国際通貨基金(IMF)が2023年の各国の名目国内総生産(GDP)の見通しを発表した。日本のGDPはおよそ4兆2300億ドルなのに対し、ドイツはおよそ4兆4300億ドルと予測。日本は長年、米国、中国に次ぐ、第3位の地位を維持してきたが、ついに4位に転落することになる。そんななか「悲しい円安」という言葉が話題になっている。「ドル円相場が1ドル=150円近辺を行き来しています。メリットよりもデメリットが上回る“悪い円安”を通り越し、今は“悲しい円安”に突入したと考えています」こう語るのは、みずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミストの酒井才介さんだ。「円安の背景は、まず短期的には、コロナ禍からの経済回復が、アメリカや欧州に比べて周回遅れになっていることが挙げられます。アメリカでは消費需要や賃金が伸び、インフレが加速。急激なインフレの抑制のために、金利を上げて景気を冷まそうとしています。一方、日本は消費者物価指数が3%ほど伸びているものの、名目賃金の上昇は1〜2%ほどで、物価上昇に追いついていません。そもそもコロナ以前に比べて、個人消費は2%ほど弱く、アメリカのように金利を上げるほど、経済が回復していないのです」日本はこの10年、「デフレからの脱却」を旗印に、低金利を維持するアベノミクスを推進してきた。だが、デフレではない状況には到達したものの、賃金が上がらず、金利を上げるに上げられない状況になっている。その結果、金利の高い米ドルを購入して日本円を売る傾向が強まり、円安が進行しているのだ。「さらに長期的には、日本の産業競争力が落ちてきていることも、円安の背景にあります。かつては日本の強みだったエレクトロニクス分野も、たとえば半導体では台湾や韓国などアジア圏にシェアを奪われるなど、海外勢に押されています。EV車では完全に出遅れたことなどもあり、日本の稼ぐ力が弱まったことを受けて円の価値が低下しているのです」■来年の後半までは賃金は物価に追いつかず“悲しい円安”は、私たちの家計も追い込んでいく。「日本円の総合的な購買力を表す実質実効為替レートを見ると、2020年を100とした場合、足元は69。3割ほど落ちこんでいます。これは1970年代前半の水準。つまり、国際的に見た日本の経済力は50年前にまで落ちてきているのです。以前までなら、世界的に原油価格が高騰するような事態に陥ると、安全資産と思われていた日本円が買われ円高になっていたので、原油を購入する際の負担は軽減されました。しかし現在は円安のままなので、原油の値上がり分に加えて、円安の影響でさらに輸入価格が割高になるのです」原油購入額が上がれば輸送費、燃料費が跳ね上がり、あらゆるものの価格に影響する。「10月以降も家計への負担は増える見込みです。現状のようなWTI原油価格が1バレル=90ドル、ドル円相場が1ドル=150円程度の状況が続いたと仮定し、家計調査をもとに機械的に試算すると、夫婦と子供1人の3人家族は2023年度通年で平均10万2148円も支出負担増になります。名目賃金の上昇が物価上昇に追いつくのは、来年の後半くらいとみています。まだ我慢の時期が続く見込みです。家計としても節約などの努力が必要ですが、政府も当面はガソリンやガス・電気などの補助金を継続するほか、低所得者に対する支援を行うなど、物価高対策が求められることになるでしょう」10月23日の所信表明演説で「経済、経済、経済…」と連呼し、経済政策に力を入れていくことを表明した岸田首相。はたして、地に落ちた日本経済を復活させることができるのか。
2023年10月26日11月28日、岸田文雄首相は防衛費などの関連予算を今後5年で倍増し、27年度には国内総生産(GDP)比2%以上にするよう関係閣僚に指示。財源確保を年内に決着させる考えを表明した。政治アナリストの伊藤惇夫さんがこう語る。「岸田首相は、これまで行った決定はことごとく間違ってきた“決断オンチ”です。だいたい岸田首相は、防衛費増額について数値目標を設けずに『必要なものを積み上げていく』と繰り返してきたのに、突然『2%目標』と数字を出してきました。政権を安定させるため、自民党で影響力のある安倍派に押されて数字を出さざるをえないという状況。さらに内閣支持率の低迷を打開するため、リーダーシップを発揮しようともくろんでいるともいわれています」2022年度の防衛費は約5.4兆円でGDP比1%ほどだが、これを2%に増やすと11兆円になる。軍事評論家の田岡俊次さんが語る。「今年4月に発表された『世界の軍事費』(ストックホルム国際平和研究所)によれば、2021年の日本の防衛費は世界9位でした。11兆円に倍増させると、日本は一気にアメリカ、中国に次ぐ3位に。平和憲法を掲げながらも、実質的に軍事的列強国の一国となるのです」あらたに必要となる5兆円規模の財源として、自民党内では国の借金である国債で一時的に対応するべきとするという声が大きい。■超物価高のなか所得税増税が……同志社大学大学院ビジネス研究科教授でエコノミストの浜矩子さんがこう憤る。「第二次世界大戦での戦時国債で戦禍を拡大させていった教訓があるはず。しかも11月29日に、日本銀行が買い入れている国債が下落して9千億円近くの含み損が発生したことが発表されたばかり。それでもまだ国債を使おうとする自民党政治家の見識が疑われます」一方、財務省は防衛費の増額分を増税で確保するべきだと考えている。伊藤さんが解説する。「防衛費は恒常的な経費のため、安定財源が不可欠といわれます。税目別で収入が多いのは消費、所得、法人の基幹3税ですが、消費税については自民党の宮沢洋一税制調査会長が、社会保障財源にあてるため『防衛費であまり手をつけたくない』と否定的な考え。財源として候補にあげられているのが所得税と法人税です」企業などの所得に対してかかる法人税について、11月21日に経団連の十倉雅和会長が「法人税が独り歩きして先行されて議論されるのはいかがなものか」と牽制した。「岸田首相は、就任当初に“金持ち優遇”となっている金融所得課税の見直しを打ち出しましたが、富裕層からの反発を受けてすぐに見送りました。経済界の意向や政治力のある人の声には“聞く力”があるようですから、法人税に対しては及び腰になる可能性が高い。そのしわ寄せは、声を上げられない国民にいくことになるのです」(浜さん)そうなると可能性が高いのが所得税の増税だ。2021年度の所得税の税収は21兆3千822億円。防衛費11兆円のためには5兆6千億円を捻出する必要があるが、所得税だけで賄おうとする場合、現在より約26%税収を増やさなければならない。仮に、単純に所得税が3割増税される場合、年収600万円の家庭(夫婦2人)の所得税は現在は年16万7000円ほどだが、増税されると約21万7100円と、年5万円の負担が増える。累進課税となっている所得税は、収入が上がるごとに税率が上昇する。年収800万円家庭(夫婦2人)の所得税は現在39万3000円ほどだが、増税されると51万900円と、年11万7900円も負担増に。「コロナ禍に加え、円安や物価高に直面する家計にとって増税は国民生活の破綻を招きます。国民の信を問わずに軍拡のための大増税はまさに政府の暴走といっていいでしょう」(浜さん)
2022年12月08日岸田文雄首相は防衛費などの関連予算を今後5年で倍増し、27年度には国内総生産(GDP)比2%以上にするよう関係閣僚に指示を出した。2022年度の防衛費は約5.4兆円でGDP比1%ほどだが、これを2%に増やすとなると11兆円になる。軍事評論家の田岡俊次さんが語る。「今年4月に発表された『世界の軍事費』(ストックホルム国際平和研究所)によれば、2021年の日本の防衛費は世界9位でした。11兆円に倍増させると、日本は一気にアメリカ、中国に次ぐ3位に。平和憲法を掲げながらも、実質的に軍事的列強国の一国となるのです」そもそも防衛費を倍増すれば日本の防衛力は高まるのだろうか。田岡さんは「巨費を投じても効果は乏しい」と指摘する。「政府は、敵のミサイル発射を阻む『敵基地攻撃能力』の必要性を訴えていますが、実効性はありません。北朝鮮のミサイルは移動式発射機に載せてトンネルに隠し、出てきて即時発射できる。敵の位置がわからないと、こちらは攻撃できません。たとえ兆候をつかんだとしても、単に訓練しているのか、日本を狙っているのか意図や方向を判断するのは困難。政府が慌てて攻撃したら“先制攻撃をした”と世界から非難される可能性もあります」また5兆円の“使い道”にも疑問符がつくとこう続ける。「今でも14645人が欠員となっている自衛隊では隊員の募集に苦労しています。2018年から一般の隊員の採用を18歳以上33歳未満にまで広げましたが、人員は一向に増えていません。予算を増やしたからといって、この問題が解決するとは限りません」さらに、防衛費増額を主張する人たちの根拠になっている米中の台湾有事に日本が巻き込まれるリスクも低いという。「中国と台湾の経済関係は極めて密接、相互依存で発展してきた。中国が台湾に攻め込めば自らの足を打つ結果に。台湾行政府の世論調査では、独立でも統一でもない『現状維持』を望む人が84・9%もいる。日本はそれを支持して、米中戦争の防止につとめるほうが安全保障と国益にかなうのです」
2022年12月08日延長される緊急事態宣言、迫る東京オリンピック・パラリンピック、そんななかでも遅々として進まないワクチン接種。日本では感染者数が増加しているが、世界を見渡すと、先進国は着実にコロナ禍を乗り越えつつあるようだ。【イギリス】「猛威を振るった変異株をも克服へ」接種回数(人口100人あたり):75.46回ピーク時の今年1月には1日6万人以上が新規に感染していたが、ワクチン接種が進むにつれ減少が続き、現在では2,000人ほどに。医療資格のないボランティアに研修を施してまで接種したという決死の対応に、はっきりと効果が表れた。【アメリカ】「バイデン新政権でスピードアップ!」接種回数(人口100人あたり):74.62回7月4日の独立記念日までに、大人の70%が少なくとも1回のワクチン接種を済ませるという目標を発表したバイデン大統領。ワクチン接種が進んだのも同時期ではあるが、政権交代後のアメリカの新規感染者数減少スピードは目覚ましい。【イスラエル】「世界に先行したワクチン実験が大成功」接種回数(人口100人あたり):121.11回米ファイザー社に新型コロナウイルスワクチンの実験データを提供したことで、世界最速で接種が進んだ。すでに人口の半数以上が2回の接種を完了し、マスクなしでの散歩やパブでの歓談を楽しむ光景が広がる。【中国】「経済は爆上がりだが、感染者数には疑問も!?」接種回数(人口100人あたり):20.12回今年1~3月期のGDPが前年比で18.3%増え、5月の連休中のホテル予約数はウイルス流行前比でも40%以上増加するなど、活発な経済活動が戻る中国。最初にコロナ禍に見舞われた武漢では音楽フェスも開催された。【インド】「二重変異株がもたらす悪夢の日々」接種回数(人口100人あたり):11.59回人口に比して感染者数が少なかったインドだが、ここにきて状況は激変。今や世界最悪のパンデミックの現場となってしまった。インドを苦しめる新たな二重変異株にはやや効果が下がるともいわれているが、それでもワクチン接種こそ喫緊の課題だろう。【韓国】「ITを用いた感染の抑え込みにも限界が」接種回数(人口100人あたり):7.58回社会的距離規制や追跡システムなどで感染者数の増加を抑えるが、ワクチン接種では遅れている韓国。一方、接種を条件にしたグアムツアーの登場や、先月中旬からはワクチン接種証明スマホアプリが導入されるなど、前向きな取り組みも多い。【日本】「菅首相は何をやってる?」接種回数(人口100人あたり):3.03回五輪を意識するばかりか半端な政策が続き、国民感情は悪化の一途。観光、飲食業界が期待したGW特需も3回目の緊急事態宣言で泡と消え、繁華街では閉店も目立つ。菅総理が急ぐワクチンの大規模接種会場設置もこれから。五輪開催までに高齢者の接種を終えるのも難しそうだ。■本誌が見た!埼玉イオンでのワクチン接種会場医療従事者への先行接種が始まった2月中旬から遅れること2カ月、65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスのワクチン供給がついに全国でスタート。菅首相は1日100万回の接種を目標にすると表明したが、3,600万人もの高齢者への接種が完了するのは東京オリンピックよりも後、お盆期間までかかるともいわれている。そうした中、本誌では商業施設のワクチン接種会場ということで注目が集まった埼玉県のイオンモール春日部を取材した。会場に入ると、受付け後にスタッフが医師のもとまで誘導、そこで問診を受けてから、看護師によってワクチンを打たれる。会場の規模は想像より小さく、受付や待機場所のほか、問診と接種のスペースが各2カ所ずつのみ。1日の定員が60人かつ事前予約制だから混雑がないのもうなずけるが、これでは焼け石に水ではないかと思ってしまう。ここにきてようやく東京に続き大阪でも大規模接種会場が決まったが、高齢者のワクチン接種が始まった途端に予約のための電話回線がパンク、市役所で予約できるという誤情報で行列が発生してしまうなど、想像以上にその前途は多難だ。京都大学の山中伸弥教授も「終息に向かわせようとすると、7,000万、8,000万人は接種を完了させないと、目に見えた効果はないと思う」と朝日新聞の取材で回答している。そんななか河野大臣は職場や学校でのワクチン接種、「ワクチン接種証明書」導入を検討する考えを示したが、集団免疫を獲得して、“日常風景”を取り戻せる日はいつになるのか――。※ワクチン接種回数、1日あたりの新規感染者数は5月7日現在までの最新データ。英国運営サイト「アワー・ワールド・イン・データ」より「女性自身」2021年5月25日号 掲載
