吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生の『雨の夜』もマイペースで雨の夜の、高速道路を走るのが苦手です。苦手と言うより、「怖い」と言った方がいいでしょうか。車は好きですし、運転することは大好きです。大学生の時に免許をとってから40年以上、車はなくてはならない相棒のようです。20代の頃は少々無茶もしたし、思い立って真夜中に首都高速を走って気分を変えたりしたこともありました。怖いものがなかったとはあの時代のこと。スピードを出すことが心地よかった。あれこれと悩んでいたことがちぎれていくような感覚があって、万能感に満たされるような感覚もありました。怖さを感じることがなかった、怖さ。若いということは、そんな怖さがあることすら知らない時代なのかもしれません。だから、冒険という名の無茶もできた。海外の知らない街を歩くことは怖くなかったし、森の中に一人で入っていくことも怖くなかった。それが、子どもが生まれてから、夜道を歩くことが怖くなり、車でスピードを出すことが怖くなった。ひとりで海外にいったときも、夜は早々にホテルに戻ったり。臆病なくらい、慎重に動くようになっていました。そんな自分を自覚したとき、自分のためだけに生きてきた時代が終わったことに気づいたのです。人生の歩き方にも、それぞれのスピードがあり、それぞれのタイミングがあります。アクセルを踏む時期、緩める時期。無意識のうちにそのように動いているのですが、時にアクセルを踏む時期ではないのに踏み続けてしまうことがあります。自分の中の焦りや欲が先走ってしまう。すると、物事がボタンを掛け違えたように空回りしてしまうものなのです。若い頃にはできませんでしたが、自分がいまどんな流れの中にいるのかを客観的に知ることは大切です。そして、しなくてもいい無理を課さないこと。そんなことを思ってか、最近の私はゆるゆるとしたペースで歩んでいて、こんなのんびりとしていていいのかしらと思いつつ、アクセルを踏み込むタイミングが来たら逃さないように。この感覚は運転しているときにも通じます。法定速度で走る快感、高速道路ではどんどん抜かされますが、我が道を淡々と進んでいる感覚を覚えます。早いスピードの『怖さ』を避けるためには、それがいちばんなのです。感覚を研ぎ澄まし、自分自身に寄り添いながら進んでいく。人生の『雨の夜』も、無理せず、自分のペースを守りながら。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月31日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『足跡』を残すということ先日、急逝した画家の友人のアトリエを訪ねました。ご家族のご好意で、絵を譲っていただけることになったのです。亡くなった後に、何箇所かに保管してあった作品をまとめたのか、アトリエは膨大な作品で埋め尽くされていました。天井に届きそうな大作も数多くあり、その仕事量に圧倒されました。どれだけのエネルギーと情熱で制作に取り組んでいたのか。いつも穏やかな友人の中にあったであろう表現への思いを垣間見た気がしました。もちろん、それは私の想像など及ばないものだと思います。引き出しの中には、描きかけのスケッチやモチーフを描き出したものなどがぎっしり入っていました。それは、友人の『息吹き』でした。完成させるまでの思考、彼の中から出てきたモチーフたち。想像、創造をめぐらしていた時間が、満杯になった引き出しからこぼれ出たよう。額に納められた作品はもちろんですが、未完成のものたちも、彼が生きた証そのもの。静かに、だけど生き生きとそこにあったのです。ものを創ることをしていれば、『何か』を残すことができます。生きた証を残すことにこだわる必要などありませんが、人はどこかにその足跡を残していくものです。その人の本棚を見れば、何を好み、また何を考え、悩んでいたかが見えてくるかもしれません。それも証になるでしょう。その人の言葉も、証になるかもしれません。ひとことかけた言葉が誰かの心の支えになったのなら証になるのでしょう。そのように考えていくと、私たちは日々足跡を残しながら生きているのかもしれません。誰かに向けたものでも、意図しているものでもなく、ただ残っていくもの。それを後に人が足跡、証として受けとるもの。いつか時が経ち、それは波が砂浜の足跡をさらうように消えていきますが、残ったものが優しいものであればいいなと思うのです。一期一会の出会いも、もしかしたら足跡になるかもしれない。ときどき、そんなことに思いをめぐらせます。友人のアトリエから連れ帰った深い蒼の森の絵を仕事部屋の机の前に掛けました。言葉を紡ぐということ、それは表現の森の中を探求することでもあります。友人の静かな情熱は、その尊さを教えてくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月24日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。秋の花菊を愛(め)でる春は桜、秋は菊、秋は日本の『国花』とも言われる菊の季節です。菊は皇室の象徴でもあり、パスポートに菊があしらわれるなど、日本を象徴する花でもあります。各所で始まる『菊花展』の案内が届き始めています。ところで、この菊、どうやら日本原産ではなさそうです。というのも『万葉集』には、菊を詠んだ和歌は、一首もありません。つまり飛鳥、奈良時代には、菊は無かったということです。おそらく奈良末期か、平安の初めに中国から入って来たものと思われます。それは、『古今和歌集』に、菊が盛んに詠まれるようになったことからも頷ける訳ですね。九月九日の『重陽(ちょうよう)の節句』菊の宴(うたげ)は、平安時代から宮中の行事として行われて来ました。さらに、日本で菊の栽培が盛んになったのは、理由があります。それは、冬に芽(め)を取り、春に植え、夏に成長させ、秋に鑑賞する! これは米、稲(いね)の栽培と似ているからなのです。端正に育てられた菊は『菊花壇』『菊人形』のように仕立てられ、鑑賞用の花として発展して来ました。今では 一年を通して栽培される菊ですが、本来は秋の花です。『三段仕立』などの様式で季節を彩ってくれる菊、時間があれば、『菊花展』に足を運んでご覧になると、その美しさ、艶(あで)やかさに心奪われ、これは間違いなく『日本の国花』だと納得されることでしょう。当方は、11月3日、菊香る文化の日に、必ず菊を活け、その美しさを楽しむようにしております。菊の香や 奈良には古き仏達芭蕉黄菊白菊 其外の名は無くもかな嵐雪しらぎくの夕影ふくみそめしかな万太郎<2021年10月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年10月21日2021年10月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2021』を開催しています。今年の作品募集テーマは、コロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続くなか、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』です。『grape Award 2021』心に響くエッセイを募集!10月31日(日)まで今回は、昨年の受賞作品の中から『優しき山バア』をご紹介します。今から三十年以上前のこと。私が通っていた小学校から、少し坂を下った途中に一軒の駄菓子店があった。無口なお婆さんが一人で切り盛りしている店だった。「オバちゃん、コレちょうだい」「…二十円」小学生相手に、至って愛想は悪く、いつも店の奥に鎮座して、駄菓子の値段だけを呟き続けていた。動かざること山の如し。当時、そんな言葉はもちろん知らなかったが、私たちは密かに「山バア」と呼んでいた。ある日のこと。私は友達四人と、いつものように駄菓子を物色していた。すると、一人の子が、「このガム、お揃いで買おう」と言い出した。価格、五十円也。他の子が同調する中、私は手の平にある全財産を見つめ、勇気を出して言った。「三十円しかないねん」とワタシ。「ほな、家戻って取ってくる?」とトモダチ。女手一つで働く母に、二十円の「追加融資」を言い出す気にはなれず、私は、その場で立ちすくんでいた。気まずく思ったのか、友達も次々と店の外に出て、おしゃべりを始めた。私はただ一人、店の天井に飾られた風船を無意味に眺めていた。すると、山が動いた。いや、正確には、山バアの口が動いた。「裏にあるラムネ瓶の箱、持ってきて」どう見ても、店には私しかいない。山バアが、駄菓子の値段以外の日本語を発していることに驚きつつ、私は頷いて、店の裏へ行った。訝しげな友達を横目に、十数本の空のラムネ瓶が入った箱を、やっとの思いで店の中へ運び込んだ。「ココ、置いときます」こわごわ報告した私に、手招きをする山バア。「これで手ぇ拭き」そう言って、山バアから渡されたタオルの上には、十円玉が二枚、のっていた。戸惑う私の顔を見ながら、「手伝い賃や」と短く呟く山バア。「でも…」と言いかけると、彼女は、そっと私のポケットに、その二十円を入れた。結局、戻ってきた友達の話題は、「お揃いのガムを買う話」から、「明日の給食」へと変わっていた。帰りがけ、ふと店のほうを振り返った私は、思わず、「あっ」と声を上げた。さっき私が店に運んだラムネ瓶の箱を、腰を屈めた山バアが、店の裏へ戻していたのだ。申し訳なさと有難さが心の中でぐるぐると交差する中、私は帰り道の坂を下りて行った。最近、こんなことを教わった。「優しいという字はニンベンに『憂う』と書く。人の憂いに気付く人を優しい人と言うのではないか」と。三十数年前のあの日、小学生の小さな憂いに気付いてくれた山バアは、本当の優しさを教えてくれた、最初の大人かもしれない。grape Award 2020 応募作品テーマ:『心に響くエッセイ』タイトル:『優しき山バア』作者名:安部 飯駄(アベ パンダ)エッセイコンテスト『grape Award 2021』開催中!2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第5回目となる2021年は、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』をテーマに作品を募集しています。今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。『grape Award 2021』詳細はこちら[構成/grape編集部]
