著者・自閉症児の母、立石美津子さんー完璧主義の教育ママが、息子のあるがままを受け止められるまで

2017年1月11日 16:00
 


16歳の自閉症児の母、立石美津子さん、発達障害児の子育て本を発売

著者や講演家として活躍される立石美津子さんが、障害のある子どもの子育てのヒントを綴った著書『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』を発売されました。単なるハウツー集に留まらない、リアリティのあるエピソード満載の新著です。

LITALICO発達ナビでは、書籍の出版を記念して立石美津子さんに単独インタビューを実施。自閉症のお子さんの子育てを通して得られた「考え方のコツ」や、子育ての中で心に残ったエピソード、就労訓練に向かう息子さんへの思いについて語っていただきました。

ライターでも著者でも講演家でもない、一人の母としての立石美津子さん、その素顔に迫ります。

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Upload By 田中千尋(発達ナビ編集部)

立石美津子さん: 1961年大阪市生まれ。幼稚園・小学校・特別支援学校の教諭免許を取得後、石井勲氏のもと、幼稚園・保育園に漢字教育を普及する。32歳のとき、株式会社パワーキッズを設立。38歳で出産。知的障害を伴う自閉症のあるお子さんを育てながら、現在は著者、講演家、ウェブコラムのライターとして活動している。代表作『一人でできる子になるテキトー母さんのすすめ』は43,000部のロングセラー。LITALICO発達ナビでも数多くのコラムを執筆。


「テキトー母さん」が、全然テキトーでいられなかった日々

―このたびは、新著の出版おめでとうございます。

これまで、子育てに関するさまざまな発信をされてきた立石さん、代表作『一人でできる子になるテキトー母さんのすすめ』では、子育てに対して完璧主義になるのではなく、ほどよく「テキトー」であることの大切さを語られていました。今回は、息子さんのエピソードも交えた新著ですが、ご自身の子育てでも、テキトースタイルでやってこられたのでしょうか。

立石美津子さん(以下、立石さん): いや、実は全然そうではなかったんですよ。最初はむしろ、テキトーどころか子どもに多くを求める"モーレツ母さん"でした。それが変わるまでの経緯も今回の本には詳しく書いたんですけれども。

それから、自分自身のことに関しては、今でもまったくテキトーじゃないんです。昔からなんですけど、実は完璧主義者でマイナス思考です。負の部分だけを見てしまう考え方の癖が身に付いちゃってるんですよね。そのせいか、手洗い恐怖に代表される強迫性障害という精神疾患にかかって入院していたこともあり…

だから逆に、テキトー母さんに憧れがあって、ああいった本を書いたんです。

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―なるほど、それは意外でした…お子さんが生まれたときにはどういう気持ちをもたれたのですか。

立石さん: お腹に子どもがいるときには子どもに障害があるなんて考えもしませんでした。生まれてきたら、ゆくゆくは東大にいくような、すごく優秀な子に育てたいと思っていました。こんなふうに生後間もない頃から漢字カードを見せたり、たくさんの絵本の読み聞かせをしていました。

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立石さん: けれども、生まれてきたのは自閉症の子どもで。当時はすごくショックでした。

息子が自閉症と診断されたのは2歳ですが、それを受け入れたのは3歳。それからは「一つでも出来ることを増やそう、健常児に近づけなければ子どもが可哀想だ」と一生懸命になっていました。

その思いから家の中でも療育をしていました。おやつのクッキーを食べさせるのにも「ハサミの訓練も一緒に」と考えて、こんなふうに袋に入れて与えて封筒を切らないと食べられないなど‥。

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立石さん: 例えばピアノを習う場合、レッスンに通うだけでなく家庭でも練習しないとなかなか身に付かないですよね。同じように、療育に関しても「施設の中でだけやっても家でやらないと意味がない」って思ってたんです。

けれども、すごくしんどかったです。息子も喋ることができたら「お菓子くらい好きなように食べさせてよ」と言っていたと思います。今思えばそんなことをやらなくても、時が来ればできるようになったので必要なかったのかもしれませんが…

