、もしくは食事直後にロゼレムを服用してしまうと、有効成分の血中濃度が下がり効果があまり出なくなってしまうからです。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構『ロゼレム錠8mg』ロゼレムの副作用と注意点出典 : ロゼレムは、国内で販売されてから一定の期間が経過しているため、その安全性と有効性を確かめる再調査が行われています。ロゼレムを1回(ラメルテオンとして8mg)投与された3,223例のうち、109例(3.4%)に副作用が認められました。確認された主な副作用は、傾眠(1.2%)、浮動性めまい(0.7%)、倦怠感(0.3%)です。ロゼレムを服用した翌朝以降にも、薬剤の影響が残る場合があります。眠気、注意力・集中力、反射運動能力が低下する可能性があるため、車の運転など危険を伴う作業は行わないようにすることが必要です。海外でアナフィラキシーショックが起きたとの報告があります。出現回数がとても低く極めてまれであることから、頻度は不明ではあるものの注意が必要です。服用後に、じんましんや血管が浮き出てくるようなことがあれば、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。他の睡眠薬とどう違うの?睡眠薬には、大きく分けて3つの種類があります。1.ひとつめは、先ほど説明したひとつめの睡眠のメカニズム「脳が疲れたから眠くなる」に働きかける薬です。これまで多く使われてきた薬の多くは、このメカニズムを利用しています。高い効果が認められる一方で、依存性があることから長期使用では注意が必要と言われています。2.ふたつめは、今回ご紹介するメラトニンによって体内時計を調節することで、入眠の困難を改善する薬です。ロゼレムの他には、「メラトベル」があります。メラトベルは、2020年に発売された、6歳から15歳までの神経発達症のある子どもに対して処方される入眠改善です。メラトベルは、その有効成分がメラトニンそのものである一方、ロゼレムはメラトニン受容体作動薬であり、メラトニンそのものではありません。 一般に受容体作動薬は小児には適用されません。3.最後は、睡眠と覚醒を調整する神経伝達物質「オレキシン」を受け取るタンパク質である「オレキシン受容体」に作用する薬です。過剰に働いてしまっている覚醒を抑えることで、睡眠を促します。比較的早くに効果があらわれ、依存性は少ないと考えられています。鹿児島市医報『ベンゾジアゼピン受容体作動薬について』(2020)59(10): 7-8まとめ今回は、不眠症で入眠に困難のある15歳以上の成人に対して処方される睡眠改善薬「ロゼレム」をご紹介しました。日本で発売されてから10年以上にわたって使用実績のある薬で、再調査でもその安全性と有効性が確認されています。ロゼレムは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの受容体に働きかけることで、体内の時計の狂いを調節して睡眠リズムを整えます。薬の服用にあたっては、生活習慣を改善させることもとても大切です。
2021年05月07日発達障害・感覚過敏のある子は、電車通学のハードルが高過ぎる件出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムは、通学電車にまつわるお話を…。発達障害&グレーゾーンの子や、感覚過敏のある子は、電車通学…特に満員電車での負担がとても大きいでしょう。なぜなら、・感覚過敏のある子の身体接触等の苦手さ問題・ADHDのある子のうっかり忘れ問題・ASDのある子の予測不能な事態でのパニック問題…などがあるために、ハードルが特に高いのです。これらの問題は、決して大げさではなくて、せっかく受験で希望の学校に合格しても、「通学電車の負担が大きすぎて、不登校になったり、自主退学や転校を考える生徒さんもいる」と聞くほど。(実はうちのパパも若いころ、電車通勤の負担から大企業を辞めて、研究の道に入り直した人なのです)ですから、うちの長男・次男の中学受験では、最初の学校選びの段階で本人と相談しながら、例えどんなに素晴らしい学校でも、通学に1時間以上かかる学校や、複雑な乗り換えや混雑路線を使わざるを得ない学校などは、予め志望校リストから除外してしまいました。そして無事、長男・次男共に、ドア・ツー・ドアで1時間以内・乗り換え1回の私立中高一貫校に入学できたものの、小学校を卒業したばかりの当時若干12歳で、満員電車での通学に挑まなくてはなりませんでした。そこで、うちで親子で行ってきたさまざまな工夫や対策など、通学電車にまつわる諸問題の乗り越え方を、新型コロナの影響下での通学状況の変化も踏まえつつ、ご紹介していきますね。電車の使い方と身体接触に徐々に慣らす!出典 : うちでは、まず、「電車自体に慣れる」ところから、スタート。それまで、うちは地方在住なので普段の移動は車か自転車中心で、電車は年に1度の祖父母宅への新幹線での帰省程度でしたから。そこで、小学生の受験勉強時代から、学校見学や体験授業参加の際には、「実際の通学ルート」を使うことに。そして、本人用の交通系ICカードをつくり、券売機でのチャージの仕方、基本的なマナーなど、”いろはのい”から時間をかけて教えました。基本に慣れたら、次は、時間の余裕があるときに、トラブル時などを想定して、ワザと降車駅を乗り越してみたり、途中駅でトイレを借りたり、別の路線で遠回りして帰ってみたりも…。この際、「こういう時、どうすればいいと思う?」などの声かけで、なるべく本人が自分で判断できるようにして、それでも難しいときには、「駅員さんに聞いてみようか」「この場合は、こうすればいいんだよ」など、具体的に”困ったときには、どうすればいいか”を教えました。こうして、受験シーズンくらいには、電車にかなり慣れたので、「今日は〇太郎についていくから、かあちゃんを〇〇中学まで連れてって」と、(多少間違っても)なるべく手出し口出しせずに、見守るようにしました。出典 : そして、最後の難関、朝の通学時間帯の満員電車!志望校の合格後、長男と試しに朝のラッシュ時に一緒に電車に乗ると、今までとは別次元の混雑ぶり。身体接触が苦手な長男は「人が多すぎて、乗換駅で降りられない!!」「押されてどこにも掴まれない…」「いろんな匂いでキモチワルイ」とパニック寸前の涙目に。やはり、かなりハードルが高かったようです。そこで、本人と作戦会議をし、「満員電車よりも早起きのほうがマシ!」という結論に…。学校に門が開く時刻を聞き、朝は一番乗りで登校することにしました。ピーク時よりはかなりマシですが、それでも結構混んでいるので、入学後の最初の一週間ほどは、私も一緒に電車に乗って、「今日は一駅手前まで」「今日は乗換駅まで」と、様子を見ながら日毎に付き添う距離を短くしていき、最後は最寄り駅から見送るだけに。つまり、うちでは、親は「ステップを踏んで徐々に慣らし、だんだんと手を離す」ことで、子は「それでも無理なことは、人に相談し、できる工夫する」ことで、なんとかしました。ちなみに、3年後の今では、長男も混雑に慣れ、登校時間もずるずると遅くなってきましたが、「コロナのことで、ピーク時も多少人が減ってる気がする」とのこと(確かに、近隣地域ではマイカー・自転車通勤も増えています)。マスク着用の上、車内の換気もされているので、匂いへの負担も減ったよう。また、学校側も感染が拡大している時期は、オンライン授業や分散登校など、柔軟に対応してくれるので、潔癖で心配性の次男もホッとしている様子です。うっかり忘れの自覚と、持ち物の工夫と習慣化Upload By 楽々かあさん身体接触の次に懸念されたのは、うっかり屋の長男の電車での「忘れ物・落とし物」と、降車駅での「乗り過ごし」問題です。そこで、長男の通学用のリュックは、図のようになりました。元々、「よくなくすものには、ヒモをつける!」が、うちの忘れ物対策の鉄則。特に、定期とスマホと財布と家の鍵などの大事なモノは、フックのついたスプリング式のコード(通称「びょんびょん」。100円ショップのキーホルダーコーナー等で入手可能)をまとめ買いし、それぞれつけるように習慣化(※フックがかからない箇所は、カラビナやリング、バッグのタグなどと組み合わせる)。たったこれだけで、長男は今までスマホも定期も、一度も落としたことはありません(「びょんびょん」だらけで、年頃の子には少々カッコ悪いかもしれませんが、背に腹は変えられません!)また、今では長男も"自分はよく忘れる"自覚があるので、電車を降りるときには、座っていた座席を目視したり、制服やリュックのポケットなどを手触りで毎回ポンポンと確認したりする習慣をつけているのだそう。出典 : そして、「乗り過ごし」対策も、あまりに当たり前のようですが、長男自身が「自分で、気をつける!」ことで、対処しました。ここで大事なのは「どうすれば、気をつけられるか」を、具体的に考えることです。長男は、"自分がかなりうっかりしている"ことも十分自覚しているので、例えば、通学中にスマホで好きなサイトや動画を見ていると、つい、目的地の駅で降り忘れてしまうことをよ〜く知っています(実際、何度かやらかしました)。そこで、シンプルですが、学校の最寄り駅の数駅手前の大きな駅で、人が沢山乗り降りするので、「その駅になったら、スマホをやめて、アナウンスを聞く」ように習慣化しているそうです(これだと、視覚・聴覚を使っていても気づくとのこと)。スマホの乗り換え案内系のアプリにも、位置情報から降車駅が近づいたら通知やバイブレーション機能で知らせてくれるものもあるので、長男と似たようなお子さんは、自分が気づきやすく習慣化しやすい方法を見つけるといいでしょう。また、親の私のほうは、最初のころは位置情報アプリなどを使って、学校に無事到着したり、設定した範囲から長男が出たら通知が届くようにしたりもしました。ここでの大事なポイントは、自分(我が子)の特徴を自覚して工夫し、それを「習慣化する」ことだと思います。不測の事態には、事前知識と「こうすれば、大丈夫」という対処法!出典 : そして、「いつもと違うこと」「予測不能なこと」が苦手な子は、"電車が予定通り動かない”ことなどに遭遇すると、強い不安やストレスを感じたり、場合によってはパニックに陥ることもあるでしょう。でも、ご存知のように、電車の運行は、事故や故障などの他、急なゲリラ豪雨や、大雪、台風、地震などの気象条件や自然災害などによっても、突然止まったり、ダイヤが乱れたりすることがあります。うちではまず、「電車には、こういう可能性もある」と、予め、一緒に電車に乗っているときや、テレビのニュースなどを見ながら話し、さまざまなケースを”知識として”教えました。事前知識が少しでもあれば、実際にアクシデントが起こったときの衝撃がかなり違いますから。そして、前出の「通学リュック図」にあるように…・財布の中に非常用の千円札と保険証のコピー、自宅の連絡先・サバイバルセット(応急手当、ビニール袋、非常用トイレ、他)・晴雨兼用折りたたみ傘・頓服薬(頭痛・腹痛用など)…などを、常時入れっぱなしで「もしも」に備えています。それに加えて、特に役立った"不測の事態"への対策は、長男自身による「防災訓練」でした。出典 : 実は長男は、小さなころから「地震怖すぎる」等と、自然災害に対する恐怖心が人一倍強かったことで、逆に知識が豊富になり、日頃から防災意識が高く、何かと災害対策を実践するようになりました。その一環で、中1のあるときに、地震などで帰宅困難になったときを想定して、「おれ、1回、学校から家まで歩いて帰ってみる!」と言いだし、午前授業だけの日の帰りに、3時間ほどかけて徒歩帰宅しました(以来、年1度くらい、徒歩帰宅しています)。これで、「もし電車が止まっても、歩いて帰ればいい」と実感でき、かなり安心できたようです。そして実際に、この経験が大活躍しました。昨年の春のコロナ休校明けに、次男がようやく中学初登校できた日のこと。なんと、帰りの電車が、突然のトラブルで急に全線ストップしてしまいました。学校の最寄駅付近で、周囲が大混乱の中、合流して私に電話をかけてきた長男と次男によれば、「タクシー乗り場はすでに長蛇の列で無理そう」とのこと。でも、私が「もうすぐ長女が小学校から帰ってくるから、スグには車で迎えに行けない」と伝えると、「じゃあ、歩いて帰るか、〇次郎!おれ、道分かるから、大丈夫〜」と、長男は慌てず騒がず、次男と一緒に歩き出しました(乗換駅から復旧していたので、そこから通常ルートで帰宅)。やがて、「ただいま〜」と、ぐったり次男と共に、ケロリとした顔で無事帰宅した長男を見て、「あの〇太郎が、随分パニックに強くなったなあ」と、私は彼の成長を頼もしく感じました(ちなみに、現在は「痴漢冤罪怖すぎる」と、ネットで誤解されない対処法を検索しまくっています)。予測不能な事態も、事前の知識と、「こうすれば、大丈夫」という対処法が分かっていれば、案外落ち着ける場合も多いのではないでしょうか。多様な通勤通学方法の普及で、下がるハードルも…出典 : 現在、新型コロナウイルスによる影響が長期化する中で、発達障害&グレーゾーンや、感覚過敏のあるお子さんは特に、学校・日常生活の中での負担や不安・ストレスを感じる場面も多いことでしょう。その一方で、テレワークやオンライン授業の推進、通勤通学時間の分散化、マイカー通勤や徒歩・自転車通学の増加などによって、多様な通勤・通学方法が社会全体で模索される中で、高かった電車通学のハードルが多少下がってきた部分もあるように思います。これを機に、多様な子どもたちの通学の負担が少しでも減って、本来の学校生活に集中できるように願っています。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年04月20日放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)とは?保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与え、その健全な育成を図るものです。該当施設は「放課後児童クラブ」「学童クラブ」などと呼ばれ、子どもたちが放課後や長期休みを過ごします。子どもたちは遊びや保育の知識のある支援員に見守られ、友達と遊んだり宿題をしたり、おやつを食べたりして生活します。施設によっては、ものづくりや料理、ハイキングなどさまざまなイベントを行うところもあります。全国に26,625か所あり、登録児童数は1,311,008人(令和元2年7月1日時点)です。公営の施設と民営の施設があり、具体的なサービス内容や過ごし方は施設によって異なります。放課後児童健全育成事業について(厚生労働省)令和2年(2020年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(厚生労働省)放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用できる人は?出典 : 児童福祉法第6条では「小学校に就学している児童」であって、「保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」が、放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用できると定められています。学年については、平成27年度から対象児童が6年生まで拡大されたことにより、小学校1〜6年生まで利用することができます。具体的な利用条件については各市町村が定めているので、お住まいの自治体のHPで確認する必要があります。例えば広島県広島市の場合、HPに以下のように細かく記載しています。次の(1)~(3)までの条件を全て満たす場合に対象となります。(1)広島市内に住所を有している児童(2)小学校に在学している児童(3)保護者及び同居する親族(18歳未満の者を除く。以下「保護者等」という。)が次のいずれかの事由に該当することで、家庭において適切な保護を受けられないことが常態であると認められる児童ア保護者等が、就労のため、1週間のうち概ね4日以上(月16日以上)、午後5時頃まで家庭にいないこと。イ保護者等が、疾病又は負傷の状態にあるか障害があること。ウ保護者等が、疾病又は負傷の状態にあるか障害がある親族等を、常時介護していること。エ保護者等が、出産予定日前8週間(多胎妊娠の場合は14週間)に当たる日から出産日後8週間に当たる日までの間(以下「産前産後期間中」という。)であること。オ保護者等が、大学・専門学校等へ通学中であること。カその他児童を保護できない特別の事由があること市町村によってはHPに利用条件の詳細を記載していない場合もあり、また、民間学童では独自の基準を設けている場合もあります。放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用対象にあたるかどうかは、ご自分の市町村や周辺のクラブに問い合わせてみると良いでしょう。放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用方法出典 : ①問い合わせ概ね9月か10月ごろ、市町村や各施設で次年度の入室希望者の募集が始まります。募集開始時期は市町村によって異なるので、HPなどで情報をチェックしておく必要があります。市町村によっては年度途中からの入室申し込みを受け付けている場合もあります。申し込みをする際、まずは市町村、もしくは利用する可能性のある放課後児童クラブ(学童クラブ)に直接問い合わせて、空き状況や必要な手続きを確認しましょう。地域の放課後児童クラブ(学童クラブ)一覧や問い合わせ先は、市町村のHPにまとめられていることがほとんどです。②入室申し込み・選考入室申込書や保護者の勤務証明書等、放課後児童クラブ(学童クラブ)から指定された書類を期限までに提出します。施設によっては、入室説明会を行うこともあります。定員を超えると選考が行われる場合もあり、その選考基準も市町村によって異なります。また、学年があがるときの継続手続きや退室手続きも施設によって異なるため、直接確認する必要があります。③利用決定・手続き利用が決定した方向けに、説明会への出席や書類の提出が案内されます。開所時間は施設によって異なりますが、概ね、平日は学校が終わったあと(14時や15時ごろ)から19時ごろまで、長期休み等は朝8時や9時ごろから19時ごろまで開室しているところが多いようです。小学校から放課後児童クラブ(学童クラブ)までの送迎を行うところもあれば、子どもたちが自分で下校・登室するところもあります。施設によって方針が異なるため、気になる方は問い合わせの際に確認すると良いでしょう。放課後児童クラブ(学童クラブ)から自宅までは保護者が送迎を行うことが多いですが、保護者の希望があれば子どもが一人で登帰室できる場合もあります。放課後児童クラブの利用料は市町村や施設によって異なりますが、数千円の月額を徴収しているところが多いようです。利用料と別でおやつ代などが必要な場合もあります。例えば東京都港区の場合、学童クラブ育成料として月額3,000円と、おやつ代・お楽しみ会費月額2,000円を徴収しています(令和3年時点)。多くの場合、家庭の状況に応じた利用料の減免制度も取り入れられています。東京都港区の場合には、対象を以下のように定めています。・生活保護世帯・区市町村民税非課税世帯・生活保護に準ずる世帯(生活保護基準額の1.2倍以下の世帯、18歳未満の子どもが3人以上の場合は1.31倍以下の世帯)・低所得のひとり親世帯(児童扶養手当受給世帯)・兄弟・姉妹で学童クラブに入会している児童の第2子以降学童クラブ育成料について発達障害のある子どもが放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用するには?日本放課後児童支援員協会による「放課後児童クラブ運営指針」では、障害を理由として受け入れを拒否せずに、受け入れに伴う負担が過重でない限りにおいて、当人の状態に合わせた必要かつ合理的な配慮をするよう記載があります。・障害のある子どもについては、地域社会で生活する平等の権利の享受と、包容・参加(インクルージョン)の考え方に立ち、子ども同士が生活を通してともに成長できるよう、障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮および環境整備を行い、可能な限り受け入れに努める。・放課後児童クラブによっては、新たな環境整備が必要となる場合なども考えられるため、受け入れの判断については、子ども本人及び保護者の立場に立ち、公平性を保って行われるように判断の基準や手続き等を定めることが求められる。また、厚生労働省による「障害児受入強化推進事業」「障害者受入強化推進事業」では、障害児の受入に必要となる、専門的知識を有する「放課後児童支援員」等を配置するための人件費・研修費等を市町村が負担すると定められています。実際の支援体制は、市町村や施設、タイミングなどによっても大きく異なります。発達障害やその傾向のある子どもが利用できるかどうか、個別の配慮を受けられるかどうかは問い合わせて確認する必要があります。すでに障害児の受入れをしたことのあるクラブであれば、それまでにどのような体制でサポートしていたのか確認してみると良いでしょう。「放課後児童クラブ運営指針」では、家庭や地域の関係機関・学校との連携を密に行うよう書かれています。・障害のある子どもの受け入れに当たっては、子どもや保護者と面談の機会を持つなどして、子どもの健康状態、発達の状況、家庭の状況、保護者の意向等を個別に把握する。・地域社会における障害のある子どもの放課後の生活が保障されるように、放課後等デイサービス等と連携および協力を図る。例えば施設によっては、以下のような連携を行ってもらえる場合があります。▼例・相談支援員や放課後等デイサービスの職員、保護者をまじえてケース会議を行い、特性や困りごと、個別支援計画について共有する・特別支援学級の先生や担任の先生と、学校と放課後児童クラブそれぞれの様子を共有する・保護者と面談を行い、家庭の様子や学童の様子を共有したり、相談に乗ったりする放課後児童クラブ(学童クラブ)と、放課後等デイサービスの違いは?併用はできる?出典 : 障害のある子どもが放課後に利用できる施設として、放課後児童クラブ(学童クラブ)のほかに「放課後等デイサービス」があります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。●対象放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用対象者は、「小学校に就学している」かつ「保護者が労働等により昼間家庭にいない」児童です。放課後等デイサービスの利用対象者は、「身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)」かつ「就学児童」(小学校、中学校、高等学校に通っている児童)で、障害のある児童のみを対象としているのが放課後等デイサービスです。●支援の内容放課後児童クラブの支援内容はクラブによって異なりますが、大きな役割としては、子どもたちがおやつを食べたり遊んだり、宿題をしたりするのを見守る、遊びと生活の場です。民間の学童クラブでは、イベントや習い事などを提供するところもあります。利用者20名につき1〜2名程度の支援員がつきます。一方放課後等デイサービスでは、個別支援計画に基づいて、子どもの特性や困りごとに応じた支援が行われます。その内容は預かり型や療育型、習い事型などさまざまで、利用者5名に対して1〜2名程度の支援員がつきます。施設の空き状況にもよりますが、制度のうえでは放課後児童クラブ(学童クラブ)と放課後等デイサービスの併用は可能です。また、相談支援員や各施設の職員に連携を依頼することもできます。放課後児童クラブに通所しつつ、週1日は放課後等デイサービスで、少人数で特性に合わせた療育の支援を受けるなど、併用するケースもあります。まとめ出典 : 「放課後児童クラブ」(学童クラブ)は、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与え、その健全な育成を図るものです。障害のある子どもの受け入れも行いますが、実際の支援体制は、市町村や各施設、タイミングなどによっても大きく異なります。発達障害やその傾向のある子どもが利用できるかどうか、個別の配慮を受けられるかどうかは問い合わせて確認してみましょう。