2021年10月19日2021年10月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2021』を開催しています。今年の作品募集テーマは、コロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続くなか、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』です。『grape Award 2021』心に響くエッセイを募集!10月31日(日)まで今回は、昨年の受賞作品の中から『子育て応援バス』をご紹介します。息子が2歳の時のことだ。私は、初めての子育てに戸惑いながら、イヤイヤ期の息子と過ごす一日は長く、どうすれば親子ともに機嫌よくいられるのかを毎日必死で考えていた。息子は例に漏れず、乗り物が大好き。特に都営バスに乗ることが大好きだった。まだ言語の発達が遅かった息子は、「バッ」と言って都営バスに乗りたいとアピールする。家の近くのバス停から新宿駅西口行きの都営バスに乗れば、往復で2時間は時間が流れていってくれる。だから、私たち親子は毎日都営バスに乗って過ごした。目的地は特に無い。息子が望むままに一日中バスを乗り継いで過ごしたこともある。その日は、よく晴れていた。平日の昼前、いつも通り息子を抱きかかえて、ICカードをタッチさせてやり、都営バスに乗り込む。息子のお気に入りは一番前の、普通乗用車で言えば助手席に当たる席だ。乗客や運転手、すれ違う様々な車にバイク、景色も良く見えるその席は、座れると私もわくわくした気持ちになる。だが、その日いつものバス停にやって来たのは新型のフルフラットバス。乗車口に一番近い場所には座席が無く、あいにく、運転手の真後ろの席も埋まっている。「一番前の席は無いから座れないね。今日は後ろに座ろうね。」息子がぐずる前に、私は必死でなだめる。息子は、一瞬残念そうな顔をしたが、初めて乗るフルフラットバスを見渡していつもとは違うバスだということを理解したようだった。私たち親子は、目的地も無いのでいつも終点の新宿駅西口まで行く。バスが10分ほど走ったところで途中のバス停に着いた。降車口は開くが、一番前の乗車口は開かない。いつもなら同時に開くのにどうしたのだろうかと思っていると運転手さんがアナウンスをした。まずは、バス停で待つお客さんに「少々お待ちください」と。そして次は車内に。「お母さん、一番前が空きましたからどうぞ」私はその意味を理解するに少々の時間を要した。けれど、運転手さんの真後ろの席のお客さんが降りたことに気づき、有り難いような申し訳ないような気持ちでいっぱいになった。「どうもありがとうございます」と言って、息子を抱きかかえたまま一番前の席に移動した。そして、もう一度運転手さんに御礼を述べて、息子にも「一番前に座れて良かったね」と言うと息子は笑った。しばらく行くと「次は歌舞伎町です」と車内アナウンスが流れた。私は、「もうすぐガオーさんが見えるよ」とTOHOシネマズ新宿のゴジラを楽しみにしている息子に耳打ちした。少し走り、信号待ち。いつもより少し前に停車しているようだ。すると、運転手さんが小さな声で「どう?ゴジラ見えた?」と話しかけてくれた。どうやら息子の為に、見えやすいように停車してくれたようだ。私は胸がいっぱいになった。バスが大好きな息子が、車内で泣いたことは一度も無かったけれど、それでもいつ大声で泣き叫んでしまうだろうか、と不安な気持ちでいた。周りに迷惑をかけないようにとドキドキしながら都会で子育てをしていた私に、その運転手さんの優しさが、鐘を打ったかのように心の中にじわんじわんと響いた。一緒に子育てをしてもらっているような、そんな気持ちにさえなった。終点の新宿駅西口で降りる時、私はもう一度運転手さんに御礼を言ったが、涙がこぼれそうで声が震えた。あれから時は経ち、幼稚園の年中組になった息子。将来の夢はもちろん「バスの運転手さんになること」。息子が大きくなった時、あの日の運転手さんの心遣いが、母である私を応援してくれたような気持ちになったことを話してやろうと思う。grape Award 2020 応募作品テーマ:『心に響いた接客エッセイ』タイトル:『子育て応援バス』作者名:鵠 更紗エッセイコンテスト『grape Award 2021』開催中!2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第5回目となる2021年は、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』をテーマに作品を募集しています。今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。『grape Award 2021』詳細はこちら[構成/grape編集部]
2021年10月19日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『物語』が心を守る「恐れや悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる」臨床心理学者の河合隼雄さんと作家の小川洋子さんの対談本『生きるとは、自分の物語を作ること』(新潮文庫)の中で、お二人はこう話されています。作家の柳田邦夫さんの息子さんが脳死状態となり、亡くなります。臓器提供を希望していたことから息子さんの臓器は必要としている人へ移植されることになります。そのとき柳田さんは、息子の命がどこかで引き継がれたのだと思う。こう思うことによって、受け入れがたい現実と折り合いをつけようとする。これが、私たちが作り出す『物語』です。SNSで多くの面識のない人たちとつながります。友人たちともつながります。Facebookを始めて7、8年経ちますが、何人もの友人たちが旅立って行きました。若くして重篤な病気を患い逝ってしまった人、ある日突然逝ってしまった人、ありし日のままSNSに足跡を残して。ある友人は、メッセージを投稿した翌日に逝ってしまいました。1か月経った今もとても不思議です。信じられない……と簡単に言えません。まだ、『物語』を作れずにいます。なぜこんなことを思い出したかというと、ときどき風が胸の奥に吹き込んでくるように、そんな人たちのことをふっと思い出すのです。そのたびに、ああ、もういないのだなあ、と改めて思います。それは、楽しい夢から覚めたときのように、軽い落胆を伴います。でも、(もしかしたらどこかで生きているかもしれない)と、ふと思う。そんなパラレルワールドがあるかもしれない、と思ったりするのです。パラレルワールドとは、『ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界』。そんな世界が存在するとは証明できないけれど、存在しないと証明することもできない……と、科学の立場では言われているそうです。小さい頃、もしかしたら1年先の自分、1年前の自分がどこかにいるかもしれない、と真剣に思ったものでした。1分先の自分も、1分前の自分も。宇宙はミルフィーユのように時空を超えた世界が重なっているのではないか。そんな空想にふけったものでした。考えてみると、SNSの空間も別次元のような気がしてきます。そこに旅立っていった人たちは存在していて、亡くなったことを知らない人たちが毎年「お誕生日おめでとう。素敵な一年になりますように」とメッセージを入れる。ある意味、この空間もパラレルワールドなのかもしれません。忘れられない人が心の中に生き続けているとしたら、それもパラレルワールドなのかもしれません。私たちの心には、物語が必要である。恐れや悲しみを受け入れるために、心の奥にパラレルワールドを描いているといいかもしれません。それが私たちの心を守ることになるように。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月17日2021年10月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2021』を開催しています。今年の作品募集テーマは、コロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続くなか、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』です。『grape Award 2021』心に響くエッセイを募集!10月31日(日)まで今回は、昨年の受賞作品の中から『心を拾ってくれたタクシー』をご紹介します。タクシー運転手という職業をとても尊敬している。見ず知らずの人を車に乗せて、時には横柄な態度を取られ、理不尽な怒りをぶつけられることもあるだろうに、24時間いつでもしっかりと目的地へと連れて行ってくれる。東京で働いていた時は、激務ということもありほぼ毎日タクシーに乗っていた。私が新人の頃は、深夜に半泣きで帰路につく私を、運転手さんがよく励ましてくれていた。その時間が私はとても好きだった。中でも、忘れられない運転手さんがいる。数年前の年末のこと。仕事でひとつの大きな案件を終えた夜だった。私は、ほぼ2徹状態での肉体労働を終え、身も心も満身創痍、一刻も早く家に帰って暖かい布団に滑り込みたい、その一心だった。日付が変わった頃に会社を出て、今にも崩れ落ちそうな肢体を家まで運んでくれるタクシーを探した。しかし、走るタクシーは数多居れど、ことごとく「賃走」。通り過ぎる全てのタクシーが乗車済みだった。よく見ると、路傍に私と同じようにタクシーを探す「タクシー難民」たちで溢れている。世は師走。忘年会シーズン真っ盛りの金曜日だった。居酒屋も立ち並ぶビジネス街に会社があったため、忘年会を終えた人たちがタクシーで帰ろうと溢れかえっていた。その時の私は、まだ余裕があった。これだけタクシーが走っているんだから、少し歩いて繁華街を離れれば1台くらい「空車」のタクシーがあるだろうと思っていた。