2021年05月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「Quad(クアッド)」です。インド太平洋地域の平和のため連携し中国に対抗。「Quad」とは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国が軍事的、経済的に連携をしていこうという枠組みです。インド太平洋地域で強引な海洋進出を繰り返している中国に対して、包囲網を作りたいという思惑があります。それぞれ中国との間には難しい課題を抱えているのです。日本は尖閣諸島問題。中国は「海警法」を施行し、日本の海上保安庁にあたる中国海警局が武器を持てることになりました。そして、しばしば日本の領海に侵入し、プレッシャーをかけています。アメリカは中国との経済対立が鮮明。厳しい貿易折衝を続けています。また、自由主義と中国共産党のイデオロギーの対立も激しさを増してきました。オーストラリアも中国との貿易摩擦が激しく、中国の買い手市場になっており、対等な関係を築くことを望んでいます。中国と国境を接しているインドは常に緊張関係にあり、国境付近では小さな衝突が続いています。Quadのもとになったのは、2006年に当時の安倍首相が提唱した、「日米豪印による戦略対話」でした。日本もアメリカも後任の政権がその意思を引き継ぎ、バイデン大統領の呼びかけで、3月12日にQuad初の首脳会合が開かれました。自由や民主、法の支配を共通の価値として共有することを大きな目的にしています。Quadの規模を数字で見てみると、人口は中国の14億人に対して、Quad4か国の合計は18億人。GDPは中国が14兆ドルなのに対して、Quadは30兆ドル。軍事費は年間2600億ドルの中国に対して、Quadは8700億ドルになります。対抗といっても、戦争をして領土を奪うという話ではありません。あくまで経済的な覇権争いです。中国の経済パワーは強大ですから、完全に敵に回すことなく、うまく商売をしたいという思いもあるため、複雑なんです。しかし、いかなる理由であれ、人権や人道を逸脱する行為は認められませんし、ルールに基づいた貿易をするということは大前提であるべきです。自由主義国がまとまって、中国やそれに追随する諸国に対して、自由と民主の価値を見せ続けることが大事だと思います。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大きな政府 小さな政府」です。日本はさらなる小さな政府になろうとしている。「大きな政府」とは、税金を多く集め、その分、社会保障を手厚くするという国のあり方。イメージでいうと北欧の国々です。国に対する国民の信頼は厚く、必然的に民主主義指数が高くなります。自分たちのお金が適切に使われているかを国民が監視しますし、投票率も高く、民意は強く反映されます。一方、「小さな政府」は、税率を抑える分、自分たちの力で自分たちの暮らしを維持するのが基本。外交や防衛は国が担いますが、国民の老後の面倒は自分たちで見るというスタンス。国がサポートするのは必要最低限です。小さな政府の代表はアメリカですね。日本には国民皆保険制度があるので、大きな政府のイメージがあるかもしれませんが、数字で見ると、先進諸国のなかでも小さな政府なんです。国の支出を公的社会保障に充てる割合は、2010年の対GDPで見ると、フランスが32%、アメリカが20%なのに対して、日本は22%とアメリカとあまり変わりません。公務員の数は、人口1000人に対してフランスは90人、イギリスは69人、アメリカは64人。これに対し、日本はわずか37人ととても少ないんです。足りない分は、非正規や契約の公務員がまかないます。先日もハローワークで働く職員の皆さんが雇い止めにあい、非正規の公務員が切られていることが問題になりました。私たちは普段から、自助を求められる国であるという認識を持つべきです。日本の場合、超高齢化や少子化により、十分な税収確保ができないという事情もあります。国の財政が厳しいので、民間事業者に公的分野の問題解決を担ってもらおうとしていますが、COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)が活用できていなかったり、原発廃炉作業問題、国立病院の不足による医療現場の疲弊など、弊害が出てきています。日本は1人当たりのGDPが下がって、稼ぐ力が弱くなってきています。政府はさらなる小さな政府を目指そうとしていますが、民間の競争を促すにしても、一部に有利な競争の仕組みを作るのは問題です。予算の支出先はどこなのか?私たちはきちんと見ておく必要がありますし、信頼関係をもって初めて税金を支払えます。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年04月21日【おとな向け映画ガイド】『天国と地獄』に似てる!? 連続殺人鬼が女子高生に『ザ・スイッチ』と、幸せの国『ブータン 山の教室』。今週はこの2本をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/3/28(日)野村正昭さん(映画評論家)「……クリストファー・ランドン監督が手がけただけあって、さすがの出来栄え!……」世界で一番幸せな国で…『ブータン 山の教室』ブータン王国は10年ほど前、若き国王夫妻が来日し、ちょっとしたブームになったことがありました。GDPよりGNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)の方が重要だという国です。そのブータンで作られた、まさに心洗われる映画です。首都のティンプーに暮らす、ipodを手放さない音楽好きな若い教師ウゲンが、上司の命令で僻地の学校に赴任します。学校は春から秋までの季節開校。冬までの約束です。ティンプーは標高2300メートル前後、赴任地のルナナ村は4800メートル。途中のガサまではバス、そこからはトレッキング、つまり山登りしか手段がなく、しかも8日もかかるのです。村に到着するやいなや「僕にはできません」と弱音をはいたウゲンですが、純朴そのものの生徒たちとの暮らしのなかで、何かが変わっていきます……。プロの俳優はウゲン役の新人シェラップ・ドルジと若い数人のみ。村人や生徒たちは実際にルナナに暮らす人々が自身を演じています。特に、クラス委員役を演じるペム・ザムは奇跡ともいえるかわいさ。観ているだけでなごみます。監督はパオ・チョニン・ドルジ。この作品が長篇デビュー作です。写真家でもある監督、ブータンの大自然をとらえた映像美は、やはり映画館のスクリーンで観てこそ、と思います。【ぴあ水先案内から】立川直樹さん(プロデューサー、ディレクター)「……ブータンから“幸せとは何なのだろうか”と考えさせてくれる映画が登場した。……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……ゆっくりと心が広がる感覚を映画で味わい、主人公の青年に自分をシンクロさせながら気づくもっとも大切なこと。」紀平重成さん(コラムニスト)「……最初は村の暮らしや人々の語らいがあまりにも純朴過ぎて少々居心地は悪かったのですが、突然理由もなく涙がこぼれ出し慌てました。」夏目深雪さん(著述、編集業)「……田舎の学校で子供たちを教えるという物語には想像以上のものはない気がするが、これが筆舌に尽くしがたい素晴らしさ。……」首都圏は、4/3(土)から神保町・岩波ホールで公開。中部は、4/24(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/30(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2021年03月28日「そろそろ景気も少しはよくなるのかしら」という淡い期待を砕いた第3波の感染拡大。私たちの懐ろ具合も「回復」どころか、まだまだ「後遺症」に悩まされるようでーー。「今年の経済は、世界的に見れば多少持ち直すようですが、それは昨年、著しく悪化した反動です。一昨年の『コロナ禍前』と比較すれば、国内では軒並みマイナスになってしまうでしょう」こう話すのは経済評論家である加谷珪一さんだ。’20年は多くの業種で経済活動が制限され、国民1人10万円の特別定額給付金の支給をはじめ、国や行政の支援策も多く打ち出された。“家計”をベースに考えた場合、’20年にはどれだけ「収入・支出」があったのか、’21年はどんな見通しとなりそうなのか、年頭によく比較・検討しておくべきだろう。まずは、’19年までを「例年並み」と捉え、多くの世帯で深刻な家計状況に陥った’20年が「実際にどんな経済状態だったのか」から加谷さんに検証してもらった。「’19年に『年収500万円(月収約41.6万円)だった3人世帯で見てみましょう。コロナ禍が発生した’20年の年収は491万円(月収約40.9万円)に減ってしまったのですが、全国民に特別定額給付金の支給があったため、3人世帯ですと30万円が加算され、収入自体は『521万円』に増えたことになります。ところが、将来への不安から支出が抑制され、収入に対する消費支出の割合は低下しているのだという。「’19年の支出が年間300万円(月平均25万円)だったのに対して、’20年は271万円(月平均約22万6,000円)と、『年間29万円』抑えられたことになるんです」さらに、気になる’21年の収入と支出の予測だがーー。「GDP(国内総生産)と賃金の過去の相関関係から、’19年に『年収500万円』だった世帯の’21年の収入は『495万円』に減少する見込みです。しかも’21年は給付金が出ない公算が高いため、’20年より『26万円』も収入が減ることになります」そして’21年の支出は、’20年並みに抑えられたとすると、年額257万4,000円(月平均21万4,500円)となる。’19年と比べて「42万6,000円(月平均3万5,500円)」、’20年からは「13万6,000円(月平均約1万1,500円)」の減少となるのだ。今年は昨年より収入が減るが、支出も減る見通しといえる。「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載
2021年01月13日世界各地の紛争や民主化運動も景気の向上も、「消費」から「生産」への転換がポイント。堀潤&五月女ケイ子が語り合います。自分で作る喜びが、新しい仕事を生む。五月女(以下、五):‘20年は香港やベラルーシなど、民主化運動が世界の各所で起きていました。堀:ベラルーシも香港もシリアも、経済格差が民主化運動の根本にあることが多いです。Black Lives Matterもそう。黒人の所得が著しく抑えられていて、教育機会も恵まれず、搾取され続けている構図は、まさに「生きる権利」の問題なんです。声を上げると大きな権力によって逮捕、拘束、場合によっては殺害されてしまう、そうした人権弾圧は無視できません。経済格差の問題は、日本も直面している課題ですよね。知らず知らずのうちに私たちも搾取の構図のなかに生きている可能性もあります。五:そういうニュースを見ると、自分たちではどうにもならないし、いったい、どうしたらいいんだろうという気持ちになっちゃいます。堀:意外に思うかもしれませんが、紛争地域や開発途上国の人道支援法がヒントになるかもしれません。その土地で農業を始めるなど、自分たちの仕事を作り、安定した収入が得られるようお手伝いするんです。持続可能な仕組みができると地域は安定します。「生産者になる」ということは大きなポイントになると思います。五:生産者…ですか。堀:現在の資本主義のグローバル経済は、海外でモノを安く作らせて、安く仕入れたものをある程度の値段で売って利益を得るという仕組みでした。多く儲けるために、労働力のより安いほうを求め、搾取の流れが加速しました。儲けは企業に吸い取られて、労働者は安い賃金で働き続けるしかない、その不満のくすぶりがやがて争いにつながります。それが、新型コロナによって移動が制限され、海外からモノが入らなくなってしまった。そのとき、地元で作ったものを地元で消費する、土地に根付いた経済活動が支えになったんです。コロナ禍が始まったころ、マスク不足になりましたよね?五:そうでした!自分たちで布マスクを作ったりしてました。堀:消費するばかりの生活だったけど、コロナによって、生産する喜びを知った人が多くいたんですね。お店で高い家具を買うよりも、自分でDIYするほうが楽しいとか、グルメサイトのレストランめぐりをするより、自分で育てたトマトを食べるほうが幸福だとか。五:よくわかります!自粛中、家のなかでもいろいろ工夫して過ごすという生活が意外と楽しかったんです。それまでは一人で植物を育てていたのですが、娘もガーデニングに目覚めて、ベランダ中が緑になりました。温泉に行けないからと、バスルームに「湯」と書いて、温泉宿のつもりになって1日3回もお風呂に入ったり(笑)。堀:それですよ!(笑)自分で何かを作り出すことに幸福価値を置くようになる。個人もそれができるようになると経済が上向きになります。