2021年03月29日発達が気になる子の就園。サポートは受けられる?出典 : 発達が気になる子どもが保育園や幼稚園に入園する際、集団生活についていけるかどうか、お友達と関われるかどうかなど、不安に思うこともあるかもしれません。また、園生活が始まってから、気になる様子が見られ始めるという場合もあります。就園前や就園してから、必要な配慮を依頼することはできるのでしょうか。また、発達が気になる子どものサポート制度はあるのでしょうか。幼稚園や保育園では「障害児保育」を実施していたり、「加配」の先生をつけられたりする場合があります。このコラムでは、そうした制度について解説します。特別な配慮が必要な子どもを受け入れる基準は、自治体や園によってさまざまです。例えば、以下のような基準があります。・障害者手帳の保持者・特別児童扶養手当対象者・医師等による診断を受けていることなど例えば東京都練馬区では、(1)申込みに必要な書類一式、(2)『心身状況表』、(3)『主治医等見解書』、(4)身体障害者手帳、愛の手帳、精神障害者保健福祉手帳等を所持している場合は、障害の程度が分かるページのコピーの提出が必要です。入園に関すること(練馬区)ほかにも市区町村独自の基準を設けているところがあるので、詳細はお住まいの自治体に問い合わせて確認する必要があります。また、園ごとに受け入れ人数が決まっていることも多いです。希望する場合は、申し込み期日などを確認しておきましょう。「加配制度」とは、他児と同じように保育園の生活を送ることが難しい子に大人がつき、生活面や集団参加をサポートしてくれる制度のことです。保護者からの申請によって加配をつけられる園が全体の約4割、申請がなくても保育所独自に加配を行っているケースが2割程度あります。また、私立の園では自治体の補助金等による加配を実施している割合が高くなります。補助金をどのように分配して使用するかは園によって異なるため、私立の園では公立の園と比べ、申請を出しても加配をつけられないケースが多いようです。公立・私立問わず、申請を出しても加配をつけられるかどうか、どのような配慮を受けられるかどうかは園によって異なります。加配を申請する際はまず園に問い合わせて、今まで加配制度を利用した子がいたかどうか、その際はどのような配慮を行なっていたかなど確かめると良いでしょう。保育所における障害児保育に関する研究報告書(みずほ情報総研)埼玉県 私立幼稚園等特別支援教育費補助金加配の先生とは?出典 : 加配の先生とは具体的に、どのような支援をしてくれるのでしょうか。詳しく説明します。加配の先生は配慮の必要な子どもに対して、それぞれのケースにあわせた支援を行います。具体的には、以下のようなサポートがあります。・身辺自立の支援例えば食事でスプーンやフォークをうまく使えない場合や自分でトイレに行けない場合などに、サポートを行います。加配の先生と家庭で連携しながらトイレトレーニングを行い、オムツを卒業できたという声もあります。・お友達との関わりや集団参加をサポートうまく友達と遊ぶことができずトラブルになってしまうときや、集団参加が苦手で周囲の子と同じように行動できないときなど、加配の先生が介入してサポートします。友達と遊ぶときのルールや声かけの仕方など隣について教えることで、少しずつ自分の力で関わったり集団参加できるようになっていけるケースが多くあります。・保護者とのコミュニケーション子どもの発達や家庭での関わりなど、保護者は子育てについてさまざまな不安を抱えていることも多いでしょう。そんなとき、担任の先生のほか、加配の先生に相談できることがあります。客観的なアドバイスを受けられることで保護者が状況を整理できたり、悩みに寄り添ってもらえる安心感があるでしょう。また、多くの自治体では発達支援に理解の深い専門家が施設を巡回しており、加配の先生は専門家の助言にもとづいた支援を行っています。加配の先生は、子どもの数に対してどの程度ついてくれるのでしょうか。半数近くの自治体で、具体的な基準は決まっていません。「障害の程度を問わず一律の配置基準を設けている」という自治体もあれば「障害の程度により基準が異なる」という自治体もあります。障害の程度を問わず一律の基準を設けているところだと、「3人もしくは2人に保育士1人」という基準を定めている自治体の割合が多く、約3割の市区町村では子どもとマンツーマンになるよう基準を定めています。申請方法や費用は?出典 : 公立の園には多くの場合加配制度があり、私立の場合も自治体から補助金を受けて実施している場合があります。自治体によって補助額は異なるため、自治体ごとに確認する必要があります。加配を支援する補助金には、「療育支援加算」と「障害児保育加算」があります。「療育支援加算」は障害児保育を行う園に適用され、「障害児保育加算」は小規模保育、事業所内保育、家庭的保育といった地域型保育を支援します。なお、加配制度を利用するのに保護者の自己負担はありません。加配制度の申請方法は、自治体によって異なります。ここでは一例として、とある自治体における申請方法を記載します。①診察予約②診察・相談・書類申請③書類発行具体的な申請方法については、お住まいの自治体に問い合わせて確認してみてください。小学校でも加配制度を利用できる?出典 : 加配制度を利用して園に通い、卒園後に小学校でも同じようなサポートを受けることはできるのでしょうか。小学校で配慮を受けるには、特別支援学級や特別支援学校に通うという選択や、通常学級に在籍しながら通級や特別支援教室を利用して必要な支援を受けるという選択があります。ほかにも、通常学級で個別のフォローを受けられる場合があり、フォローする大人は「加配」「補助教員」「支援員」「民間ボランティア」など、呼び方や役割が少しずつ異なります。例えば授業に集中しにくい子に付き添って声かけをしたり、友だちとコミュニケーションを取るのが難しい子の仲立ちをしたり、LDのある子に代読や代筆をする、と言った形で、学習や集団生活のサポートを受けることができます。ただし自治体で人員と予算を検討するため、親が加配の希望を伝えても難しい場合があります。逆に親が希望を出さない場合でも、学校判断で申請されることもあります。自治体によって手厚い人員が確保できる場合とそうでない場合があるため、差があるのが現状です。また、放課後や土曜日など家庭保育が難しい場合に子どもを預かる「放課後児童クラブ」においても、厚生労働省の出しているガイドラインで「配慮を要する児童を可能な限り受け入れに努めること」という記載があるものの、加配制度の有無や基準は各自治体に委ねられています。放課後児童クラブ運営指針解説書(厚生労働省)支援をうまく活用して、お子さまの発達をサポートしよう出典 : 配慮の必要な子どもをサポートする制度には、事業所に通って日常生活の自立支援や機能訓練を受けられる「児童発達支援」や、園や学校に支援員が訪問して集団生活への適応をサポートする「保育所等訪問」もあります。医療機関や療育センター、市町村の保健センターなども、園と連携をとって必要な配慮についてアドバイスをしてくれる場合があります。園の外の支援も、うまく利用してみてください。まとめ障害や特性があり特別な配慮が必要な子どもは、加配制度を利用することができます。ただし、利用できる基準や申請方法等は自治体によって大きく異なるため、必ずお住まいの自治体に問い合わせてみてください。まずは、かかりつけ医や療育の先生に相談してみても良いでしょう。児童発達支援や保育所等訪問など他のサービスも利用しながら、お子さまの園・学校生活をサポートしていきましょう。
2020年12月28日子どもを勇気づける「親の失敗体験」出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。子どもが落ち込んでいるときや失敗したとき、親はなんて声をかけていいのか、戸惑ってしまうこともありますよね。かける言葉が見当たらないこともあるし、励ますつもりだったのに、なぜか怒らせてしまう結果になったり…。こんなときには、まずは子ども自身の話を否定せずに「うん、うん」「そっか、そっか」と、最後まで聴いてあげるのがいいと思いますが、それでも気持ちを引きずってしまう場合などに、親ができる"とっておきの秘策"があるんです。それは、親自身の「失敗体験」を話してあげること!特に繊細な子や、失敗体験が多くなりがちな子などの場合、話のタイミングやその子の受け止め方によっては、親の立派な武勇伝や学歴自慢、成功体験などは、かえってプレッシャーになることもありますが、親の失敗体験やしくじりエピソード、黒歴史、短所や欠点についての話なら、ほぼ「ハズレ無し」で、どんな子も勇気づけ、元気にすることができると思います(うちの経験上!)。それでは、恥ずかしながら”うちの実例”エピソードを、いくつか紹介しますね。出典 : まずは、不器用すぎて失敗が多くなりがちな長男を始め、うちの3人の子ども達になぜか大人気で、もはや定番ネタと化した「クッキーがおもちになった話」から。大学時代、学園祭で私が所属していたサークルは毎年喫茶店を出店していたのですが、そこで手作りクッキーを手分けしてつくり、飲み物と一緒に添えて出すことになりました。私は、お菓子づくりだけはどうしても苦手で、それまで一度も成功した試しがありません。不安しかありませんでしたが、材料も受け取ってしまったし、仲間達に負担をかけるわけにも行かず、仕方なくつくる羽目に…。とはいえ、クッキーはごく一般的な、生地を伸ばして型抜きしてシートに並べて焼くだけの、誰にでもできる"ハズ"の簡単なモノ。もちろん私は、我流のアレンジなどは一切加えずに、レシピに書いてある通りに素直につくったつもりでした。ところが、オーブンレンジを開けて出てきたのは、見事に一枚につながった謎の物体…。どうしてこうなるのか。時間もなく、仕方なしに「ソレ」を四角く切り分けて持っていくと、「な、なんだコレは!」と、ざわつく仲間達。そのうちの勇気ある1人が試食して一言…「うん、おもちだね」。結局、心優しい仲間達が、「クッキーだと思わなければ、意外と美味しいかも?」「モチモチ新食感だね」等と笑いながら食べてくれ、その後も何度か飲み会でネタにされたりもしましたが、今では学生時代のいい思い出です。こんな母の失敗体験を、何かある度に「ねえねえ、あの、おもちの話、して〜!」と子ども達にワクワク顔で迫られ、読み聞かせのように何度も繰り返し話しました。わが子がこんなに喜んでくれるなら、「あの時、失敗して良かった」とすら思えてきます。出典 : 子どものゲーム依存などを心配されるご家庭も多いかと思います。うちは基本的には「やるべきことさえやっていれば、ゲーム時間に制限はつけない(ただし、夜9時就寝!)」というルールです。それでも、特に好きなことに熱中しやすい長男は、オンラインゲームにのめり込み過ぎて心配になることも…。でも、ここで正論のお説教をするよりも、私のしくじりエピソードを話すほうが、ずっと説得力が出るんです。実は私、ちょうど今のうちの子達の年頃に、「パズルゲーム中毒」のようになってしまい、ちょっとヤバかった時期があるんです。私は元々パズルが大好きで、小学生の頃はジグソーパズルやルービックキューブなどに、健全な範囲で夢中になっていたのですが、思春期のころは、ちょうどファミコンブーム全盛期。そして、「上から落ちてくるT字やL字のブロックをキッチリ積んでいって、I字ブロックで一気に全消しする」という、例の元祖パズルゲームに私はどハマリして、もう本当に一日中、ぼーっとブロックを積んでは消し、積んでは消し…と、ひたすら繰り返していました。当時の私は、悶々と悩み続ける事も多く、自分で思考を止められずにしんどかったのですが、パズルゲームに無心で没頭している時間だけは、パズルに必要な部分以外の脳をオフにして、ほっとできたんですね。でも、その結果、ゲームをやめたくてもやめられない状態に…。それで結局、学校の成績が下がったり、ついゲームに手が伸びてしまって受験勉強に集中できなかったりもして、いろんなところに影響が出てしまいました。…こんな私の実体験を子ども達に切々と語ると、結構真剣に耳を傾けてくれるんです。やっぱり、経験者のリアルな話は重みが違いますからね。当然、こんな自分のダメっぷりをわが子の前で晒せば、親としての威厳なんて簡単に地に堕ちてしまいます。でも、だからこそ、子どもと同じ目線で語る言葉のほうが、難しい年頃の子達の心にも、ちゃんと届くんじゃないかな、なんて思います。まあ、長男は「でもさ、もし、かあちゃんがゲームに浪費した時間を勉強とかに全フリしてたら、人生の分岐ルートも違って、オレ達も生まれてなかったかもよ。だから、今、オレ達がいるのはテ◯リスのおかげ」なんて、言ってくれたりも…。出典 : そして、次男が小学校時代、体調を崩して学校に行けない日が続いていた時に、本当に役に立ったのが私自身の不登校の経験でした。私は、小学3年生のころ、1ヶ月ほどですが、同じように体調不良がきっかけで急に学校に行けなくなったことがあります。だからこそ、本人は「本当は学校行きたい」と言うけれども、どうしても身体が思うように動かないときの気持ちがよーく分かるので、かつて私の母がそうしてくれたように、無理に行かせたり、説得を試みたりはしませんでした。そして、家でテレビをぼーっと見ながら過ごす次男との母子2人の時間に、当時のいろんな思い出話をしました。例えば…「あの頃、かあちゃんはさ、学校って人が多くて疲れちゃったんだよね。いつもザワザワしてるしさ〜、休み時間はちっとも休めないしさ〜」…なんて切り出すと、我慢強い次男も、「そうそう、そうなんだよ」なんて、少しずつ本音や溜め込んだ不満を話してくれたりも。それから、「こういうとき、かあちゃんのかあちゃんがね、忙しい仕事の合間に『何か食べたいものある?』って聞きに来てくれたのが嬉しかったんだよね。で、〇次郎は今、何か食べたいものある?」…と、懐かしい思い出と共に希望を聞くと、嬉しそうにリクエストしたり…と、普段は兄や妹になんとなく遠慮している次男も、時折こっそり私に甘えてくれるようにもなりました。そうしている間に、本当にゆっくり、ゆっくりと、次男の体調は回復していきました。Upload By 楽々かあさんまた、春のコロナ休校が終わり、学校が再開された直後に、朝「行きたくない」と長女の登校しぶりが続いたときも、私の過去の「ズル休みの経験」が活きました。長女は悪知恵を働かせて、朝の検温を愛犬の脇の下で計って、「37.5度」という、なかなか”いい数字”を出して、得意そうに体温計を見せてきましたが、実は、体温の偽装に関しては私もプロなのです(良い子はマネしないでね)。「かあちゃんも小学生のとき、ズル休みしたくてさ〜…」と、当時、水銀体温計で、「心配されて病院に連れて行かれるほどの高熱ではなく、かつ、親が一応念の為、休ませておこうと思えるラインの、ちょうどいい数字」を出すにはどうしたらいいか、あんな方法やこんな方法で試行錯誤したことを話すと、ちょっと尊敬(?)の眼差しを送ってくれました。それから、運動が苦手だった私が「マラソン大会がイヤ過ぎて、毎年前日にお腹を出して寝た」だとか、「運動会が消えてなくなるように、台風の進路に全身全霊で念を送った」だとか、ちょっとカッコ悪い思い出話を気前よく披露すると、苦手な行事を前に沈んでいた子ども達を笑顔にすることもできました。どんなにネガティブな気持ちだって、身近な人に分かってもらえたり、「自分だけじゃない」と思えたりすることで、気がラクになることも結構あるのではないでしょうか。親の失敗体験は財産!出典 : こうして見ると、私は自分の失敗体験やしくじりエピソード、黒歴史…あるいは短所や欠点なども「あってよかった」と、財産のように思えてきます。ちょっとくらい失敗したって、間違ったって、寄り道したって、結構なんとかなるものだし、少々できないことや苦手なことがあっても、ちゃんと大人になれますから。「失敗のお手本」が目の前にあれば、子どもだって思い切って失敗できるハズ。そして、不思議なことに、子どもに自分の失敗体験を話してみると、なんだか親のほうも元気になるんです。それは、「親だって、完璧じゃなくてもいい」「子どもの前で、立派な親であり続ける必要はない」…と思えると、少しだけ”いい親”のプレッシャーから解放されて、肩の荷を降ろすことができるから…なのかもしれませんね。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年12月18日凸庵流自分の考えを言語化するポイント出典 : 私はASDとADHDと診断されている30代の男性です。現在とある企業でプログラマとして仕事をしています。職場では自分の考えを相手が理解できるよう伝えられることや、誰かの困りごとに対して具体的な解決方法を提示できることを高く評価してもらっています。私が自分の考えを言語化するときに意識しているポイントは3つあります。1. まず自分が何を感じてどう考えているのか気づくこと2. 自分が感じていることや考えていることに気づけたら、それを自分が納得できるよう言葉にしてみる3. 自分が納得できた言葉を、相手に伝わるような表現にして伝える自分の考えを言語化するためには、相手に伝わる表現にすることも大事ですし難しいポイントにはなりますが、まずは自分が何を感じてどう考えているのか気づくところから始まると思っています。言い方を変えると、自分の気持ちや考えに気づけないとそれを誰かに伝えることができないということです。...なんて偉そうに書いている私ですが、子どものころは自分の考えを誰かに伝えることはまったくできていませんでしたし、その必要性すらよくわかっていませんでした。それどころか「自分が何に対してどう感じていて、何を考えているのか」ということをあまりよく考えていませんでした。みんな私の気持ちがわかってるから自分から誰かに伝える必要なんかないと本気で思っていた子どものころの私出典 : 私が小学生になったころ、周りのひとたちや両親が、いつも自分がやってほしいと思っていたことをやってくれたり、助けてくれたりすることを、とても不思議に思っていました。私が教科書を忘れてオロオロしていたら隣の席のひとが「教科書忘れたの?みせてあげるよ」と言ってくれたり、台所でうろうろしてたら母が「おなかがすいたの?」と聞いてくれたり。いま思えばASDの特性で、私が他者の気持ちを想像できなかったから不思議に思っただけだったのかもしれません。ですが当時の私は、何も言わずとも、やってほしいことや困っていることに周りの人たちが気づいてくれているということが本当に不思議で、一時期本気で「みんなには私の考えが読めるんだろうな」と思っていたことすらありました。そんな当時の私は「周りのひとたちが自分の気持ちを読んでくれるなら、自分の考えを言葉にしなくてもみんなわかってくれるよね」なんてことを考えていました。自分の考えを誰かに伝えなきゃいけないなんて少しも考えていなかったのです。周りのひとはみんな読心術を使えるエスパーだと思っていた私でしたが、小学校4年のころに不登校になったときの出来事をきっかけに、自分の考えはちゃんと伝えなきゃダメなんだと気づくことになります。私が不登校だったのころの詳しいお話は以前記事にさせていただいたので、そちらをご参照いただけますと幸いです。周りのひとも私の気持ちを読むことができなかったんだ…と気づいた母の一言出典 : 不登校のころに母親と言い争っていたとき、私は「母は私の気持ちをわかってるはずなのになんでこんなことをするの?」と思いながら話していました。そのため、話す内容も母親が私の気持ちや考えをわかっている前提になっていたと思います。そんなある日、どんな話をしていたのかは覚えていないのですが、話しをする中で母親から「そんなの言ってくれなきゃわからないよ!」と言われました。私としては「えっ?そうだったの...?」という驚きがあり、しばらく何も言えませんでした。私がエスパーだと思っていたひとたちの中でも特に自分の気持ちを読んでくれていると思っていた母親が、「言ってくれなきゃわからないよ!」と言うなら、他のひとはもっと自分のことがわからないはずだよな...と、このとき初めて自分の気持ちや考えを伝えることの必要性に気づいたのです。そして、少し落ち着いてきていざ自分の気持ちや考えを伝えようと思ったとき、そもそも自分がどう感じているのかがわからないことに気づきました。そのころの私は内省する時間がとても多かったので自分の考えを持つことはできていたのですが、気持ちや感情については「いい感じ」と「嫌だ」くらいしか意識したことがありませんでした。