しかし、1時間さまよい歩いても、1台も「空車」がない。空車を見つけても、すぐさま別のタクシー難民に乗られてしまう。疲れた。寒い。疲れた。寒い。体も、気持ちも、限界だった。私はこんな時間まで働いて、疲れきって、こんなにもタクシーを必要としているのに、楽しそうな酔っ払いたちがタクシーに乗っている。道端でタクシーがいないと騒いでいる人も、ほろ酔いだから、その状況さえも楽しんでいるかのように声を弾ませている。感じたことのないくらい、殺伐とした気持ちだった。すれ違う酔っ払いたちが憎くて憎くて仕方がなかった。もう一歩も歩けなくなってしまった。私はガードレールにもたれかかって、ただ、立ち尽くしてしまった。ついに涙も決壊した。その時、1台のタクシーが私の目の前に停車した。表示は「回送」。ドアが開き、優しそうなおじさんの声が中から聞こえる。「タクシー、ないんでしょ。回送だけど、いいよ。乗りな。」車内はとても暖かかった。冷えた体も、気持ちも、じんわりと溶けていくようだった。安堵からはらはらと涙を流す私に、運転手さんはただただ優しい言葉をかけてくれる。「僕もね、今日は酔ったお客さんばかりで疲れてたけど、最後に君みたいな頑張ってる子を乗せられて、嬉しいよ。」涙が余計に溢れ出て止まらなかった。家に到着して、厚くお礼を言って降りようとした時。運転手さんが私を引き止めた。「これ、よかったらもらって。買ったけど、結局食べなかったから。お疲れ様。」渡されたのは、1箱のチョコレートだった。口の中に入れたチョコレートはとても甘く、疲れた体に染み渡っていった。運転手さんにとっては、どれも些細なサービスだったのかもしれない。それでもこんなにも救われる気持ちがある。世界は小さな優しさたちでできているんだと、実感した夜だった。いつか私の行為も誰かの心を拾うときがあるかもしれない。あの運転手さんのように、柔らかい気持ちを持っていたいと、今も思っている。grape Award 2020 応募作品テーマ:『心に響いた接客エッセイ』タイトル:『心を拾ってくれたタクシー』作者名:飯沼 綾エッセイコンテスト『grape Award 2021』開催中!2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第5回目となる2021年は、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』をテーマに作品を募集しています。今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。『grape Award 2021』詳細はこちら[構成/grape編集部]
2021年10月15日2021年10月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2021』を開催しています。今年の作品募集テーマは、コロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続くなか、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』です。『grape Award 2021』心に響くエッセイを募集!10月31日(日)まで今回は、昨年の受賞作品の中から『リンツァートルテの想い出』をご紹介します。ツアーコンダクターの職について30年。あっという間に時が流れた。溢れんばかりの想い出が心に刻まれているが、中でも特に忘れられない出来事がある。オーストリアを巡るツアーで私はひとりの女性と出会った。彼女は80歳を過ぎていて、同行者はいなかった。その旅はすこぶる順調に進んでいたが、後半に差し掛かった5日目の午後、高速道路の事故渋滞で大幅に予定が狂ってしまった。オーストリア第3の都市・リンツでの観光は断念せざるを得なくなり、まっすぐホテルに入った。チェックインを済ませたあともロビーに佇んだままの女性の姿に気がついた私は、彼女のもとに近づき「どうかされましたか?」と声をかけた。彼女は固い表情のまま「無理を承知でお願いしたいことがあります…。リンツのお菓子であるリンツァートルテをどうしても買いたいのです…。私の長年の夢でした。どうかお願いします…」と言った。すぐさまフロントに行くと、「近くにパティスリーがあってそこで買えるけど、間もなく閉店時間だから間に合わないかもしれない…」と言われた。外はすでに真っ暗で小雪が舞い始めていた。あと、3分…、彼女の足では到底間に合わない。ヨーロッパではこういう場合、時間オーバーして対応してくれることは、まず無い。残念だけど諦めてもらうしかないか…。振り返った瞬間、まっすぐに向けられた彼女の瞳が私の心を別の方向に突き動かした。「約束は出来ませんが…いってきます」と告げると私は一目散に駆け出した。店に着いたのは、正に店員が鍵をかけようとしていた時だった。「リンツァートルテをください。お願いします」大声で叫ぶ私に、店員は無情にも首を横にふると「また明日」と言った。「明日はないんです。今しか…今しかチャンスはないんです。お願い、リンツァートルテを!お願いです…」すると店の奥から店主らしき年配の女性が顔を覗かせ「こんなことは初めてよ」と肩をすくめて笑いながら私を店に招き入れた。ホテルの外で私の帰りを待っていた彼女は、両手にかかえた大きな箱を見つけると満面の笑みで私を抱き寄せ「ありがとう。本当にありがとう」と何度も繰り返した。言うまでもなくリンツは彼女にとって特別な場所だった。不慮の事故により、30歳という若さでこの世を去った夫とリンツでリンツァートルテを食べる旅を計画していたことを、あとで聞いた。「50年かかったけど漸く叶ったわ」とガラスが割れたままの遺品の腕時計をいとおしそうに見つめていた。バスドライバーに頼み込み、翌朝30分早くホテルを出てリンツの街並みを車窓から眺めた。前日の雪がウソのようにスッキリと晴れた青い空がどこまでも広がっていた。帰国して数日後、私は思いがけず彼女から配達物を受け取った。「旅のお礼に、プロのパティシエとして心を込めて焼きました。プロの添乗員さんへ」というメッセージが添えられたリンツァートルテは、本当に美しく、そして、美味しかった。現在私の仕事は新型コロナの影響で100%止まってしまい、先も読めない状況下にある。世の中のシステムも大きく変化した。アフターコロナでは、ツアーの形態も大きく様変わりするかもしれない。それでも私は旅の仕事を続けていきたい。人が人を思う気持ちの尊さは決して色褪せないと信じている。時間がある今こそ、リンツァートルテを焼いてみようと思う。20年前の記憶を呼び起こしながら…。grape Award 2020 応募作品テーマ:『心に響いた接客エッセイ』タイトル:『リンツァートルテの想い出』作者名:一期一会エッセイコンテスト『grape Award 2021』開催中!2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第5回目となる2021年は、『身の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』をテーマに作品を募集しています。今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。『grape Award 2021』詳細はこちら[文・構成/grape編集部]
2021年10月15日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。横綱白鵬 引退大相撲で歴代最多の45回の優勝を記録した横綱白鵬が、右ひざの状態が思わしくなく、引退することを表明しました。来年あたりは? と思っていましたが、右ひざの回復が遅く、引退を決意したようです。新横綱、照ノ富士との横綱対決を期待していただけに、誠に残念であります。11月場所まで土俵に上って欲しかったです。横綱白鵬は、横綱として84場所、優勝45回、並みの横綱ではありませんでした。ほっそりとした15才の少年がモンゴルから来日して、言葉も判らず、生活がガラリと変った相撲部屋でのケイコの毎日、友人鶴竜はいたものの、よくぞ頑張り通し関取となり、日本の国技、大相撲の看板として相撲ファンを魅了しました。そして日本国籍も取得。土俵上で見せた厳しい表情とは違い、東日本大震災の被災地や病院を訪問したり、カップメン1万食を贈ったことなどもよく覚えております。でも近年、その横綱の振る舞いの一部が、批判の的になった事も事実です。勝負の結果に不満を示す態度や言葉遣い、優勝インタビューで観客に促した万歳三唱や三本締めなど、伝統を重んじる相撲協会とすれば、出すぎた言動(パフォーマンス)に映ったと思います。外国出身横綱の草分けである曙や武蔵丸の時代には、貴乃花や若乃花の兄弟横綱がいて、優勝する他の横綱がいましたが、白鵬時代には、残念ながら、強い怖いライバルがいなかったのです。君臨14年、一部評価が割れる所はありますが、横綱84場所、優勝45回は、今後当分は、敗られそうにない立派な金字塔です。横綱白鵬は、歴史ある大相撲を支えてくれた立派な貢献者だったと思います。さらば、横綱白鵬! ありがとう!!<2021年10月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年10月12日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉が自分を守るということ「はずかしいという心は自分を守る」数学者の岡潔氏のこの言葉に出会ったとき、思わず膝を叩きたくなるようなインパクトを覚えました。消えてしまいたくなるほどの『はずかしさ』。はずかしくて、一歩踏み出せないことも、踏み止まることもあります。この場合の『はずかしいという心』とは、発表会ではずかしくて舞台に上がれない、というのとは少し違います。生き方、行動、態度、言葉、身嗜みなどにおいて、自分のはずかしい点に気づくことが大切であると、岡潔氏は主張します。はずかしいことをしてしまっても、はずかしいと自覚できたなら改善できる。はずかしいと思ったら、やらない。はずかしいという心は、ストッパーになる。このような意味で、「身を守る」ということになります。はずかしいという自覚がないと、自分自身を卑しめていくことになる、というわけです。