2022年1月14日 10:00
カテキン重合物が燃焼型脂肪細胞を増加させる カテキン重合物の反復経口投与で白色脂肪細胞の褐色化を確認
芝浦工業大学(東京都港区/学長 山田純)システム理工学部生命科学科・越阪部教授ら研究チームは、ココアやワインに多く含まれるフェノール性物質であるカテキン重合物画分の経口投与が、交感神経系の活性化を介して、燃焼型であるベージュ脂肪細胞を増加させることを実証しました。
燃焼型脂肪細胞である褐色またはベージュ脂肪細胞は、脂肪を分解し、熱として体外に放出することが知られています。カテキン重合物を効果的に食事に取り入れることで、燃焼型脂肪細胞が増え、体内の余分な脂肪を燃焼させることで、肥満や心臓病の予防に役立つ可能性を示しました。
※この研究成果は、「Nutrients」誌オンライン版に掲載されています。
【ポイント】
●カテキン重合物画分(フラバン-3-オール)の経口摂取が交感神経系を活性化し、白色脂肪の褐色化を促進
●ココアやワインなどの効果的な摂取が肥満や心臓病予防に役立つ可能性
図1. カテキン重合物で脂肪を褐色化させる
対照マウス(左)とカテキン重合物投与マウス(右)の鼠径部脂肪組織の病理組織学的観察結果
カテキン重合物を繰り返し投与すると、白色脂肪サイズが顕著に縮小し、細胞の大部分を占めていた脂肪滴が多房化する(矢印)といった、ベージュ脂肪細胞に特異的な変化が認められた。
Repeated Oral Administration of Flavan-3-ols Induces Browning in Mice Adipose Tissues through Sympathetic Nerve Activation, OSAKABE et al, Nutrients 2021, 13(12),
■研究の背景
脂肪細胞には脂肪を蓄積する白色脂肪細胞、熱を産生する褐色脂肪細胞、そして近年発見されたベージュ脂肪細胞があります。白色脂肪細胞は体内の余分なエネルギーを蓄える細胞であり、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞は、脂肪を燃焼させて熱として体外に放出する細胞です。寒冷環境下では、一時的に交感神経が活性化することによって、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞が熱を発生して体温を保ちます。
これは褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞には、熱産生タンパク質である脱共役タンパク質(Uncoupling protein; Ucp-1)を含むミトコンドリアが多いためです。また寒冷環境が続くと、ベージュ脂肪細胞が増加することが知られています。