こどもの皮膚科ドクターが語る 塗り薬の選び方のお話
専門家・プロ:野﨑誠
さて、前回予告したとおり、今回は軟膏の選び方のお話をしていきましょう。でも、「何を選ぶか」の話ではありません。「どんなものを」選ぶかのお話です。といわれてもピンと来ませんよね。最初に、実際に外来であったお話をいくつかしていきます。
実例1
赤ちゃんが受診しました。体が真っ赤です。話を聞いて、前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。
しかし○○のみ替えて出しています。次の診察では、赤みは全くなくなっていました。
実例2
高齢の女性が受診しました。見ると頭皮が真っ赤になっています。そこで前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。しかし○○のみ替えて出しています。次の診察では、赤みがなくなっていました。
実例3
小学生が受診しました。
見ると全身に乾燥が出ています。特にスネの部分は真っ白に粉を吹いたような状態です。そこで前の先生が使っていたものと同じ塗り薬を処方しました。しかし○○のみ替えて出しています。次に診察したところ、手足のカサカサはほとんどなくなっていました。
さて、この○○に入るものは何でしょうか?ちなみに全く同じ成分、全く同じ製品名ですよ。
答えは、「基剤」です。
基剤とは、薬の形状のこと
この基剤、実はいろいろあります。
一般的によく処方される保湿剤を例にとって見てみましょう。
まずは軟膏基剤。次にクリーム基剤、そしてローション基材、最近ではフォーム剤(つまり泡です)なんていうものも出ています。
左から軟膏に近いクリーム、クリーム、ローション、フォーム剤。全く同じ成分の薬剤なのに、基剤がちがうとこれだけちがう!
基剤について一番細かく考えて処方しているのは多分皮膚科医でしょう。内科で処方される飲み薬が、体のどこで溶けるのがよいかを考えて剤形(カプセル・錠剤・粉など)が決められているように、皮膚科医は塗り心地や効果など、いろいろなことを考えて「基剤」を検討します。つまり、どの薬剤を使用するかということに加えて、どの基剤を使用するかということも考慮して処方を行なう必要があるのです。
では、皮膚科医はどのようなことを考えて基剤を選んでいるのでしょうか?
基剤がちがうと薬の吸収力がちがう
一般的に軟膏、クリーム、ローションの順番で選択する、と考えると良いかと思います。
軟膏基剤
最もバランスが取れているのは軟膏基剤といえます。