自分にとって何がはずかしいことなのか。自分自身の基準をしっかりと持つことが大切なのです。この感性は、美意識とよく似ています。何を美しいと思い、何を美しくないと思うか。例えば、ある人にとっては『人と比べるのは美しくないこと』であっても、人によっては無自覚のまま人と比べて優越感や劣等感を思えているかもしれません。それを美しいと思わなければ、はずかしさを感じることなく優越感や劣等感に自分を明け渡してしまうのです。電車の中でお化粧をするのも、自慢話ばかりをするのも根は同じ。そのような行動が美しいか美しくないか。自分の中の基準、価値観によって、行動も言動も変わるのです。私は小さい頃、両親から「はしたないことはしない」という言葉をよく聞きました。お行儀悪くしていると、「はしたない格好はやめなさい」と注意されたものです。ところが、最近「はしたない」という言葉を聞きません。若い人たちに「はしたない」という言葉を知っているか尋ねてみると、ひとりも知らなかったのです。美しい日本語が失われていきます。すると、言葉に宿っていたその精神も失われ、はしたないことが増えるのです。これは由々しきことではないでしょうか。「はずかしいという心は自分を守る」そして、岡潔氏は次のように続けます。「思いやりは慈悲の心を育てる」わかっていたつもりでも、できていないことがたくさんありますね。言葉で自分を守る。この機会に、自分の言葉を改めて振り返ってみようと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月10日いつもgrapeをご覧いただき、誠にありがとうございます。この度、grapeではユーザー満足度向上のため、読者アンケートを実施いたします。ぜひ皆様のご意見・ご要望をお聞かせください。アンケートの所要時間は5分程度です。ご協力よろしくお願いいたします。ご回答いただいた方の中から抽選で10名様に、Amazonギフト券3,000円分をプレゼント!当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。アンケートはこちらたくさんのご応募、お待ちしております![文・構成/grape編集部]
2021年10月08日食や酒にまつわる文章を多数執筆している、フリーライターの山田真由美さん。2017年に発売した酒場に集う男性に関するエッセイ『おじさん酒場』に続き、再び酒場をテーマに本『女将さん酒場』を執筆した。今回のテーマは、魅力的な酒場を切り盛りする女性たち、つまり“女将さん”。「女性も自己実現しやすい世の中になりましたが、それでもまだ、やりたいことを実現し、それで生きていくことのハードルは高いと感じます。以前から、頑張っている女性を応援したい、そういう女性について書いてみたい、という気持ちがあり、そんな話を編集の方としていたところ、“ならば女将さんについて書いてみては?”とアドバイスをもらい、今回の本を書くことになりました」登場するのは、女性のオーナーシェフはごく少数という飲食の世界に飛び込み、自分の城を構え、日々頑張っている“女将さん”13人。彼女たちに仕事、人生、食への思いなどを取材。描き出された生き方は13人13様ですが、全員揃ってかっこいい。「私にとって飲食店は総合芸術。料理、空間、シェフ、お客さん、流れる音楽…。そういう要素が絶妙なバランスで絡み合い、食べ物やお酒がより美味しくなる。素晴らしい総合芸術が生まれるところには名監督がいて、今回取材をさせていただいた13人はまさにそれ。料理人としての求道に加え、後輩のために一肌脱いだり、家族に対して労力を惜しまないなど、努力の方向が一方向ではないのも共通点。味はもちろんですが、バイタリティ溢れる女将さんたちに会えることも、“女将さん酒場”に足を運ぶ大きな理由だと思います」女将さんの言葉やちょっとした動作、お客さんの言葉、そして食にまつわる描写のすべてがみずみずしく、お酒好きの人ならば、行間からにじみ出る山田さんの食や酒場への愛に共感せざるを得ない。「しばらくはこの本で居酒屋への思いを温め、コロナ禍が一段落したら、ぜひ気になるお店の女将さんに会いに行ってみてほしいです」登場した女将さん酒場の中で、anan読者におすすめを厳選。清澄白河『酒と肴 ぼたん』の金岡由美さんは、いつも和服でカウンターに。林佐和さんは荒木町『やくみや』の店主。凛々しい佇まいが素敵。長野県諏訪市の『あゆみ食堂』の大塩あゆ美さん。「料理をする手すら美味しそう!」(山田さん)。西小山のワイン酒場『fujimi do 243』の渡邊マリコさん。山田さん曰く「イタリアのマンマそのもの」。『女将さん酒場』自らの店を構え、料理をし、お客さんをもてなす女性たちこそ、女の将軍=女将さんである!飲食に生きる人生を選んだ13人の女将さんたちの姿に感動しながら、酒場の楽しさも味わえる1冊。ちくま文庫990円やまだ・まゆみフリーライター、編集者。食や酒、酒場に関する著述が多数。著書に『おじさん酒場』(ちくま文庫)が。読売新聞夕刊にて「ぶらり食記」という連載も。また地元・下田で居酒屋も営む。※『anan』2021年10月6日号より。インタビュー、文・河野友紀(by anan編集部)
2021年10月03日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。梅干しひとつ〜26歳の小さな船出「嫁入り前の娘が一人暮らしなんて許さん」作詞の仕事を始めて2年、26歳のときのこと。何でも『反対』する父に、一人暮らしをしたいと話すと、予想通りすごい剣幕で否定されました。これまでも自転車を買ってほしい、と頼んでも否。免許を取りたいと言っても否。最終的には自転車も免許も許してもらえたのですが、とにかく一度は否定するのです。生活のリズムが家族とずれること。集中する環境に身を置きたいこと。一人暮らしをする必要性を訴えて、ようやく許しが出たのです。考えてみれば、自由に……というか、勝手に出ていけばいい話なのですが、その頃の私は親の反対を押し切る勇気がありませんでした。1980年代の半ば、時代はバブル経済で湧いていました。不動産の価格はどんどん上がり、都心のマンションの家賃もずいぶん高いという印象がありました。まだ駆け出しの作詞家で、果たしてその先やっていけるのかどうか。2年間の広告代理店勤めで蓄えた少しばかりの貯金で小さなワンルームの部屋を借り、夢とやる気だけを抱えた船出となったのでした。今頃、なぜ30数年前のことを思い出したのかと言うと、ちょうどその頃に撮った、なくしたと思っていたアーティスト写真が書類の中から出てきたのです。少し上目遣いでカメラを見据えている26歳。ひとり暮らしを始めた頃の自信のなさと、怖さを知らない強さのようなものが同時に感じられて、ずいぶん遠くまで来てしまったなあと思ったのでした。怖さを知らない強さを過ぎ、怖さを知らない怖さを味わい、そして少々の怖さを何とも思わなくなり……今は、本当の怖さをまだ味わっていないのではないかと思うこともあるのです。年を重ねるというのは、会ったことのない自分に出会っていくこと。体の変化も心の変化も、どんなことにチャレンジするのかもまだわかりません。確実に言えるのは、これまで体験してきたこととは違うフェーズに入っていくということ。それも嘆くのではなく、面白がるしかありません。本当に、ずいぶん遠いところまで来てしまいました。1枚の写真はタイムマシンのように、時空を超えていきます。一人暮らしを反対していた父は、引っ越しを率先して仕切り、手伝ってくれました。そしてみんなが帰り、夕方、ひとりになった時のこと。そうだ、ごはんを炊こう。冷蔵庫の中に、実家から持ってきた南高梅がありました。炊きたてのごはんに梅干しひとつ。淋しさとわくわくと、やっていけるのかなあという不安も味わいながらの夕餉。26歳の船出でした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月03日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。虫すだく秋爽やかな秋の空、心地好い大気… じとじとした夏と違い、すがすがしい季節。半袖から長袖、薄地の蒲団が丁度気持ちの良い季節となりました。味覚の秋、スポーツの秋、読書の秋、行楽の秋、芸術の秋… 皆さんはどの秋が一番身近なのでしょうか…。当方、若かりし頃は、電車の中では、片手に必ず一冊の本を持って、座ればその本を読んだものですが、今はそんな風景も少なくなりましたねぇ。座れば全員『スマホタイム』ですから…。扨(さて)、秋の夜長は、やはり『読書の秋』の表現が一番相応しいと思い、〇〇の秋の中のトップに据(す)えております。今、読んでいるものは、後輩のアナウンサーが新著を出したので、それに目を通しております。ところで、虫の音(ね)すだく秋、といいますが、皆さんは秋の夜、虫の鳴く声に耳を傾けることって、おありでしょうか…。今、拙宅の庭には、夕暮れになると その虫の音(ね)すだく秋を迎えております。今はマンション住いが多い世の中ですから、虫の音すだくという現象は先ず無いのでしょうね。古い拙宅の和室の庭には、一番手がコロコロ、リーリーのコオロギ、二番手がリーンリーンのスズムシ、三番手がチンチンチンのカネタタキ、四番手がチンチロリンのマツムシらが盛んに鳴いております。正に虫すだく秋であります。地表の温度が24度ぐらいになると、虫達が一斉に鳴き始めると物の本で読んだ記憶がありますが、正に虫達の季節、真っ只中のようです。でもこの爽やかな秋風が やや冷ややかになると、虫達の合唱は、早々とピアニシモに変ります。虫達の競演が少しでも長く続いて欲しいと願っているこの秋であります。<2021年9月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年09月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『言葉』の心を生きる言葉にはそれを現実にする霊力、『言霊』が宿っていると言われます。日本はいにしえの時代から、『言霊』によって幸せになる国であると考えられてきました。万葉集に収められた柿本人麿呂の歌があります。