ありとあらゆることがこの調子でした。例えば「お友達みんながスプーンを使っているから、やっぱりうちの子も使えるようにしないと!」と奮い立っていたんですよね。常に周りの子と比べる、"比べる病"に侵されていました。

―子育ての中でつらい時期というのはあったんですか。

立石さん: 6歳までが大変でした。小学校1年生に上がるまでは、特別支援教育はなく、障害のない子どもばかりの保育園にいましたから孤独でした。こんなふうに集団行動ができず、後ろで一人勝手に読書に没頭している状態でした。

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立石さん: かと思ったら、今度は一人で勝手に立ち歩いたりして。

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立石さん: 障害がなくても育てるのが大変な時期ですから、障害があったらなおさらで、パニックも相当ひどかったので「親子で死んでしまいたい」なんて思い詰めたことも何度もありました。

でも、特別支援学校に入学したら周りの子全員に障害があって、同じように集団行動ができない子もたくさんいたのです。そこから少し、気が楽になりました。


周囲と比べるばかりだったころから、比べない子育てへ

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―完璧主義のモーレツ母さんから、今の立石さんに至るまでにどのような出来事やきっかけがあったんですか。

立石さん: 他の子と比べるのを止めて、息子が自閉症であることを心から受け入れたときです。

ある意味、さじを投げてしまったんですね。「一生懸命やってもこの子は障害児なんだし、出来なくても仕方がない」と息子に期待しなくなりました。IQが34だったので、障害の程度が軽いとはいえなかったので‥。

そして、親の理想を押し付けることなく、あるがままを受け入れて、わが子を障害のある子として育てようと思いました。

子どもに理想を求めないっていう切り替えが、幼いころにできたのはよかったと思っています。親の理想を押し付けないと、子育てに関しては楽なわけです。親もそうだし、本人も楽ですよね、親からお尻を叩かれないわけですから。

私は決して自分のことや仕事に関してはテキトーではないけれど、その代わりに子育てに関しては、「親も子も100点を目指さなくってもいいんだよ」って思っています。力を入れすぎずに、ほどほどに、そしてそこそこでいいんじゃないかって。

子育てが楽になったもうひとつのきっかけは、小学生になったとき、子どもを特別支援学校に通わせたことですね。支援学校は、療育的なことを全部やってくれるので、親があれこれ連れまわす必要がなくなりました。また、放課後デイサービスにすぐ入れたので、学校が終わったら、毎日理解あるスタッフのもとで過ごすことができました。

だから、朝8時から夕方6時まで一日中ずっと療育受けてるみたいな感じですよね。家ではゆっくりのんびり過ごさせました。


言葉も勉強も、「やりたい気持ち」をどう作るかが大切

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―これまでの子育ての中で心に残っているエピソードはありますか。

立石さん: 息子が6歳の頃、初めて言葉を喋ったときのことが心に残っています。うどん屋で食事をしていたときです。お皿を下げようとした店員さんに向かって「まだ食べる!」って叫んだんですよ。それまでは言葉がほとんどなかったのに。

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立石さん: 言葉を話したことに加えて感動したのは、それが自分の意思を伝えるための言葉だったということ。「まだ食べる」っていう言葉は、相手がいて、その相手とコミュニケーションをとるための言葉じゃないですか。自閉症の子には一番の難関です。

そのときに感じたのは、何か心から訴えたいという気持ちが起こらない限りは、言葉っていうのは出ないんだということ。

言葉のことに関連してなんですが、講演会をしたときに、親御さんから「絵カードを使うと言葉が出るようになるって聞いたんですけど…」と相談を受けました。どうやらその方は、お子さんの言葉がなかなか出ないことで悩んでいたみたいです。。

でも私は、話せる単語だけが増えてもあんまり意味がないと考えています。確かに絵カードを使って、視覚的な情報を加えて与えたほうが言葉は出るようにはなるかもしれません。でもそれよりも大事なのは、それを「何のためにやるのか」っていうこと。