そのため、他者に伝える必要性に気づいてからも、「これはいいんだけどこれは嫌」というような、つたない言葉で自分の気持ちを伝えていたことを覚えています。自分の考えを自分の言葉で話していた思春期の私出典 : 自分の考えは言葉にしないと誰にも伝わらないことに気づいた私は、もう周りの人たちがエスパーだと思ったりはしませんでした。当時の私は、自分が感じたことや考えていることを自分の言葉で率直に話すようになっていました。その際、自分の考えの参考にするために相手の考えも聞きたかったので「あなたはどう思うの?」とよく人に聞いていました。おそらく相手からは「こいつ、よく議論を吹っかけてくるな」と思われていただろうと思います。なんとか自分の考えを相手に話すことができるようにはなったのですが、その後社会人になり、このコミュニケーションの方法でも問題が起こるようになってきます。そのころの出来事も以前記事にしています。自分の考えを言語化できるようになったいまの私出典 : 社会人になりいろいろな失敗をする中で、自分の考えを相手が理解できるように伝える必要があるんだなと気づきました。そのために、いまの私が自分の考えを誰かに伝えるときには、自分がそう考えた背景や理由を相手に伝えるようにしています。先の記事の例でいうと、上司「凸庵くん、これどうやって実装したらいいと思う?」私「○○のようにするのがいいと思います」上司「どうしてそう思ったの?」私「この方法はこういうデータを取り扱うため、この方法だとこういう理由で他の方法と比べて安全ですし、だいたい1週間くらいで実現できるのでこの方法がいいと思いました」のように話すようにしています。相手に察してもらうのではなく、自分の考えをなるべく誤解を与えないよう伝えることが大事なんだなと思っています。自分の気持ちがわからなくなったときには心地いいなと感じることをやってみる!出典 : 実は最近仕事が忙しかったこともあり、子どものころのように自分の気持ちや考えがわからなくなってしまう日々が続いていました。自分の気持ちや考えがわからないと自分の考えを伝えることもできなくなってしまうため、仕事上でもなかなか苦戦する状況が続いていました。そんな中、自分が心地いいなと思う生活をして「あー、いま自分はすごく気分がいいな」と感じていることに気づいたことで、少しずつまた自分の気持ちがわかるようになってきました。少し具体的な話をすると、私はいつも22時以降にお風呂に入っているのですが、ある日たまたま20時より前にお風呂に入った日があり、そのときとても充実感を感じました。「もうこれで寝るだけだ!」と思えて、すごく自由な気持ちになったのです。それからしばらく20時前にお風呂に入る生活をつづけたところ、だんだん自分の他の気持ちにも気づけるようになっていき、こうして記事をかけるくらい自分のことを言語化できるようになりました。まずは自分の気持ちや考えに気づくことがスタート出典 : 私は自分の考えや気持ちを誰かに伝えるときに一番大事なことは、自分の気持ちを誰かに伝えることに意味や価値があるんだと気づくことだと思っています。そしてその次に大事なことは、自分の気持ちや考えに気づくことだと思っています。発達障害当事者の方の中にはこのどちらか片方、もしくは両方とも苦手な方が多いのではないかと感じています。なのでもしかしたら発達障害当事者の周りの方の中にも、当事者の考えや気持ちがわからないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。気持ちや考えがわからない当事者の方に対しては、「この本どうだった?」のようにまず率直に聞いてみるのが良いのではないかと思います。そして、当事者の方の回答に「あー、そうだったんだ!○○くんはこういうのが好きなんだね」のように何かリアクションしてあげることが良いのではないかと思います。というのも、子どものころの自分の気持ちになって考えてみると、自分の気持ちや考えを聞いてもらって、その内容にリアクションしてもらうことで「あれ?これって自分が言わなきゃわからなかったのかな?」とか「今度は自分から言ってみよう」と思うきっかけになるかもしれないなと思ったからです。自分の経験がもとになった内容ですが、私の経験が皆さんやお子さんの生活の役に立てば幸いです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月16日1歳半の健診では…出典 : 子どもたちは、1歳半~2歳の間に市町村の行う1歳半健診を受けることになっています。「スクスクと育っているだろうか」「発達について何か指摘されたらどうしよう」と不安に感じる方もいるかもしれませんね。母子手帳には、・「ママ」「ブーブー」など意味のある言葉をいくつか話しますか・うしろから名前を呼んだとき、振り向きますかというチェックリストがあることに気づいた方がいらっしゃると思います。言葉を話すかどうかのチェック項目が含まれるため、保護者の方は子どもの「発語」に注目されるかもしれません。でも人とのコミュニケーションに必要なのは「発語の力(言葉を発する力)」だけではありません。実際に1歳半健診では、保健師さんとのやり取りを通して、話し言葉や話し言葉以外の手段で「伝える」力や「わかる」力、人と「関わる」力の育ちなどをチェックし、気になる行動や反応がないかどうかを観察します。これらの力を含め、コミュニケーションの発達を総合的にみていくことが大切です。では、「コミュニケーションの力」とはどういうものなのでしょうか。また、その力はどのように育っていくのでしょうか。話し言葉を習得しつつある段階の子どもにとって、コミュニケーションと言葉を育むために大切な3つの力があります。このコラムでは、その土台となる3つの力をそれぞれご紹介します。基礎となるポイントを知り、子どもとの日々のやりとりに役立てていただけたらと思います。でも、ただでさえ大変な子育てです。保護者だけで頑張るのでは、疲れ果ててしまいます。健診などで「様子をみましょう」と言われたり「発達の遅れ」を指摘されたりしたら、自治体の子育て支援センターなどに相談して、いろんな人の助けを求めることも忘れないでくださいね。赤ちゃんのコミュニケーションと言葉の発達出典 : そもそもコミュニケーションや言葉はどのように育まれるのでしょう。ここでは、乳幼児期の子どもたちのコミュニケーションと言葉の育ちについてご紹介します。生まれたばかりの赤ちゃんは、おっぱいを飲むことや息をすることが大切な仕事です。舌やのどは、まだしゃべるためのつくりにはなっていませんし、脳の発達も未熟ですから、主に泣き声しか出せません。オムツが濡れて嫌だったり困ったりしたとき泣いて声を出すと、誰かがそばにきて助けてくれるという経験をかさね、困ったときや何か伝えたいときに声を出して伝えようとする気持ちを育んでいきます。3~4か月ごろになってくると、赤ちゃんは機嫌のいいときの声と、悪いときの声がだんだん分かれてくるようになります。周りの人があやすと笑うようになり、笑わせたいからあやすようになるという関係がうまれてきます。「あーあー」「ばぶばぶ」など、2つ以上の音を発する喃語を話し始めるのはこのころです。喃語が意味のある言葉へとつながっていくためには、子どもの発する声に対して周りの人が子の思いを推測し「楽しいね」「気持ちいいね」と応えるなどのやりとりが必要となります。保護者や周りの人とのやり取りのなかで、赤ちゃんの言葉を発する準備が整ってくるのです。人に関心を持ち、子どもから保護者に近づき催促するようなしぐさをしたり、声をだしたりしはじめます。そして、保護者の声色や表情などをまねし始めるようになります。保護者が料理をしているのをじっと観察してしゃもじで遊ぼうとしたり、お化粧道具で顔を塗りたくったりもするようになります。まねすることは、なにかを学ぶことにつながります。言葉も、誰かの話を聞いてまねしながら学んでいきますから、まねっこはとても大切な遊びのひとつです。行きたい方向や、取ってほしいものに、指差しをするようになります。「あっちへ行きたい」と子どもが考えたときに指差しで教えてくれたり、取ってほしいおもちゃを指差しして要求したりすることで気持ちを伝えはじめます。そして、「見て」「一緒に遊ぼう」と物を持ってきたり物をさしだしたりしはじめます。また、話しかけられていることがわかりはじめ、名前を呼ぶと振り向く、「お人形はどこ?」などの質問に反応する、「ちょうだい」に対して物を渡すなどができるようになってきます。多くの赤ちゃんは、1歳ごろになると「ママ」「ワンワン」など、意味のある言葉がいくつか話せるようになってきます。独り言のようにつぶやくだけでなく、見てほしい・何かを取ってほしいという気持ちで「ママ」と言ったり、嬉しい気持ちを共有したい・怖いから助けてほしいという気持ちで「ワンワン」と言ったりする様子もみられはじめます。1歳半~2歳くらいには、「ママねんね」「ワンワンいた」など単語と単語のふたつをくっつけて話す2語文が話せるようになります。繰り返しお伝えしますが、言葉の発達には個人差があります。この時期に話さないからといって、必ずしも発達が遅れているということではありません。このように、赤ちゃんは成長する中で言葉に繋がるコミュニケーションの力を少しずつ獲得していきます。コミュニケーションに関する気になる行動出典 : 一歳半健診などは、赤ちゃんの様子を客観的にみてもらえる貴重な機会ですが、健診の機会に限らず、日ごろの赤ちゃんとの関わりの中でも、コミュニケーション面で気になるポイントがある方もいらっしゃるかもしれません。赤ちゃんと周りの人とのコミュニケーションと言葉について、気になることのチェックリストをご紹介します。気になる項目があって心配な場合には、ひとりで抱え込まずに早めに支援センターや保育園・幼稚園などに相談しましょう。また、このコラムも参考にしていただき、子どもとの関わり方の工夫も取り入れてくださいね。・話しかけても目が合いづらい・名前を呼んでも、振り向くなどの反応がない・「ちょうだい」と言っても、手に持っているおもちゃを渡さない・気持ちが通わないように感じるときがある・他の子どもに興味がない・バイバイなどの真似をしない(手のひらを自分に向けてバイバイする)・言葉が遅いと思う(ワンワン、ママなど意味のある単語が少ししか出ない)・言葉が出ていたのに、1歳半から2歳前後のころに言葉が出なくなった(折れ線現象)・見て欲しいものがあるとき、それを見せに持ってこない・何か欲しいものがあるとき、指をさして要求しない・何かに興味を持ったとき、指をさして伝えようとしない・大人が離れたところにあるおもちゃを指さしても、その方向を見ない歳からの発達が気になる赤ちゃんにやってあげたいことコミュニケーションと言葉を育む大切な3つのポイントそれでは、コミュニケーションの力を育み、言葉にもつながる力を育てるには、どうしたらよいのでしょうか。コミュニケーションと言葉には、以下の3つの力が関わっていて、これらの力を育てることがとても大切です。1.「わかる」力:情報をキャッチする力・見て・聞いて・体験して「わかる」力2.「伝える」力:情報を伝える力・言葉や言葉以外の手段を使って表現する力3.人と「関わる」力:人と一緒に過ごしたい、わかりたい、伝えたいと思えるモチベーションの源コミュニケーションの力を育むために...1〜2歳の時期大切にしたい関わり方出典 : ここからは、1~2歳の時期に人と「関わる力」、「わかる力」、「伝える力」の3つの力を育む関わり方について紹介します。人と関わる力を育てることは、もっと人と一緒に過ごしたい、わかりたい、伝えたいという気持ちの源となり、コミュニケーションと言葉の土台となります。子どもの段階ごとに詳しく見ていきましょう。【ステップ1:子どもの世界に入れてもらおう】ステップ1は、人とあまり関わろうとしない、遊びを独り占めしたい・邪魔されたくない子に向けた関わり方です。この段階では、子どもに「この人といると心地良いな、もっと一緒にいたいな」と思ってもらうことを目標にします。まずは、子どもの世界に入れてもらうことを目指します。そのためには、子どもが注目しているものや、取り組んでいることに対して・子どもが嫌がらない程度に近づいて・声をかけ過ぎず・干渉し過ぎず・一緒にゆったりと過ごすことに気をつけてみてください。子どもの目線に合わせて同じものを見たり、子どもと同じタイミングで同じ遊びをしたりしながら、距離を縮めてみましょう。少しずつ子どもの世界に入れてもらうことで、同じ空間にほかの人がいても「大丈夫」「安心だ、心地が良い」と気づいてもらうことから始めましょう。【ステップ2:子どもの見ているもの・聞いているもの・感じていること・動きにコメントしてみよう】子どもが身近な大人と一緒の空間で過ごせるようになったら、ステップ2を試してみます。子どもが見たり聞いたり感じたりしていることを、一緒に体験している人がいることに気付いてもらえるよう関わり、子どもが関心を向けていることについて言葉をかけましょう。・世話をしながら話しかける:オムツをはかせながら「はい、オムツがはけました」「気持ちいいね」・子どもの興味関心に合わせて言葉をかける:おもちゃの車を走らせながら「パトカーがくるよ」、青いブロックを積みながら「青いブロックだね」など・子どもの気持ちを推測し、代弁する:「できた」「やったー!」・子どもの身体の動きに合わせて声をかける、オノマトペなどで実況する:「お口、あーん」「ごっくん」など・子どもの出す声や行動をそのまままねる:子どもがジャンプしたらジャンプする、「あ!」と言ったら「あ!」と言う・大人が自分の行動や気持ちを口に出して言う:「あぁ、おいしい!」「かばんはどこかな?」このとき、かける言葉を無理にまねさせる必要はなく、子どもの耳にしっかりと入れてあげるよう意識しましょう。【ステップ3:子どもが「思いが叶った」「気持ちを満たしてもらえた」と思えるよう関わろう】子どもが身近な人と一緒に過ごす中で、「気持ちを満たしてもらえた」と感じられるよう関わってみましょう。人と関わることで、嬉しいことが起こった、思いが叶った、不快な気持ちが軽減した、不安が和らいだという体験を積み重ねることが大切です。できる範囲で、お互いがより安心して気持ちよく過ごすためにはどうしたら良いのか、一緒に探りましょう。【ステップ4:子どもにもっと期待してワクワクしてもらえるような関わりをしよう】ステップ3までで、子どもは人との関わりが「悪くない」「むしろ心地良い、気持ちが満たされるかもしれない」と思える体験を重ねてきました。ステップ4では、子どもにもっとワクワクと期待してもらえるように関わることで、身近な人にさらに意識や関心を向けてもらうことが目標です。・体を使ったふれあい遊び・繰り返し遊び:いないいないばあ、シャボン玉あそび、かくれんぼなど・動きに合わせてオノマトペを使って大げさに声をかける・子どもが興味を持ってくれるような仕掛け:眼鏡をさかさまにかけてみる、わざと失敗するチャップリンやMr.ビーンなど、主人公がしゃべらなくても笑わせてくれる映画があります。こうしたコメディ映画などで、大げさな動き・表情、追いかけたり追いかけられたりといった流れを参考にしてみるのもよいかもしれません。子どもがワクワクする関わり合いや繰り返し遊びの中で、時々パターンやタイミングをずらして、子どもが「あれ?」と思わず相手に注目したり、期待してじっと待ったりする機会をつくってみましょう。やりとりを楽しむ中で、子どもの「もっとやってほしい」という気持ちや行動を引き出すことで、相手の言葉や行動に注目する力や、思いを伝えたいと思える気持ちを育むことを目指します。発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する: コミュニケーション支援のための6つのポイントと5つのフォーカス関わり合いの中で、わかる力を育んでいきましょう。わかる力は、情報をキャッチする力ともいえます。「わかる」とは聞いてわかる力だけでなく、見てわかる力・体験してわかる力も含まれます。ここでは2つのステップに分けて、わかる力を育む関わり方を紹介します。いずれの関わりでも大切なことは、「一緒に楽しく行うこと」です。【ステップ1:聞こえてくる音や言葉へ耳を傾けることを楽しむ】わかる・理解する力を育む第一歩として、周囲の音や言葉へ興味を持ち、楽しく耳を傾けることから始めます。聴力は備わっているものの、周囲の音にあまり興味を示さない、言葉がけが耳に入りづらい場合があります。まずは楽しく音のありかを探したり、音や言葉に耳を澄ましたりする機会をつくりましょう。その際には、以下のポイントに注意してみてください。・できるだけ気が散らない静かな環境で関わる・ものを操作する音や、電話やチャイム・飛行機の音に耳を澄ましてみたり、楽器や歌を楽しんだり、関わり合い遊びの中で言葉かけをすることで、さまざまな音や言葉に親しむ・子どもの正面で、ものを見せたり身体に触れたりしてから声をかけるなど、注意をひきつけてから言葉をかける・子どもが何気なく音や言葉を聞いている様子が見られたら「リンリンと音がするね」「楽しいね」「よく聞いているね」と声をかける・お話を聞いている様子が見られたら「聞いてくれてありがとう」と、注目したり耳を傾けたりしてくれて嬉しい気持ちを伝える言葉の発達に遅れのあるお子さんの多くは、注意を向けるべき音や言葉に耳を傾けることが苦手です。そのため、指摘されたり叱られたりする場面が増え、そのことでますます苦手意識を高める場合もあります。まずは、「お菓子を食べよう」や「お外に行こう」など、楽しい声かけに耳を傾けることから試してみると良いかもしれません。このような関わりを通じて、お子さんが周囲の音や言葉に耳を傾けやすい関わり方や工夫を見出すとともに、「相手に注目したり耳を傾けたりすると楽しいことが起こるんだな」と思える経験を積み重ねましょう。【ステップ2:見たり、聞いたり、体験してわかることを増やす】ステップ2では子ども自身が見たり聞いたり体験することで興味関心を広げ、わかることが増えることを目指します。「わかる」ことを増やす手がかりは、以下のようなものがあげられます。・その場所に行く・体験して「わかる」:プールに入ってようやく「水遊びをするんだな」ということがわかる、身体介助をされ座ってようやく「座る」ということがわかる・繰り返し習慣化しているものは「わかりやすい」:玄関に行くと「靴を履く」ことがわかる、朝起きると「トイレに行く」ことがわかっている・周囲の人の動きを見て「わかる」:お母さんが脱衣所に行くときは「お風呂に入る」とわかる、、保育園のお友達が一斉に部屋を出ると「移動する時間だ」とわかる・実物を見ると、次に起こること・何をすべきかが「わかる」:プールバッグを見ると「プールに行く」ことがわかる、車の鍵を見せられると「車に乗る」ことがわかる・写真やイラスト・文字を見ると「わかる」:靴の写真を見ると「靴を脱ぐ」ことがわかる、“おしまい!"と描かれたイラストや文字を示されると「おもちゃを片付ける」ことがわかる・身振り手振りやジェスチャーをすると「わかる」:バイバイと手を振ると「部屋を出る」とわかる、ちょうだいのジェスチャーをされると物を渡す・言葉を聞くと「わかる」さまざまな方法や手掛かりを用いて「わかる」ことが大切です。わかることが増えることは、身の回りのことを理解し安心して生活することや、語彙を広げ「伝える」力を育むことにも繋がります。お子さんが「わかる」方法で、身の回りのことを伝えましょう。伝える力とは、話し言葉や話し言葉以外の手段を使って思いを表現する力、情報を伝える力ともいえます。【ステップ1:子どもの伝えたいことは何か、身近な大人が推測する】「伝える」力を育む準備として、何が不快なのか、どうなると安心なのか、本当は何がしたいのかを、人と関わる中でお子さん自身が知っていくことが必要です。発達段階によっては、お子さん自身何が不快なのか、どうしたいのか、具体的にどう振る舞えば良いのかが、よくわかっていないことがあります。その場合、やむを得ずパニックや癇癪を起すことがあり、本人も周囲の人もどうしてよいか分からないことがあります。このような場合、まずは子どもの現在の気持ちを探り、「伝えたいこと」を推測、代弁してあげることから始めます。【ステップ2:表現手段を紹介し、一緒に練習してみよう】欲しいものやしたいことがある、一緒にやって欲しい・見て欲しいことがある、嫌で避けたいことがあるなど、子どもが何か訴えたい様子が見られたら、それを表現したり相手に伝えたりするための手段を紹介しましょう。そしてもし可能であれば、一緒に練習してみましょう。言葉で表現することが難しそうであれば、言葉以外の、例えば以下の手段も試してみましょう。モデルを見せてあげたり、嫌がらない範囲で子どもの身体や手を取って手助けしたりしながら一緒に行ってみてください。・相手に向かっていく、肩をトントンとたたく、行動で示す・クレーンする、手を引いて連れていく・実物・写真・絵を持っていく・絵や文字を書いて示す・身振り手振り、ジェスチャー、うなずき・首ふりで示す・手さしや指さしで指し示す・視線や表情、態度で表す・発声や言葉で伝える・選択肢から選び取る大切なのは、お子さんが無理なく、楽に使える手段を用いることです。話し言葉だけにとらわれすぎず、相手に思いが伝わるさまざまな方法を紹介し「思いを伝える手段を増やしていく」という姿勢でのぞみましょう。そうすることで、子ども自身が「気持ちを汲み取ってもらえてホッとした」「伝わって嬉しかった」と感じられる機会を増やし、“もっと落ち着いて思いを伝えたい”と思う気持ちを育みます。練習のポイントは、うまくいかない困った場面で始めないこと、比較的穏やかに過ごせる時間や、身近な人と楽しく遊んでいるときに行うということです。日々の生活の中で、子どもが自然と思いを表現する様子が見られたら、見逃さず褒めてあげたり「いいね!」と注目やサインを送ってあげたりすることも大切です。どんな手段であっても、落ち着いて思いを伝えられる機会が増えることは、癇癪やパニックを起こさずに済む時間を増やすことにも繋がります。まとめ出典 : このコラムでは、コミュニケーションに関わる3つの土台、人と「関わる力」、「わかる力」、「伝える力」を育むための工夫を紹介しました。どんな子どもも、その子のペースで成長しています。ご紹介した3つの力のうち、既にできているところを見つけたらすかさず褒め、お互いに無理なくできそうなところから少しずつチャレンジしてみてください。ポイントは、「一緒に楽しもうとすること」です。実践してみて「うまくいかない」「疲れてしまった」「つらい」と感じたときは、どうか一人で悩まずに発達支援センターなどに相談してください。