「しきしまの大和の国は言霊の幸(さき)わう国ぞま幸(さき)くありこそ」また山上憶良は、「神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 倭の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり」と詠んでいます。言葉の霊力とは何でしょうか。ポジティブな言葉にはポジティブなエネルギー。ネガティブな言葉にはネガティブなエネルギーがあります。「お前はダメだ」と言われてうれしくなる人はいないでしょう。「あなたは大丈夫」と言われたら、また頑張れるような気持ちが湧いてくるものです。言葉は単なるコミュニケーションのツールではない。そこには『心』があり、言葉を交わすというのは心を通わせていることでもあるのです。言葉に言霊があるということは、その言葉が使われなくなったらその『心』も失われるということです。新しい言葉、造語ばかりを追っていると、長い歴史の中で日本人が大切に貫いてきた精神性を失いかねません。例えば「はしたない」という言葉を、若い世代の人たちはどれだけ知っているでしょうか。私は子供の頃、親からよく「そんなはしたないことはやめなさい」と言われました。「はしたない」とは、慎みがなく、見苦しいという意味です。決して古典の言葉ではありません。「はしたない」という言葉が聞かれなくなったと共に、はしたないことが多くなった気がしています。見苦しさ、みっともないこと。何事も『個人の自由』、見苦しさを選択するのも自由です。でも、それは大きくいうと日本、日本人を劣化させていることにもつながるのではないか……大袈裟ですが、そんな風にも考えてしまいます。女性は女性らしく……などと、まったく考えていませんが、「たおやか」「しなやか」という言葉が、実はこれからの時代をサバイバルするキーワードではないかと思います。声を荒げて女性の権利を守る時代は終わりました。どんなに雪が降っても、風が吹いても、柳の枝は折れることはありません。柳に雪折れ無し。それが「しなやか」ということと、私は考えます。どんな逆風が吹こうとも、たおやかでしなやかである。そう在るためには、自分の中心に凛として立っていること。それが、本当の強さだと思います。女性の時代と言われています。たおやかに、しなやかに。その言霊がもたらすエネルギーこそ、これからの時代を「まろやかに」していくと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月19日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。最後に何を……母は最後に何を食べたのだろう。お線香をあげながら、ふと思う。5年前のクリスマスイブの朝、介護ホームの部屋で脳梗塞を起こして倒れ、病院へ。翌日に意識が戻ったとき、母は言葉と右半身の自由を失っていました。話しかけてもきょとんとした顔をして、(この子はいったい誰だろう)と探るように私を見る。そんな母の姿を目の前にし、母の人生はまったく違う次元へ行ってしまったのだと思いました。倒れる前日、母はどんな夕食を取ったのだろう。それを妹は確認していました。ホームで出されたのは鯖の味噌煮だったそうです。母は鯖の味噌煮が好きでした。でも、ふと何だかかわいそうな気がしました。おそらく、そんなに話し相手もいなく、ひとりで食べていたのではないか。おいしく食べられたのだろうか。亡くなって5年も経ってからそんなことを思い出してもどうにもならないことはわかっていますが、それが人生最後のちゃんとした食事だったのかと思うと、胸の奥からやりきれなさが湧き起こるのです。きょとんとした顔をして私を見ているとき、何を思っていたのか。何も、ものを言わない母に責められているような気になり、後悔ばかりが次々と波のように心に打ち寄せたのでした。最後に……誰もが、いつかはこの言葉に出会います。そして、いつが最後になるのか誰もわからない。だからこそ、「いま、ここ」にしっかりと立ち、味わう。母も、その人生のシナリオを味わって生ききったのだと。若くして逝った友人たちも、神様と約束してきた時間を味わい尽くしていたのだと。そう思うことで、私は大好きな人たちの死を受け入れることができたのです。やれることを、やる。精一杯、やる。ただこれだけです。そして、命をつなぐ食事を、美味しくいただく。白いご飯とお味噌汁と梅干しだけでも、おいしく、ありがたく。そんなささやかなことも、人生という物語のひとつの支えになるような気がしてなりません。脳梗塞の治療を終え、母は療養型の病院に転院しました。しかし2ヶ月後、その病院でもできることはなくなり、老人病院へ移りました。そのときは、もう何も受け付けない状態になっていました。「でも……最後の最後に口にしたのは、千疋屋のマスクメロンのジュースだった」母は、妹が持っていったメロンのジュースを少し飲んだのでした。このことを聞き、ほっとしたのです。母はメロンが好きでした。おいしく、少しだけでも味わっていたのではないかと。最後に何を……思いをめぐらせながら、母に会いたくてたまらなくなりました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月12日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。テレビニュースの字幕の間違い当方、テレビで一番よく視るのは『ニュース番組』です。そのニュースの字幕(スーパー)に間違いが多いのに気づきます。日本語は同音義語が多いので、そんなミスが気になるのです。「警報機が介助(正→解除)されて鳴らなかったもようです」「エレベーター数機(正→数基)が停止したもようです」…など、そのニュースの後でアナウンサーが訂正してはいますが、ニュースコメントの担当者は、もう少し日本語を勉強して欲しいと思っています。※写真はイメージ当方がアナウンサーの養成時代、尊敬する先輩から「アナウンサーは活字を食え!」と教わりました。活字はオモシロイですが、難しいです。いまだに食べ続けていますが 完食は出来ないと思いますね…。ところでニュース原稿担当者は原稿をパソコンで打っている訳ですが 打つのではなく「書く」という感覚を持てば、同音異義語の多いニュースの原稿ミスを、少なくできるのではないか、と思ったりしています。かつて こんな変換ミスがありました。「5季振りの優勝→ゴキブリの優勝」「道路規制で渋滞中→道路寄生で重体中」「イブは空いています→イブは相手います」この程度なら笑い話で済ませることもできますが、ミスを犯したのが、テレビのニュース番組となると話は別です。特に最近は、テレビニュースの字幕(スーパー)に間違いが多いように思いますので、ニュース担当者は心して、間違いの無い正しいスーパーの報道をお願いして置きたいと思います。「放送」は「送りっ放し」と書きますが、絶対に、そうしてはならない重要な仕事なのですから…。<2021年9月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年09月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生を変えたい…そんなときには八ヶ岳へ、軽井沢へ、友人たちが相次いで移住しました。また海の近くに部屋を借り、週の半分はそちらで過ごすことにした友人もいます。今の社会状況の中で、東京にいることが息苦しくなったこと。リモートでも仕事ができ、東京への日帰りも楽なこと。自然の中でゆったり暮らすこと。その理由はさまざまですが、都会でのライフスタイルと、自分の年齢と『思い』の間に溝が出来たのだと思います。その溝を解消するために迷いなく行動できたのは、素晴らしいです。人生を変えたい。もっと違う人生があるのではないかと可能性を考えること。30代の初めの頃、仕事も順調で人から見えれば何の不足もないように見えたであろう頃、私の中では(このままの生き方でいいのだろうか)という思いがつのりました。今のこの生き方、やり方が、果たして自分の心の成長につながるのか。そこにどうしても確証を持てなくなっていたのです。何かが違う。そんな違和感の『何か』がわからなかった。その『何か』がわからない限り、先に進めない気がしたのです。本を読み、講演会を聴きに行き、セミナーを受け、アートセラピー、ドリームセラピーを学びました。その答えは自分の外にあるのではなく、自分の中にある。すでに自分はその答えを知っている、と信じていたので、ひたすら自分を掘り下げる日々。そして、あるきっかけではっと気づいたのは、「自分に必要な学びは誰かに委ねられるようになること」ということでした。それは、誰にも頼ってはいけない、すべて自分でしなければならない、という無意識で決めて生きてきた私にとっては、大きなチャレンジです。そしてそんな人生を変え、人として成長するために結婚しようと決めたのでした。誰かに頼る、委ねるためには、結婚することだと思ったのです。結婚して25年が過ぎました。二人とも60歳を過ぎ、それぞれの仕事を忙しくこなしています。そろそろ、変化を求めたい気が湧き始めました。元気なうちに……というのも正直なところです。暮らし方を変えたときに、自分の中にどんな変化があり、世界をどんなふうに感じるのか。どんな作品を書くのか。見たことのないものを見たい、という好奇心がある限り、人生を変えるチャンスはいくらでもあるはずです。移住だけでない、意識を変える、ものの見方を変えるだけでも、新しい扉を開けることができると信じて。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月05日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。たまには何もしない1日を…?現代人は忙しく、分刻みでスケジュールをこなす毎日ですよね。「あ~忙しい!」「時間がたりない!」など、ついつい口をついて出ているのではないでしょうか?ネット上では『時短』の2文字が踊り、忙しい人向けに、簡単にできる様々なアイディアが紹介されています。『見なくても判る話題のドラマ』では、簡単にあらすじが紹介され、『10分でわかる本の内容』ではその小説が簡単に要約される…。こうした忙しい人向けのユニークなサイトもあるようです。