言葉を覚えて口に出すことのできる単語数が増えても、それを使って人とコミュニケーションをとろうと思わない限り、その言葉が活かされることはありません。何事においてもやりたい、話したいという動機を育ててやることが大事だと思います。

例えば「りんご」という言葉を言えるようになっても、「ママ、このりんご美味しそうだね。買ってよ」と言えるようになるまで相当の時間がかかります。

「横断歩道は青で渡りましょう」と言っていても、それを関係のないレストランで独り言で言っているのと、赤で渡っている人を見て注意の言葉をかけるのとでは天と地の差があると思うんです。

息子は「王林、冨士、ジョナゴールド、陸奥・・・」などたくさんのリンゴの銘柄を言えますが「リンゴ美味しそう、お母さん食べたいから買ってよ」のような言葉を話すことは出来ません。

英語だって単語をたくさん知っていても相手と喋る気がなければ全く上達しないのと同じですよね。勉強だって、親がいくら口を酸っぱくして「勉強しろ!勉強しろ!」と叱っても本人に「知らないことを知りたい」という学習意欲がなければ子どもは勉強しませんから。


子どもが無理なくやっていければそれでいい

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―最近の息子さんの様子を聞かせていただきたいです。

立石さん: 今は支援学校の高等部の1年生です。就労に向けての訓練を受けています。

就労訓練をする職種は、調理、接客、施設管理、清掃、事務などいくつかに分かれていて、1年のときは全部体験し、2年生で2つに絞り、3年生で1つに決めます。同時に就労希望先で職場体験や実習をします。今、息子は校内に設置されている喫茶店で、接客の練習をしています。

自閉症の障害特性でもあるんですが、マニュアルに書いてあることはちゃんとできるんです。でも、想定外のことが起こったときには、機転を利かせて対応するのが難しいようです。

この喫茶店は外部の人でも自由にお茶が飲めるので、お客として行ってきました。公開授業があったので学校に出向いたとき、こんなことがありました。

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立石さん: オーダーを取りに来た息子に、私が「ショートケーキを下さい」とメニューにないものを注文する意地悪なお客を演じてみたんです。そしたら息子は、最初「ないです!」って言いかけてからハッと気づいて、「申し訳ございません、ショートケーキはございません」と言い直しました。ここまでは良かったんですが、その後「オレンジジュースをお選びください」って言ったんですよね。お客がケーキを食べたいって言ってるのに、ジュースをお選びくださいっていうのは普通はまずいですよね。臨機応変に状況に合わせて適切な言葉を選ぶことが難しいようです。

だから、本人は接客をやりたいと思っていたとしても、ちゃんと業務をできなければ、裏で皿洗いや残飯処理だけをやらされることになります。当然、お店としては苦情が出たら困るわけですしね。

したいことと向いていることのギャップがあるときには難しいですね。接客したいからって飲食業に就いても、お客とのやりとりが出来なければ、よほど理解がある店でない限り続けられなくなってしまうと思います。その結果、「自分はダメな人間だ」と思い、自己肯定感がなくなって引きこもっちゃうなんてことも起こります。

―障害の有無にかかわらず、自分のやりたいことをできたらいいのですが、働く側と雇う側の間のミスマッチがあまりにも大きいと本人も傷つくし、周りも困るので、難しいですよね。

立石さん: そう思います。親にとって一番不幸なのは子どもがつらい顔してることなんです。子どもが病気になったり、いじめられて不登校になったり、毎日仕事に行きたくない顔をしているとか。

確かに一般就労ではなく、就労継続支援B型(工賃をもらいながら一般就労に向けて訓練を行う施設)に行ったら、収入にはならないかもしれません。だけれど、子どもがつらい思いをして働いてある程度の収入が入るのと、楽しく働いて収入が低いの、どちらをとるかっていうと私は後者です。お金を持ってこなくても機嫌よく毎日出かけてくれたほうが嬉しいです。