いろいろな人に子どもの成長を支援してもらい、見守ってもらいながら、ゆっくりと取り組んでみてくださいね。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月06日出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。「ちょっと待って」「ちゃんとやって」「キチンとして」…日常生活や、学校生活の中でよく使われる言葉ではありますが、小さな子だけでなく、こんなアバウトであいまいな表現が、イメージしにくくてピンと来ない子、イマイチ伝わりにくい子は案外多いんじゃないでしょうか。だって、「ちょっと」や「ちゃんと」って、目には見えませんからね。でも、”超・具体的に”、声かけを翻訳するだけで、どんな子にもガゼン、伝わりやすくなると思いますよ。そこで今回は、家庭でも園・学校でも即!使える、あいまい言葉の「声かけ変換」のコツを直伝します。「ちょっと」「もうすぐ」「だいたい」は、具体的な時間や目安を出典 : あいまいな言葉を子どもに伝わるように翻訳するコツは、「見えないものを具体的にイメージし、それを相手と共有できるようにすること」です。通常、「時間」や「相手の気持ち」などは、目には見えませんし、「適量」や「適度」などは、その人によって感覚が違います。更に「適切な行動」などになると、その人の主観や価値観次第でも変化するのではないでしょうか。そこを、人生経験の少ない小さな子や、空気を読むのが苦手な合理的なタイプの子などに、「察して、推し量るべし」と求めるのは、少々ハードルが高いことだと思います。そこで、子どもが経験値を積むまでは、こちらと同じイメージを共有できるように、具体的な数字・目安・行動などで伝えることで、分かってくれること、実行できることも結構多いんですよ。まずは、「ちょっと」「もうすぐ」など、時間に関する基本の伝え方から。Upload By 楽々かあさん例えば、お出かけ前に「早く、早く!」なんて、何度も子どもに急かされると、こちらにも都合があるので「ちょっと待って」と、連発したくなりますが…「ちょっと」とは、あとどれぐらいの時間なのかが分かるように、「あと3分待って」「9時45分になったら、出かけよう」など、具体的な数字を入れて伝えると納得しやすいでしょう。この時、まだ時計が読めない小さな子や、なかなか時間を意識しにくい子などは、スマホのゲージ付きのタイマーアプリや砂時計など、「時間が見えるようになっているもの」を併用して見せるとGood!また、ハッキリとした時間が伝えにくい場合には、「かあちゃんが、この洗濯物をたたみ終わるまで待って」など、具体的な行動などで区切りや目安を伝えてあげると納得できることも。運が良ければ、お子さんが一緒にお手伝いしてくれるかもしれませんしね。Upload By 楽々かあさん子どもは待つのが苦手なことが多いもの。ましてや、楽しみなことが目の前にあったら、「ワクワクし過ぎて、待ちきれない!」のは尚更でしょう。また、いつまで待てばいいのか分からなくて不安になったり、漠然と待っているとどうしたらいいのか戸惑ったりすることも。そんな時に、「もうすぐだから」と、大人がうまいことお茶を濁そうと思っても、子どものほうは、なかなか納得してくれないこともあります。例えば、人気のお店や映画などの長蛇の列に並んでいる時には、「あと、〇人だよ」「今、◯番目だよ」など、時間同様、人数や回数などの具体的な数字を伝えて、「ゴールが見える」ようにすると安心できるかもしれません(事前予約や座席指定をしたり、空いている時間帯や場所を選んだりするのも、お互いに疲れないための賢いテです)。この時、整理券や番号札などがあると、なお分かりやすいのですが、お店で配ってない場合はメモ帳などに番号を書いて渡してあげると、落ち着けることもあります。小さな子には、指で見せてあげるだけでも違うと思いますよ。また、「〇〇して待ってようか?」など、具体的な待ち方を提案したり、予めゲーム機やマンガなど、その子の好きなものを持参したりなどして、待ち時間に「何をして待てばいいのか」がハッキリしていると、結構気長に待てることも(大人だって、応接室でお茶菓子を出されたら、多少の時間は大丈夫ですよね)。そして、大人と子どもの時間感覚は違うので、「冬休みまで、もうすぐだから」など、大人にとっては数週間後の話も「もうすぐ」かもしれませんが、子どもにとってはとてつもなく先の話に感じられることも。こんな時は、一緒にカレンダーを毎日斜線で消していったり、メモ帳パッドで日めくりカウントダウンを作ってあげたりするのもいいかもしれません。出典 : 例えば、子どもが宿題などで、些細なことにこだわって、なかなか自分で今やっていることを終われないときに、親が助け舟を出すつもりで「だいだいでOK」なんて言ってあげても、真面目で完璧主義タイプの子などは納得できないことも。そんなときには、「だいたい」とは、何%くらいのことなのか、ひとまずの目安を具体的な数字で伝えてあげるだけでも、気持ちに区切りをつけやすくなるでしょう(時間に余裕のある時には、本人が納得できるまでトコトンやらせてあげるのも、いいと思います)。この時、ワークなどの課題に1ページずつふせんを貼って「今日は、ふせん◯枚取れれば大丈夫」とか、優先順位をつけた一覧表を作って「最低限ココまでできれば、十分だよ」などと、ひとまずの合格ラインを引いてあげると、安心できる子もいるでしょう。また、宿題などで、完璧さを求め過ぎてなかなか終わらず、子ども本人も悩んでいる場合などは、あえて「字を雑に書く練習」をしてみたり、「ココだけは完璧に」「ココからは、"できれば"でOK」など、時間をかけて一緒に「妥協ラインを引く練習」をしていくと、その子も少しラクになれるかもしれません。「ちゃんと」「しっかり」「キチンと」とは、どんな行動なのかを「ちゃんと」「しっかり」「キチンと」などの言葉も、その人それぞれの主観や価値観次第で、「どの程度が合格ラインなのか」が変わってきますし、どんなことをすれば「ちゃんと」になるのか、「具体的な行動」をなかなか明確にイメージできない子もいます。ここは、どんな行動をすればいいのか、何ができていればいいのか、こちらが想定している「ちゃんと」の「中身」まで取り出して、具体的に翻訳して伝えると動きやすくなるでしょう。出典 : 「もう!男子〜、ちゃんと掃除やって!」…なんて、学校の掃除の時間の班行動などで、しっかりさんタイプの子が大変そうにしているときもあるでしょう。みんなで何かをする場面で、単独行動を取りがちな子や、他人事のようにぼんやりしちゃう子などには、「誰が、どこからどこまで、何をやればいいのか」それぞれの子の担当する範囲や役割を明確にして、具体的な行動で「個別に」お願いすると、自分から"ちゃんと”動いてくれるかもしれません。とはいえ、最初から、ここまで子ども同士に期待するのはハードルが高いので、まずは周りの大人が声かけのお手本を見せてあげると、しっかりさんも助かるんじゃないでしょうか。大人が目の前で繰り返し声かけのお手本を見せていると、自然と子ども達がマネしてくれること、いつの間にか身に着けてくれることも、多いと思いますよ。出典 : 大人が子どもに対して「しっかりしている」と感じるとき、その子は自分で判断して、「自分が何をしたらいいのかが分かり、それを実行できている」ことが多いのではないでしょうか。逆に言えば、「やるべきこと」を把握し、それを実行できれば、どんな子も”しっかり”できるかもしれませんね。つまり、子どもに”しっかり”やって欲しいときには、「今やること」「次にやること」「何と何ができればいいか」等を確認できる声かけなどをするといいでしょう。この時、一緒に「やることリスト」に書き出したり、計画表を作ったり、ふせんなどを使って物事の優先順位づけをしたり…と、頭の中の整理整頓ができるようにすると、先のことを見通して動くことが苦手な子でも、実行力がUPすると思います。こうして、最初は大人の声かけで促されつつも、「有言実行できた」経験値を貯めていくと、次第に自分で判断し、"しっかり”できるようになってくるでしょう。Upload By 楽々かあさん例えば、子どもの服装や姿勢をだらしないと感じて、大人が「キチンとして」と、注意したとしても…子ども本人が、周りからどう見られるのかをあんまり意識していない場合、「キチンと」しないといけない場面でも、その場に合った適切な服装や行動ができないこともあります。でも、その子に悪気はなく、単に知らない・気づいていないだけのことも多いので、「どういった服装や行動をすれば、キチンと見えるのか」を、具体的に伝えればOK!その際、写真・動画や、大人や友達などが目の前で”キチンと”している具体的な「実例」を見せるのも、分かりやすくていいと思います。また、既に「キチンとする」とは、どうしたらいいのかは(知識として)知っているけど、”今がそのタイミング”だと気づいてないこともあります。この場合は、「周りの人の服装を見てごらん」「ここでは、どうすればいいと思う?」等と、周りに気づかせたり、適切な行動を思い出せる声かけをしたりすると、”キチンと”してくれるでしょう(まあ、その子が「シャツをインするのはダサいから、絶対ヤダ」等と、強固な意思を持って”あえて”そうしている場合は、この限りではありません)。このように、見えない空気が見えるように、あいまいな言葉を「超・具体的に」翻訳する声かけを意識すると、”ちゃんと”分かってくれること、”しっかり”"キチンと”できることだって多いんです。できるようになってきたら、あいまい言葉にも慣れるように…出典 : …とはいえ、周りの人達みんながいつもそんな風に、親切に丁寧に言ってくれるわけではありませんよね。そこで、「超・具体的に」翻訳する声かけで、子どもが「どうしたらいいのか」だんだん分かってきたら…あえて「ちょっと」「だいたい」「ちゃんと」などをフツーに使ってみて、あいまいな言葉の表現にも、徐々に慣らしていくといいでしょう。そして、実際にそれができたら、「そうそう、それくらいが”だいたい”」とフィードバックしたり、うまくできなかったら、「もう”ちょっと”こうしてくれる?」等と微調整したりして、あいまいな言葉のイメージを子どもと共有できるようにするとGood!こうして、少しずつ手を離していくと、少々空気を読むのが苦手な子でも、だんだんと「通訳なしでも大丈夫」になっていくと思いますよ。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年11月17日育児に疲れたときは、レスパイト(一時的休息)をとることが大切出典 : 「レスパイト」とは英語で、「小休止」「息抜き」「休息」といった意味を表す言葉です。誰かをケアする立場である介護者や保護者が、介護や育児で疲れたときに一時的に休息をとることは「レスパイト」と呼ばれ、ケアする人たちの権利であるとされています。休みなく続く育児で疲れてしまったときやワンオペ育児で余裕がないとき、保護者が休息をとり、リフレッシュすることは非常に大切です。保護者が自分自身をケアして心に余裕を持つことは、子どもにとってもプラスになるはずです。この記事では、発達障害のある子どもを育てる保護者が休みたいときに利用できる、レスパイトサービスを紹介します。発達障害のある子どもの育児で利用できる、レスパイトサービスは?出典 : 発達障害がある子どもの育児で使えるレスパイトサービスには、障害者総合支援法や児童福祉法に基づいたものが複数あります。育児における困りごとや状況に応じて、利用しやすいものを探してみてください。障害者総合支援法に基づいた「障害福祉サービス」で、国が障害区分等により利用対象者を定めています。障害のある人を自宅で介護する人が病気などの場合、障害者支援施設や児童福祉施設等へ短期間入所し、入浴、排せつ及び食事の介護など、必要な支援を受けることができます。宿泊を伴って最大で連続30日間利用することができ、介護者の病気や体調不良のほか、出張や旅行、休息をとりたいなどの理由で利用が可能です。障害福祉サービスについて(厚生労働省)障害者総合支援法のうち「地域生活支援事業」に含まれており、市区町村が地域の実態にあわせた基準を設けて運営しています。障害のある人の家族の一時的な休息のため、障害者支援施設や児童福祉施設等で障害のある人の日中活動の場を確保し、預かりのサービスを提供します。宿泊を伴わない支援となります。障害者総合支援法に基づいた「障害福祉サービス」で、国が障害区分等により利用対象者を定めています。自宅において、入浴・排せつ・食事など家事や生活等に関する介護や相談・その他の生活全般にわたる支援を受けられます。利用対象は、国の定める障害支援区分に則って定められています。障害福祉サービスについて(厚生労働省)児童福祉法に基づいた通所支援サービスで、障害のある子どもが利用できます。児童発達支援は未就学の子ども、放課後等デイサービスは就学児童(小学生・中学生・高校生)を対象としています。児童発達支援・放課後等デイサービスでは、各事業所によってそのサービス内容が異なります。習い事や療育に特化した支援を行う場合もありますが、保育園や学童保育のように子どもたちが日中の時間や放課後を過ごす、預かり型の支援を行う事業所もあります。障害者総合支援法のうち「地域生活支援事業」に含まれており、市区町村が地域の実態にあわせた基準を設けて運営しています。移動が困難な人が、ガイドヘルパーによる外出の支援を受けられます。冠婚葬祭や投票、文化的活動などの社会生活を送る上で欠かすことのできない外出や、イベントへの参加や観劇など余暇活動などの社会参加のために利用することができるとされています。市区町村によっては、通学や通園の移動支援を行う場合もあります。また、類似サービスとして「同行援護」「行動援護」があります。利用対象や内容が市区町村により異なる移動支援に対し、同行援護と行動援護は、全国どの市区町村でも同じ基準が適用されます。同行援護は視覚障害のある人を対象としており、行動援護は重度の知的障害、精神障害のある人を対象としています。児童福祉法に基づき市区町村が主体となって行っている、未就学児向けの支援サービスです。保護者が子どもを見ることが一時的に困難になった家庭のために、保育所、幼稚園、認定子ども園、地域子育て支援拠点などが一時的に子どもを預かります。別名「一時保育」ともいいます。一時預かりのスタイルは主に以下の3つにわけられます。①幼稚園・保育所に通っていない子どものための「一般型」子どもが保育所、幼稚園、認定こども園等に通っていない場合に利用することができる②幼稚園に在籍する子どものための「幼稚園型」普段の幼稚園の教育時間の前後、または春休みや夏休みなどの長期間の休業日に幼稚園等において一時的に預かってもらうことができる③ 保育施設の一般利用に空きがあるときに利用可能な「余裕活用型」利用している子どもの数が定員に達していない保育施設で保育が行われ、預かる子どもの人数は、定員の範囲内で行うようにと取り決められているレスパイトサービスの利用方法は?どんな人が利用できるの?出典 : 障害者や障害児を対象とした福祉サービスを利用するには、受給者証の申請が必要です。申請窓口や手続きは、そのサービスの根拠法によって異なります。なお障害者総合支援法や児童福祉法における「障害者」「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用にあたり手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。ショートステイや居宅介護は障害者総合支援法の「自立支援給付」に含まれ、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。そのため、国が障害区分等により利用対象者を定めています。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要(厚生労働省)3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定を審議する「審査会」で二次判定が行われます。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成(セルフプラン)も可能です。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの契約・利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。※費用について※利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年の収入に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要(厚生労働省)移動支援・日中一時支援は障害者総合支援法のうち「地域生活支援事業」に含まれ、市区町村が地域の実態にあわせた基準を設けて運営しています。具体的な利用手続きは市区町村やサービスによって異なるため、申請窓口で必要書類や手続きについて確認しておくと良いでしょう。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請この際、具体的な手続きや必要書類について確認しておきましょう。2.利用手続き具体的な手続きは、市区町村やサービスごとに異なります。3.支給決定市区町村からサービスを受けるに適当だと判断されると、受給者証が申請者に通知されます。4.サービスの契約・利用開始サービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。※費用について※利用にかかる料金は、自治体により異なります。障害福祉サービスの利用者負担区分により、サービスの1割負担が基本となります。世帯の収入の状況によっては負担のない場合もあります。詳しくは市区町村の福祉担当窓口へお問い合わせください。児童発達支援・放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づいた「障害児通所支援」に含まれます。1.福祉窓口に相談児童相談所・障害児相談支援事業所や、市区町村の福祉担当窓口などに相談します。利用したいサービスや子どもの状況を聞かれることが多いので、母子手帳を持参したり、過去に子どもの発達について相談した履歴や発達検査の受検歴があれば、その時の状況や結果なども伝えたりするとよいでしょう。2.施設見学&相談実際に利用したい事業所に行き、見学します。その際に利用についても具体的に相談しましょう。利用したいサービスが決まったら、相談支援事業所で受給申請に必要な障害児支援利用計画案を作成してもらうか、セルフプランで作成します。3.障害児通所給付費支給申請をする受給者証取得のため市区町村の福祉担当窓口に障害児通所給付費支給申請をします。必要な書類は市区町村によって異なりますので、事前によく確認しておきましょう。4.調査・審査受給者証を発給するための利用要件を満たしているかどうかや、子どもに必要だと考えられる適切なサービスの量(日数)について、市区町村の支給担当窓口によって検討されます。面接調査や訪問調査で、状況や利用意向の聞き取りやアセスメントを行う自治体もあります。5.支給決定支給が決定したら、受給者証が交付されます。受給者証には受けられるサービスの量についても記載されています。交付を受けたら障害児支援利用計画を作成します。相談支援事業所が受給者証の給付決定内容に基づき、利用を希望する事業所と連絡し調整して作成してくれます。6.サービスの契約・利用開始受給者証と障害児支援利用計画(もしくはセルフプラン)を持って利用する事業所に行き、サービスを受ける契約手続きをします。※費用について※放課後等デイサービスは障害児通所給付費の対象となるサービスです。受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスが受けられます。利用した日数に応じた1割負担分の利用料を支払いますが、前年度の所得によりひと月に保護者が負担する額の上限が決められているので、利用する日数が多くても下記の金額以上の負担は発生しません。また、自治体によっては独自の助成金がある場合もありますので、問い合わせてみましょう。【児童発達支援・放課後等デイ】障害児支援利用計画って?作成の依頼先やセルフプランも紹介一時預かり事業の利用対象子育て家庭の保護者が以下の理由で利用することができ、理由によって利用できる日数は異なります。・保護者の育児にともなう心理的、肉体的な負担を軽減したいとき・保護者の就労支援・病気・出産・看護・冠婚葬祭などの場合また、施設での一時預かりを実施するのが難しい場合、子どもの自宅に直接職員が訪問をする「居宅訪問型」を選択できる場合もあります。ただし、以下の3つの要件のうちのどれかを満たしている必要があります。・子どもに障害、疾病等があり、集団保育が著しく困難であると認められる・ひとり親家庭などで、保護者が一時的に夜間、および深夜の就労を行っている・離島その他の地域において、保護者が一時的に就労を行っている利用対象は基本的に就学前の子どもですが、自治体や各施設によって預けることのできる月齢が異なります。一時預かり事業の利用方法一時預かりの申し込みを行いたいときには、直接各施設にお問い合わせの上で申し込みを行う場合と、まれに市役所の窓口で申し込みを行う場合の2つがあります。直接施設へ申し込むときには、一時預かりのための登録を行う必要があります。一時預かりのサービスの利用の際には利用登録と申請書の提出が求められます。市役所の窓口で申し込みを行うときには、窓口にて案内される申請書に必要事項を記入し、申し込みを行います。※費用について※一時預かりにかかる費用は自治体や実施施設によって異なります。料金が1時間単位で決められている場合もあれば、半日・1日単位で決められている場合もあります。だいたい、1日あたりに換算すると1,500円から5,000円くらいの幅の中で料金が定められていることが多いようです。まとめ発達障害のある子どもの保護者のなかには、「育児で疲れても、頼れる人が少ない」「子どもを預けることに罪悪感がある」と考えている方もいるかもしれません。育児に忙しい保護者が休息をとることは、保護者自身にとってはもちろん、子どもにとっても大切なことです。育児による心身の疲労を一人で溜め込むのではなく、サービスを利用して休息をとることを検討してみてください。
