国税庁が2017年9月28日に発表した直近の民間給与実態調査によれば、非正規雇用労働者の平均年収は172万円でした。
月収に換算すると14万3千円。1,000円にも満たない時給で働いている人がほとんどなのですから当然といえば当然です。自立して生活できるはずがありませんよね。
いっとき東京などで盛んに言われた「最低時給1,500円を企業に義務化すべき」という意見は、「中小企業が潰れてしまう」「単純労働をするだけの人にそんなに払うべきでない」などといった理由からトーンダウンしてしまった感がありますが、本当にそうでしょうか?
単純な筋肉労働だって立派な労働であり、職業に貴賎はありません。
何よりも、真面目に働いている人が自立した生活を営むことが出来ないような対価で人を雇う ことそのものに倫理上の問題はないのでしょうか?
●非正規雇用の人が結婚できるようにしなければ社会そのものが持続できない
明治大学の教授で社会学博士の安藏伸治(あんぞう しんじ)氏は機会あるごとに、「少子化が止まらない原因は結婚できない人がおそろしい勢いで増えているからだ」という趣旨の指摘をしています。
筆者もそう思います。
本当の少子化対策とは結婚できた人にたいして施すものではなく、結婚できないでいる人が結婚できるようにすること なのです。
この対策こそ急いで実行しないことには、残念ですがわが国の社会そのものが持続できません。
若者の貧困問題に詳しいNPO法人代表の藤田孝典(ふじた たかのり)氏もこの立場に立ち、「多くの独身者にとって手の届かない贅沢になってしまった結婚・出産を彼らの元に取り戻す方法」として、次のような対策が不可欠であると述べています。
1.雇用形態にかかわらず自立した生活を営むことが可能な賃金を保証すること
2.教育にかかる費用を抜本的に下げること
3.住宅にかかるコストを下げ、独身者が親の実家に頼らなくても恋愛・結婚にふみきれる環境を作ること実質的な可処分所得を増やすこと
いかがでしょうか。筆者も全く同感です。
総務省統計局が行った就業構造基本調査の直近データによると、時給換算した正社員の平均収入は20代後半では1,500円程度ですが30代半ばには2,200円台に乗り、40代になると2,600円以上になっています。これに対して非正規雇用労働者は何年働いてもどんなに熟練しても時給900円台 が普通です。