これは、小学校も中学も高校も選ぶときにも同じで「楽しく行けるところ」に焦点を絞って選ぶのがいいんじゃないかなと思っています。

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―なるほど。「子どもが楽しく」ということを一番に考えていらっしゃるのですね。息子さんの将来のことを語っていただきましたが、立石さんご自身の夢は、ありますか。
立石さん: 夢!ですか。夢っていうのはあんまりないですね。

私はシングルマザーですから、息子のために稼いで生活しなくてはなりません。本が売れて、講演会の依頼がきて、メディアに出て、今の仕事だけで生活するお金を得られることは目標です。しかし、それを一生涯をかけてやりたいかって言われるとそうじゃないんです。夢ではないですね。

あえて夢というなら…私が死んだ後も息子のことを気にかけてくれる人がいる中で、息子が生活していることですね。息子がその生涯を閉じるとき、温かい支援者の人たちに囲まれて「ああ、俺の人生はいい人生だったな」と思えるようになっていることが私の夢です。


将来を見すえた上で、子どもにとって、今なにが一番良いことなのかを考える

―最後に、お子さんの発達が気になって悩んでいる人たちにメッセージがあれば、お願いします。

立石さん: 2つあります。

ひとつめは正しい情報をもって、選択をしていくことです。子どもが小さいと、目先のことしか考えられないお母さんが多いです。例えば、就学先のことに関して言えば、親の気持ちではなく子どもにとってどの教育環境が一番適しているかで決めることが大事だと思います。

通常学級はどういうところで、特別支援学級はどういうところなのか、本当に不利なのかどうかを冷静に判断することが大切だと思います。情報を集めた結果、案外そうじゃなかったということはあります。

療育手帳をもっていることで具体的な支援を受けられることや学校の選択肢が広がることなども同じですね。お子さんの将来を見据えた上で、今何をするのがよいのかを考えるといいと思います。

どのような選択をするべきかを判断するときに手助けしてくれるのは、正しい情報や知識なんですよね。人は見えないものに対して不安を持ちます。でも知識を得れば安心や勇気を持てますから。

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―なるほど。短期的ではなく、長期的な目線で見たときに、お子さんにとって最善の選択をしていくことが大切なのですね。

立石さん:そうですね。もうひとつのポイントは、「同じ障害」かつ「違う年齢」のお子さんをもつ人が集まる場所に顔を出すことです。
というのも療育に通っていると、同じ年代の子どものお母さんとしか話ができないわけですよ。5歳なら5歳、4歳なら4歳というように。すると「あの自閉症児が出来ているのに、なぜわが子はできない」と比べてしまいます。自分もそうでした。

しかし、外に出るとそれは子どもの発達をうながすための唯一の方法じゃないことに気がつきます。療育でもひとつの場にしかいないと「それが唯一無二、正しい場所」と思い込んでしまうんですね。

でも、自閉症協会とか親の会とかに参加すると、年齢が異なる子どもが集まっているのでいろんな情報が入ります。例えば二次障害の話も聞けば、就労の話も聞くといったように。

まだ子どもが小さいときには、先輩ママの話を聞いてみると良いと思います。子どもに将来起こりうることに対して予測ができるので安心できますし、学校や療育施設の選び方に関しても、いろんなことを教えてもらえるので選択肢を広げることができます。

私が先輩ママとしてお伝えできることはこちらの本に詳しく書いてありますので、よろしかったら手に取ってみてくださいね。

https://www.amazon.co.jp/dp/4799105566/
立石美津子/著『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』2016年/すばる舎/刊

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―立石さん、とても参考になるお話をありがとうございました。

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完璧主義の「モーレツ母さん」だった立石さんが、息子さんのあるがままの特性を受け入れて、楽しく学んでいける環境に出会うまで。16年間の歩みを語っていただきました。

試行錯誤を重ねながらも見出してきた、"立石流"の子育て法。悩める保護者の方々に、参考になる視点やエピソードが満載です。新著『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』、ぜひお手にとってみてください。

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ライター: 田中千尋
撮影: 河波共宏

https://www.amazon.co.jp/dp/4799105566/
立石美津子/著『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』2016年/すばる舎/刊

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