やりたい仕事と家族の時間。両方はやっぱり高望みなんだろうか。 / 第10話 side満
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出典 : Upload By さいとう美如
第10話side 満
よく晴れた12月のある日曜日。
本当なら、こんな日は奏太と外遊びがしたい。全身で「楽しい!」を発する奏太が見たい…。
住田「そうですかー、家賃けっこうしますね。やっぱりまずはうちの会社の会議室でやってみるのがベストかもしれませんね」
満「……え?」
新豊洲駅にある衣類高級クリーニング専門店・ララウ本社の会議室でちょっとぼんやりしていた俺は、ララウの担当者である住田の言葉で我に返った。だってこんなに天気がいいから…って、え?今、なんて言いました?
住田「昨日の夜、社長同士で話して決めたらしいですよ。満さんが問い合わせ担当ということでララウにデスクを作る、って話もありました」
…そんな話は一切聞いてません。そちらの社長はすぐに話をしてくれる人でいいですね。
満「…すみません。確認します」
打ち合わせが終わりララウを出た俺は、海風が吹く道を駅まで歩く。
日曜日の今日、俺は朝イチで作業場予定だったマンションの内見をし、業者に行ってミシンなどの道具を見てきた。
あんなに熱をもって触れていたミシンに、今は「休日出勤しんどいよ」という思いで触れなければいけないことが切なかった。
誰かが言ってましたよね?夜明け前が一番暗い、と。今、それなのかな?
だって、俺、スタイリストのマネージャーを外されて、新豊洲のララウ本社でお直し業務の問い合わせ担当するんだって。おれどこの社員なの?
満「…はぁ」
大きなため息を吐きながら、駅前の自販機でホットコーヒーを買った。まさか定年になるまでこの自販機にお世話になるってことは…ないよな?

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――これでいいのか、俺。
と、思いつつ何もできず、気づけば2017年が終わり、2018年が始まって10日ほど経っていた。
新規事業が始まって、俺は自分が働くフリープランの事務所ではなく、新豊洲のララウのオフィスで毎日洋服のお直し依頼の受け付けをしている。もはや俺は何者なのか。分からない…。分からない…。分からない…。ぜんぜんまだまだ夜明け前な感じ…。真っ暗な俺の世界…。
少し明るくなったことと言えば、キリが熱を出した日をきっかけにキリと母ちゃんの距離がどうやら縮んだこと。
…