これまでは消費することで経済を回していました。それによって、モノは安く叩かれ、日本経済は縮小しました。コロナ禍によって、自分で何か付加価値をつけて「生産者」になれたら、1人当たりのGDPが上がります。日本のGDPは世界3位ですが、1人当たりのGDPは25位にまで落ち込んでいるんです。五:自分で作るとなると、それだけ時間も必要になりますね?堀:スローライフのような価値観が今後は広がっていくのだと思います。政府は1人当たりの生産を効率的にいかに上げるか、ということに腐心しています。たとえば「介護などの仕事は機械やAIに任せて、浮いた時間をあなたのほかの生産に当ててほしい」と。五:え?AIで浮いた時間も働かなきゃいけないんですか?(笑)堀:人口減少、少子高齢化の進む日本は、機械化、AI化によって、生産効率を上げ、いまの税収を維持することが国に課せられているんです。女性もお年寄りも障害のある方もみんな働く「一億総活躍社会」ですから!(笑)五:休ませてはくれないんだ…。堀:それも考えようです。「つまらない作業はAIにまかせて、あなたは大好きな野菜作りで生計を立てられるようにしましょう」ということ。YouTuberではないですが「自分の好きなことを仕事に」と理想を掲げています。五:でも、好きなことをお金につなげるのって難しいですよね?堀:まず、自分の好きなことは何なのかを知る必要がありますよね。そのための教育や大学のあり方も変わっていかないといけないでしょうね。組織のなかで従順に仕事をこなすのではなく、自分から仕事を生み出す、企業家のような発想が求められるでしょう。五:なるほど。消費者から生産者への移行って、原始的な社会に還るということなんですか?堀:いえ。生産にデジタルを組み込もうとしています。どこにどんな作物の種を蒔き、いつどのくらい水をやれば収穫できるのか。AI解析による指導で、プロ並みの農作物が作れるようにするとか。五:原始と科学のコラボ!?(笑)堀:コロナによって、業態も変わっていきます。たとえばこれからのレストランは、シェフがレンタルキッチンで作った料理を宅配によって届けてもらうことがメインになっていくかもしれません。五:新しい仕事を考えないと(笑)。堀:今後は自力でお金を生み出せる人とそうでない人が出てきます。国は生み出せない人をどうサポートするか考えてほしいと思います。堀 潤さん1977年生まれ、兵庫県出身。ジャーナリスト。監督したドキュメンタリー映画『わたしは分断を許さない』が公開中。同名著書も刊行。ほかに『堀潤の伝える人になろう講座』等。五月女ケイ子さん1974年、山口県生まれ、横浜育ち。イラストレーター。WEBサイト「五月女百貨店」では、‘21年のカレンダーほか、楽しいグッズが絶賛販売中。※『anan』2020年12月30日-2021年1月6日合併号より。イラスト・五月女ケイ子取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年01月02日7年8カ月も続いた安倍政権。その象徴的だった政策がアベノミクスだ。だが、庶民から生活が楽になったという声はほとんど聞こえない。それもそのはず、嘘で塗り固められ政策だったのだーー。「アベノミクスは買いだ」世界にそう喧伝していた安倍晋三首相。だが、8月28日の辞任会見で「アベノミクス」という言葉は最後まで使わなかった。『アベノミクスの終焉』の著書がある同志社大学商学部の服部茂幸教授が話す。「アベノミクスが中途半端で終わったことを表しています。アベノミクスは、日本銀行が国債をたくさん買い入れることにより、市中に大量の通貨が供給され、金利は下がり、企業活動が活発化。物価の上昇とともに賃金も増え、消費も拡大すると謳っていました。その景気回復へのシナリオはすべて頓挫したのです」7年8カ月も続いた第2次安倍政権の根幹政策だったアベノミクス。その実態を検証しよう。■消費も雇用も低迷した「消費は緩やかな上昇傾向」と安倍政権は主張し続け(図解:ウソ3)、消費税の増税が強行された。『ツーカとゼーキン知りたくなかった日本の未来』の著者である弁護士の明石順平さんはこう語る。「しかし、民間消費の総額である実質民間最終消費支出は、’14〜’16年にかけて3年連続下落。これは戦後初のことです」2度の消費税増税もあり、消費は低迷し続けている。国内消費が6割を占めるGDP(国内総生産)だが、こちらの数値がかさ上げされている(図解:ウソ4)可能性がある。’16年12月、内閣府はGDPの算定方法を“国際標準の基準値”へ改訂している。「しかし、国際標準とは関係のない『その他』という項目を操作して、アベノミクス以降のGDPを大きく膨らませました」(明石さん)過去のGDPも新基準で計算し直され上昇したが、アベノミクス以降のほうが明らかに上昇率は大きくなっているのだ。辞任会見で安倍首相は「雇用の回復」を強調していたが……。「就業者数は増加していますが、それとともに増えるはずの就業者全体の労働時間はほぼ横ばいです。その理由は、急増している派遣や契約、パートなどの非正規雇用の労働時間が短くなっていることにあります」(前出・服部さん)“安定した雇用”(図解:ウソ5)はまったく回復していない。最後に服部さんが語る。「アベノミクス失敗の原因をコロナ禍に求める人がいますが、’18年10月には景気が後退局面に入っていたことが今年7月になって明らかになりました。成長率も1%程度と低く、効果がなかったんです。国民はアベノミクスという幻想から目を覚ますべきです」しかし、自民党総裁選への出馬会見(9月2日)で菅義偉官房長官は「アベノミクスをしっかりと引き継いで、前に進めていきたい」と語った。悪夢は“スガノミクス”として引き継がれていくのか。「女性自身」2020年9月22日 掲載
2020年09月10日「今年度の4〜6月期のGDPの下落率は、リーマンショック時(’09年1〜3月期)を超え、年率換算で27.8%と発表されました。戦後最悪の数値です。人為的に経済活動を止める『緊急事態宣言』下にあったため、専門家の間では予想されていましたが、ショッキングな結果です。長期的に見るとGDPと賃金はリンクするもの。今後の年収にも関わってくる問題といえます」このように警鐘を鳴らすのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。私たちの賃金にどれくらいの影響があるのか、試算してもらった。「リーマンショックは’08年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に始まりました。国税庁の民間給与実態統計調査によると、’08年の給与所得者の平均年収は429万6,000円でしたが、’09年には405万9,000円に急落。1年で5.5%、約24万円も下がっています。リーマンショック時のGDP下落率(17.8%、年率換算)から今回の下落率(27.8%)で単純計算すると、給与は8.6%落ち込むと予想されます。今の平均年収は440万7,000円ですから、402万8,000円まで落ち込む計算です」年間約38万円の収入ダウンなら、1カ月分の給料がまるまるなくなってしまうようなイメージだ。しかし、これはあくまで平均値。経済評論家の平野和之さんは、業種にも注意すべきだという。「総務省統計局の家計調査では『2020年6月の消費行動に大きな影響が見られた主な品目など』が発表されています。リモートワーク、ステイホームの推進のため、マスクや石けんなどの衛生用品、ストックできる食品類、パソコンやゲームソフトの消費は伸びており、こうした業種で働く人には年収への悪影響は直ちにないでしょう。ところが映画・演劇等入場料は前年同月と比べると95.7%ダウン、パック旅行は90.7%ダウンと激しい落ち込みです。さらに紳士服や交通費などの出費も激減。これらの業界では平均以上、つまり2割、場合によっては3割の賃金カットもあり得ます」緊急事態宣言が解除された7〜9月期はGDP成長率が反転し、10%超えの急成長になると予想する専門家もいるが、V字回復は難しいと、加谷さんは見ている。「金融危機だったリーマンショックや、物価が急上昇したオイルショックも、どちらも経済活動は続いていました。しかし今回は経済そのものが止まるという状況。以前の状態に戻すには、感染症への懸念を払拭するしかありませんが、感染状況は落ち着かず、冬場の大流行も懸念されます。仮に年内にワクチンが開発されたとしても、その安全性が確認され、広く行き渡るまでには2年ほどかかるのではないでしょうか」……先行き不透明な中、政府の舵取りが注目されている。「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年08月28日新型コロナウイルスの感染拡大によって、GDP下落率は戦後最悪の数値を記録した。はたして、この事態がわれわれの家計にどんな影響を与えるのだろうかーー。「今年度の4〜6月期のGDPの下落率は、リーマンショック時(’09年1〜3月期)を超え、年率換算で27.8%と発表されました。戦後最悪の数値です。人為的に経済活動を止める『緊急事態宣言』下にあったため、専門家の間では予想されていましたが、ショッキングな結果です。長期的に見るとGDPと賃金はリンクするもの。今後の年収にも関わってくる問題といえます」このように警鐘を鳴らすのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。私たちの賃金にどれくらいの影響があるのか、試算してもらった。「リーマンショックは’08年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に始まりました。国税庁の民間給与実態統計調査によると、’08年の給与所得者の平均年収は429万6,000円でしたが、’09年には405万9,000円に急落。1年で5.5%、約24万円も下がっています。リーマンショック時のGDP下落率(17.8%、年率換算)から今回の下落率(27.8%)で単純計算すると、給与は8.6%落ち込むと予想されます。今の平均年収は440万7,000円ですから、402万8,000円まで落ち込む計算です」年間約38万円の収入ダウンなら、1カ月分の給料がまるまるなくなってしまうようなイメージだ。年収が下がった状態で、コロナ収束まで持ちこたえる体力が私たちの家計にあるのだろうか。「通常、景気が悪くなればモノの値段も下がります。しかし、コロナ不況では、モノの値段が上がる恐れがある。これまで私たちは、あらゆる国から原材料や部品を安く調達することで、低価格の商品や食品を入手できていました。しかし感染拡大によって、世界の物流のあり方が変わってきます。原材料や部品の調達が近隣国や国内に限られればコストが上がり、価格上昇につながります。すでに物流の混乱からネットショッピングでも値上げ傾向に」企業も生き残りをかけて、来年度予算を検討する秋ごろから、本格的なコストカットに乗り出す。「昇給、昇進の停止、役職手当の廃止、再雇用後の年収引き下げといった、生涯賃金の抑制にも着手するでしょう」当然、冬のボーナスへの影響も大きいはずだ。経済評論家の平野和之さんは、次のように話す。「経団連の発表によると、夏のボーナスの各業種の総平均は、前年比マイナス2.17%と小幅な落ち込みでした。それに安心している人もいますが、これは3月末までの決算に対して決められた額なので、本格的なコロナの影響が出るのは冬のボーナスです。夏以上の3〜5%のダウンが目安で、業種やコロナの感染状況によって、半減する企業もあると考えます」(平野さん)賃下げだけでなく、リストラも急増すると予想される。「現在、経済が止まっているため、仕事がなく、休業状態にある社員がいます。体力のある企業は最低限の給与を支払うことができていますが、いつまでも続きません。こうした休業状態にある人は400万人もいると見られています。仮に半数が職を失えば、失業者は200万人となります」(加谷さん)リーマンショックによる失業者は約100万人といわれているから、倍の失業者が生まれることに。最悪のケースに陥らないよう、政府はGo Toキャンペーンなどを打ち出しているが……。「否定しませんが、タイミングがいいとは思えません。ワクチン開発、感染対策への投資などを第一に考えるべきではないでしょうか。個人としては、日々の節約で現金を手元に残しておくこと、1〜2年は大きな買い物をしないなど、対策しましょう」(加谷さん)「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年08月28日「あなた(新聞記者)も147日間休まず働いてみたことありますか?ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。140日休まないで働いたことないんだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」8月17日、安倍晋三首相(65)が都内の大学病院で検査を受けたことについて、麻生太郎財務大臣(79)は報道陣の前でこう語った。1月26日(日)から6月20日(土)まで147日連続で執務していたという安倍首相。いま、政府関係者や支持者は、首相の激務ぶりのアピールに余念がない。安倍首相の側近である自民党の甘利明税調会長(70)はこんなツイートをした。《「何で次から次へと日程を入れて総理を休ませないんだ!疲れ切っているのに!」「いくら言っても聞かないんです。本人が休もうとしないんです。