※写真はイメージさてさて、そんな忙しい皆さんに、今回は真逆な提案をしてみたいと思います。それは『思い切って何もしない日』を作ってみる!!という事です。1日の予定を立てず、タイマーを切って、起きたいときに起き、ゆっくり朝食を摂る。それだけでもずい分ゆったりとした気持ちになると思いますが…。スマホもパソコンも開かず、ただただ、ぽぅ~と1日を過ごす!できれば新聞もテレビのニュースも視ない。本も読まず、音楽も聴かない…。実はそんな事を考えて実践した友人が居ますが、午前中は何とかボ~っとして何もしないことに務めたそうですがむしろ、そのことに疲れて午後からは元に戻して、気持ちも楽になったと言っていました。むしろ、のんべんだらりは疲れると思いますね。毎日の忙しさに慣れた方は、体内時計を止めるという事は、むしろ無理のような気がします。※写真はイメージ「何もしない1日を」の気分で、自分なりの動きで気楽に過ごす1日を持ちたいものですね。秋空の雲の動きを眺めるだけ、寄せては返す海の波の音を聴くだけ…気持ちの向くままのんびりと…そんな1日を過してみたいと思うのですが…。<2021年8月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年08月30日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。90歳、父の覚悟90歳でひとり暮らしをしている父の部屋の大掃除をしました。水回りはプロの業者にお任せし、いるもの、いらないもの、父がシンプルに暮らしやすくするための大掃除です。これまでできていたことが、できなくなってくる。それが年を重ねることだと、私も時折実感します。もうヒールの高い靴は履けないとか、もう絶叫マシンには乗れないとか、そんなことも加齢を感じたことでした。それが90歳ともなると、さらに実感することでしょう。怖さを感じながら、その怖さを諦めていくのだと思います。2年前は1日1万歩歩くことを課していたのが、7000歩になり、今では5000歩になりました。ところが先日、散歩のときに後ろから車に追突されるという交通事故に遭ってしまいました。幸い右膝の打撲(かなりのものですが)と、左肘の擦過傷ですんだのですが、数週間のリハビリをすることになり、しばらく5000歩の散歩はできず。父は焦ります。毎日歩かなければ、歩けなくなってしまうのではないか。杖をつきたくない、自分の足でしっかりと歩きたい。今の自分をキープする。その強い気持ちが、まさに父の生きる力につながっているのだと思います。片付けをし、もう使わないだろうと思われる台所用品をどんどん捨てました。すると、「それは使う」「捨てないでそこに置いてくれ」「ここにあった〇〇はどうした?」と、古くなっている上に、もう使わないだろうと思うピーラーや泡立て器などをとっておけと言うのです。特別に思い入れがあるものではないでしょう。(使うかもしれない)ということでもなさそうです。何か、自分が積み重ねてきたこと、母が倒れてから8年近く一人で暮らしてきた自負のようなものを無下にされているような……そんな気持ちからなのかもしれません。そんな父の姿に、自分を重ねてみます。まだ高齢という年齢でないから、思いきりものを捨てることができるのかもしれない。また、好きなものを買い、ものを増やすことができるのかもしれない。毎日歩かなくては……と思ってはいても、それを切実なものにできない。体の所々に不調が出てくる。生え際に白髪が出てくる。代謝が悪くなってくる。加齢によるさまざまな変化を「新しい自分と出会う」と捉えているのですが、まだまだ悠長なものです。父がデイサービスを受けるにあたり、何かあった場合の延命について質問がありました。きっぱりと、晴れやかに、こう答えたそうです。「延命の必要はありません。そうなったら1週間くらいで死にますから」※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月29日ウェブメディア『grape』では、メディアコンセプトである『心に響く』をテーマにエッセイを募集します。2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award(グレイプ アワード)』。第5回目となる2021年は、例年通り『心に響く』というテーマを軸に、コロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続く中、自分の周りであった心温まるエピソードや、心が癒されるような体験談を募集します。2020年は、『心に響くエッセイ』のほか『心に響いた接客』を加えた2つのテーマで、一般公募を開始。約3か月間で、13歳から85歳までの幅広い年齢層から、888本もの作品が寄せられました。また、リアルイベントでの授賞式ではなく、初めての試みとして受賞作品を、豪華声優陣による朗読でご紹介。受賞作品発表の特別番組をYouTubeで配信しました。なお、今回は作品を音声コンテンツ化し配信を予定しています。今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。特別協賛企業のご紹介株式会社タカラレーベン株式会社タカラレーベンは全国で新築分譲マンションを中心に展開する不動産総合デベロッパーです。「幸せを考える。幸せをつくる。」を企業ビジョンとして掲げ、幸せをかたちにする住まいづくり、街づくりを実現しています。本コンテストでは、全応募作品の中から、特に「幸せ」が感じられる作品に、『タカラレーベン賞』が贈られます。応募規定テーマコロナ禍によりこれまでと変わった生活スタイルが続く中、『自分の周りであった心温まるエピソード』や、『心が癒されるような体験談』のエッセイを募集します。また、エッセイの内容に関連する画像がございましたら、応募フォームでアップロードしていただき、合わせての応募も可能です。文字数・形式1000文字以上~1500文字以下※タイトル全角36文字以内※自作未発表の作品に限ります。※商業利用について無契約の作品に限ります。※複数ご応募いただけますが、入賞の対象となるのは1人1作品です。※18歳未満のご応募は、保護者の同意を得てください。※応募作品内に特定の人物がいる場合、個人が特定されないように配慮してください。登場人物のプライバシーおよび個人情報に関して、弊社は一切の責任を負いません。※画像については必須ではございません。ご本人以外の特定の人物が写っている場合は、写っている方の了承を得てからご応募いただくようお願いいたします。応募方法ご応募はエントリーフォームよりお願いいたします。詳細は『grape Award 2021』募集ページでご確認ください。応募資格不問(プロ・アマ問わず)応募締切2021年10月31日(日) 23時59分まで選考方法grapeおよび外部審査員で、厳正な選考を行います。賞最優秀賞1名副賞(賞金20万円、記念品等)タカラレーベン賞1名副賞(賞金10万円、記念品等)優秀賞各テーマより若干名副賞(賞金3万円、記念品等)結果発表2021年12月中旬受賞作品決定、作者様へご連絡2022年1月下旬~2月上旬最優秀賞ほか受賞作品を発表、『grape Award 2021』公式ページにて掲載注意事項応募作品の取り扱いについて応募作品の著作権は、応募とともに主催者(株式会社グレイプ)に移転いたします。ご理解の上、ご応募いただきますようお願いいたします。また、応募作品の著作者人格権は作品の応募者に帰属しますが、主催者(株式会社グレイプ)および協賛企業に対し、コンテストの報告などでの使用、ウェブサイトなどでの応募作品の公開、校正、2次利用を許諾いただくことを前提にご応募ください。結果に関わらず、ご応募いただいた作品は『grape』サイトにて掲載させていただく場合がございます。掲載時に、誤字・脱字の修正や文章の調整を行う場合がございますのでご了承ください。また、掲載時に本名の公開を希望しない場合には、ペンネームをご記入ください。応募者には、作品内において第三者の権利を侵害していないことを保証していただきます。作品に対し、第三者からの権利侵害の訴えや損害賠償請求等があった場合、弊社は一切の責任を負いません。受賞作品に権利侵害等が発覚した場合は、受賞を取り下げさせていただきます。個人情報の取り扱いについて応募に際してご提供いただいた個人情報は、コンテストの審査、入賞者及び入賞作品の公表及びそれに係るご連絡のためにのみ使用いたします。個人情報は、応募者ご本人、または応募者ご本人が18歳未満の場合は、その保護者の許可なく、第三者に開示いたしません。その他の個人情報の取扱いについては、株式会社グレイプの「プライバシーポリシー」をご参照ください。皆さんのご応募をお待ちしています。『grape Award 2021』募集ページ[文・構成/grape編集部]