2020年11月05日子どものかんしゃく・パニックが続くと、親だって泣きたい気持ちに...Upload By 楽々かあさんこんにちは。「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換」著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回は、親も「一体どうしたらいいの!?」と、お手上げになりがちな、子どものかんしゃく・パニックへの対応です。子どもがひっくり返って大暴れしたり、どんなにあやしても泣き叫び続けたり、とにかく「ヤダ!」とテコでも動かなかったり、もう全てがワヤクチャのグダグダで手がつけられなかったり……。こんな子育ての修羅場では、親だって泣きたい気持ちにもなりますよね(私も過去の惨劇を思い出すと、なんだか胃が痛くなって参りました)。まずは、自分も子どもも責めずに、「子どものかんしゃく・パニックは、天災と同じ」だと、一旦受け止めるといいでしょう。つまり、「起こってから」では、大自然の猛威の前に1人の人間ができることは限られるのです。基本は、ただひたすらに、嵐が過ぎ去るのをじっと待つのみ。できれば、子どもの暴風雨のような感情に親自身が巻き込まれないように「落ち着いて、冷静な行動を」できればベストだとは思いますが、そこに貴重なエネルギーを使い果たすよりも、もっと効率がいい方法があります。それは「防災」!……そう、子どものかんしゃく・パニックは、予防こそが肝心なのです。「子どものかんしゃく・パニック対応は、予防が9割!」だと、私は思っています。その具体的な予防法について、自ら泥に塗れ、大衆の面前で赤っ恥をかき、途方に暮れつつ我が子を担ぎ上げ、暴れ馬に蹴られながらヨレヨレになって家に辿り着いた過去の数々の経験を基にお伝えします。(拙著「120の子育て法」ではかんしゃく・パニックの見分け方や対応法をより詳しく紹介していますので、よければご参照下さい)参考書籍『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』大場美鈴・著(ポプラ社/2017刊)Upload By 楽々かあさんまずは「ハザードマップ」のように、かんしゃく・パニックが起こりやすい状況を心得ておくと、きっと役に立つでしょう。ズバリ、子どものかんしゃく・パニックにつながりやすい、3大危険地帯は…・理屈じゃないこと・予測のつかないこと・ガマンのしすぎこれらの、子どもが不安感や不満感を強く感じることが引き金となり、「気持ちを分かって!」「今すぐ助けて!」と、感情が爆発して火のように泣き叫んだり、キャパ・オーバーで固まってフリーズしたりするのだと思います(私の経験上!)。理由さえ分かれば、親も落ち着いて子どもの気持ちに共感することもできますし、そこから助けやすくもなります。そして、かんしゃく・パニックに陥りがちなパターンを掴むと、予防策もずっと立てやすくなります。子どものかんしゃく・パニックは「予防」が9割!出典 : 親と子双方にとって負担が大きい子どものかんしゃく・パニックは、なるべく事前に回避し、ひんぱんに起こらないようにするのが大事だと思います。地震やゲリラ豪雨と同じように、親は子どもに降りかかる全てのリスクを予測できるわけではありませんが、できる範囲で「防災」し、1回でも2回でもかんしゃく・パニックに陥る回数を減らし、たとえ回避できずとも、できるだけダメージを減らせれば、そこから「復旧」しやすくもなります(つまり、早めに泣きやめるかも!)。そして、頻度が減れば減るほど、親もより余裕をもって対応しやすく、家庭内での2次災害も回避できますから……。では、それぞれの危険地帯別に、かんしゃく・パニックの具体的なコツと予防法を、うちの実例を交えてご紹介します。出典 : 子どもにとって「理屈じゃないこと」は、生理現象と感覚の過敏さが、元を辿れば「震源地」であることが多いように思います。「お腹すいた」「疲れた」「眠い」…あるいは、トイレや体調不良で「お腹痛い」などの不快な生理現象は「理屈じゃない」ので、親がどんなに言い聞かせようと、どうにもなりません。そこで、例えばうちの場合、試行錯誤の末、幼い子ども3人連れで穏便にスーパーのお菓子売り場を通過するためには、「開店直後〜午前10時台までか、お昼寝とおやつを済ませた後〜帰宅ラッシュ前の午後4時台までに、30分以内で手短に任務を遂行するのがベスト」という結論に至りました(それが難しい場合は宅配を活用するか、パパが子守りしている間に1人でゆっくり行く!)。また、小さな子や体質的に感覚が敏感な子は、音・ニオイ・光・色・形・味・食感・触感など、要る情報・要らない情報を上手に分別できずに鮮明なまま受け取るので、大人が気にも留めないようなことが、どうしても、ど〜〜しても、気になってしまいます。これ自体は「感受性の豊かさ」の現れでもあるので、決して悪いことではありません。でも、過剰な情報が引き金となって、「怖い」「気持ち悪い」などの強くネガティブな感情が呼び起こされると、その場で座り込むことも……。でも、感覚的な不安感や嫌悪感も「理屈じゃない」ので、説得のしようがありません(大人だって「生理的に無理!」ってこともあるでしょう)。ですので、もし急に子どもがテコでも動かなくなったら、「何か、感覚的にすごく苦手なモノがあるのかな?」と、周りをよく観察するとヒントが見えてきます。そして、次からは、予めそれを回避するか自衛の工夫をすれば、無事に済むこと、多少マシになることも多いのです。例えば、うちの次男は小さな頃、聴覚過敏がありました。当時、彼は大好きな歴代ライダー大集合の特撮映画のために、人生初の映画館に果敢に挑戦しましたが、迫力満点の音響に顔面蒼白でフリーズし、敢えなく母と無念の途中退場。どんなに大好きなことでも、無理なものは無理だったのです(この時の落ち込みようと言ったら……)。その数年後。次男は、今度は戦闘シーン満載のロボット・バトルの映画で再チャレンジ。丸腰で挑んだ前回の反省を活かし、「おれ、イヤーマフ持ってく」と自ら戦闘準備。派手な爆発音が続くところだけ装備し、ドヤ顔で無事ミッション完了致しました。「理屈じゃないこと」は、回避や自衛の工夫で、本人の負担感や失敗体験を減らすことができるでしょう。出典 : 子どもは人生経験自体が少なく、ましてや、先のことの見通しや、いつもと違うこと、臨機応変な対応が苦手な子は尚更、目の前で「予測のつかないこと」に遭遇すると頭の中が真っ白になり、言葉でそれを大人に上手に伝えられずに、ただ「泣き叫ぶ」しかできないこともあります。そこにあるハズのものがなかったり、ないハズのものがあったり、できるハズのことができなかったり、人生で初めて未知の物体Xに遭遇したり……「こんなの、知らないよ!聞いてないよ!!」って、大混乱なのです。子どもに降りかかる全ての災難を予測できずとも、台風の進路予想図のように、事前にある程度の「心の準備」が可能な場合も結構あります。その際、「こういう可能性もあるけど、それでもいい?」「もし、〇〇できなかった時には、どうしようか?」「もし、〇〇の時には、こうすればOK」等の声かけで、例外の可能性に触れつつ、安心させてあげるといいでしょう。例えばうちでは、大人気のキャラグッズ入手のため、コンビニのハシゴに繰り出す前に、「もし、3軒とも〇〇メダルが売り切れてたら、代わりにアイスクリーム買って帰るけど、それでもいい?」「もし、〇〇ジャーの食玩ミニプラがお店になかったら、どうしようか?」などと、事前に確認や提案・相談をしつつ、本人が納得できてから出陣すると、「なかった」時のダメージをかなり減らせ、「最終奥義!ひっくり返り」の発動も未然に防ぐことができました。その際に、図や絵を併用して説明したり、メモなどを持たせたりすることで、納得し安心できるお子さんもいるでしょう。Upload By 楽々かあさん特に、うちでは初めての学校行事は、パニック多発地帯でした。そこで、数々の失敗経験を活かし、例えば、運動会では、上のような出発から帰宅までの全体の流れ、トイレチャンス、お昼の待ち合わせなどを書き込んだ「うちの子専用プログラム表」をつくって、当日体操服のポケットに入れました。すると、子ども達はお守りのように何度も見返し、最後まで比較的落ち着いて参加することができました。(学校配布のプログラムにメモを書き込むだけでもOK)。また、高学年の修学旅行などの前には、一緒に現地の宿泊施設のHPを見たり、参考写真や動画を見せたりで、事前に「イメージをつける」と、かなり不安感を減らすことができたようです。そして、特にこだわりの強かった長男には、「予測のつかないこと」とその対処法を思いつく限り書き出した「ハプニング・リスト」を一緒につくったことも。彼は、「それでも、人生には想像できないほど、予測不能なことは沢山ある」と、気づいてくれました。「予測のつかないこと」は、事前に説明したり、イメージをつくって心の準備をすると、安心して取り組みやすくなるでしょう。出典 : そして、うちでは「理屈じゃないこと」「予測のつかないこと」以外のほとんどは、「ガマンのしすぎ」が、かんしゃく・パニックの原因でした。親にすれば、手がつけられないほど泣き叫び、ひっくり返って暴れる我が子を目の当たりにすると、「ワガママ放題」のように思えることもあるでしょう(私もそうでした)。でも、そんな時実は「逆」で、それまでその子は誰かのために、めちゃくちゃガマンしてくれてたのかもしれません。河川の氾濫と同じで、少しずつ「小さなガマン」をずーっと溜め込んできて、なにかのキッカケで「決壊」しただけなのです。だから、根負けしてその時欲しがっているお菓子やおもちゃを買ってあげても、それは「本命」ではないので根本的には解決せず、次も同じパターンになりがちです。例えば長男の場合、弟・妹が次々と生まれ、十分に甘えさせてあげられないことが続いた時期に、よく近所の100円ショップで背中で床掃除されたものです。こんな時は、欲しいものを買ってあげるより、家で5分でもいいから、私の膝の上に乗せてあげたほうが、ずっと落ち着きやすくなりました。そして、それに気づいてからは、「子どもの不満・不安の水位が上がってきたな」と感じたら、親子の何気ないスキンシップを増やしたり、ほめほめ強化週間にしたり、子どもの話をなるべく否定せずに最後まで聴いたり……など、日頃の関わりを意識して増量すると「決壊」せずに済むことも多かったです。また、今の環境の中で、知らず知らずのうちに、その子に大きな負担がかかっていることもあります。例えば、前述の次男のように聴覚過敏の傾向がある子は、学校で「教室が騒がしい」などの状態が続いた場合、最初はガマンできていても次第につらくなることも。すると、いつもなら軽々と乗り越えられるハズの、ちょっとしたハードルがどうしても超えられないこともあるでしょう。ですから、もしお子さんに、登校直前に突然「行きたくない」と泣かれたり、いつもならできることを急に「ムリ」だと頑なに拒否されたりしたら、「ひょっとして、なにかすごーくガマンしていることがあるのかな?」と、一旦受け止めるといいでしょう。そんな時は、まずは子どもの話をじっくり聴き、「よくがんばったね」「それは大変だったね」など、気持ちに共感してあげるといいと思います。その上で、本人・家庭でできること、学校に配慮をお願いするなどで環境側でできること、その子に合った環境を選ぶこと……など、現実的な選択肢から柔軟に対応できるといいでしょう。「ガマンのしすぎ」は、日頃の関わりと環境の改善で、負担や不満やストレスを溜め込まずに済むかもしれません。それでも「ギャーッ!」て、泣かれた時には……出典 : 子どものかんしゃく・パニックは、一見、大人には「ワガママ」「ダダをこねている」ように見えても、本人は「理屈じゃない!」「知らない!聞いてない!」「もうコレ以上ムリ!」と思っているのではないでしょうか。ましてや、今は新型コロナウイルスの影響下で、大人も子どもも、予測がつかなかったり、予定変更を余儀なくされることばかりですし、今後の状況次第では、再び子ども達に何かとガマンを強いざるを得ない可能性だってあるかもしれません。それでも、自然災害と同じく、親はできる範囲での「防災」を意識すればOK。その上で、子どもに「ギャーッ!」て泣かれた時には、私は「こういう時もある。しゃあない、しゃあない」と受け流したり、「かんしゃく・パニックで死にゃあしない!」と開き直ったり、「これで、長男の経験値が5ポイント上がった」と、成長の栄養として受け止めるようにもしました。実際、うちでは子ども達の成長に伴い、感覚の過敏さが緩和され、人生の経験値が貯まることで、かんしゃく・パニックの頻度も自然と減っていきました。子どもにどんなに泣かれたって、一生泣き続けることはありません。それぞれのご家庭の平和を、心から願っています。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年10月19日発達障害のある子どもが抱えがちな困りとは出典 : 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害です。得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困りごとが発生します。発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごとは十人十色です。特性や現れる困りごとによって、大きくASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのタイプに分けられます。●自閉症スペクトラム障害(ASD)自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などが統合されてできた診断名です。英名のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと略されることもあります。主な特徴として、以下のようなものがあります。・言葉のコミュニケーションが難しい(言葉の裏にある意味を汲み取るのが難しいなど)・人と関わることが苦手(目を合わせない、空気を読むのが苦手など)・こだわりや興味に偏りがある(予定が変わるとパニックになってしまう、同じ動きを繰り返すなど)また、感覚に関する過敏性や鈍感性を伴うこともあります。●ADHD(注意欠如・多動性障害)ADHDは、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、以下のような特徴があります。・不注意…物事に集中できず、忘れっぽい・多動性…落ち着きがなく、じっとしていられない・衝動性…自分の感情や行動をコントロールできず、衝動的に動いてしまうこれらの要素の現れ方の傾向は、「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」というように人によって異なります。●学習障害(LD)学習障害(Learning Disabilities:LD)とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。主に以下のような特徴があります。・ディスレクシア(読字障害):文字を読むのが苦手など・ディスグラフィア(書字障害):文字を書くのが苦手など・ディスカリキュリア(算数障害):計算や算数が苦手などと呼ばれることもあります。発達障害のある子どもには、その特性から困りごとが生じることが多くあります。発達障害のある子どもが抱えやすい困りごとの例を紹介します。●自閉症スペクトラム障害(ASD)がある子どもの困りごと・言葉の遅れ周囲の大人や同年代の子どもたちと言葉でやりとりすることができず、自分の希望を伝えたり、相手が何をしてほしいのか理解することが難しい。・周囲とのコミュニケーションが苦手周りの子どもとコミュニケーションを取ることが苦手で、一人遊びをしていることが多い。そのため周りの人から仲間外れにされたり、集団で活動をすることが上手くできずに注意されたりすることがある。また相手が何をしてほしいのか理解できずにケンカになったり、自分の気持ちが分かってもらえないためにかんしゃくを起こしたりして対人トラブルが生じることもある。・こだわりが強い・変化が苦手同じおもちゃでないと遊ばない、スケジュールが急に変わると活動できないなど、日常生活に支障が出るような強いこだわりがある。周囲の人からどれだけ注意されてもこだわりを直すことは難しいので、わがままだと誤解されたり、無理やりこだわりをやめさせられそうになってパニックを起こしたりすることもある。・癇癪・自傷行動思いがけないことや気に入らないことがあるとパニックになったり、激しい癇癪(かんしゃく)を起こしたりする。また、頭を壁などにぶつける、髪の毛を抜く、手や爪を噛むなどして自分を傷つけてしまうこともある。・感覚過敏光や音に敏感で、そういった刺激を嫌がることがある。感触にこだわりがあり、決まった服以外着られなかったり、食べ物の好き嫌いが多くて偏食があったりする。過敏であるがゆえに刺激を避けようと活動範囲が狭くなったり、人との関わりを避けることもある。・感覚鈍磨感覚の反応が鈍くて刺激や痛みを感じにくいことがある。そのため声をかけられても気づかなかったり、ケガをしても気にしないことがある。また、自分からより強い刺激を求めて危ない行動をとったりすることもある。●ADHD(注意欠如・多動性障害)がある子どもの困りごと・課題に集中できない話を聞いたり、本を読み続けたりすることが苦手。やるべきことがあっても、少ししたら他のことを始めるため、周囲の人から注意されることがある。・忘れ物や不注意が目立つ忘れ物や、うっかりミスが多い。片付けや整理整頓も苦手で、どこに何をしまったのかも忘れてしまうことがある。約束や課題の〆切なども忘れてしまうことが多いため、対人トラブルや周囲から叱責されることが多くなりがちである。・我慢ができず、感情がコントロールできない:じっと座っていることが難しかったり、順番を待つことが苦痛である。そのために周囲の人とケンカになってしまうこともある。感情のコントロールが苦手で、カッとしたりイライラしたりしやすくて、些細なことでもつい手が出てしまうことがあるので、対人トラブルになりやすい。・行動がコントロールできない刺激に敏感ですぐ気が散ってしまったり、おしゃべりがやめられない。先生の指示で動いたり周りと合わせて行動したりするのが苦手なので、集団行動をとったり、周りと同じペースで物ごとに取り組むことが苦手である。●学習障害(LD)がある子どもの困りごと・読むことが苦手読み間違いの多さや、読むことの遅さ・たどたどしさがある。また、読めたとしても非常に疲れてしまうことがある。・書くことが苦手文字の形を正確に書くことができない。文法やマルや点の打ち間違いが多い。文章で表現することが苦手。・算数が苦手数を理解したり、覚えたりするのが難しい。計算ミスが多かったり、計算が遅かったりする。数式を用いて考えるのが苦手なので、複雑な計算などがなかなかできない。・なぜできないのか理解してもらえない学習障害の子どもは苦手なこと以外はそれなりにこなせることが多く、「なぜ他のことはできるのに、これだけできないのか?」と困りごとを周囲の大人に理解されにくい。怠けているのではと誤解されて注意されることで、ますます意欲が低下するという悪循環が生じやすい。※リストは行動の一例です。その障害があるすべての子どもに該当するとは限りません。発達障害とは?種類・症状・進路・発達支援の重要性について発達障害のある子どもには、どんな関わり方が必要とされている?出典 : 発達障害のある子どもは、特性が理解されないまま、「困った子」「できない子」として誤解され、叱られることで、やる気や自信をなくしてしまいがちです。不登校や引きこもり、うつ、反抗挑戦性障害といった二次障害を防ぐためにもこれらの兆候を見逃さないことが重要です。その子の困りごと・発達状況や障害特性に合わせた関わり方をすることにより、できることを増やしたり、隠れている力を引き出したりすることができます。「困った子」ではなく「困っている子」と考え、早期にサポートしていきましょう。その際、発達障害のある子ども自身のスキル獲得を求めるのみでなく、環境を整えたり、支援をする側の対応を工夫することが大切です。発達障害のある子どもへの声かけでは、以下のことに気をつけてみましょう。①否定語を使わず、肯定語を使った声かけ「〜しないで!」「〜はダメ!」といった否定語を使った声かけは、人には伝わりづらいと言われています。また発達障害のある子どもの場合、その特性による困りごとから周囲に注意されたり否定されたりする頻度が高く、自信ややる気をなくしてしまうこともあります。「その行動の代わりにどんな行動をしてほしいのか?」を考え、否定語ではなく肯定語を使った声かけに変換して伝えるようにしてみましょう。(肯定語を使った声かけ・例)「走らないで!」→「歩いてね」「一人で机を運んじゃダメ!」→「友達と一緒に運んでね」②具体的で、短い指示を出す何度伝えても、子どもの行動が変わらない…そのようなときは、指示が本人に伝わっていないのかもしれません。発達障害のある子どもは、空気を読んだり、口頭指示を理解したりすることが苦手である場合も多く、指示はできるだけ具体的に、短く伝えることが大切です。(具体的で短い指示・例)「ちゃんと片付けて」→「ブロックを、あそこの箱にいれてね」「ランドセルと水筒と帽子を片付けて、宿題をやるまでゲームはなし」→「(指示を一つずつ分解する)ランドセルをしまってきて。(できたら)水筒と帽子も片付けてね。(できたら)宿題をやろうね。(始めたら)終わったら、ゲームしようね」特性による困りごとが生じている場合、特性に応じた環境がないと、いつまでも失敗を繰り返してしまうことになります。怠けたりふざけたりしているわけではないのに、失敗して叱責を受けることが多いと、子どもは次第に自信ややる気をなくしてしまいます。そのため、発達障害の特性に応じて「失敗しづらい環境」を大人が設定することが必要です。(特性に応じた環境設定・例)こだわりが強く、いつもと違うスケジュールになると癇癪を起こしてしまう。また、口頭指示を理解することが苦手な子どもの場合→予定の変更がある場合は、事前に伝えておく。その際、表や写真を使って視覚的に伝えるようにする衝動性が強く、宿題をしていてもすぐに離席して別の遊びを始めてしまう子どもの場合→あらかじめ、気になってしまうものを視界から除いておく。