先生からも説得して下さい!」私と総理秘書官とのやり取りです。色々なお叱りはあります。しかし側で見る限り総理は間違いなく懸命に取り組んでいます。》一方、ツイッター上ではこんな冷ややかな声も……。《週末は「午前中は来客なし。私邸で過ごす」ってパターンばかりで1時間かそこらしか官邸に行ってなかっただろ》はたして、安倍首相の“147連勤”の実態はどんなものだったのか。各メディアが報じている首相動静をもとに、休日の勤務状況を調べた。1月26日(日)から6月20日(土)まで、土日と国民の休日は全部で49日あった。イベントなどが入っていない場合、午前中は私邸で過ごすことが多く、午後3時以降に官邸に行ってコロナ関連の報告会に出席するというパターンが大半を占めていた。福島に出張中の3月7日(土)と、国会が開催された4月29日(水・昭和の日)を除いた休日47日の1日あたりの平均執務時間は123.1分、およそ2時間だった。最長の勤務時間を記録したのは、緊急事態宣言の延長が行われた5月4日(月・祝)の約6時間(365分)、最短だったのが“147連勤”の初日である1月26日(日)の30分だった。執務時間が1時間以下だった日は全体の27.7%(47日中13日)、2時間以下だったのが63.8%(47日中30日)。休日執務のおよそ3割が1時間以下で、6割超が2時間以下という結果になった。もちろん、ワークライフバランスの重要性が叫ばれている今日、休日も働いている現状が望ましいはずがない。また、私邸での電話対応など、首相動静に反映されていない執務もあるかもしれない。だが、日本の“残念な働き方”からみるに、安倍首相の“勤務状況”はことさら特殊なものではないのかもしれない……。ツイッター上ではこんな意見もあった。《日本のサラリーマンの働き方を見ていると、休みとされる日に自宅にいても、結局パソコンやスマホでメールしたり電話で仕事してるし、自営業してる人は店が休みでも仕入れやなんやかやで仕事してるから、たいていの人が147日休まずに働いたことあると思うで》「いずれにせよ、成果ではなく、努力しかアピールできなくなった点で、政権末期の感がある」と言うのは、全国紙政治部記者だ。安倍首相が「わずか1カ月半で流行をほぼ収束させられた。日本モデルの力を示した」と胸を張ったのは5月下旬。だが、感染が再び拡大し、その勢いは止まる気配がない。4~6月期のGDPも戦後最大の落ち込みを記録した。「一時はあれだけ開いていた記者会見を開かなくなったし、憲法を根拠にした野党からの臨時国会の召集要求にも応じていない。支持率が急落しているなか、コロナ対策の失敗や政権が抱える数々の不祥事について、国会や記者会見の場で追及されたくないというのが本音だろう。『激務のために首相は休む必要がある』とアピールすることで、国会や記者会見から逃げ回っているという批判をかわしたいという思惑があるのだろう」(全国紙政治部記者)過去に国会の場で「政治は結果なんですよ」と主張していた安倍首相。その言葉が“ブーメラン”のように、自らにかえってこようとしている。ツイッター上ではこんな指摘も。《連続日数とか何時間働いたとか、ってのが総理大臣としての仕事の価値なの? やるべきことを、しっかりしてくれたら、1日おきに休んでいただいても結構ですわ。 政治は結果》【安倍首相の休日の執務の状況】※各メディアが報道している首相動静をもとに作成。時刻は執務していたとみられる時刻で、()内はその時間。明らかに政治活動やプライベートな活動とみられるものは執務から外したが、ネット番組への出演など、判断が難しいものについては執務として扱った。1月26日(日)17時35分~18時5分(30分)2月1日(土)10時57分~12時31分(94分)2月2日(日)8時51分~11時20分(149分)2月8日(土)15時51分~16時47分(56分)2月9日(日)15時53分~16時31分(38分)2月11日(火・祝)13時55分~15時21分(86分)2月15日(土)13時50分~15時5分(75分)2月16日(日)14時53分~17時24分(151分)2月22日(土)15時53分~16時43分(50分)2月23日(日)12時38分~16時18分(220分)2月24日(月・祝)15時54分~17時18分(84分)2月29日(土)15時30分~18時57分(207分)3月1日(日)15時52分~17時51分(119分)3月7日(土)8時57分~18時4分(547分)※福島出張2日目3月8日(日)15時53分~17時36分(103分)3月14日(土)15時17分~18時59分(222分)3月15日(日)15時55分~18時57分(182分)3月20日(金・祝)9時34分~10時45分/14時24分~18時29分(316分)3月21日(土)15時14分~18時40分(206分)3月22日(日)9時15分~14時40分(325分)3月28日(土)15時2分~19時54分(292分)3月29日(日)15時23分~16時49分(86分)4月4日(土)14時54分~17時40分(166分)4月5日(日)15時55分~17時33分(98分)4月11日(土)14時53分~16時40分(107分)4月12日(日)15時51分~17時33分(102分)4月18日(土)15時49分~16時44分(55分)4月19日(日)15時54分~16時44分(50分)4月25日(土)15時56分~17時3分(67分)4月26日(日)15時53分~16時29分(36分)4月29日(水・祝)7時3分~19時41分(758分)※衆議院本会議・予算委員会あり5月2日(土)15時50分~17時38分(108分)5月3日(日)15時55分~18時11分(136分)5月4日(月・祝)14時14分~20時19分(365分)5月5日(火・祝)14時58分~17時7分(129分)5月6日(水・祝)17時42分~21時15分(213分)5月9日(土)15時52分~17時47分(115分)5月10日(日)15時49分~17時21分(92分)5月16日(土)15時52分~16時36分(44分)5月17日(日)15時49分~17時15分(86分)5月23日(土)15時53分~16時41分(48分)5月24日(日)15時11分~18時5分(174分)5月30日(土)16時22分~17時27分(65分)5月31日(日)16時24分~17時11分(47分)6月6日(土)16時20分~17時10分(50分)6月7日(日)16時27分~17時21分(54分)6月13日(土)16時24分~17時6分(42分)6月14日(日)16時11分~19時7分(176分)6月20日(土)17時55分~19時5分(70分)6月21日(日)終日私邸で過ごす※連続執務途絶える
2020年08月19日「17年前の’03年に『年収300万円時代を生き抜く経済学』を出版したとき“荒唐無稽”“不安を煽っている”と、たたかれました。しかし、いまや年収200万〜300万円の世帯がもっとも多くなっている。すでに年収300万円時代になっているのです」そう語るのは経済アナリストの森永卓郎さん(63)。厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、’03年に年間の所得が300万円未満の世帯は全世帯の28.8%だったが、’18年には32.6%までに増加。3世帯に1世帯が年収200万円台か、それ以下なのだ。所得200万円以下の世帯は17.5%から19%に増加している。森永さんは今年7月に『年収200万円でもたのしく暮らせます』(PHP研究所)を緊急出版した。わずか17年で書籍の表題が年収100万円も下がっていることがネット上などで話題になったが、“コロナ恐慌”によって予想をはるかに上回る不景気が日本に襲いかかるからだという。「もともと昨秋の消費税増税によって、消費は冷え込んでいました。そこに、新型コロナウイルスが追い打ちをかけたのです」経済政策は期待できない。あまりに絶望的な状況に思えるが、必ずしも悲観することはないと、森永さんは言う。「金銭感覚を一新して、新たな生活習慣を身につけましょう。年収200万円でも、十分生活できるし、お金の不安からも解放されて幸せに暮らせるんです」森永さんに年収200万円時代の新習慣を聞いた。【1】食材から献立を逆算「食材は安い店に、安い時間を狙って、安売りの曜日に行くこと。私は半額シールを狙って、夜の7時45分に買い物に行きます。また、献立を考えて食材を買うのではなく、安い食材から献立を考えるのが節約のコツ」(森永さん・以下同)安くて満腹感を得やすい炭水化物の取りすぎには要注意。「糖尿病になっては元も子もない。私自身、糖尿病で1カ月1万2,000円もの医療費がかかりました。いまは糖質オフの生活に切り替え、安くて栄養価の高い卵、豆腐、セール品の野菜や肉を中心に献立を組み、月1万円くらいの食費で健康的な体を取り戻しました」【2】子どもの成人で保険を見直しいざというときのために年間38万円の保険料を支払っていたという森永さん。しかし、子どもが独立した現在は保険をスリム化。「死亡保障は、子どもが成人すれば必要性が薄れる。私自身も4,000万円の死亡保険に入っていたが、やめました。今は300万円の終身保険が残っているだけ。葬式代くらい出れば十分だと考えています」【3】クーポン活用を恐れない高齢者が挫折しがちなスマホ操作だが、ある程度使いこなせれば、大きな得になるという。「たとえば3のつく日にローソンで、au PAYで支払うと7%オフに。ほかにも期間限定のクーポンなどをチェックすること。クーポン利用が楽しめるようになれば、あっという間に、買い物の支出を1割、2割抑えられます」【4】投資より優待で株を買う「’95年の時点で、世界のGDPのうち、およそ18%を日本経済が占めていました。しかし、現在は6%で、今後も下落していきます。中長期的に見ると、日本株が大きく上がる見込みは低いでしょう」投資目的ではなく、“株主優待”から考えるといい。「私の場合、食べ物系、買い物系、旅行系など分類しています。たとえば食べ物系だと、『すかいらーく』の株を持っています。100株買えば、年間6,000円の食券がもらえる。買い物系だと、『イオン』。持ち株数に応じて、買い物金額から一定の割合で返金されます。乗り物系だと、『ANA』は株数に応じて、片道半額になる株主優待券を発行してくれます」株主優待で、生活に潤いがもたらされるのだ。【5】いっそトカイナカに移住「東京など大都市圏を捨てること。とにかく家賃が高いためです。昨年ですが、新宿区の四谷にある3畳1間の新築アパートの家賃が7万8,000円もしていました。地方なら一軒家が借りられます」コロナ禍によって、リモートワークの環境が整備されていけば、場所にこだわる必要もなくなる。「都心部から、50キロほど離れた、都会と田舎の真ん中にあるトカイナカがおすすめ。東京でたとえるなら、圏央道沿い。神奈川県の海老名、埼玉県の入間、千葉県の木更津などです。私もトカイナカ暮らしですが、家賃が安いばかりではなく、街道沿いには激安の量販店も多く、地元スーパーも東京に比べ安い。私の場合、60坪の畑を借りているので、自分の作った野菜を食べられる楽しみもあります」【6】趣味を見つける「少し前、ドラマに出る機会があったんですが、そこでエキストラのおじいちゃんから話を聞きました。交通費は支給されるけど、ギャラはゼロとのこと。なんでゼロなのに出るのかと聞くと『近くに芸能人がいて、ドラマに一緒に出られるなんて、こんな楽しいことはない』というんです」森永さんは、その表情が忘れられないという。コロナ禍で広がる収入への不安。でも、ちょっとの工夫と意識改革で、年収200万円でも、十分、幸せに生活できるのだ。「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載
2020年08月13日連日、全国各地で過去最多の感染者を記録するなか強行された政府肝いりの「GoToトラベルキャンペーン」。中止や適切なタイミングでの開始を求める声が高まるなか、27日に菅義偉官房長官は「現状では東京都以外の地域を除外することは考えていない」と述べるなど、強気な姿勢を崩していない。しかし、こうした政府の“怠慢”が日本を崩壊に導くかもしれないのだ。現在、新規感染者の多くを占めているのがアクティブな20~30代。また無症状患者や感染経路がわかっていない事例も多い。こうした現状から前出のユウ先生は、「無症状の感染者から高齢者などに伝播し、第1波以上に重症者や死者が増える可能性はあります」と、懸念を示す。さらに、GoToトラベル強行によって、経済を再生させるどころか後退させる可能性が浮上している。第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣さんは「逆効果」だと指摘する。「今回の開始は最悪のタイミングだったと言えるでしょう。いま感染が広がっている中で、そもそも前倒しすることがおかしい。東京が対象外になる物理的な影響以上に、“旅行に行きたい”という気持ちが低下して、旅行需要が押し下げられる可能性があるからです。感染が落ち着いてから9月以降に東京も除外せず行えば、観光需要創出効果は1兆円程度拡大する可能性があるという試算でした。しかし、東京を除外し、時期も前倒ししたことで、4割減の6千億円程度になるかもしれません」また最悪の場合、観光業界以外にも波及する恐れが。「緊急事態宣言下の第1波での経済損失は、GDPで12兆円程度のマイナスでした。このまま感染が広がり、仮に前回と同じ規模で経済活動を止めることになった場合、損失額は同程度の12兆円になってもおかしくないと思います」連日、各地で過去最多の感染者を更新しており、このまま拡大が続けば、第1波を超える損失が出る恐れもあるだろう。また、感染症が専門の、のぞみクリニックの筋野恵介院長は、GoToトラベルによる医療崩壊の危険性を指摘する。「緊急事態宣言下では、政府がホテルを借り上げていましたが、いまは何軒かを残してほかは通常どおりの宿泊施設へ戻っています。隔離するホテルが足りなければ、軽症者は自宅待機を求められます。しかし、自宅に高齢者や基礎疾患のある人がいる場合は、待機するわけにいかず、病院に入院せざるをえません。すると、軽症者でベッドが埋まってしまい、いざ重症者が来たときに受け入れられない状況になるでしょう。感染拡大が続けば、医療崩壊する可能性は高いのです」しかし、適度な経済活動をしなければ、さまざまな産業がふたたび苦境に立たされてしまう。永濱さんはいま、すべきことをこう提言する。「ドイツは期限付きで消費税を下げ、イギリスも宿泊・飲食・娯楽関連の付加価値税を下げました。今回のGoToでは結果的に6千億円程度の経済効果ですが、日本でも半年間の期限付きで全品目に軽減税率を導入した場合、今回のGoToの予算に7千億円を上乗せした2.4兆円程度で実質、GDPを1.3兆円ほど押し上げる効果が期待できます。いまは、人を動かさなくてもできることをすべきです」政府には政局ではなく、国民の生活に真摯に向き合う姿勢が求められている――。「女性自身」2020年8月11日号 掲載
