好きなことを諦める方法なんて、やっぱり分からないよ。 / 28話 side満
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第28話side 満
うー、腰が痛い。
眉間に皺を寄せながら目を覚ますと実家の布団の中だった。
あぁ、そうか。
午前中、毎年恒例のほうれん草取りをしたんだった。
そしてふと、夢を見ていたな、と気づく。
朝日を浴びながらキリと話したあの場面が夢の中でも繰り返されてた。
満「来年もやろう」
キリコ「そうだね」
満「来年も再来年も、ずっとやれるように面接がんばるよ」
キリコ「うん、頼んだ」
フリープランを辞めて岐阜に家を買ったとしても、家族を優先できるような仕事に就くことが出来なければ意味がない。
フォトスタジオの面接、ぜったいに成功させないと。
…あれ?
奏太とキリはどこだろう。
痛む腰に手を当て立ち上がり、家の中を見て回るも2人の姿がない。
庭に目をやる。
子ども用自転車がないってことは公園かな。
昼間から寝静まっている実家を出て、俺は公園に向かった。

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天気はいいけど寒い。
家の中で遊べばいいのに、そうはいかないのか。
公園に着くと砂場に奏太とキリ、男の子とそのママらしき人がいた。
…ん?
なんか奏太、困った顔してないか?
不思議に思いながら近づくと最初にキリと目が合った。
キリもなんか変な顔してるぞ?
「なに?」と口だけ動かしてキリに伝えようとしていると奏太が俺に気が付いた。
奏太「パパ!」
奏太の声と共に全員の視線が俺に向けられる。
男の子のママらしき人が立ち上がって俺に会釈する。
圭吾ママ「こんにちは」
満「こんにちは」
キリコ「よく公園で遊んでもらってる圭吾くんと圭吾くんのママ」
満「あー、いつもありがとうございます」
圭吾ママ「いえいえ、うちの方こそありがとうございます」
話しているとベビーカーを押した男性が近づいてきた。圭吾ママ「あ、うちの主人です」
圭吾パパ「どうも」
圭吾「パパ!このひと、そーたくんのパパなんだって!」
圭吾パパ「うん。ケイ、お友達できてよかったな」
圭吾「うん!」
一通り挨拶をし、予定があるという圭吾家族が先に帰って行った。
「バイバーイ!」といつまでも何度も手を振る圭吾に、奏太は小さく手を振り返している。
…