幼児教室に通う保護者との会話
私は長年、幼児教室で指導をしていました。積極的に声がけせずとも自ら考え、学ぶ姿勢のお子さんも、教室から脱走したり、友達を叩いたりするお子さんもいました。
そんな中、ある日、スーパーに買い物に行ったときのことです。幼児教室で当時指導に手を焼いていたお子さんと保護者も同じ店に買い物に来ていました。親子は、私の姿に気がついていません。
通路を走り回り、売り物の野菜の葉っぱをちぎり、カゴに山盛りのお菓子を入れていました。お母さんは、お子さんを叱ったりたしなめたりしながらやっとの思いで必要なものを買っていて、疲れ切った様子でした。
そんなとき、私とそのお子さんのお母さんと目が合ってしまいました。母親は気を取り直す間もなく私の顔を見て次のようにつぶやきました。
「あ!立石先生、私、時々、この子を置き去りにして帰りたくなっちゃうんです…」と…。
そこで思わず、「そうですよね。落ち着いてお買い物もできませんよね。置き去りにしたくなってしまいますよね」とつい口に出してしまいました。そう言ってしまってから、「しまった!」と、お母さんの顔を恐る恐る見上げると、晴れ晴れとした表情をしていました。
そして、目に涙を浮かべながら、「ありがとうございます。分かってくれて。そんな風に言ってくれた人、初めてです」と逆に感謝され、拍子抜けしてしまいました。その後、そのお母さんとは信頼関係が深まり、さまざまな話をするような関係になっていきました。
もし、あのとき、「そんなことないですよ。落ち着きがありますよ。○○君にも良い面がたくさんありますよ」と言っていたら、もしかしたら「先生は週1回しか接しないから分からないでしょ!」と思われ、それ以降、私に何か相談したりすることもなくなっていたのかもしれないと今は思います。
オウム返しして「置き去りにしたくなりますよね」と言ったことが、たまたま傾聴になったのかもしれません。
子どもからの報告への対応
小学生の子どもが帰宅後、「宿題多くて嫌になっちゃうんだよ」と言ってきたとき
「やることやってから、遊びなさい!」とか「宿題やらないと先生に叱られるよ!」とか「宿題多すぎると先生に言ってあげるから!」と言ったらどうでしょう。
子どもは「宿題をやらない!」と言っている訳ではありません。お母さんに気持ちを聞いてもらいたいだけなのです。
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