2021年7月30日 18:00
嘘をつき通し不妊治療に通う日々。パワハラで精神的に追い詰められた悲しい結末… #2
この数字からも、不妊治療を理解し、サポートしてくれる社会づくりがこれからの重要な課題であることが見て取れる。
中高一貫校の先生として働いていた志保さん。不妊治療中の職場の人間関係は、「最悪だった」という。男性の同僚からのパワハラ、そのことを相談した女性管理職からのパワハラ。
そんな環境では不妊治療について理解を得られるはずもないと考え、治療による早退や欠勤のたびに「歯医者なので」などと嘘をついてやり過ごしたが、精神的な負担はどんどん積み重なっていった。
初めて陽性反応も初期流産でお空へ。職場ストレスを悔やむ日々
そんな日が続いたある夏の日。そろそろ生理が来ると思いながらも予兆がなかったので検査薬を使ってみた。
陽性を示す線がじわじわと浮かび上がってくるのに合わせて、じわじわと涙がこみあげた。夫は泊まりがけの出張で不在。喜びと驚きでいっぱいになり、メールで写真を送信した。
「今回、うまくいったみたい!」
しかし、喜びも束の間、流産という悲しみに包まれることになる。
ちょうど陽性が確認できた頃、志保さんは職場であらぬ濡れ衣を着せられ、上司から密室で叱責を受けた。そのことがきっかけで気持ちがひどく塞ぎこみ、体調を崩し、吐き気と過呼吸で心療内科に通うように。そして出張先で腹痛と吐き気がひどくなり、ついに出血。
いつもと違う出血の状況だった。
嫌な予感がした。急いでかかりつけ医に駆け込んだが、授かった命はもうそこにはいなかった。
「初期の流産ですね」
なじみの中年女性医師は静かに言った。
「このタイミングでの流産は、医学的に何もできないの。次に備えて薬を飲んでね。
初期の流産はお母さんのせいじゃないから」
医師の言葉は、頭の中をすべるように通り過ぎていった。
「人間ってショックを受けた時は、何も考えられなくなるもんなんだなって思いました。何も考えられないまま、何日間か呆然と過ごしました。
食事も喉を通らず、とにかく涙に暮れてばかりでした」
呆然としながらも、妊娠初期に受けたパワハラへの悔しさが込み上げてきた。「あの時受けた精神的ストレスが流産の原因になったのでは」