机は、壁など他のものが目に入りづらい場所に設置する例えば宿題のプリント3枚を仕上げられるよう、子どもをサポートするとします。最終的な目標は「プリント3枚を綺麗に仕上げること」ですが、初めからそこをゴールにして子どもと関わっていると、「字が綺麗に書けていない」「まだ半分しか終わっていない」など注意ばかりになってしまい、「もうやりたくない」と子どもが取り組まなくなってしまうことも。そこで「スモールステップ」の考え方で子どもと関わることで、少しずつ子どものできることを増やすことができます。「まずは3問解く」「10分は集中する」など小さく分解した目標を設定し、それができたらほめたり息抜きの時間を取り入れたりする。その後も少しずつ高い目標を設定していくことで、子どもの「できた!もっとやりたい」という気持ちを引き出しながらゴールに向かうことができます。このように、ひとり一人異なる子どもの発達状況や特性、困りごとに応じて関わり方を変えることで、困った行動が減り、できることが増えていきます。しかし、これらの関わり方を家庭のなかで実践しようとしても、親の忙しさや余裕などの状況によって難しい場合もあるでしょう。また、保育園や幼稚園・小学校ではこういった個に合わせた関わりをしてもらえないというケースもあるはずです。そこでおすすめなのは、家族だけで困りごとを抱えず、さまざまな専門機関やサービスを利用してみることです。家族だけで抱えず、専門機関やサービスを利用することが大切出典 : 世の中には、子育てや発達障害のある子どもをサポートする、さまざまなサービスがあります。上手に活用することが子どもの力を育み、家庭での生活の質向上にもつながります。家族だけで抱えず、専門機関やサービスを利用してみましょう。発達障害者支援センターとは発達障害のある子ども、大人、またその関係者をサポートするための専門機関です。現在は全国に67個のセンターがあり、保健・医療・教育・福祉などの機関と連携を取りながら、発達障害のある方やご家族からの相談に応じています。全国各地にある施設に直接通うことで、発達障害のある子どもが必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後等デイサービスです。自立支援や、遊びや学びの場の提供、習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。また、民間の幼児教室や学習教室で、発達障害やその傾向のある子ども向けの療育を行う場所もあります。保健センターは、地域住民に対し、総合的な保健サービスを提供する施設です。乳幼児健診で保健センターを利用する方が多いようですが、そのほかにも子育てに役立つさまざまなサービスを受けられます。児童相談所は、子育ての悩みや障害児福祉といった、子どもに関わるあらゆる相談に応じる機関です。子育て支援センターは、主に乳幼児の子どもと子どもを持つ親が交流を深める場です。気軽に遊びに行くことができ、子育てについての不安や悩みも相談することができます。発達障害のある子ども向けの幼児教室・学習教室や、オンラインサポートも利用できる出典 : ジュニアの幼児教室・学習塾では、発達の気になる子どもへの指導を行っています。その特徴を紹介します。・完全個別指導:お子さまだけのオリジナルカリキュラムを作成し、徹底サポート・発達の専門家が監修の教材:10,000点以上の充実教材とプログラムをベースに、お子さまの特性や興味に合わせたプログラムで支援・学習面、ソーシャルスキル面いずれもにアプローチする授業・科学的理論に基づくアプローチ:お子さまと関わる指導員による、科学的理論に基づいた最適なアプローチ・ペアレントトレーニング講座:ペアトレや面談等により、教室と家庭の両輪でサポートする体制LITALICOジュニアの幼児教室・学習塾では、「マンツーマン特化型」の9ヶ月コースを開講しています。このコースは、子どもたちへの指導だけでなく、保護者向けペアトレや面談も充実しています。9ヶ月を一区切りとしてゴールを設定し、教室と家庭の両輪でサポートしながら、スモールステップで「できた!」を積み重ね、子どもが無理なく楽しく力を育めるよう支援をしています。・問合せ先LITALICOジュニア幼児教室・学習塾(※)は、関東を中心に展開しています※LITALICOジュニアの幼児教室・学習塾は、診断の有無にかかわらず利用可能な教室です。福祉サービスではないため、通所受給者証は必要ありません。電話でのお問合せ:0120-901-835受付時間:月~金(祝日除く)10:00~17:00発達ナビPLUSは、 発達障害や凸凹に関する専門家チームによる、オンラインサポートサービスです。「発達ナビPLUS」の会員になると、4つのサービスラインナップすべてにアクセス・参加することができます。勉強会や教材でさまざまな知識・情報を得られたり、悩みをメールで相談することができます。・ 質問もできる!オンライン勉強会(毎週開催)・専門家にメールで個別ケース相談・ペアトレの考え方を取り入れた子育てヒント動画・専門家監修!支援のプロも活用する特別支援教材オンラインなので、お住まいの地域に関わらずご自宅でサービスを受けることができます。まとめ発達障害がある子どもは、得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから困りごとが発生します。環境を調整し、特性に合った学びの機会を用意することで、困りごとは軽減されると言われています。家庭のみで困りごとを抱えず、専門機関やサービスを利用しながら、その子に合ったサポートをしていくことが大切です。
2020年10月03日親子で学校がしんどかった頃、支え続けてくれたスクールカウンセラー出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。現在、新型コロナウイルスによる影響下で、登校をしぶりがちだったり、学校生活に戸惑いや負担感を感じるお子さんも、少なからずいるでしょう。また、親だって、子育ての悩みや不安があっても、他の人には気軽に相談しづらい方もいるのではないでしょうか。そんな「学校、しんどいな」「子育て、大変だな」という時、うちでは長男が小1の頃から現在まで、スクールカウンセラーを親子で活用し、支え続けて頂きました。そこで、今回はスクールカウンセラーの基本的な利用のしかたと、相談できることや活用法などを、うちの親子の実体験からご紹介します。出典 : 「スクールカウンセラー」は、学校の中で、児童・生徒、保護者、教員などの心のケアを中心に支援をしてくれる身近な相談役です。一般的に、臨床心理士・公認心理師・精神科医などの専門の資格がある先生が配置されることが多く、子どもの発達面についても詳しいことが多いようです。ただし、現在その配置数は年々増加傾向にあるとはいえ、各学校専属のカウンセラーはまだ少なく、大抵は自治体ごとなどで複数の学校を巡回している先生が多いかと思います。うちでお世話になったスクールカウンセラーの先生も、公立小学校も私立中学も、複数校のかけ持ちです。スクールカウンセラー等活用事業:文部科学省こういった事情から、スクールカウンセラーの利用は「第2・第4の○曜日」など、決まった回数、決まった曜日が相談日になっていることが多いでしょう。また、自治体によっては、在籍校ではなく、近隣の他校に訪問する必要があることも(あえて、他校での相談を希望する方もいるようです)。ですので、もし、「ちょっと相談してみようかな?」と思ったら、まずは学校のお便りなどをチェックしてみるといいでしょう。うちの小学校では、月に一度配布される「スクールカウンセラーだより」に、先生の来校日や予約のしかたが書いてあります(分からなければ、管理職の先生等にお問い合わせを)。うちの小学校の場合、予約は予約担当の先生(教頭先生、特別支援コーディネーターの先生)か、事務職の方に電話で希望日時を伝えて調整していただきましたが、「利用日時を在籍校の先生方に知られたくない」などの場合は、カウンセラーの先生の来校日に電話をして、本人に直接予約を取ることもできるようです。また、一度利用すると、次の予約を相談時間内に口頭で取ることもできました。うちでは長男にも小学生の頃から「予約の取り方」を電話の横で一つひとつ教え、自分で予約をして1人でも相談できるようになり、中学でも(勝手に)活用しているようです。スクールカウンセラーって実際どう?話聴くだけ…?出典 : 「スクールカウンセラーって、実際どうなの…?」「話を聴いてくれるだけじゃないの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。でも、スクールカウンセラーの相談内容は、子どもの心のケアはもちろん、発達面の心配や不登校の悩み、学校の先生や友人関係のこと、いじめ対応、進路や就学の相談、家庭問題や親自身のこと…など多岐に渡り、実は「話を聴く」以外の働きかけも沢山あるんですよ。実際に、うちでは主に…・子どもの発達のこと・学校との連携や仲介・子ども自身の相談・代理相談と親のケア…などを相談してきました。また、最初に、「ここで話したことには『守秘義務』が課され、本人から希望しない限り、学校の先生なども含めて、他人に知られることはありません」と、(子どもにも)説明がありました。では、それぞれ、うちではどう相談し、学校生活に活かしてきたのか、可能な範囲で紹介しますね。出典 : 「子どもの発達のことが気になるんだけど、専門の医療機関は敷居が高い」「初診の予約がなかなか取れない」などや、「発達障害の診断はついたものの、その後どうしたらいいのか分からない」「検査結果が上手に学校生活に活かせない」などでお悩みの場合、スクールカウンセラーが助けになってくれるかもしれません。私は、長男が小1で発達障害の診断がついた頃、初めてスクールカウンセラーを利用しました。担当してくれた先生は、臨床心理士の資格もあり、発達面についても詳しい方でした。当時の私は「発達障害」という言葉を知ったばかりで、右も左も分からない状況の中、知能検査の結果などを持参しながら、「専門病院でこんな風に言われたのですが…」と、恐る恐る相談しました。すると、カウンセラーの先生は、数字だけではよく分からなかった知能検査の結果を見立てながら、「この数値が高いので、〇太郎君はこういうことが得意で、こういうことが苦手だと思います」「こことここの差がこんなに開いているので、学校では〜することが、かなり負担なんじゃないかな」など、ひとつひとつ詳しく解説してくれ、「あー、そういう意味だったのか!」と、ストンと納得できたことを覚えています。そして、当時の長男は漢字書き取りの宿題を泣くほど嫌がり、「国語のある日は学校行きたくない」と、毎朝登校しぶりが続いていました(国語って、毎日ありますよね…)。私も親としての自信をすっかりなくして抑うつ的な気持ちが続き、外出するのもつらく感じていました。こんな悩みは、幼稚園からの長いつき合いでも、普通に元気に学校に通えているお友達のママ友さんにも打ち明けられず、私は1人で抱え込み思いつめていたので、話を否定せずに聴き、一緒に「どうしたらいいか」考えてくれる存在がいたこと自体が、何よりの助けになった気がします。私も、カウンセリングの最初の数回は泣いてばかりだったように思いますが、相談を重ねるうち、次第に気持ちや頭の中が整理され、長男に対しても、学校に対しても、なんらかの前向きな行動につなげる力を頂きました。また、長男のことが落ち着いてきてからも継続的にカウンセリングをお願いし、その際、「発達障害の診断が出るほどではない」グレーゾーンの次男や長女のことも、最近の様子などを報告しながら一緒に成長を見守って頂きました。Upload By 楽々かあさん「担任の先生のやり方が我が子に合わないようだけど、モンスターペアレントだと思われないか心配」「配慮をお願いしたいけど、先生も忙しそうで言いづらい」「学校に理解を求めたいけど、口下手で上手に伝えられない」…などでお悩みの場合も、スクールカウンセラーを頼ってみてはどうでしょうか。私は子どものことで、学校に配慮や理解をお願いしたい時に助言を頂いたり、時には、スクールカウンセラーの先生が直接、担任の先生などに「カドが立たないように」上手にこちらの要望を伝えて下さったり…と、親と学校の間の仲介役となって調整して下さいました。また、私は長男が小学生の時、毎年担任の先生に「サポートブック」を作って連携をお願いしてきたのですが、その際も、担任の先生に渡す前に、スクールカウンセラーの先生に一旦チェックしていただきました。第三者の客観的な視点から、「学校に過剰な要求をしていないか」「担任の先生の負担にならないか」…などへのご意見を頂けたのは(お互いのためにも)助かりました。そして、子どもと担任の先生やクラスメイトとの関係が気になる時などは、スクールカウンセラーの先生が、実際に休み時間や授業中に教室の様子を見に行くことも。うちでは、校内で長男に声をかけてくれたり、クラスの子や他のクラスの先生からもそれとなく様子を聞いてくれたりしました。親は大抵、わが子の話からしか学校の様子が分かりませんし、また、一見その子の個性の問題に思えることでも、クラス全体の雰囲気や子ども同士の関係などが影響していることもあります。そこを、「〇太郎君は、クラスで全く孤立しているワケでもなさそうですよ」「今、教室が結構騒がしいようで、〇次郎君にはきついかも…」など、第三者の視点から様子を教えて頂き、私も安心できたり、家での接し方を変えたりすることができました。また、教室の状況次第で、管理職の先生方などにも連携を取って頂けるように働きかけてもくれました。出典 : こうして、なにかある度に、私はスクールカウンセラーの先生に相談してきたのですが、長男が小学校高学年になった頃、前述のように「自分で相談できるように」徐々に慣らしていくことにしました。その理由は、改善傾向にあるとは言え、発達障害・グレーゾーンの子に対する公的な支援体制は、(特に地方では)まだまだ十分とは言えず、また、子どもの成長に伴い、「なんでも親が解決!」とはいかなくなるからです。そして、思春期の子には、親には話しにくい悩みもあれば、時には親への不満だって出るのも健全な成長の証でしょう。だから、子どもが自分で、親以外の誰かに助けを求めたり、相談したりできる力を、親が間近でフォローできるうちから、ゆっくり身につけておこうと思ったのです。そこで、長男の場合、最初は親子面談で予約しました。私は「初回は挨拶程度でも十分」と考えていたのですが、まあ、よく喋ったこと!(笑)とにかく言いたいこと、誰かに聞いて欲しいことが沢山あった長男は、親以外でそれを否定せずに受け止めてくれる存在が身近にいたことが、すごく嬉しかったようです。それ以来、相談時間をとても楽しみにしていました(ちなみに、カウンセリングは授業中の時間帯でも可能なので、正当に教室を抜け出せるのも良かったようです)。そして、長男が自分1人で相談できるようになると、カウンセラーの先生は、中学受験前の面接の練習にもつき合ってくれたり、時には一緒に給食を食べてくれたりもしたようです。後日、お礼を伝えると、「〇太郎君と話すの、私もすごく楽しいんですよ。素直でユニークで、いろんなこと考えてて…」なんて聞き、私もなんだか嬉しくなりました。出典 : でも、カウンセリングに積極的になれる子ばかりではありませんよね。うちの次男もそうでした。次男は、5年生の頃、登校前になるとお腹が痛くなって、学校に行けない時期が続きました。そこで私は長男同様に、次男も一度、親子でカウンセリングを受けてみたものの、控えめで繊細な次男は「うーん、僕は『さあ、どうぞ、悩み事を何でも話して下さい』ってカンジが、どうも苦手なんだよね…」とのこと。なので、次男の場合、それ以降は無理に本人をカウンセリングに連れて行くことはせず、親だけでの代理相談で続けてもらいました。そこで、家での次男の様子や、お医者さんから聞いたことなどを詳しく伝えると、カウンセラーの先生は、「おうちではこんな風に接してみてはどうでしょうか?」と助言してくれたり、担任の先生や保健の先生などともやりとりしてくれ、いろんなことが複雑に絡まっていた当時の次男への「支援の中継地点」のようになって、働きかけて下さいました。そして、突然「不登校の子を支える親」となった私の心のケアも同時にして頂きました。子どもが学校に行けなかったり、その子の個性や親の育て方などに何か問題があるかのように周りから思われたりすることが続くと、親はどうしても自分を責めがちになりますから、同じようにつらい思いをされている方もいるでしょう。私自身も事態が長期化してくると、「一番つらいのは子ども」だと分かっていても、正直かなりストレスや疲労を溜めがちに…。こんな、親のほうもしんどい時期に、「自分を気にかけてくれる人がいる」「大変さを分かってくれる人がいる」というだけでも、かなり違うのではないでしょうか。どんなに大変な時でも「自分を孤独にしない」努力だけは、したほうがいいように思います(私の経験上!)。親子でスクールカウンセラーを利用してきて…出典 : こうして、小学校時代、私達親子は長い間継続して、スクールカウンセラーのお世話になってきました。そのおかげもあり、長男は「自分の言葉で、自分のことを説明する」のが、かなり上手になりました。そして、中学でも自分で定期的にスクールカウンセラーを利用しているようです(ほぼ、雑談をしに行っているだけみたいですが、本人は「超楽しい!」そうです)。そして、次男のことの相談時間の終わりに、私は中学で自分らしく過ごしている長男の近況などを伝えると、スクールカウンセラーの先生は目を細めながら、(少々手のかかる子だった)長男の成長を「〇太郎君、本当に良かったですね〜」って、一緒に心から喜んでくれました。でも、そのカウンセラーの先生はコロナ休校中の間に、いつの間にか転任されていきました。お別れのご挨拶もできなかったけれど、その後、心配をかけた次男も回復し、無事小学校を卒業して、「おかげさまで、お兄ちゃんと一緒に、毎日元気に中学に通ってますよ」って、いつか報告できたらいいな…と思っています。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年09月14日家で子どもと過ごす時間が増えると、正直キツイ!?出典 : こんにちは。「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換」著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。新型コロナウイルスの影響が長期化してきて、おうちで子どもと過ごす時間が増えたり、学校のスケジュールに合わせて様々な予定変更に対応しないといけなかったり……が続いていますよね。率直に伺いましょう。正直、キツイですか?……ですよね。どんなに可愛いわが子でも、一緒にいる時間が長くなったり、不安を抱えたままの生活が続いたりすれば、誰だってストレスを感じるのは当たり前です。ましてや、ちょっとしたお出かけにも何かと神経を使うし、お友だちとワーッと密に遊ぶ機会もつくりづらかったり、おじいちゃんおばあちゃんのおうちにも気軽に行きづらかったりと、子ども達がのびのびと遊ぶことが難しい状況です。親のほうも、テレワークや、きょうだい児のお世話をしながら、宿題を見たり遊び相手になったりですから、余裕だってなくなりますよね。さらには、繊細で不安感の強い子や、元気で活発な子の子育てをしていれば尚更大変でしょう。まずは、「こんな状況では、お互いにイライラするのは当たり前」だと思って、つい怒ってしまう自分がいても、必要以上にできないことを責めないのが大事なのではないでしょうか。その上で、「できる範囲」「気が向いた時だけ」「余裕のある時だけ」でいいので、子育てと親子のコミュニケーションをちょっとだけ効率UPする「声かけ変換」を、脳トレの1つだと思って試してみませんか?日々の小さな「イラッ」「ムカッ」だって、チリも積もれば大きなストレスになります。伝え方ひとつ、言い方ひとつで、子どもにちゃんと伝わる回数が増えれば、いつの間にか、子どもと過ごすおうち時間が少しだけラクに感じられるかもしれません。親子コミュニケーションの効率をUPする「声かけ変換表」がコレ!Upload By 楽々かあさんかつては怒ってばかりだった私・楽々かあさんが、うちの(ちょっと手のかかる)3人の子ども達を相手に、悪戦苦闘・試行錯誤し、長年の「うちの子研究」の末に、ようやくたどり着いた「子どもに伝わりやすい声かけ」を、[before]→[after]で一覧表にまとめたのが「声かけ変換表」です。2014年に私が手作りしたオリジナルの「声かけ変換表」がネットで拡散されて話題になったので、記憶力の良い方は覚えてくださっているかもしれませんね。あれから更に6年経って、その後の子ども達の成長や思春期のことなども踏まえてパワーアップした【決定版】が、新著刊行に伴って開設された「あさ出版特設サイト」より公開され、どなたでも無料ダウンロードできるんですよ。よかったら、プリントアウトしてご家庭の冷蔵庫やトイレの壁に貼るなど、毎日の子育てのヒントにご活用いただけたら嬉しいです。では、この「声かけ変換」の発想で、おうち時間でありがちな場面での小さな「伝わらない」イライラを減らす声かけのコツを、うちのリアルな「実例」でご紹介します!出典 : 私は筋金入りのインドア派なので、おうち時間自体は全く苦になりません。今は、動画配信サービスなども充実し、家でいくらでも映画やドラマが見放題ですから、窓の外から聞こえるセミの声をよそに、エアコンの効いた部屋で涼し〜く快適にくつろいでいると……突然、2階から長男がドタドタと駆け下りてきて、バーン!と居間のドアを開け放ち、「充電!充電!おー、ココにあった」などと、また嵐のように立ち去ろうとするではありませんか。ちょっと待て〜い!!ドア、開けっ放しで行く気ッ!?でも、ココで私が長男をギロリと睨みつつ、少々ドスの効いた声で……「ア・ツ・イ!」と、言ったとしても、「だよね〜。夏だしね〜」……としか、本人は思いません。うちの長男は空気を読むのが苦手なので、それが「貴重なエアコンの冷気が逃げていくから、ドアを閉めて欲しい」という言外の意図まで察するのは難しいんです。これは、長男ばかりの責任ではありません。私のほうも言葉を省略し過ぎているんですね。実は、子育てに限らず、私は対人関係のイライラやトラブルの原因の多くは、当人同士の性格や相性の問題などではなく、「言葉の過不足」から生じているのではないかと思っています。ですから、ここでは、「暑いから、ドアを閉めてくれる?」