2020年07月31日感染拡大が止まらない中、早くも政府は“コロナ支出”の回収にむけ動き出している。ただでさえこの経済状況下で先の見えない国民に、増税までのしかかることにーー。「新型コロナウイルス感染拡大はいまだにおさまっていませんが、このコロナ禍が収束するころには、『税金を増やすことで対策費の支出分をカバーする』という議論が、にわかに進む可能性が高いと考えています」こう話すのは、国の財政事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。すでに7月1日、自民党の石原伸晃元幹事長らは、安倍晋三首相に“税収増”の要望をするため、首相官邸を訪れている。石原氏の意図は、“新型コロナウイルス対策への多額の財政支出が将来世代の負担にならないよう”ということらしいが……。「私の考えでは、増税はもはや自民党内での既定路線。この面会はあくまで“パフォーマンス”でしょう。安倍政権や与党の幹部が増税の話題を切り出せば、世論の大反発を招く恐れがあります。この面会は、『元党幹事長からの要望があった』という体で、マスコミや世論の反応をうかがうためのものだったとみています」(加谷さん)政府は先の国会において、第1次、2次補正予算として合計約58兆円の財政支出を決定。財源には国債が充当された。しかし、なぜその支出が、税金でカバーされなければいけないのか。加谷さんが続ける。「Go To トラベル キャンペーンにおいても当初、赤羽一嘉国交相はキャンセル料の補償を『考えていない』と発言していました。つまり、政府はこれ以上、コロナ対策として出せるお金がないと考えているはずです。経済が成長しさえすれば、GDP(国内総生産)が上がることで政府債務の比率は下がるのですが、コロナ禍により経済はたいへん落ち込んでいる。政府は現状、増税しか手段がないとみているのでしょう」“コロナ増税”を裏付ける、もう一つの理由を語るのは政治部記者。「政府の新型コロナ対策専門会議である『基本的対処方針等諮問委員会』に招集された有識者3人は、財務省の考え方に近い“増税派”で固められました。そして財務省の人事では、強烈な増税論者の矢野康二さんが『主計局長』の要職に就いた。増税への“足固め”は着実に進められているんです」「女性自身」2020年8月11日 掲載
2020年07月30日「新型コロナウイルス感染拡大はいまだにおさまっていませんが、このコロナ禍が収束するころには、『税金を増やすことで対策費の支出分をカバーする』という議論が、にわかに進む可能性が高いと考えています」こう話すのは、国の財政事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。すでに7月1日、自民党の石原伸晃元幹事長らは、安倍晋三首相に“税収増”の要望をするため、首相官邸を訪れている。石原氏の意図は、“新型コロナウイルス対策への多額の財政支出が将来世代の負担にならないよう”ということらしいが……。「私の考えでは、増税はもはや自民党内での既定路線。この面会はあくまで“パフォーマンス”でしょう。安倍政権や与党の幹部が増税の話題を切り出せば、世論の大反発を招く恐れがあります。この面会は、『元党幹事長からの要望があった』という体で、マスコミや世論の反応をうかがうためのものだったとみています」(加谷さん)政府は先の国会において、第1次、2次補正予算として合計約58兆円の財政支出を決定。財源には国債が充当された。しかし、なぜその支出が、税金でカバーされなければいけないのか。加谷さんが続ける。「Go To トラベルキャンペーンにおいても当初、赤羽一嘉国交相はキャンセル料の補償を『考えていない』と発言していました。つまり、政府はこれ以上、コロナ対策として出せるお金がないと考えているはずです。経済が成長しさえすれば、GDP(国内総生産)が上がることで政府債務の比率は下がるのですが、コロナ禍により経済はたいへん落ち込んでいる。政府は現状、増税しか手段がないとみているのでしょう」国民が、いつ収束するかわからない“コロナ第2波”に再び恐怖している最中に、国は着々と“アフターコロナ増税”の計画を進めているという事態……。では、この増税はどのような規模で、いつから実施されるのか。加谷さんにシミュレーションしてもらった。「財務省が参考にするのは『復興特別税』でしょう。政府は東日本大震災の復興にかかる財源の確保のために、特別措置法(特措法)として同税を導入しました。主な内容は、’13年から’37年までの25年間に、所得税額の2.1%を徴収するものです。これと同じようなプランをもとに、『コロナ特別税』というかたちで、長期間に徴税できるシステムを想定していると思われます」震災復興予算は総額32兆円となっていて、このうちの10.5兆円分を「復興特別税」でカバーしている。その内訳は、ほとんどが所得税額の2.1%として徴収しているもの。これをモデルとして「コロナ特別税」について加谷さんはシミュレーションする。「復興特別税は、支出の天井画が見えないうちに始めたものでした。当初は“とりあえず10兆円集めることを目標に”という意図で、所得額の2.1%ぶんと定めたと思われます。コロナ特別税に関しては、現時点でコロナ関連予算として決定されている58兆円を天井だと仮定し、現状の経済状況も踏まえて『半分は国債(=借金)として経済成長で補填し、半分は徴税する』という条件で試算を行います。この29兆円は、復興特別税の約3倍。しかし徴税期間も3倍にするのは長すぎますので『30年』に設定すると、1年あたり『9,600億円』徴税する必要があるという計算になります。現在の所得税の税収は年間約20兆円ですから、ここから9,600億円を捻出するとなると『4.8%』の上乗せが必要となるんです」つまり、現行の復興特別税の、2倍以上の負担が単純に増すことになるのだ。「会社員の夫の年収600万円、妻は専業主婦、子ども2人」という世帯をモデルに、加谷さんに具体的な負担額も試算してもらった。「給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などを差し引いた『課税所得金額』は約268万円。所得税額は約17万円です。現状ここから復興特別税(2.1%=3,570円)を納めていることになりますが、そこにコロナ特別税(4.8%=8,160円)が加算されます。つまりコロナ特別税が施行されれば、’37年までは合計『1万1,730円』を特別税として年額で負担することになるんです」気になるのはそのコロナ税の法制化と施行のタイミングだが……。「安倍首相の党総裁の任期満了は来年9月、衆議院議員の任期満了は10月です。政府や与党は、その前に施行するのが勢力維持には無難である、と考えるでしょう。そのためには秋の臨時国会で議論、そして早ければ年内に可決して、’21年4月から施行という可能性もあります」もしも施行が来年度からといっても、「いまから備えておくべきだ」と加谷さんは説く。「大企業では、’21年3月の決算と来年度予算を見越して、この秋、9〜10月にはコロナリストラを本格的に始めるでしょう。失業率や企業の倒産数も発表数より、実際はもっと増えていくはずです。すると、秋口から景気はさらに冷え込み、来年度の給与や賞与はとても厳しい予測も覚悟しなければなりません。各家庭では、マイカーなどの大きな出費を考えている場合、いまの時期は控えるほうが無難かもしれませんね」新型コロナウイルスがもたらす“恐怖の時代”は、まだまだ終わらなさそうだ。「女性自身」2020年8月11日 掲載
2020年07月30日世界各国で新たな社会保障として注目されているベーシックインカム。国が国民全体に基本的な所得を保障するこの制度は、2020年に起こったコロナウイルスの感染拡大によって、さらに注目を浴びています。しかし、ベーシックインカムは問題点も多く、話題には上がるものの導入に踏み切る自治体はなかなか出てきません。この記事ではベーシックインカムの制度と問題点を解説します。ベーシックインカムとは?制度の概要ベーシックインカムとは、国が国民全体に生活保障のためのお金を給付する社会保障政策です。生活保護をはじめとした既存の社会保障政策は、受給するのに一定の条件があります。一方、ベーシックインカムは無条件で支給するという特徴があります。ベーシックインカムは社会主義的な考えとは違い、資本主義社会の下支えとなる政策です。最低限の生活を保障して、それ以外の収入や経済活動は国民が自由に行うことができます。ベーシックインカムが注目されている理由は現在、各国で起こっている社会課題に対して有効な解決策となるポテンシャルがあるからです。ベーシックインカムを導入するメリットベーシックインカムは低賃金や働けない人への保障となるとともに、人々の働き方や会社の在り方を変えるインパクトのある政策です。ここからはベーシックインカムを導入すると、どのようなメリットがあるかをご紹介します。職業選択や生き方を自由に選べるベーシックインカムの導入は「収入がなくなるかも」という不安をなくします。「収入のために我慢して労働する」という労働目的がなくなることで、職業選択の自由度が増えます。特に、起業やアーティストへの挑戦など、決められた賃金がない職業へいつからでも挑戦がしやすい環境になるでしょう。生活が保障されれば働き方も変わります。特に子育て中の世帯にとって、働く時間に融通が効くのは大きなメリットです。また、ベーシックインカムは子供も1人の国民としてお金が支給されるため、少子高齢化対策になる可能性も秘めています。労働環境の改善近年、問題になっているブラック企業。労働環境が悪い会社とわかっていながらも、失業状態が怖くて働かざるを得ない人も多くいます。ベーシックインカムが導入されれば失業状態の不安がなくなるため、ブラック企業で働く人は少なくなるでしょう。結果的に労働環境がよい会社が残ることになり、労働環境は改善されていくはずです。社会保障の一本化現在は生活保護、雇用保険、国民年金など社会保障がさまざまな形に分かれていますが、ベーシックインカムが導入されると、これらの社会保障が一本化されてシンプルになります。現在の制度では、国民は適用される社会保障それぞれに申請しなければなりません。制度を知らなければ、適用される社会保障でも受け取れないのです。しかし、ベーシックインカムは無条件で全員に給付されるため、このような受給漏れはなくなります。行政にとっては、社会保障が一本化することでさまざまな申請の手続きに関した労力を減らすことができます。人員配置も少なくて済むため、社会保障に関わるコストを圧縮することもできます。ベーシックインカムの導入事例ベーシックインカムを継続的に導入している国はありません。しかし、いくつかの国・自治体では実験的に期間限定で導入しています。ここではベーシックインカム実施国の導入事例をご紹介します。フィンランドでの導入事例フィンランドでは2017年から2018年までの2年間に渡ってベーシックインカムの導入実験を行っています。2020年に研究チームから発表された最終報告書によると、ベーシックインカム受給者のほうが生活に対する満足度は高く、精神的なストレスを抱えている割合が少なかったと言います。ベーシックインカムによって自律性が高まったというインタビュー回答も多く、実際にベーシックインカムによってボランティア活動などに新たに参加したケースもありました。フィンランドの国民アンケートでは、ベーシックインカムの導入に46%が「賛成」もしくは「部分的に賛成」としています。カナダでの導入事例MINCOMEカナダでは異なる州で2度、ベーシックインカムの導入実験が行われています。1度目はマニトバ州ドーフィンで1974年〜1979年の5年間に渡って行われた「MINCOME」と呼ばれる実験です。2011年に発表された最終報告書によると「入院期間の減少」「高校課程への進級」に成果があったとされています。