2021年08月27日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『自然(じねん)』を生きるということ日本は、実に災害の多い国です。地震、台風、火山の噴火。それに加え近年ではゲリラ豪雨、線状降雨帯がもたらす災害に見舞われるようになりました。地球温暖化、気候変動が原因なのでしょうか。自然が激しくなっている……のでしょうか。大雨による河川の氾濫や土砂崩れなどは、治水や植林なども原因の一つになっているのではないかと推測します。自然が本来あるべき姿を、人間の都合の良いように作り替える。もちろん、それが功を成していることもあるのですが、必ずしもそれだけではないように思えます。自然とどのように共に生きていけばよいのか。日本人は、環境問題以前に自然と共に、自然と調和をはかりながら生きてきました。自然に生かされている。森羅万象の中に神を見出し、感謝と祈りを捧げました。四季の移ろいの中の美しさも儚さも味わい、花鳥風月を愛で、それを伝統文化として昇華させてきました。西洋の絵画には宗教画が多いのに比べて、日本の絵画には自然を描いた作品が多いことにも現れています。日本にはもともと自然(じねん)という考え方がありました。これは「あるがままの状態」「自ずから然(しか)らむ」という仏教的な思想から来ています。私たちは森羅万象の一部であると考えられてきました。『自然(しぜん)』という言葉は、19世紀末に入ってきた英語『Nature』の訳語です。西洋では、キリスト教的な世界観の中での『自然(しぜん)』は、人間がコントロールするべき野生であると考えられています。天地創造したのは唯一神であるからです。ここが日本の自然に対する捉え方と西洋の捉え方の違いです。現代の日本人はどうでしょうか。本来持ち続けてきた『じねん』の感性を意識する時ではないかと思えてなりません。森羅万象とどうつながっていくか。すべては『与えられたもの』。私たちはその恵みによって生かされている。こう考えると、思わず頭を垂れたくなります。日本は、天災による破壊と復興を繰り返してきました。それが日本人の忍耐強さにつながっているとも言われています。その根底には、自然(じねん)という意識が深く根差していたからなのかもしれません。それは、私たちの遠い記憶や遺伝子に受け継がれてきた優しさであり、謙虚さであり、愛なのだと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月22日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。猛暑を好むカンナ咲く夏の花 と言えば、皆さん、何を思い浮かべますか? ひまわり、朝顔、ユリ、ノウゼンカズラ、グラジオラス、などでしょうか…。そしてカンナ! です。強い夏の日差しの下で、鮮やかに華やかに、そして逞しく咲くカンナに、毎朝元気を貰っています。このカンナは、コロンブスがアメリカ大陸に上陸した時に発見したと言われていますが、日本には江戸時代前期に渡来して来ました。名前は『カンナインディカ』、和名は『ダンドク』というそうです。『ダンドク』は、仏教では最高位の花とされています。その昔、仏陀の強力な霊力を妬(ねた)んだ悪霊が、大岩を仏陀めがけて投げつけました。するとその岩の破片が仏陀の足に当り、その時流した血が大地にしみ込んで、そこにカンナが咲いたという言い伝えがあります。カンナ今では河原などで、半野生化しているものもありますが、色は鮮やかな赤や黄色、オレンジ、稀(まれ)に白など、バリエーションも豊富です。その種は、長時間の貯蔵に耐えて、550年間も発芽力を失われなかったといいますから、驚くべき強靭さですね。炎天下の中でも枯れることなく手の平ひら大の花を咲かせる、何とも逞しいカンナです。強い雨風に当たっても花はしっかりとついています。550年は伊達(だて)ではないのですねぇ…。ノウゼンカズラ花枯れといわれる夏ですが、拙宅では、この時季、天空には橙(だいだい)色のノウゼンカズラ、地上には、黄色のカンナが咲き、花ウンサーにエールを送ってくれております。夏を楽しく元気にしてくれるカンナです。<2021年8月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年08月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。大好きなことを選ぶということ私は、何が好きなのだろう。これまでの人生に彩りを与えてくれたもの、こと。そしてこれからの人生に楽しみを与えてくれるもの、こと。好きなものは生活の中に溶け込んでいます。気づかないほど自然に。改めて思いをめぐらせてみると、「花と料理と歌と詩と」という言葉が浮かびました。花と料理と歌と詩と。大好きなものであるとともに、それらは生活に溶け込んだ、人生の創造物でもありました。26歳、都心の小さな部屋で一人暮らしを始めたとき、一輪でも、いつも花を飾ろうと決めました。黒のお膳の上に花器を置き、花を飾るコーナーを作りました。カサブランカ、カラー、バラ、チューリップ、芍薬……そんな花たちをワッと投げ入れに。花を飾っただけで、小さな部屋は特別な空間になりました。この10年近く、花の教室に通いながら花と対話することを学びました。仕上がりのイメージをしながら、花と対話する。どんなふうに生けてほしい?一輪一輪の花の個性と向き合っていると、(こっちを向けて)、(この向きはどう?)と、そんな花たちの声が聞こえるようです。花と対話。落ち込んでいるときには、花たちが寄り添ってくれているような……。妄想かもしれませんが、花と向き合っているときは、心の中の静けさに身を投じることができるのです。食は、命を支える柱です。凝ったものは作れませんが、料理をするのは十代の頃から好きでした。一人暮らしをしているときも、自分のためにせっせと作り、ときどき友人たちを招いては食事会をしたものです。コロナ禍となり、自己免疫力を高めることがより大切になりました。家から出ることも少なくなり、毎日、食事を作っているうちに、器、しつらえに凝りはじめ、料理は日々のクリエイションになっていきました。この一年で購入した器は20枚近く。ものを減らす流れに逆行です。野菜を刻みながら、煮込みながら、盛り付けをしながら、『よりよくすること』に集中して。また、それは瞑想をしているような時間でもあるのです。歌を書くこと。これは私にとって人生の柱です。歌を書くことは、その歌の主人公たちの人生に出会うことでもありました。そして詩を書くこと。自分は最終的にどうありたいか。こんなことを考えたとき、なぜかふっと、詩を書こうと思いました。湧き上がる思いを言葉にしていこうと。花と料理と歌と詩と。一人ひとりが幸せの価値を見出していく時代。それぞれが大好きなこと、ささやかでも楽しいことを選択し自分らしくあることが、新しい時代を楽しくすることだと思うのです。厳しいときだからこそ、ささやかでも。何よりも、自分が心地よくあるために。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月15日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。天然か現実か、それが問題『天然もの』は珍重されます。魚介類であれば、ありがたく。人もまた、『天然』のキャラクターは愛されるものです。しかし、年齢と共に緩んでいくネジ……記憶力……発想力……は、天然だと喜んでいられないものがある。年齢に比例した『天然』かもしれませんが、それまで知らなかった自分との出会いに、戸惑うこともしばしばです。ふとした瞬間に、自分の変化を目の当たりにして唖然。お昼に何食べたっけ……、あれ、あの人なんていう名前だっけ……。このような『ど忘れ』のときは、必ず思い出すこと。途切れた回路を修復するように。あ……い……う……というように、一文字一文字辿るように思い出していきます。天然と言われる人は、思い込みも強いかもしれません。大学の先輩の「高校は“しんがっこう”だったんだよね」という話に、「え!神様の学校だったんですか?」とボケた上に胸で手を組んだ私に、その場にいた友人たちは一瞬固まっていたのを思い出します。数日前、レストランでのこと。一人ひとりにメニューのカードが配られました。前菜からデザートまで書いてあるいちばん下に「珈琲または紅茶」とありました。どんなコースメニューにも書いてあるように。小さな字だったからと言い訳したいのですが、私はこう思ってしまったんですね。(くれない茶ってなんだろう。紅花のお茶かなあ)一通りコースをいただき、ウェイターが飲み物のオーダーをとりにきました。「コーヒーになさいますか?紅茶になさいますか?」(あ、そっか。紅茶か)そのとき気づいたんですね、やっと。それも、その日に紅茶を飲んでいるにもかかわらず。気づいたときに大笑いしてしまったのですが、一緒にいた夫の顔が少し引きつっていたのを見逃しませんでした。そうですよね。ちょっと笑えない。脳の中の連携がどうなっているのだろうと自分が心配になります。ひとつ、言い訳をするなら、最近ある楽曲のプロジェクトで、日本をテーマにした歌詞を手がけたことがあったと思います。日の丸の赤は、正式には何色だろうと調べると、それは『赤色』ではなく『紅色』『くれない色』というそうです。この『紅』という文字に『くれない』という言葉、イメージが頭の中にあったからに強く残っていた……と思っているのですが無理があるでしょうか。ありますね。天然と現実の間で揺れる年頃。その揺れも人生の一部として楽しんで。くれぐれも揺れに酔ってしまわないように。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月08日おばさんという言葉が背負う悪印象を、解体し、再構築するカルチャーエッセイ。岡田育さんによる『我は、おばさん』をご紹介します。「おばさん」は女性にとって悩ましい呼称だ。ニュートラルには、中年女性を意味する言葉でしかないはずなのに、そう呼びかけられるといい気持ちはしない。女性にとって、なることに怯える「おばさん」とは何なのか。おばさんを侮蔑語のままにしておいてよいのか。シスターフッドのために、どうしたらよりよきおばさんになれるのだろう。そんな難題を噛み砕いて考察してくれたのが、岡田育さんの『我は、おばさん』である。岡田さんがその単語を意識したのは29~30歳頃だそう。「ちょうど“オトナ女子”という表現が出てきた2000年代の終わり頃で、『私たちはもしや、このままずっと女子でいられるんじゃないの』という錯覚も抱いたのですが、個人的には妹に子どもが生まれたタイミングでもありました、私は自動的に、アラサーで、伯母さん(笑)。いったいどっちなの、という気持ちに決着がつかないまま40、50に突入するのかとモヤモヤしました」おばさんという言葉の印象を女性自身がどこか内在化していることも問題ではないかと思った岡田さん。「ならば、マイナスからプラスへ視座を変えられないかなと思って。私自身、10代のときから母親とは異なる価値観を見せてくれる大人の女性に憧れていましたし、すでに多くの小説や映画などには、見習いたい魅力的なおばさんがいたんです」『若草物語』のマーチ伯母、『更級日記』の菅原孝標女、ヤマシタトモコ著『違国日記』の高代槙生、黒柳徹子や後藤久美子など。輝いているおばさんや、ときに反面教師にしたいおばさんも拾い上げながら、古典やエンタメをひもとく。「これからの女性たちは、自分の母や祖母とも違う生き方をするのだと思います。職場や周囲に真似したいような人がいない、あるいは生き方がすごすぎてお手本にならない、と思わないでください。