と、言葉を省略せずに「して欲しい行動」を最後まで伝えれば、大抵は、ちゃんと分かってくれます。※時々の換気も大事!出典 : 家族の昼ごはんのために、折角、お母様が熱気ムンムンのキッチンに独り決死の覚悟で立って、グツグツ煮立ったお鍋でそうめんを茹でて差し上げたというのに、子ども達がオンライン・ゲームに夢中で、ちーっとも食事が始まらなかったら、そりゃあ、腹も立つというモノ。「いい加減にしなさい!」……って、ブチッと電源を引っこ抜きたくなりますが、まあ、子どもには子どもの都合もあるんですね。うちの子曰く、「オンライン・ゲームって、急にやめられないんだよ。勝手に抜けると次に入れてもらえなかったりすんのッ!」とのこと。私も小中学生の頃には、ドラクエに夢中だったので「そんなの知ったこっちゃない」とも思えず、一応、子どもの都合も聞いてみます。例えば……「その対戦、あと何分で終われそう?」「次のセーブポイントまで、どれくらい?」……とか。子どもの世界に話しを合わせながら伝えてみると、意外と素直に終われることも多いんです。そして、ココで大事なのは、たとえ多少約束の時間をオーバー気味だったとしても、最終的にゲームをやめて来られたら、「終われたね」……と、できたことに注目してフィードバックしてあげること。こうすると、次も同じように終われたり、だんだんともう少し早めに行動できたりする確率UPです。出典 : 親の休息時間確保のために、やむを得ず、子どもに動画を見せっ放しにしていると、いつの間にか「迷惑系」などと呼ばれるモノまで見ていることも……。テレビのニュースでも、国内外の大人や無謀な若者達の迷惑行為や、感染リスクを軽視する行動などが時折報じられたりもします。大人達があまり「いいお手本」を示せていないのに、「あれもダメ、コレもダメ」と、子どもの行動を制限することを理解させ、十分納得させるには、なかなか説得力を出しにくい状況なのかもしれません(もちろん、「いいお手本」になる情報もたくさんありますが……)。それでも、親や周りの大人達は、お互いを守るための行動を、子どもに根気よく理解させていく必要があるでしょう。例えば、子どもが久しぶりの外食で食事中にマスクを外している時に、ついはしゃいで大きな声で騒いでしまう場合などに、「メーワクだよ!」……の一言で済ませると、その場ではとりあえずやめられても、親が見ていない時やみんながやっていない時にできなかったり、逆に、話していい時でも過剰に意識しすぎたり……なんて可能性も。ここは、少しだけ丁寧に、「大きな声で話すとちっちゃいツバ(飛沫)が飛びやすくて、もしも自分が感染してて、そこにウイルスが入っていたら、周りの人に移してしまうかもしれないから、これくらい(←実例)の小さな声で話そう」とか、「〜食事が終わって、マスクつけてから話そう」……など、「メーワク」の中身を、具体的に「どんな行動(言葉)で、誰がどんな思いをしたり、どんな不便や負担をかけたり、どんなリスクにつながったりするのか」、子どもが納得できる理由を説明するといいでしょう。それと同時に「やっていいこと」もセットで伝えると、たとえ親が見ていない時でも周りに配慮する行動ができる確率がUPすると思います(テイクアウトにしたり、屋外で広々と食事できる場所を選ぶのもGood!)。そして、子どもにして欲しい行動があったら、親や周りの大人はその子の目の前で、繰り返し繰り返し、実際にお手本を見せてあげ続けることで、いつの間にか身につけられることって、本当に多いんです。変換できても、できなくても、親ががんばってることは同じ!出典 : こんな風に、伝え方ひとつで、お互いに言いたいことがまっすぐ相手に伝わるようになると、日常の親子のコミュニケーションのすれ違いから生じるストレスが次第に減っていくでしょう。でも、私が声を大にして伝えたいのは、声かけを「変換できても、できなくても、親が毎日子育てをがんばっていることは同じ!」だということ。「声かけ変換」は、子育てをちょっとラクして効率をUPする「省エネ術」のようなものですから、たとえ上手に変換できなかった時も、あなたが子育てをがんばっていることには全く変わりありません。ですから、たとえ、つい子どもにイライラしてしまっても、このような状況では尚更、そんなの当たり前です。こんな時は、子どもと物理的に少し距離を置く「家庭内ソーシャルディスタンス」をとりながら、冷たい麦茶でも飲んで一息入れつつ、「しゃあない、しゃあない、あるある〜」と、自分にも声かけを。そして、子どもと同じように、自分自身の「できてること」「がんばれていること」「フツーにこなせていること」などにも、ちゃんと目を向けてあげて下さいね。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年08月17日子どもの勉強、親が教えないとダメ!?出典 : こんにちは。「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換」著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。毎日の宿題に加えて、新型コロナウイルスの影響による休校や夏休みなど、何かと家で親が子どもの勉強を見る機会が増えていますね。でも、子どもが自主的にサクサク進めてくれればいいのですが、なかなか「そうもいかない」「ちっとも捗らない」ってご家庭も多いんじゃないでしょうか。親のほうも、テレワークやきょうだい児のお世話があって「そんなに気長に教えられない」ってこともありますし、「子どもに勉強を教えるなんて、どうしたらいいか分からない」って方もいるでしょう。大丈夫。学習内容自体は親が1から10まで教えなくても、検索すれば大抵のことは分かりやすい動画や学習サイトがあります。それに、2019年4月施行の改正学校教育法で制度化されたデジタル教科書が今年の4月からより本格的に導入されるようになり、教科書会社も各種のデジタルコンテンツを用意しています。お子さんがお使いの今年度の教科書をよーく見てみると、ところどころQRコードがついていたり、巻頭や巻末にURLが掲載されていませんか?(もし、見当たらなければ、教科書会社の名前で検索を!)すると、お使いの教科書に合わせた、「コンパスの使い方」などのワンポイント動画や解説アニメーション、観察・実験動画、国語の教科書のお話をプロが朗読した音声、ダウンロードしてプリントできる補助教材などを、誰もが利用できるようになっているんですよ。ですから、親は「教える」よりも、もっと大事な「その子の目線に合わせてあげること」に限られた時間とエネルギーを使って、子どものやる気をUPさせていくといいでしょう。子ども目線の簡単アイディアと声かけで、宿題はずーっとラクになります!出典 : では、宿題がちっとも進まなかったり、がんばってるけど上手にできなかったり、途中で投げ出したりする子を前に、親はどうしたらいいのでしょうか。実は、子どもが宿題や勉強をサクサク進めない時、そこには、ちゃーんと理由があるんです。もちろん「暑い!」「ゲームやりたい!」「アイス食べたい!」なんて雑念が次々と浮かんでいることもありますが、ちょっとした動きが苦手だったり、ほんの少しのことでつまずいていたり、「メンドクサイ」「つまらない」「漢字キライ」など、今までの経験による勉強のイメージから戦意喪失していることも…。そこを、子ども目線で気づいて、簡単な工夫やちょっとした声かけをしてあげるだけで、宿題への取り組みハードルが下がれば、ずーっとラクに取り組めますし、ちょっとのことで「できた!」が増えればやる気UP。自分でサクサク進められる、学習の好循環に入っていけます!最初だけ、親はひと手間かかりますが、長い目で見ればこれが夢の「自学自習」への近道かもしれません。では、宿題がサクサクできちゃう、子ども目線に合わせたとっておきの簡単アイデアと声かけのコツを3つ、お伝えします。Upload By 楽々かあさん子どもがなかなか「できない」「うまくいかない」という時は、その「動き」をよーく観察してみると、サポートのヒントが見えてきます。例えば算数の宿題で、定規や分度器を問題用紙の図形の線にうまく合わせられない…なんて場合。その子の目線では透明のアクリルの線が見えづらいのかもしれません。こんな時は、定規や分度器の「フチ」を赤や黒のマジックでキューッと塗ってあげれば一発解決することも。他にも、分度器のメモリが2つあって読みづらい時には、片方をマイナスドライバーで削ってあげたり、真ん中に赤い刺繍糸をテープでくっつけてあげるだけでも、とても見やすくなります。Upload By 楽々かあさんまた、ちょっとした数字や文字・記号の暗記が「そんなに覚えらんない!」って場合は、子どもが覚えるまでは、カラーシールなどに書いて貼っておけばOK。例えば、三角定規のそれぞれの角度や、時計の「分」の表示、鍵盤ハーモニカやキーボードのキーの配置など、結構幅広く応用できます!そのうち子どもが見慣れて覚えたら、シールをはがせばいいだけですしね。こんな『小さなつまずき』に気づくには、子どもがなかなかできない時も、まずは先入観のない目で、「どこで困っているのかな」「何が難しいのかな」と、行動に注目して見てあげるのが大事です。そして、じっくり観察しても子どもがどこでつまずいているのか分からない時は、「どこが難しい?」「どうしたらできそう?」など、本人の話をよーく聴いてみるのもテ。意外な部分で困っていることって、案外多いんですよ。Upload By 楽々かあさん日々の漢字書き取りや計算ドリルの宿題や、夏休みの課題などがたーくさんあると、誰だってやる気ぐらいなくします。こんな時は「ゲームの前に5分だけ、がんばろうか」などと短時間で区切ったり、「ここまでできたら、おやつにしよう」などのゴール設定、あるいは、宿題の範囲全ページにふせんを貼って「今日は何個くらい、ふせん取れそう?」と本人に都合を聞くなど、声かけしながら課題を小分けにするのがいいでしょう。それから、個別の宿題内容でも、「小分け」作戦は有効です。例えば、子どもが「筆算のケタが増えちゃって、難しい〜!!」なんて時には、指やエンピツ、下敷きなどで、一桁ずつ隠しながら、順番に一個ずつ解けば、ずーっと簡単になります。計算問題のプリントに問題がずらっと並んでるのを見るだけで戦意喪失しちゃう子は、プリントを折りたたんだり下敷きで隠したりして、数問だけ見えるようにすれば、「これぐらいなら、できそうな気がする」かもしれません。そして、子どもが1コずつでもがんばれたら、「OK」「できてるよ」「がんばったね」と、わんこそばの合いの手のように声かけしてあげると、膨大な宿題も最後まで完走できる確率UPです。Upload By 楽々かあさん子どもが勉強に対して自信をなくしがちな時や、うっかりミスが多い子には特に、親が意識して『できてるところに気づいてあげる』ようにするといいでしょう。休校中の自宅学習や夏休みの課題では、親が解答の丸つけをする機会も増えると思いますが、そんな時もちょっとしたコツで、ペケが多い子も自信回復したり、やる気UPすることができます。例えば、筆算の答えが間違っていても、途中の計算を一つひとつ、『合っているところまで』マルをつけてあげると、精神的なダメージも軽減される上、どこで間違ったのか気づきやすいので、だんだん計算ミスが減ることも。Upload By 楽々かあさん同様に、漢字の語句の添削なども、『合っている字、合っている部分』まで、部分的にマルをつけてあげるとGood!(そして、お子さんが自分で『どこが間違っているのか』気がつけば、尚ヨシ)誰だって、ペケや訂正ばかりでは自信をなくすのは当たり前です。少し遠回りでも、親に時間の余裕がある時だけでもいいので、できたところまで丁寧に丸つけして、ほめコメントを書いてあげると嬉しいと思いますよ。そして、言葉でも「ココまでは、できているよ」「ここは、よく書けているね」など、その都度『小さなできた』に気づけるように声かけしてあげるといいでしょう。夢の「自学自習」は、急がば回れ!出典 : こうやって、親が子どもの目線に合わせた簡単な工夫でサポートしたり、ちょっとした声かけを続けてあげたりすると、宿題や勉強のハードルが下がって、学習習慣が定着しやすくなります。そして、最初はちょっと手間がかかるように思えても、子どもの目の前で、苦手なことも工夫次第でできる方法を見せたり、できないことより、できてることに気づく声かけを続けたりすると、次第にお子さん自身が自分でも同じように工夫したり、ものの見方を変換できるようになったりするかもしれません。憧れの「自学自習」への近道は、「急がば、回れ」なんじゃないでしょうか。いつかはお子さんから、「宿題?ああ、もうとっくに終わってるよ」なんて言葉が返ってくる日も、夢ではないかもしれません。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2020年07月13日ウイルスがもたらした時代の転換点、日常にも大きな変化がこんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる!声かけ変換』(6.27刊行予定)著者・楽々かあさんこと大場美鈴です。まず、今このコラムを読んで下さっている方が、この数ヶ月間を乗り越えて下さったことに感謝いたします。私達は今、時代の転換点にいるのでしょう。たった1つの未知のウイルスによって、それまでの世界は一変し、「当たり前の日常」「フツーの日々」も、これからは書き換えざるを得なくなってしまいました。うちでも「かあちゃん、今のこと、そのうち歴史の教科書に載るのかな?」「多分、そうだと思うよ」なんて会話を子ども達としました。近い未来の期末テストも、夏休みも、修学旅行も、予定変更を余儀なくされるのはもちろん、少し先の未来の、子ども達の進学や就職などにも少なからず影響があるでしょう。このような状況下では、発達障害のある子を始め、時代の大きな変化に負担を感じたり、外出や人と関わることが不安になったり、新しい日常習慣やコミュニケーションの取り方に戸惑いを覚えるお子さん、そして大人の方も多いことでしょう。それでも、次の時代に適応して生きていくためには、これから、どうしたらいいのでしょうか。その答えは、世界中の人々が、暗中模索しながら時間をかけて探しだすものなのかもしれません。ですから、ここでは、次の時代を生き抜くためのヒント・考えるキッカケの1つとして、休校中のうちの3人の子ども達を観察して私が気づいた「適応戦略」の例を、書き留めておきたいと思います。世界がどうであれ、マイペースに生きる出典 : うちで最も新型コロナウイルスの影響が少なかったのが、中3の長男です。彼は公教育の中では「空気が読めない」「協調性がない」「集団行動が苦手」など、マイナス面がクローズアップされがちでしたが、こういった非常事態では、その「周りに流されない」マイペースさが、驚くほど頼もしい強みとして発揮されました。連日良くないニュースが続いても、学校が休校になってもケロリとしていて、オンライン学習で勉強をコツコツ進めながら、むしろ飄々と(不謹慎にも)この状況を楽しんでいるかのような様子すらありました。そして、テレビの報道等で人と人との接触を避け、社会的な距離を取るように推奨されると……「ダイジョウブ〜!オレはオールウェイズ・ソーシャル・ディスタンシ〜ンだし!だから、いつもどおりの通常運転でオケ。あはは」……とのこと。小さな頃より「ぼっち上等!!」で生きてきた長男。以前は私も親として、なかなか仲の良い友だちができない・友だちづきあいが続かないことを心配したこともありましたが、3ヶ月間も家にいて、人とほとんど合わない生活を続けてもほぼノーダメージ(むしろ快適?)だった長男を見ていると、「この子はこれでいいんだな」と思いました。とはいえ、完全な孤立状態ではなく、家の中ではいつもどおり兄妹同士で毎日じゃれあい、中学のオンライン授業でも先生やクラスメイトとのつながりは維持されてもいました(LINEの未読通知は700件くらい溜めていたようですが……)。また、大好きなオンラインゲームでは急増した海外の新規プレイヤーに古参風を吹かせつつ、毎日楽しくバトりながら交流してストレス発散していました(これも、いつもどおり)。世界がどうであれ、なにがどうであれ、マイペースに生きる力は強みなのかもしれません。新しいコミュニケーションをチャンスに変える出典 : 一方で、社会的な面での影響が大きかったのが、中1になったばかりの次男です。次男は休校開始の当時、小学6年生。兄と同じ私立中学に進学することになった次男は、長年小学校で一緒に学んできた友だち達とはこれでお別れなのに、最後の小学校生活はある日突然終わりを告げ、なんとか行われた卒業式も簡略化されて、足早に手短に「卒業」しました。新しい友だちと会えることを楽しみにしていた中学の入学式も、イスを離してマスク着用で顔も分からず、お互いの会話も控えた上で、小一時間程度で終了し即帰宅。それ以来つい最近まで、クラスメイトと直接会う機会はありませんでした。なので、次男は当初、「なんか、あんまり中学生になった実感が湧かない」なんて話していました。元々気持ちを切り替えることが苦手な彼にとってはなおさら、そう思うのも無理もありません。でも、中学校で双方向のオンライン授業が開始されてからは、次男の気持ちが前に向かって進み始めました。最初は緊張していたものの、「おうちで授業」の生活のリズムができると、次第に中学生らしい顔つきになっていきました。そして、シャイで引っ込み思案だったはずの次男が、オンライン授業中に時折自ら積極的に発言する姿をキッチン越しにチラ見して、私はかなり驚いていました。その理由を、彼はこう評します。「直接人と会話すると、自分に向けられる視線が気になって緊張しちゃうんだけど、オンライン授業だと誰がどこを見てるのか、ハッキリと分からないでしょ。だから、かえって安心して相手の顔を見て、話すことができるんだよね」繊細な次男は小学校時代、新しい環境に慣れるまでに時間がかかり、人の顔と名前を覚えることも苦手なので、中学入学後のことが私は内心気がかりでしたが、思わぬ形で不安が解消することに。そして、最近分散登校でようやく「実際に」再会したクラスメイトとは、ディスプレイ越しにお互いの顔を見慣れていたせいか、案外気軽に話せたのだとか。もしかしたら、それまで「人と話すのが苦手」だと気後れしがちだった人も、新しいコミュニケーションのカタチを、活躍の場を広げるチャンスに変えられるのかもしれませんね。小さな楽しみ、ささやかな喜びを大事にする出典 : そして、うちの3兄妹の中で、新型コロナウイルス関連の影響で、一番精神的なダメージが大きかったのが小4の長女でした。長女は、うちの子達の中では、いわば最も「フツー寄り」の子です。軽いLD傾向はあるものの、協調性も豊かで空気も読め、友だちも多く、学校も大好き。毎日、学校から帰るとすぐに公園で友だちと駆け回ってあそんでいた、明るく活発な元気印の女の子です。……そんな彼女が、家にこもりきりの生活で、すっかりおとなしくなってしまいました。いつもと違う娘の様子が心配で、私が「人が少ない時間に、犬の散歩くらいなら大丈夫だよ」と外へ誘っても、「いい。コロナ怖いから、家にいる……」と頑なに拒否。マイペースに自粛生活を送る兄達と違い、長女は「空気が読める」分、ネガティブな情報の影響なども受けやすく、過剰に不安を強めてしまったようです。また、長女の小学校ではメール配信での課題の指示やプリント学習などには対応して下さったものの、顔が見える双方向のオンライン授業までは難しく、学習面でも兄達のようにはいきませんでした。何より、人と関わることが大好きな長女だからこそ、この状況はキツかったと思います。そこで私は、まずは「情報のバランスを取る」ことをしました。ネガティブなニュースばかりの時には、ポジティブなニュースを選んで伝えたり、情報そのものが多すぎる時にはテレビを消しました。世界の状況はどうにもならなくても、情報の量や内容・質はある程度自分でコントロールできます。そして、様々なことが制限されている中で、少しでも長女が「自由」を感じられるように、可能な範囲でなるべく「選択肢から選ぶ」「本人の意思を聞く」などを意識してみました。例えば、子ども達を留守番させて買い物に行く前に、「お昼、何食べたい?」「おやつ、何がいい?」など、ランチやおやつのリクエスト受付けタイムを作って(ただし、品切れ中のこともあるので、第3希望くらいまで聞く)、好きなものを選んで食べることなどで「小さな自由」を増やしました。それから、今の環境でも「できること」を探しました。長女の大好きな動物柄の布で一緒にマスクを作ったり、お絵かきセットをネット注文で揃えたり、つまみ食いしながら料理のお手伝い、パパとストレッチ、動画を見ながらダンス、おうちキャンプ、愛犬と日向ぼっこ……(きっと、日本中の多くのご家庭で同じような光景が見られたことと思います)。……そうしているうちに、長女は限られた環境の中でも、少しずつ「小さな楽しみ」や、「ささやかな喜び」を見つけて、表情が明るくなっていきました。制限の多い不自由な環境の中では、「ネガティブな情報」よりも「いい情報」や「少しでもマシなこと」に、「できないこと」よりも「できること」に、「足りないもの」よりも「今、あるもの」のほうに意識を向けようとすること自体が、生きる意欲を失わないためにも大切なのかもしれません。時代の転換点だからこそ、今を大事に……出典 : 総じて、私が今回の経験を通して実感したのは、世の中が一変するできごとがあった時には、あらゆる価値観がひっくり返るのだ、ということです。それまで、マイナス材料だと思われていたことがプラスに転じたり、自分や社会システムを変革するチャンスになったりする場合もあります。「集団心理」や「平等意識」などがリスクやネックになる可能性もあれば、「個々の意識や行動」が大きく結果を変える、あるいは、「違い」や「独自性」が問題解決への糸口になる可能性だってあります。強さが弱みになり、弱さが強みになることもあります。まさにこれが「時代の転換点」なのだと思います。また、日本国内では緊急事態宣言がひとまず解除されたとはいえ、まだまだ感染リスクや世界情勢や経済など社会的な不安要素も多く、少し先の見通しも難しい中、将来的にも今の子ども達には(大人達にも)、厳しい現実や無理難題が待っているのかもしれません。それでも、新たな時代に適応していくためには、それぞれが自分のできることをできる範囲で続けながら、今を大事に、一日一日を地道に着実に生きることが、結局は近道になるのではないでしょうか。2020年6月27日、このコラムの著者 楽々かあさんの新刊が発売されます!