一方、「出生率の増加」には影響が出ていないとされました。MINCOMEは実施していた政権が力を失ったことで終了。2009年までデータの分析も行われませんでした。そのため、一部データは不明なままとなっています。オンタリオ州の導入事例2度目はオンタリオ州で2017年に行われています。当初は3年間の予定でしたが、実施の1年後に政権交代がなされたことで、ベーシックインカムは終了しました。政権交代後の州政府は失敗だったと発表していますが、研究チームからは成果があったと報告されています。研究チームによると、年収が一定額を超えるとベーシックインカムが支給されない制度にもかかわらず、4分の3が仕事を継続したとされています。また、仕事を辞めた人の約半数は学校に通い始めており、次のキャリアにつながる行動をしていたそうです。約8割が健康状態が改善し、不安やストレスが減ったとアンケートで回答していますし、食生活の改善や通院の頻度の減少など一定の効果が出た結果となったのです。ベーシックインカムの問題点とは?ベーシックインカムの導入事例からはポジティブな結果が出ているにもかかわらず、導入が広がらないのはなぜでしょうか。ベーシックインカムの導入は国の政策を根底から覆すインパクトがあり、課題も多くあります。ここではベーシックインカムの問題点と、導入事例から見る問題点の分析をご紹介します。[adsense_middle]労働意欲の低下ベーシックインカムの導入によって働かなくてもよい環境ができ上がると、労働意欲の低下が懸念されます。労働人口が減少すると、結果的に国自体の発展が阻害されてしまうのです。全体的な失業率が悪化しなかったとしても、業種によって労働力に差が出るかもしれません。例えば、製造業や建設業といった体力的にきつい業種の人気が下がり、労働力を確保できなくなるかもしれません。また、公務員や医療関係者などの労働力が減ると国全体の社会保障が成り立たなくなってしまいます。導入事例から見る問題点への影響フィンランドの導入事例では、報告チームより「雇用への影響は限定的だった」と発表されました。カナダでもMINCOMEでは「住民の労働時間に大きな差は出なかった」、オンタリオ州の導入では「4分の3が仕事を継続し、辞めた半数もキャリアアップのために行動した」と、労働意欲の低下を示す結果は出ていません。導入の年数が初めから限られていたことが結果に影響を与えていますが、労働意欲が低下するという仮説は実際には実証されていないのです。財源が確保できないベーシックインカムの導入には多額の財源が必要となります。例えば、月に10万円を日本国民約1.2億人に支給するとしましょう。年間で144兆円がベーシックインカムに必要となります。2020年度の日本の国家予算案の一般会計は102兆円。社会保障費は35兆円規模です。現在の国家予算案を超える金額をベーシックインカムだけに投入しなければなりません。そのためには抜本的な税制改革によって税収を上げる必要があります。導入事例から見る問題点への影響カナダの2度の導入実験は政権交代によって途中終了していますが、理由はどちらも財源不足や適切な支出ではないという判断からです。ベーシックインカムを導入するには国民の理解と税制改革が大きな壁として立ち塞がるでしょう。ベーシックインカムが日本で導入される可能性ベーシックインカム導入の議論は日本でもされており、希望の党では一時期、公約にも掲げられていました。コロナウイルスの感染拡大によって、日本全体で減収や解雇が問題になったことで議論の盛り上がりも見せています。しかし、実際には日本での実現の可能性は低そうです。これには下記の事情が関係します。導入した国は高福祉国である日本は増税して社会保障を充実させようという考えが浸透していないフィンランドやカナダは高福祉国と呼ばれる国で、「税金を高くして、社会保障を充実させる」という考えを持っています。例として日本・フィンランド・カナダの公的社会支出の対GDP比と消費税率を見てみましょう。カナダは日本よりも公的社会支出の対GDP比が少ないですが、カナダは高齢化率が低く(日本:28%、カナダ17%)、年金の支給額が低いことが理由です。カナダは基本的な医療費が無料など福祉制度は非常に充実しています。つまり、日本では税金を高くして社会保障を充実させようという考えがフィンランド・カナダより浸透してないため、国民の理解を得ることが難しいのです。特に、大きな反対が起こりそうな3つのポイントを紹介します。導入には税金の増税は避けられない前の章でも紹介したように、ベーシックインカムの導入には大きな財源が必要となります。現在の税制では厳しいため、増税や税制改革は避けられないでしょう。消費税の10%増税が反対によって何度も延期されたことからもわかるように、日本では増税へのハードルは非常に高いです。医療費などより大きい保障の扱いベーシックインカムが大きな社会保障となるため、ほかの社会保障は縮小されます。つまり、ベーシックインカムで賄えない費用は自己負担になるのです。例えば、多額の医療費がかかった場合、現在は上限なく保障されます(高額療養費制度)。ベーシックインカム導入によって高額療養費制度がなくなった場合、医療費が払えないことで治療を諦める人が出てくるかもしれません。ベーシックインカムでは賄えない負担への社会保障が薄くなるという課題を解決しなければならないのです。ベーシックインカムの成功例がないご紹介したフィンランドやカナダ以外にもアメリカやケニアなどでベーシックインカム導入の実験は行われています。しかし、明確に成功したという事例は今のところありません。ケニアでは12年間続けていますが、多くの事例では途中で中止や大きな制度変更をしています。実験のデータからは一定の成果が認められていますが、継続的な導入ができる制度設計まではできていません。まだ、成功例がない制度を導入するのはハードルが高いのです。ベーシックインカムのデメリットに関するまとめこの記事ではベーシックインカムの制度・導入事例・問題点を解説してきました。ベーシックインカムは国の制度を大きく変えるため、課題も数多くあります。しかし、貧富の差が激しくなっている現在では、画期的な解決策として検討すべき政策の1つです。これからのベーシックインカムに注目してみてはいかがでしょうか。
2020年07月06日「事業規模は230兆円を超えるものとなります。GDPの4割に上る、世界最大の対策によって、この100年に一度の危機から、日本経済を守り抜いてまいります」5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する第2次補正予算についてこう胸を張った安倍晋三首相。4月に編成された第1次補正予算などとあわせると、“世界最大規模”のコロナ対策費になると、喧伝しているがーー。経済学者で「暮らしと経済研究室」の山家悠紀夫代表は指摘する。「首相が強調している“事業規模”とは、そもそも“絵に描いた餅”です。この政策を実行すれば、民間の金融機関や企業が資金を出すだろう、という想定で積み上げられた日本独特の数字です」もっとも重視されるべき数字は国が財政支出する「真水」といわれる部分だという。「需要を喚起したり、国内マーケットに直接注入されたりして、経済を押し上げる効果がある予算です。海外で支援策を事業規模で示している国はありません。基本的に、経済対策は“真水”で示されます。安倍政権の経済政策は誇大宣伝に近い」(山家さん)第1次補正予算で計上された“真水”の部分は、一律10万円の給付金や、中小企業や自営業者に給付する最大200万円の「持続化給付金」などが該当する。さらに、第2次補正予算では、「持続化給付金」の対象拡大のほか、最大600万円を支給する「家賃支援給付金」なども追加。その結果、真水部分は合計“約58兆円”と、過去の災害時などと比べても、最大のものになった。とはいえ、GDPの1割ほどで、安倍首相が言うGDP4割にはほど遠い……。京都大学大学院の藤井教授は「その真水でさえ“張り子の虎”になる可能性がある」と指摘する。「たとえば第2次補正予算の“真水”は約32兆円と言っていますが、約12兆円分の『企業への資金繰り支援』は実質、融資であるため真水とは言えません。必ずしも返済が強要されない“劣後ローン”を使えば真水として機能しますが、適切に運用されるかは未知数です。約10兆円分計上された、使い道を決めていない“予備費”も、柔軟な判断にもとづいて支出されれば真水になりますが、財務省には『使い切るな』という声も根強い。現時点で真水になると確定している部分はわずか。予算執行が適切に行われているかどうか、しっかり見守り続けることが重要です」国民に届けられるはずの給付金が、“なか抜き”されているのではないかという疑念が噴出している。「持続化給付金の手続き業務では、一般社団法人を通じた不透明な再委託が行われていました。さらに宿泊や飲食業界を支援する『Go To キャンペーン』では総事業費1.7兆円の2割にあたる約3,000億円が、事務費として民間に委託される可能性があることがわかった。これらはあきらかな税金のムダ遣い。本来なら、これら事務費を抑えて、その分で、支援を手厚くするべきです」(前出・山家さん)“足りない”“遅い”だけでなく、“ムダ遣い”まであるとしたら、どうしようもない話だ。藤井さんは、複雑な制度よりも消費税減税などで、消費を喚起したほうが有効だと説いてきた。「しかし、安倍政権は消費税減税の議論さえしません。ある政府要人は、消費税を下げない理由として『上げるのに苦労したから』というナンセンス極まりないことを理由にしていました。国民のことを考えていないのです」大切なことは政府の支援策をチェックして声を上げること。「政府は当初、2次補正はやらないと言っていましたが、さらなる経済救済を求める国民の声に押されて実現しました。私たち国民には政府を動かす力があるのです」自分の命や暮らしを守りたければ、無関心でいてはいけないのだ。「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月16日“世界最大”と安倍首相が喧伝する新型コロナウイルスに対する日本の経済対策。はたして、その実態はどのようなものか、識者に採点してもらったら、驚くべき結果に……。「事業規模は230兆円を超えるものとなります。GDPの4割に上る、世界最大の対策によって、この100年に一度の危機から、日本経済を守り抜いてまいります」5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する第2次補正予算についてこう胸を張った安倍晋三首相。4月に編成された第1次補正予算などとあわせると、“世界最大規模”のコロナ対策費になると、喧伝しているがーー。経済学者で「暮らしと経済研究室」の山家悠紀夫代表は指摘する。「首相が強調している“事業規模”とは、そもそも“絵に描いた餅”です。この政策を実行すれば、民間の金融機関や企業が資金を出すだろう、という想定で積み上げられた日本独特の数字です」もっとも重視されるべき数字は国が財政支出する「真水」といわれる部分だという。「需要を喚起したり、国内マーケットに直接注入されたりして、経済を押し上げる効果がある予算です。海外で支援策を事業規模で示している国はありません。基本的に、経済対策は“真水”で示されます。安倍政権の経済政策は誇大宣伝に近い」(山家さん)第1次補正予算で計上された“真水”の部分は、一律10万円の給付金や、中小企業や自営業者に給付する最大200万円の「持続化給付金」などが該当する。さらに、第2次補正予算では、「持続化給付金」の対象拡大のほか、最大600万円を支給する「家賃支援給付金」なども追加。その結果、真水部分は合計“約58兆円”と、過去の災害時などと比べても、最大のものになった。とはいえ、GDPの1割ほどで、安倍首相が言うGDP4割にはほど遠い……。京都大学大学院の藤井教授は「その真水でさえ“張り子の虎”になる可能性がある」と指摘する。「たとえば第2次補正予算の“真水”は約32兆円と言っていますが、約12兆円分の『企業への資金繰り支援』は実質、融資であるため真水とは言えません。必ずしも返済が強要されない“劣後ローン”を使えば真水として機能しますが、適切に運用されるかは未知数です。約10兆円分計上された、使い道を決めていない“予備費”も、柔軟な判断にもとづいて支出されれば真水になりますが、財務省には『使い切るな』という声も根強い。現時点で真水になると確定している部分はわずか。予算執行が適切に行われているかどうか、しっかり見守り続けることが重要です」これらも踏まえ、安倍政権の「コロナ経済対策」について、第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣さんと同志社大学大学院・浜矩子教授に点数をつけてもらった。10個の政策が各10点満点で、合計100点満点になる。【1】国民全般の支援策内容:国民全員に一律10万円の給付、生活資金の無利子貸し付け(最大20万円)、一定所得以下ひとり親世帯への特別給付金(1世帯5万円、第2子以降1人につき3万円)、住民税などの猶予制度など。<永濱さんの点数・5点>国民への10万円の現金給付、ひとり親世帯への特別給付金はいかに早く困った人に生活資金が届くことが重要。それなりに金額を積んだが、どうしようにも支給が遅すぎる。<浜教授の点数・6点>辛うじて合格点。それなりに手早く人々の手元に届く(はず)。使途の制限をつけていないので、ほかの目的のためにも使える。