ファッションを真似するのと同じ感覚で、なんとなくステキだなと思った人を参考に、少しずつ自分の独自性を見つけていけばいいのではないかなと」岡田さんは語る。女性たち自身が選び取れば〈あなたが待ち望んだ、私がなりたかった、「おばさん」になることができる〉のだと。本書には、そのヒントが詰まっている。岡田 育『我は、おばさん』引用した多数の作品は巻末にリスト化。著者と同世代なら懐かしさに胸躍るはず。妹世代にとっては新しいカルチャーとの出合いになるかも。集英社1760円おかだ・いく1980年生まれ、東京都出身。編集者を経て、2012年より本格的にエッセイの執筆を始める。著書に『ハジの多い人生』(文春文庫)ほか。‘15年よりニューヨーク在住。©Omi Tanaka※『anan』2021年8月4日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年08月03日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「称えあう」と世界は丸くなる「敬愛する」という言葉が好きです。敬愛とは、『尊敬と親しみの気持ちを持つこと』。尊敬というと優れた人に対する気持ちのように思われるかもしれませんが、その人の『素敵さ』に対して心から、心を寄せることができたら、年齢も立場も関係ありません。言葉には、それを現実にする力、言霊があると信じられてきました。「ありがとう」という言葉を大切にしていると、不思議に満たされるような感があります。「おかげさまで」と言葉にしてみると、ありがたい気持ちが湧き上がります。敬愛する……素敵だと思う人、大好きな人がいてくれるだけでうれしい。心からそう思えると、なぜか穏やかな気持ちになります。批判を口にするのは、わざわざ体に悪いものを食べるようなものです。よい点よりも、好ましくない点が目についてしまう。人にはそのような習性があるのかもしれません。しかし、批判を口にしてみると、心にざらっとした感触が残らないでしょうか。時々、TwitterなどSNSで批判の応酬になっていることがあります。読んでいる方にも後味の悪さがあります。反対に、相手の素敵なところを褒める、称える。すると、なんとも爽快です。あたたかい気持ちになります。批判が体に悪い食べ物だとしたら、褒める、称えることは、体に良い食べ物を取り入れることなのですね。「称える」というのはあまり馴染みがないかもしれません。でも、この一言ですべてを語ることができます。「すばらしい!」こう言われた人はうれしいし、言ったこちらもうれしくなる。いい循環が生まれるのです。これは、日常の中でも心がけることができます。不快なことより、よいことに焦点をあてる。例えば、スケジュール帳によかったこと、嬉しかったことをメモすることもお勧めします。メモに残すことによって、心に刻まれる。よかったことに焦点をあてることが身についていくのです。すると、少々のことでは凹まなくなります。気持ちの切り替えがうまくなるのです。お互いのいいところを見いだして、称えあう。ポジティブな思いが循環し広がっていくと、世界は丸くなるのではないか。そんな世界をイメージしながら、まずは今、ここから始めていきましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月01日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。サラリーマン川柳で笑う!マスクマスクの日常生活で、笑うことが、大きな声で笑ったりすることが、何となく抑えられ、笑顔のある生活が少なくなっているように思われます。会議でも、友人達やご近所さんとの立話でも…。早くマスクのない、笑いのある生活を取り戻したいものですね。そこで今回は、例年第一生命が主宰している今年のサラリーマン川柳コンクールの入賞作品を列記させていただきますので、ニンマリ笑って頂けると幸いでございます。【1位】「会社へは 来るなと上司 行けと妻」(なかじ)【2位】「十万円 見る事もなく 妻のもの」(はかなき夢)【3位】「リモートで 便利な言葉 “聞こえません!”」(リモートの達人)【4位】「嫁の呼吸 五感で感じろ! 全集中!!!」(鬼嫁一家)【5位】「じいちゃんに JY.Parkの 場所聞かれ」(けぇぽっぷ)【6位】「我が部署は 次世代おらず 5爺(ファイブジイ)」(松庵)【7位】「お父さん マスクも会話も よくずれる」(さごじょう)【8位】「YOASOBIが 大好きと言い 父あせる」(テンビ)【9位】「お若いと 言われマスクを 外せない」(エチケット)【10位】「抱き上げた 孫が一言 密ですよ」(白いカラス)コロナ禍でも、ユーモアやウィットに富んだ川柳の魅力。正に笑いの妙薬ですね。クスリと笑っていただけると、幸せでございます。※掲載句は第一生命株式会社様より許諾を頂いています。<2021年7月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年07月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心がざわざわするときは……心がざわざわすることが起こります。ニュースを観ても、時には自分の身にも、ざわざわすることがあります。私の場合、作品などの評判や批評もあります。厳しい意見にもきちんと向き合えたらよいのですが、私はできるだけ見ないようにしています。これでよいのかどうか、未だもってわからないのですが、打たれ弱い自分がいるのです。心がざわざわするときは、そのざわざわを一旦自分の外に取り出すようイメージします。そして、自分の中心に入れない、と決めます。つまり、世の中で起こっていること、他人のこと、他人から何か言われたことが、自分の人生に直接影響があるかどうか。そこを冷静に考えてみます。すると大抵の場合、よほどのことがない限り自分の人生を侵食するようなことではないのです。自分の中心にある大切な場所に入れない、というイメージを持ってみましょう。やるべきことを黙々とする。仕事でも家事でも、やるべきことに集中する。言ってみれば、仕事瞑想、家事瞑想でしょうか。雲が流れるように途中でモヤモヤとしてきたら、それを手で払います。またモヤモヤしてきたら、払います。その繰り返しを。何かを作ることに集中することも効果的です。それも自分のためにではなく、誰かのために。私は料理をすることで、モヤモヤとした何ものかを外します。「誰かのために」という気持ちが、気持ちの浄化を助けてくれるのです。「気にしない」「どうでもいい」と、実際に言葉に出して言ってみるのも一つの方法です。モヤモヤ……「気にしない!」ざわざわ……「どうでもいい」、このように。「気にしない」「どうでもいい」という言葉の言霊が働くのです。言ってみれば、これは『言葉の結界』です。結界とは聖なる場所と俗なる場所の境界。悪いものが入ってこないよう、浄不浄の線引きをするのです。見なくてもいいものが目に入り、聞かなくてもいいことが耳に入り、読まなくてもいいものが、ふと目に飛び込んでくる。そんな時代にあって、自分の心を保つこと、ストレスを受けないことは、一つの危機管理になるのかもしれません。自分の中に寛げるような、そんな日常でありたいものです。心がざわざわするときは……誰かのために何かを作り、言葉の結界を張る。今すぐにできる浄化法を試して、自分自身に寛いで、穏やかな毎日を送りましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月25日血縁や社会的役割を超えた関係性“シン家族もの”。ライターの小川知子さんがナビゲートします。従来の家族制度に縛られない、“ゆるやかな結合”近年、家族という概念を揺るがす関係性を描いたエンタメ作品が増えていると、小川知子さんは語る。「安らげる関係であるはずだった家族が、夫婦だから、親だからといった固定観念によって息苦しさが生まれ、関係が行き詰まってしまった事例が、現実に多く存在します。しかし、与えられた社会的役割を一度解放してみたら、うまくいく場合も。また、戸籍上他人であっても血縁でなくても、支え合う自立した個々同士が、ゆるやかな形で集まった共同体を家族として捉えるという流れもあります。そんな既存の制約にとらわれず、多様な家族のあり方を描いた作品に、長い人生を自分らしく生きていくためのヒントがあるはず」元夫たちとの距離感が絶妙。バツ3女性の日常を描く。ドラマ:『大豆田とわ子と三人の元夫』3度の離婚歴があるヒロインを中心に、さまざまな結びつきを示した、今年の傑作。「結婚も離婚もハッピーエンドに関与していない。自分で選んだからこそ、その先に見えてくる景色もある。常識や契約に縛られない関係性のあり方が描かれています」。DVD‐BOX 2万5740円 11/5発売発売元:カンテレ販売元:TCエンタテインメント©2021カンテレ支え合って生きていく、女性ふたりの共同生活。エッセイ:『女ふたり、暮らしています。』シングルでも結婚でもない、女性ふたりと猫4匹の暮らしを描いた韓国のエッセイ。「性格は違っても、自立していて、気も合うから、一緒に暮らすことで自由と心強さを手にできた。まさに理想の生活と関係性」。キム・ハナ、ファン・ソヌ著CCCメディアハウス1650円ワンオペ女性が大黒柱妻に。社会のあり方を問い直す。漫画:『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』夫と役割交替をし、妻が大黒柱として働いてみたら、昭和のお父さんに!?「社会構造が役割を作っていて、我々もそれに結構とらわれている気がします。双方の立場を知る上で、役割を交替することの重要性を感じた」。田房永子著エムディエヌコーポレーション1320円実父が出演し、話題に!実体験を基にした家族の話。舞台:ゆうめい『姿』脚本・演出を手掛ける池田亮さんの体験と、親族への取材に基づいて描かれた2019年の舞台で、今年5月に再演。「壊れかけた家族でも、足りなかったものを後から埋めていくことで、また新たな家族のカタチを作ることができると思える作品」。次回作『娘』は12月に公演予定。小川知子さん映画宣伝・配給会社、『ecocolo』編集部を経て、フリーに。現在は『GINZA』『花椿』などで執筆。※『anan』2021年7月21日号より。(by anan編集部)
2021年07月18日