2020年06月13日子どもの頃から運動が苦手で弟に歩き方を笑われていたけれども、いまは運動が大好き出典 : 私はADHDとASDがある、現在30代の男性です。一般企業で管理職をしつつプログラマーとして働いています。私は子どもの頃は運動が苦手でした。幼稚園や小学校の運動会でも順位はほとんどビリ、夏のプールの時間も大嫌いでした。歩き方もかなり特徴的だったようで、「歩き方がヒョコヒョコしているねー」と弟に笑われたことがあります。自分ではわからなかったのですが、左右や上下に揺れていたようでした。そんな私でもあるきっかけがあり、中学生になる頃には運動が好きになっていました。今回はそうなったきっかけである、小学校の野球部でのできごとについて書いてみようと思います。バスケをやりたかったのに渋々参加した野球部出典 : 私が小学校に入る頃、私の周りではバスケットボールを題材にしたマンガが大流行していました。私もハマっており、同時期放送されていたアニメは毎週欠かさず観るほどでした。運動が苦手で、運動会でもビリの常連だったにもかかわらず、アニメの影響でバスケットボールが大好きになった私は、小学校ではバスケ部に入ろうと心に決めていました。小学生になり、いざバスケ部に入りたいということを両親に伝えたところ、私が通っていた小学校にはバスケ部がないことが発覚。中学校になったらやればいいじゃないかと父に勧められ、そこに向けて何か運動をと考えた私は野球部へ入部することにしました。全然上達しなかった入部1年目出典 : そんな経緯で野球部の部員となったものの、キャッチボールすらろくにできず、バットを振ってもボールに当たらず...練習相手の先輩が、私がとんでもない方向に投げたボールをいつも取りに行ってくれていました。父に付き合ってもらって家でも練習していたのですが、なかなかうまくなりませんでした。そんな状況なので、最初は練習に行くのが辛かったのですが、少しずつバットにボールが当たるようになっていったことで楽しさを感じられるようになり、何とか続けることができていました。それでも週末の試合にはやっとバッティングができるようになってきたレベルの私はもちろん出られず...毎回ボールボーイ(ボールが必要になったら審判にボールを渡す係)として参加していました。この状況は人によっては辛いと思うかもしれませんが、私は先輩たちの動きを見てルールを覚えたりするだけで楽しかったので、あまり苦になりませんでした。新しいポジション決めの練習が転機。それからは運動が好きに!出典 : そんな部活生活も1年がたち、6年の先輩たちが引退するため、新しいポジションを決める日がやってきました。その日は、次のピッチャーを決めるために全員マウンドからボールを投げてみることになっていました。順番を待つ間、私は“うまく投げている自分”をイメージしていました。そしていよいよ私の番です。キャッチボールもろくにできない私でしたが、「これでうまく投げられたらすごいな」と思いながらマウンドに登っていきます。そしてイメージしていたように、ミットめがけて思いっきり投げてみたところ…いままでにないまっすぐなボールを投げることができました。気分が高揚してあまり覚えていませんが、みていた先輩たちも驚いてざわついていたように思います。その日以降、いままでとは別人のように狙ったところにきちんとボールを投げられるようになりました。今思うに、それまでは身体の使い方のコツがつかめておらず、“成功するイメージ”も持つことができていなかったのだと思います。この日はじめて頭の中にイメージを描くことができ、それがうまく投げられる結果に繋がったように思います。このできごとからしばらくして不登校になったので、野球をする機会は減ってしまいましたが、この経験があったおかげで自分の中にあった運動への苦手意識はだいぶ薄れました。野球をしたことで筋肉がついてきたのか、100m走のタイムも縮まり、体育の授業にも自信を持って取り組めるようになりました。私の運動のコツは「上手い人の動きをよく見て、自分の身体でその動きを再生する」こと出典 : そのころの経験から、新しい運動をするときに私が意識するようになったのは、「自分がしたい動きをなるべく具体的にイメージして、それを身体で再現する」ということでした。運動が上手い人の動きをよく見て、身体の動きがどうなっているのか分析し、その動きと同じように自分の体を動かすよう意識してみる。うまくいかなかったら、もう一度上手い人の動きをみて自分とどこが違うのかを比べ、そのイメージに近づける。そうすることで、いつの間にか運動の上達が早くなっていました。例えば私が通っていた高等専門学校では、体育の授業でゴルフの練習をすることがあったのですが、私もクラスメイトの大半もゴルフをするのは初めてでした。最初はみんなで空振りばかりしていたのですが、ひとりだけゴルフ経験があって上手い人がいたので、私は自分の練習を止めて、その人の左腕の動かし方や肩・腰の使い方をよくみることにしました。最初に構えたところから膝や腰を上下に動かさなければ、地面を打つことはないとか、スイングバックのタイミングで左ひじは曲げないようにするとか…自分の身体でその動きを真似するようにしてみたところ、どんどんいい具合にボールを打てるようになっていき、その授業の終わりごろには、いろいろなクラブでしっかりとボールを打てるようになっていました。運動が好きになったことよりも、上達できることへの楽しみを経験したことが大きな財産に出典 : 野球部での経験は、興味があることや好きなことであれば反復練習が苦にならないということや、運動の際には身体の動きを具体的にイメージすると効率よくやれるようになるという、自分の特徴が活かせた初めての体験だったと思います。また「うまくいかなかったことも、自分の工夫次第でできるようになった!」と実感できたことは、社会人生活で苦しんでいたときにも乗り越える力をくれ、私にとって大きな財産となっています。運動が苦手で困っている当事者の方やその周りの方には、是非興味のあるものから取り組んでみていただきたいなと思います。その際、周りの人と比べるのではなく、去年の自分や先月など、過去の自分と比べて上達を感じることができると、上達することそのものが楽しくなってくるのではないかと思います。運動は苦手な人も多いかと思いますが、やってみると実は上達を感じることができるポイントがたくさんあり、私のようにその後の自信や力につながることもあります。この私の経験が、今悩んでいる方のご参考になれば幸いです。
2020年05月30日自閉症啓発デーって?2007年、国連総会「4月2日は世界自閉症啓発デー」にすることが決議されました。この日には、それぞれの加盟国が、自閉症についての理解が進むように意識啓発の取り組みを行うことなどが求められています。世界自閉症啓発デーは、自閉症に関する理解を深めたり、自閉症のことについて知ったりすることで、自閉症のある人を含めたすべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日です。例年、日本では東京タワーなどのランドマークが青く染まるほか、NYやパリ、ロンドンなどさまざまな都市のランドマークも同様に青く染められ、イベントが行われます。昨年・一昨年も、発達ナビではその様子をリポートしています。タイムラインを青に染めよう!オンライン上でのイベント「Warm Blue 2020」を開催Upload By 発達ナビニュース2020年の自閉症啓発デーは、新型コロナウイルスの影響により、リアルイベントの開催は中止となりました。そこで、自閉症のテーマカラー「ブルー」でタイムラインを染め上げようというイベントが開催されます。参加の方法は以下の通りです。「私たちの4月2日」「青いものを身につけた写真」「青をテーマにした写真」「自閉症啓発デーを応援する活動・パフォーマンスの動画」などを投稿してください。投稿の仕方は以下2つです。1、直接以下の公式アカウントに投稿実行委員会-101651501470359/Warm Blue キャンペーンFacebook 公式ページ Blue キャンペーンTwitter 公式ページ2、みなさんご自身のTwitterやFacebookなどで発信青いものを身につけた姿や、青いグッズを撮影して、SNSに投稿しましょう。その際、以下のハッシュタグを使用すると、Warm Blue実行委員会が公式FBとTwitterでシェアをします。#2020TT#WB_2020#MAZEKOZE#LIUB皆さんの投稿で、タイムラインを青く染め上げましょう!出典 : 多様性を認め合える社会へ出典 : 自閉症がある人だけでなく、どんな人も皆、色とりどりの個性をもっています。どんな人も自分らしく生きていけるように――自閉症啓発デーを通して、多様性を認め合える社会へ近づけるよう、一人ひとりができることを始められたらいいですね。
2020年03月30日「困りごと」を誰かに伝えることはおとなになっても難しい出典 : 発達障害の診断を受けてから、発達障害当事者としてインタビューを受ける機会が何度かありました。そこではおおむね、当事者として発達障害の「困りごと」についてお話をすることが多いです。しかし、たとえば以前視覚過敏についての「困りごと」を聞かれたとき、私はうまく答えることができませんでした。というのも、“視覚過敏がない状態では周りの景色がどう見えるのか”を知らないため、何をどう伝えればいいのかうまく考えをまとめることができなかったからです。視覚過敏がある状態が私にとっての通常の見え方なのです。結局その場では、強い光を浴びると目が開けられないとか、夜は街灯や車のライトが拡散して見えるといったお話くらいしかできずにインタビューを終えました。これをきっかけに、こういう「周りからは困っていそうに見えるが、本人はそれに気づいていない・あるいはうまく説明できないこと」というのは多いのではないかと考えはじめるようになりました。そこで今回は、世の中でいわれている発達障害の特徴や困りごとと、自分が実際に感じている困りごとについてを書き出してみようと思います。多分疲れやすいほうだし、そもそも自分の疲れぐあいに気づけない出典 : さまざまな本やホームページなどをみてみると、“発達障害当事者は疲れやすい”と書かれることが多いと感じています。私も体感として、毎日仕事が終わって家に帰るとぐったりしてしまって何もできない時間が数時間あるし、自分はかなり疲れているんだろうなと感じています。その疲れやすさが他のひとと比べてどうなのかと聞かれると、「言われてみれば自分は疲れやすいのかなと思う。ただ、他のひともこのくらい疲れるだろうと考えているので、自分が特別疲れやすいのかどうかはどうにも判断できません」という回答になります。そもそもこのくらいの活動をしたからこのくらい疲れているかな?などと他人の疲れ具合を想像することも難しいので、比較して考えることも難しいのです。また、自分自身だけに視点を向けて、自分の疲れについてどう認識しているか聞かれるとすると、「多分いま疲れてると思うけど、正直よくわかりません」という回答になります。そもそも自分の状態に気づくということがとても苦手なのです。たとえばお酒を飲んでいるときも自分がどのくらい酔っているのかわからずに飲みすぎてしまったり、体調が悪いときに自分に食欲があるのかがわからなかったりします。周りから見ても明らかに足元がフラフラしてからようやく酔っていることに気づいたり、すぐにお腹がいっぱいになって全然食べられなくなってから初めて食欲がなかったことに気づいたりします。発達障害の当事者(というか私自身)が疲れやすい原因として、この「自分の状態に気づけない」というところも大きく影響しているのかなと感じています。自分の疲労に気づけないためにペース配分を考えなかったり休憩をとらなかったりして、エネルギーを使いすぎてしまうという側面もあると考えているからです。発達障害のない人は、自分の体調に自分で気づいて適切にコントロールしていることが多いのかなと思います。それができる人から見ると、私のようにペース配分ができず疲労を溜め込んでいる人は「疲れやすい人」に見えるのでしょう。空気を読めない・・・の背景にあるもの出典 : これはASDの特徴になりますが、「周りの空気を読めない」とか「人の気持ちを想像できない」というものがあります。周りから見るとたしかにそう映るのだろうなと思うところではあるのですが、私としてはちょっとニュアンスが違うのかなと感じています。私の場合、子どものころは「他人の気持ちが存在することを想像していなかった」ということはありましたが、思春期のころからいまもずっと周りの空気がどういう状態かとか、自分がどう振る舞うべきかを自然と察することが難しく、毎回意識的に考えるようにしています。考える練習を繰り返してきて、「何かやらなければいけない場面である(どうすればいいかはわからないけれど...)」ということと「結果、その場面がどうなったか」はある程度適切に理解できているのではないかと自分では思っています。しかし肝心の「自分がどう行動するのがその場にふさわしいのか」というところのすれ違いが本当に多いです...結果として周りからは「空気を読めない」とか「人の気持ちを想像できない」というように映るのかなと思います。空気を読んだつもりが…新入社員時代の失敗たとえば私が新卒で入った会社でのできごとなのですが、入社してすぐに新人研修が開催されました。その研修講師の方は私たちの上司や同期にもウケがよかったこともあり、研修の全日程が終わったあとに新人主催で講師を交えた飲み会が開かれました。半月後、別の研修があったのですが、その講師の方は私たちの上司や同期からのウケがあまりよくありませんでした。ところが「この前は飲み会があったし、今回もやるんだろうな」と思った私は、講師の方に「今日の飲み会はいらっしゃるんですか?」とダイレクトに質問してしまいました。慌てて他の同期がフォローしていたのですが、後日その同期から「きみが空気読まずに講師の方に飲み会の話をするからびっくりしたよ」と冗談交じりのクレームを受けました。私としては『研修が終わったら講師を交えて飲み会をするもの』なのかなと思っていたのですが、いま振り返ってみると私たちの上司や同期が“一緒にお酒を飲みたいなと思うかどうか”がポイントだったのです。そのとき私以外の社員の中では「今回の講師は一緒に飲みに行きたいタイプの人ではないな」という空気ができていたようなのですが、私は全く気づいていませんでした。私なりに新人として研修後の飲み会のことで率先して動いたつもりが、そのときの周囲の気持ちとはズレた行動になってしまったのです。発達障害のない人は、自分自身から一歩離れて客観的に考えて状況を把握し、適切な振る舞いをすることが自然とできるのだと思います。当事者である私も適切に状況を判断しているつもりなのですが、もしかしたら自分の疲れに気づけないのと同じように、周りの状況にも気づけていない部分がたくさんあるのかもしれません。私の本当の困りごとは「周りの状況を適切に把握できないこと」なのか「自分が適切だと考えている振る舞いが実際には適切ではないこと」なのか、あるいはその両方なのか。正直なところ自分ではわかりませんし、周りから見たら結果としては同じ「困りごと」として映ることでしょう。自分のことに気づききれていないこと、周囲の状況を適切に捉えられていないかもしれないこと。それぞれ解決していくとしてもまったく異なるアプローチとなってしまうため、ひとりで克服していくのはかなり難しいなと感じています。周りから見える困りごとの奥に本当の困りごとがあるかも?出典 : ここまで私自身が感じている困りごとについて書いてきましたが、もしかしたらこの記事を読まれている方の周りにいる当事者の方も同じように、周りから見えている困りごとと本人が感じている困りごとが、実はちょっと違うことがあるのかもしれません。表面化している事象だけでなく、根底にあるその人の特性や苦手に関してのサポートが必要な場合もあります。当事者をサポートしていてあまりサポートの効果がないなと感じるような場合、もしかしたら当事者の方が本当に困っている部分とサポートしている部分がずれているのかもしれません。そのような場合、その困りごとに直面しているときに本人がどう感じているのかを確認したり、普段の様子を観察して他に困っているポイントはないかを探ったりすることも必要かもしれません。当事者としてもこのあたりをうまく言葉にして伝えるのはかなり難しいところなので、サポートする際に「どう感じているの?」と質問して、本人の困りごとや必要なサポートについてすり合わせをしていくことが大切だと思います。ただ、感覚的な部分などは自分にとっては“当たり前”になっていて、困りごととして認識していない場合もあります。そのため当事者が自身の困りごとについて言語化するのはなかなか難しいと思いますが、言語化する機会を増やしていくことで、自分の感じ方や考え方を振り返る機会も増えます。自分の状態を他のひとに伝えることができるようになると、対処法が見つかったり環境面の工夫で解決できたりと、当事者の生きづらさが軽減されるのではないでしょうか。どういうところに困っているかとか、困っているときにどう感じているのかというところは、自分ひとりではなかなか考えることが難しいところになるのかなと思っています。そのあたりを考えたり言葉にして話したりする機会があると、当事者にとってはとてもありがたいサポートになるのではないかと思います。
2020年03月12日めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々
チッチママ&塩対応旦那さんの胸キュン子育て
やっぱり家が好き〜おっとぅんとみったんと私〜