【2】雇用者(サラリーマンなど)の生活支援内容:休業手当を出した企業に支給する雇用調整助成金の拡充(働き手1人あたりの上限は1日1万5,000円)、休業手当を支給されずに休業させられた中小企業の従業員への直接支援金(休業前の賃金の8割、月額上限33万円)など。<永濱さんの点数・3点>雇用調整助成金の拡充は評価できるが、複雑な手続き、給付事務のトラブルなどで遅れも。雇用維持だけでなく産業構造の変化にともなう雇用創出への支援、失業者の就業支援なども不可欠。<浜教授の点数・3点>雇用調整助成金などは複雑な手続きのために、申請を嫌がる会社が多い。申請手続きの簡素化などが不十分。本気で使ってもらいたいと考えているのか。【3】自営業者、フリーランス、企業への支援内容:収入が半分以下になった自営業者への持続化給付金(中小企業は上限200万円、個人事業者は上限100万円)、無利子・無担保融資や返済の優先順位が低い劣後ローンの支援、法人税などの猶予制度など。<永濱さんの点数・5点>一刻を争う事業主への支援「持続化給付金」も動きが鈍い。返済を必ずしも強要しない「劣後ローン」より効果的な「永久劣後ローン」まで踏み込んでいい。<浜教授の点数・3点>「雇用者の生活支援」に同じ。持続化給付金も給付の遅れが出ている。心底、お役に立ちたいと考えているのか。【4】教育支援内容:休校で休まざるをえない保護者に対して有休を取らせた企業への助成金、大学などの授業料の減免、住民税非課税世帯の学生への最大20万円給付、リモートワーク支援など。<永濱さんの点数・5点>学校等休業助成金などは一定の効果あるが、遠隔教育の環境整備、遅ればせながらもできた困窮学生の支援などとともに、教育支援は石橋をたたきすぎで、すべてにおいて遅さが目立つ。<浜教授の点数・5点>メニューをそろえた観はあるが、どこまで実効性があるか疑問。【5】地方自治体支援内容:地方公共団体に対する地方創生臨時交付金(合計約3兆円)の交付など。<永濱さんの点数・5点>各自治体が対応する協力金は、感染防止効果もあり評価できるが、事務作業の複雑さから支払いに遅れも。使い道を自治体が決められる「地方創生臨時交付金」も増額したが、各自治体によって状況が違うため独自の対応が不可欠。地方債を自由に発行しやすくするなど自治体の資金調達をサポートすることも必要。<浜教授の点数・2点>現状への対応が、どこまで有効なのか疑問。【6】店舗の休業支援内容:休業要請に従った店舗や企業に対する協力金(各都道府県が主体)、売り上げが大幅に減少した事業者に対する家賃の補助(法人は月100万円、個人事業者は月50万円が上限)など。<永濱さんの点数・5点>「地方自治体支援」に同じ。<浜教授の点数・2点>休業要請には補償が当然伴うべきだが、不十分なものになっている。【7】国民への医療支援内容:布マスク(アベノマスク)の配布、PCR検査の保険適用、妊婦のPCR検査への助成など。<永濱さんの点数・3点>布マスクなどが象徴だが、すべてがかゆいところに手が届いていない。精度の高いPCR検査、抗体検査を積極的に導入した隔離対策で経済活動は可能に。迅速な対応ができていない。<浜教授の点数・0点>アベノマスク減点分ですべて台無しに。まだ、マスクを配り続けている。【8】感染拡大防止と医療機関への支援内容:診療報酬の引き上げ、感染者を受け入れている医療機関への補助金、患者と接する医療従事者等への慰労金(最大20万円)、ワクチン開発支援、医療物資支援など。<永濱さんの点数・3点>新型コロナウイルスに対する恐怖心が解決されなければ経済は戻らない。ワクチン開発などの医療支援は最優先だが日本の医療関連の支援はGDP比でアメリカの半分程度。効果的な支援になっていない。<浜教授の点数・6点>当然やるべきことを一応列記したという意味で辛うじて合格。あとは、どの程度実行できるか、見守る必要がある。【9】農業、畜産業、漁業などへの支援内容:持続化給付金、経営維持のための経営継続補助金の支給、その他品目別の支援金や給付金など。<永濱さんの点数・5点>新型コロナウイルスで、世界に拡大したサプライチェーン(原材料や部品の調達や配送)が機能不全に陥ったことから、食の分野でも国産回帰が。政策自体はいいがスピード感は期待できない。<浜教授の点数・4点>今回の状況に対応した目新しさが、どこまであるのか疑問。【10】コロナ後の復興支援内容:GoToキャンペーン事業。「観光・運輸」「飲食」「イベント・エンタテインメント」「商店街振興」に対するクーポンやポイント等を消費者に給付。<永濱さんの点数・3点>需要を喚起するキャンペーン自体は一定の効果が期待できるが、今のタイミングではない。さまざまな業態でのアフターコロナの新しい生活様式の見直しに予算を出すほうが効果的。<浜教授の点数・1点>GoToキャンペーンとは何たるネーミング。真剣だとは思えない。まず、浜教授の評価。「最大の問題は政策姿勢です。本当に世のため人のためになろうと真摯に考えているとは思えません。自分たちがどう点数を稼ぎ、どう減点を防ぐしか考えていない」「国民への医療支援」では0点をつけた浜教授。100点満点で32点という厳しい評価となった。一方、永濱さんも手厳しい。「すべてにおいて遅すぎます。たとえば第1次補正で決まった給付金や助成金は、第2次補正が閣議決定されたあとでも、いまだに申請した半分程度しか給付されていない。雇用調整助成金も支給のタイミングが遅れて、結局、雇用を守れないという事態になったら意味がありません」「政策全体がスピードに欠けるため、5点以上をつけられない」という永濱さん。さらに政治の姿勢にも問題があるという。「日本の場合は財務省にあたる財務当局は、どの国でも、ムダ遣いをしないように予算を絞るもの。しかし、それを覆して多く予算を出させるのが政治家の仕事。各国が似たような状況の中、日本政府の危機感の欠如が目立ってしまっています」結果、総合42点と“合格点”とは言えない点数になった。「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月16日《羽田新ルート、本当にうるさい。家にいなくちゃいけない、換気しなくちゃいけないなのに、窓を開けるとうるさい。今飛行機減便しているところだろうに、なぜわざわざこのルートで飛ばすのか》《家で大人しく自粛してるけどなかなかにうるさくて、気が狂いそう。窓は開けられないし、どこにも行けない。まじでしんどいです。飛行機飛んでない時も耳鳴りがする》3月29日に運用が始まった羽田空港の新ルート。年間の約4割を占める南風時に、新宿、渋谷、品川、大井町などの東京都心や、川崎市臨海部などの上空を、旅客機が低空飛行することになった。新型コロナウイルスのために自宅に閉じこもっている新ルート下の住民は、ツイッター上で冒頭のような悲鳴をあげている。特に、羽田空港に近い川崎区殿町地区における騒音の最大値は94デシベル。これはカラオケ店の店内なみで、会話もほとんど成り立たないレベルだという。品川でも最大80デシベルを記録。パチンコの店内なみで、間近で大声を出さない限り、会話ができない騒音だ。多くの国民に負担を強いて始まった羽田新ルート。“国際便”の増便を目的に、1日3時間程度、毎時最大44回飛ばす予定だったが、じつは現在の飛行頻度はその半分程度に過ぎない。「3月29日から4月4日までの1週間で、前年同月と比べまして、国際旅客便は、羽田空港はマイナス81%、成田空港はマイナス88%でございます」4月6日の決算行政監視委員会で、無所属の松原仁衆議院議員の質問に対してこう答えたのは、国土交通省の和田浩一航空局長だ。じつは新型コロナウイルスによる外国人観光客の激減で、国際便の発着も昨年の2割程度まで減少しているのだ。これには、和田航空局長も「発着容量のみの観点からは、従来より使用されてきた飛行経路で受け入れ可能」と、新ルートが“不急不要”だと認めざるを得なかった。それでは、どんな理由で飛行機を低空飛行させているかというと……。「来年の(訪日観光客)4,000万人目標に向かって、海外と地方をつなぐ空の玄関口、羽田、成田空港の発着枠を8万回増やします」昨年1月28日、施政方針演説で安倍晋三首相(65)はこう宣言した。“東京五輪が行われる2020年に外国人観光客4,000万人を実現する”というのが、安倍首相が掲げてきた「観光立国」の大きな柱だった。しかし、新型コロナ危機で“4,000万人”の夢が実質的についえた今、目標のための“方針”のみが残された。まったく必要のなくなった新ルート。「新型コロナウイルスの影響が終息した後の、速やかな増便の実現でありますとか、首都圏における騒音共有の観点等も踏まえ、新しい飛行経路も運用を続けたい」と、和田航空局長は説明するが、終息するのがいつになるのか、誰にも見通しが立っていない。そもそも、「観光立国」のために、国民は多くの犠牲を払わされてきたと語るのは、全国紙政治部記者だ。「安倍政権が掲げてきたインフレ目標はとん挫し、上昇しているとされてきた賃金についても統計の不正が明らかになるなか、順調に数字を積み上げてきたのが訪日外国人数でした。安倍政権が始まった2012年には約836万人だった訪日外国人は、2019年には約3,188万人になりました。安倍政権の経済政策で、数少ない成功例なんです」しかし、このことが新型コロナウイルス下での安倍首相の判断を遅らせたのではないか、と指摘する声もある。訪日外国人の約3割は中国からだ。「まさに中国で新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がっていた1月24日、安倍首相は中華圏の旧正月である春節を祝うメッセージをホームページ上で発表。『春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしています』と、さらなる中国からの観光客を呼び込む内容でした。各国が中国からの入国制限に踏み切るなか、日本政府が入国制限を開始したのは2月1日になってから。それも、武漢市のある湖北省に限ったものです。遅きに失したと言わざるを得ません」(前出・政治部記者)「観光立国」の夢が首相の判断を鈍らせたのか……。そもそも、この観光立国にもカラクリがあると指摘するのは、経済誌記者だ。「世界経済の成長に伴い、各国の賃金も上がり続けてきました。特に、アジアの成長はすさまじく、中国はこの10年で最低賃金が倍以上になっている。一方、日本は世界経済の成長に取り残され、賃金はいっこうに上昇していません。つまり、相対的に日本は旅行しやすい“安い国”になったことで、外国人観光客が急増したのです。一方、日本人の国内旅行者はこの10年で、5%以上減少しています」かつて日本経済をけん引してきたのは強い内需だった。訪日外国人によるインバウンド消費は年々増え続けているとはいえ、日本の名目GDPに占める割合は2018年で0.8%程度。日本経済をけん引するほどの役割は果たしてはいない。「安倍政権下で行われた2度の消費増税などで国内消費が伸び悩むなか、観光業や小売業などの外国人観光客依存は高まり、今回の新型コロナ禍で廃業・倒産が相次いでいます」(前出・経済誌記者)「緊急事態宣言」の発令にともなう、さらなる自粛の徹底で、多くの国民が苦境に立たされているが、政府による補償は限定的なものに留まっている。貧乏になった国民の頭上を空っぽの飛行機が飛ぶ。これが「観光立国」のなれの果てだとしたら、国民は救われない。
2020年04月10日日本中で止まらぬ新型コロナウイルスの感染拡大。小池百合子東京都知事は3月25日に緊急会見を行い、“ロックダウン(都市封鎖)”を行う可能性も示唆するなど事態はますます深刻化するいっぽう。そして、首都封鎖は目前まで迫っているという。「3月の3連休から感染者が急増しており、東京では23日の週だけで200名以上もの患者が増えました。こうした事態を受け、東京都と官邸の間ではロックダウン実施が積極的に検討されているそうです。年度末の終わりを待って、4月上旬から5日~最大3週間にかけて行う可能性があるといわれています」(全国紙・社会部記者)【図解】世界各国のロックダウン事情安倍首相も景気の悪化を懸念しているというが、果たして日本では首都封鎖により、どのような影響があるのだろうか?各分野の専門家に聞いた――。まず関西大学特別任命教授の河田惠昭さんは、「東京では1日に食料品を2万トン消費しています。万が一何らかの支障が生じ、物流が止まってしまうと、店頭に商品が並ばなくなってしまいます。食料品を作るだけではなく、物流を支える仕組みやマンパワーを維持することに細心の注意を払う必要があると思います」経済評論家・加谷珪一氏は『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、北関東からの野菜の入荷がストップし、店頭から品物がなくなる可能性があるとも指摘している。3月25日夜に小池都知事が週末の外出を自粛するよう求めた直後、東京都内の一部のスーパーで即座に米が売り切れてしまったことは記憶に新しい。「3月28~29日の週末より前に、スーパーの棚から肉類もなくなってしまいましたよね。パニックによって加速度的に“品不足”が生じてしまう恐れはあります」そう語る日本マネジメント総合研究所理事長の戸村智憲さんと同じように、今回取材した専門家の多くが“パニックによる在庫不足”を懸念していた。それを未然に防ぐためには小池都知事が都民に対して丁寧な説明を心がける必要があるという。作家で、現在は大阪府・市特別顧問も務めている元東京都知事の猪瀬直樹氏は、「吉村洋文大阪府知事や鈴木直道北海道知事に比べて、小池都知事の対応は遅かったと言わざるをえませんでした。また、SNSなども駆使し、もっと“自分の言葉”で、現在の東京都が直面している危機について訴えるべきだと思います。そうすれば、なぜ外出を自粛すべきなのか、買い占めの必要がないのか、などを都民に理解してもらえると思います。お役所言葉や聞きなれないカタカナ文字では、人々の不安も増すばかりです」さらに関西大学名誉教授の宮本勝浩さんは“日本経済への打撃”について語る。「日本では法律上、フランスなどの諸外国のように警察官が取り締まったり、罰則を与えたりすることはできません。しかし外出自粛の要請や、イベント休止の指示が長期間にわたると、小売業・飲食業・観光業などは、かなりの悪影響を受けることになります。たとえば外出の機会が激減するわけですから、外食の機会も減り、飲食店の売り上げも落ち込みます。1週間ほどであれば耐えることができても、個人で経営する店や中規模の店舗であれば、倒産することもありえます」野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト・木内登英氏は3月26日に発表したレポートで、経済的打撃を試算している。《仮に首都東京のロックダウンが1か月実施される場合、東京都の消費が55.5%減少するとすれば、それは日本全体の個人消費を2.49兆円減少させる。(中略)1か月間のロックダウンであっても、それによって失われる需要は、東京五輪延期が2020年GDPに与える影響を上回る計算だ》「女性自身」2020年4月14日号 掲載
