場面緘黙がある自閉症息子の受験面接。「きっとうまく話せない」あきらめかけた母が見た姿は
不登校と通信制高校の面接準備
ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、中学3年生。体育祭には出席しないと決めた日から中学校には行かなくなった。
体育祭当日。体育祭は午前中で終わるので、太郎は特別支援学級の担任の先生と午後から会う約束をしていた。先生は2日後に迫っている通信制高校の面接をとても気にかけてくださっていて、「面接の練習を」と、休んでいる間も何度も電話があった。
休んでいる間は、電話で先生と太郎が直接話をすることはなく、私から太郎へ伝言していた。「先生が面接の練習をしようと言っているよ。体育祭が終わったら練習をしようね」と伝えると、太郎は「分かった」といつものように反応薄く返事をした。
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2日後に重要な面接を控えていたものの、学校に行けていないし、面接がうまくいかなくても仕方がないとあきらめている私がいた。場面緘黙もあるので、きっとうまく話せずに固まる姿を見ることになるんだろうな、私が代弁するように面接官の方と話をすることになるんだろうなと予想していた。
なので特別支援学級の先生が最後まであきらめずに「面接の練習を」と電話をくださることに、少なからず驚いてもいた。わが子のことなのにどこか他人事のように、「先生頑張るなあ、一生懸命に熱い人だなあ、二日間の練習で何か変わるのかな」と思っている私がいた。
体育祭が終わったあと、太郎は約束通りに登校した。学校から帰宅しても顔色を変えずに「今日は面接の練習を先生とした」と大まかなことは言うが詳細は何も語らなかった。
通信制高校の面接当日
そして面接当日太郎は珍しく気持ちを言葉に表した。
「ちょっと緊張する」
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面接会場へ向かう車の中で、そわそわとしながら太郎は言った。
「緊張するよね、大丈夫リラックスリラックス」と私は声をかけた。「うん」と返事をした太郎はずっとそわそわとしていた。
いよいよ面接会場へ案内された。
名前を呼ばれ、私が先頭に立って部屋へ入室した。太郎は背筋をピンと伸ばしていた。着席をする前に面接官の方から「名前と学校名をお願いします」と言われた。
「〇〇中学校からきました。〇〇太郎です」
初めて聞くような大きな声でハキハキと答える太郎がいた。
え?こんなにハキハキと答えらるの?と私は目を大きくして逆に固まった。その後も太郎は面接官の方からの質問に対して、自分の言葉で返答をしていた。