胆道閉鎖症とは?注意するべき3つの症状を知っておこう!【パパ小児科医コラムvol.16】
胆道は消化器系の臓器なのに、どうして脳出血を起こすのか不思議に思われる方もいるでしょう。少し複雑ですが、病気の仕組みを説明します。
脂肪の消化吸収に必要な「胆汁」は肝臓でつくられ胆のうに貯蔵されます。そして食事をすると胆汁が総胆管(胆道)を通って十二指腸に送られ食べ物と出会い、脂肪の消化吸収の手助けをします。胆道閉鎖症はこの総胆管(胆道)が閉鎖してしまっているので、脂肪が吸収されません。
脂肪が吸収されないと、脂肪に溶けるビタミンであるビタミンKが吸収されなくなり、ビタミンK不足により血が止まりにくくなってしまうのです。血が止まりにくくなると、青あざができたり、消化管出血で便が赤く(黒く)なったり、脳の中に出血してけいれんを起こしたりと命に関わる場合があるのです。
また胆汁が排出されなくなるので、肝臓にはどんどん胆汁がたまり(胆汁うっ滞)、肝臓の細胞は正常にはたらくことができません。
肝臓の細胞が破壊されていき、最終的には完全に壊れる「肝不全」になってしまい命に関わります。
豆知識「ビタミンK」
血液の「凝固因子」を作るはたらきをします。生後間もない赤ちゃんはビタミンKを体内で作る機能が未熟で不足しがちです。そのため、産院では赤ちゃんにK2シロップを与えています。
胆道閉鎖症の治療法は?
胆道閉鎖症を発症した場合、胆道が閉鎖してうっ滞するため、手術によって胆汁が腸へ排出される経路を作らなければなりません。
予後に影響するため生後2ヶ月以内に、「葛西手術」と呼ばれる手術をすることが望まれます。また胆汁うっ滞が進み肝臓へのダメージが大きい場合、「肝臓移植」が必要になることがあります。
早期発見が重要!
胆道閉鎖症は予後にかかわるため、早期発見が重要です。しかし残念ながら、この病気は医療機関でも見過ごされることがあるのが現実です。便は典型的には灰白色便になるのですが、実際にはうすい黄色ということもあります。私が経験したケースでも灰白色ではありませんでした。ある日の診察で問題ないと判断されても、時間がたつと状況が変わっていることもあります。
胆道閉鎖症は小児外科が専門ですので、かかりつけの小児科が詳しくないこともあります。判断ができないときや納得のいく説明が得られないときには、専門機関への紹介など他の医師の意見を聞くことを考慮してくださいね。
赤ちゃんの家族にできること
統計によると、胆道閉鎖症は年間約100人の患者さんが発生して、うち数人が脳出血を発症します(※1)。