こんにちは。エッセイストの鈴木かつよしです。
わが国が歴史上例をみないほどの少子高齢化社会になってからもうかなりの年月が過ぎましたが、少子化対策はいっこうにこれといった成果を上げられていません。
それもそのはずで、今や働く人の半数近くにのぼる非正規雇用の人にとって結婚や出産は「自分には考えられないほど非現実的な贅沢」 になってしまっているからです。
内閣府の少子化対策案をみてもそういった点についての認識が甘く、これでは少子化に歯止めがかかるはずはありません。
今回は、「本当の少子化対策とは非正規雇用の人が結婚できるようにすることである」という視点に立って、これから結婚してママやパパになりたいと願っている非正規で働く独身者のみなさんと一緒に考えてみたいと思います。
●「正社員への転換制度の拡充」と政府は言うけれど……
雇用の非正規化が少子化に拍車をかけていることに国が気づいていないとは言いません。
内閣府の少子化対策案の中にも「正社員への転換制度の拡充」はちゃんと謳われています。
ですが、ひとたび動き出してしまった労働の非正規化の流れをそう簡単に止めることができるのでしょうか?
現実問題として、飲食業や各種のサービス業に象徴されるような労働集約型の業界では、その企業の命である商品の提供を実際に手がける現場のスタッフのほとんどが非正社員です。
正社員は、「ごく一部の、頭で働く人」と「人生の時間の大半を会社に捧げてくれる人」に限られているというのが実態。
ほんの一握りの正社員の他は、会社の経営状態によっていつでも雇用を打ち切ることが出来るという体制を、わが国の企業はこの20数年かけて確立したのです。
2018年4月には法改正によって5年以上有期雇用で働いてきた人は無期に転換できるようにはなりますが、5年に満たない人は逆に「今のうちに雇止めしておこう」といった姑息な対策の対象になりかねません 。
こんなおいしいシステムを、今さら企業経営者は手放すでしょうか?
●どこからどう見ても“生活できない時給”で本当にいいのか?
独身の女性が非正規雇用の独身男性を結婚相手として対象外にしてしまう理由は、上で述べたような「いつクビを切られてもおかしくない雇用の不安定性」の問題の他にもう一つ、「どこからどう見ても生活が成り立つわけがないほど安い時給」の問題があります。