「何でも一人でできる」ではない、親なきあと、障害のあるわが子に必要なこと
就職の時、面談で聞かれること
息子は現在24歳、企業で働いています。知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)で、特別支援学校高等部卒業後、就労移行支援事業所に3年間通って今の会社に入りました。
就労移行支援事業所では、面談で必ず聞かれる3つのことを繰り返し練習しました。
「あなたの障害名はなんですか?」
「苦手なことを言ってください」
「得意なことを言ってください」
企業は、自分の得手不得手を自認していてそれを会社の人に伝えることができることが大切だとみなしているのでしょう。
一方で、困るタイプは以下のような人のようだと聞きました。
「自分のことをよく理解できていない人」
「プライドが高く、ミスを認めない人」
「素直にアドバイスを聞き入れず、何でも否定されたと捉えてしまう人」
これは、「なんでも自分でできる」「人に迷惑をかけない」ことの対極のように感じます。つまり、本人が障害を分かり、受け入れているかどうかが大事なのではと私は思うのです。
自分の得手不得手を自覚すること、相手に伝えること
息子には改めて障害告知をしたことはないのですが、幼児期から療育に通い、小学校は特別支援学校に通い、下校後は放課後等デイサービスに毎日行き、週末はヘルパーさんとお出かけする……そういう生活をしていたので、分かっていたようです。
実際、自己紹介の時や面談の時、「僕の障害は自閉症です。知的障害と強迫性障害とてんかんがあります」と言います。
癇癪は最近自身の判断で加えるようになりました。自覚ができていて、そのことは相手に伝えるべきことだと分かっていることは、とてもいいことだと感じています。
『お金の計算ができなくちゃだめ』と厳しく言われていたことによって、商品を持ち帰るようになってしまう?
中学生の時、息子はお金のことを全く分かっていませんでした。個人面談で担任の先生にそのことを伝えると、先生から次のように言われました。
「『僕はお金が分からないので、お財布から取って下さい』と言える子に育てましょう。日本は治安が良い国ですから、お店の人が多めに取ることはしないので安心です」
「『お金の計算がわからなくちゃダメだ』と厳しく言われ、練習をしている生徒がいました。
その子は財布から正しい額を出せないことを恥ずかしいと思ったのか、(お金を支払わず)お店の商品を黙って持ち帰るようになってしまったんです」