2020年03月31日終息の気配が見えない新型コロナ騒動は、私たちの健康どころか経済も蝕み、世界は同時株安に。これにより、株式投資で運用されている年金資金は大損失を被ったというーー。「新型コロナウイルス感染症が原因で世界同時株安が起きていますが、これで大きな影響を受けるのは日本の公的年金です。年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)は、国家予算の約1.6倍にもあたる160兆円超の年金積立金を運用していますが、コロナショックで25兆円もの損失が発生したとみられます。年金財政の危機が訪れているんです」こう警鐘を鳴らすのは、野村投信の元ファンドマネージャーで『202X 金融資産消滅』の著書もある近藤駿介さんだ。GPIFが運用している積立金は、現役世代が支払う年金保険料、国庫(税金)と並ぶ、年金資金の3本柱の一つ。“年金博士”で知られる社会保険労務士の北村庄吾さんが詳しく解説してくれた。「年金受給者へ支払う年金のほとんどは現役世代の保険料と税金でまかなわれてきました。現役世代が多く税収も右肩上がりだったバブル時代などは、支払いに必要な額を超えて資金が集まることもあり、そのときにためたお金が、いまの積立金のもとになっています」年金財源の一つである積立金はリスクの低い国内債券を中心に運用するのがセオリーだ。しかし、安倍政権は’14年10月、国内債券の割合を60%から35%に減らし、リスクの高い国内・外国株式の割合を24%から50%へと倍増させた。「積立金は年金の大切な財源です。ギャンブルのような運用方法でいいのでしょうか。諸外国を見渡しても、年金の運用はリスクの低い債券が中心で、ここまで株式で運用している国を、日本以外で私は知りません」(北村さん)ギャンブル運用のツケをGPIFはいままでに何回か支払っている。’15年度は中国の景気後退で約5兆3,000億円、’18年度には米中貿易戦争や欧州政治の混乱により、たった3カ月で約14兆8,000億円の含み損を出しているのだ。前出の近藤さんも積立金が株式中心で運用される現状を憂慮する。「GPIFが公表している昨年末時点の保有資産や投資先の情報などをもとに、株価の下落率から“コロナショック”による損失を試算したところ、その額は過去最大の、25兆円を超えていました。『株価はいずれ上がるから一喜一憂せず、長い目で見るべきだ』という楽観的な意見もあるかもしれません。しかし、積立金を長期的に運用できるほど、いまの年金財政にゆとりはないんです」近藤さんの言うとおり、少子高齢化が原因で現状は、高齢者1人をたった2.2人の現役世代で支えている。今後、保険料や税収で年金資金をまかなえなくなれば、積立金を取り崩すしかない。「景気が悪くなると、企業の業績や給与が下がるので、連動して税収や保険料も減ります。昨年10〜12月のGDPは前の7〜9月と比べてマイナス7.1%。すでに積立金の取り崩しが始まりそうな兆しはあったんです。そこに今回のコロナショックが追い打ちをかけた。早ければ’20年度中にも、積立金の本格的な取り崩しが行われるとみられています。株価が回復して損失を取り戻す前に、取り崩しが始まってもおかしくないんです」(近藤さん)一度、取り崩しが始まれば積立金は増えにくくなる。「毎年支払われる年金の総額は50〜55兆円で、積立金からは3〜6兆円が捻出されるだろうと考えられていますが、先行き不透明の状態で、大量の現金を調達するために株を売れば、株安を誘発します。そうすれば積立金で運用している株の評価額は下がり、ますます含み損が膨れあがる。株安で企業の業績が悪化して給与も下がり保険料収入や税収が減少すれば、より多くの積立金を取り崩す事態にもなります。負の連鎖が始まってしまうんです。本格的な取り崩しが始まれば、20〜30年後には積立金は枯渇してしまうでしょう」(近藤さん)「女性自身」2020年4月7日号 掲載
2020年03月26日ついに3,000日に達する長期政権となった安倍政権。われわれの生活はどう変わったのか。“アベノミクス”を打ち出した第2次政権下の変化を数字で追ったーー。「財務省が’20年度の『国民負担率』を公表しましたが、過去最高の44.6%となる見通し。これは昨年10月に消費税が10%に引き上げられたことが大きな要因です。国民負担率とは、税金と、年金や健康保険などの社会保険料が所得に占める割合のこと。負担率が上がれば、使えるお金が減ることになります。実は、’12年12月に第2次安倍政権が発足して以降、国民負担率は上がり続けています」そう語るのは「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さんだ。’12年には39.7%だった国民負担率は、’20年には44.6%に。なんと12%も増えたことになる。実際に、税金と社会保険料を引いた後の手取りである“可処分所得”を「生活マネー相談室」家計コンサルタントの八ツ井慶子さんに試算してもらうと……。「年々、可処分所得は減っています。いま年収500万円の人は、’12年に同じ年収をもらっていた人に比べて、自由に使えるお金が年3万3,000円も減っているのです」苦しいのは現役世代だけではない。厚生年金の平均支給額も’12年と比べて月5,500円も減っている、一方、食品の物価は11.4%上昇した。■年金(※「日本年金機構の主要統計」と「2015年基準消費者物価指数」より。厚生年金保険〈第1号〉受給者の平均年金月額〈国民年金額を含む〉)【厚生年金の平均月額】’12年:15万1,374円→’19年:14万5,895円(※2019年9月の数字)【消費者物価指数(食品)】’12年:93.6%→’19年:104.3%「安倍政権のもと、年金の支給額上昇を抑制する『マクロ経済スライド』が2度発動されました。今後も、物価や賃金が上昇しても、年金の支給額は抑えられることになります」安部首相が実績として誇ってきたのが株高だ。’12年には1万円以下に落ち込んでいた日経平均株価を2万円台まで上昇したのだが……。京都大学大学院教授の藤井聡さんはこう見ている。「日本の株式市場そのものが“粉飾決算”のようなものです。年金資金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、’14年に国内株式の投資比率を12%から25%に引き上げました。また、日本銀行も政策で国内の株を大量に買っている。上昇した株価はいわば官製相場なのです」両者が国内株式に出資した金額は合計66兆円超で、その割合は2019年3月末時点で東証一部の時価総額の11.2%、その後も買い入れを進めてきた。現在の世界同時株安によって、日経平均株価は1万7,000円ほどに落ち込んだが、日銀やGPIFがどの程度の含み損を抱えているのか、今後どこまで拡大するのか、まだ不透明な状況だ。そもそも、株価が上がっても、日本は一向に経済成長をしていなかったという。「ある一定期間に国民全員がどれだけの価値を生み出したかを示すGDPの実質成長率は、安倍政権下では’13年こそ2.0%でしたが、その後は1%台と0%の年が交互に並ぶような低成長。他国と成長率を比べてみると、’12年でも成長率の順位は136位でしたが、’19年には172位まで落ち込みました」(山家さん)日本を除く多くの国がGDPを増やすなか、日本は長らく横ばいの状態が続いている。最大の原因は「2度の増税による国内消費の落ち込み」(藤井さん)だという。経済協力開発機構(OECD)加盟国に限っても、各国が平均賃金を’12年から5%程度、韓国に至っては13%伸ばしたなか、日本の賃金はまったく増えなかった。安倍政権は訪日外国人によるインバウンド消費を増やしたことを実績としてきたが……。「訪日外国人が増えたのは安倍政権の成果でもなく、海外の国々が順調に成長しているなか、取り残された日本が、相対的に“モノが安い”国になっただけ。しかも、内需をないがしろにして外需に頼ってきたつけが、新型コロナウイルスによる訪日外国人の激減で現れようとしています」(藤井さん)「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載
2020年03月17日新型コロナウイルスの影響で、日本経済には激震が走っている。日経平均株価は2月24日からの5日間で2,243円(9.6%)も下落。下げ幅はリーマン・ショック直後の’08年10月以来の大きさだ。さらに、国際オリンピック委員会(以下、IOC)の重鎮、ディック・パウンド氏が「(3カ月あとも事態が終息していなければ)おそらく東京五輪の中止を検討するだろう」と、中止の可能性に言及するなど、東京五輪の中止が現実味を帯び始めている。新型コロナによる消費減少という大打撃に加え、東京五輪まで中止となれば、日本経済には甚大な損失が発生することに――。しかし、京都大学大学院の藤井聡教授は、コロナショック以前の“政府の失策”に大きな原因があると話す。「そもそも、安倍政権が昨年10月に消費税を8%から10%へ引き上げたことで、日本経済はすでに大きく冷え込んでいました。10~12月のGDP(国内総生産)は6.3%のマイナス。東日本大震災の冷え込みに匹敵するほどのひどい落ち込みでした。景気動向指数も激しく下落しており、かつ、その下落幅は過去の消費税率引き上げの時よりもさらにひどい。ところが、総理はこの状況を『ゆるやかな回復』と主張している。これは明らかな嘘です」2月21日には、愛知県の老舗旅館が経営破綻。中国人旅行客の激減が決定打となった模様で、ついに“コロナショック”による倒産第1号となった。さらに北海道のコロッケ製造業者、神戸市のクルーズ船運航会社など、新型コロナウイルス関連の倒産が相次いでいる。リーマン・ショックが起きた’08年、日本では1万5千件以上の企業が倒産。上場企業の倒産は戦後最多の33件となった。日経平均株価は一時、7千円を割り込んでバブル後最安値を記録。2カ月でほぼ半減した。’09年には失業率も過去最悪の5.6%となっている。消費増税直後という最悪なタイミングでの“コロナ恐慌”は、リーマン・ショックをも上回る“大倒産時代”を招きかねない――。「今後さらに、コロナ騒動で内需も外需も落ち込むでしょう。そのうえ五輪が中止になれば、観戦のために来日する外国人による経済効果といった“オリンピック景気”も期待できないのです。このままでは、令和2年の日本経済は奈落の底にたたき落とされることになります。安倍内閣がこのまま何の景気対策もしないのなら、間違いなく“令和恐慌”が日本を襲うでしょう」(藤井教授)経済産業省は28日、新型コロナウイルスの感染拡大で被害を受けている中小企業への金融支援を拡充すると発表した。しかし藤井教授は、さらに抜本的な対策を決断すべきだと主張する。「今すぐに、消費税率を5%に引き下げる。それが内需を回復させる、いちばん簡単な手段です。安倍内閣がすべきことは、嘘をつかずに正しく景気判断を行い、対策を行うことです。消費税を5%に戻すのも、決して難しいことではありません。たとえば軽減税率の制度を使えばすぐにでもできるはずです」迫り来る“新型コロナ恐慌”の悪夢。はたして感染拡大を食い止め、日本経済の窮地を救うことができるのだろうか――。「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月05日2月3日、中国国内で新型コロナウイルスに感染して死亡した人の数は、’03年に猛威を振るったSARSの死者数を上回った。人間を死に至らしめる新型コロナウイルスだが、すでに日本経済をもむしばみ始めている。「中国政府は1月25日、国内の旅行会社に対して、すべての団体旅行を中止するよう命じました。日本を含めた海外旅行も27日から中止になっています。中国からの観光客は年々増えていましたが、今後は当然、インバウンド消費(訪日観光客による日本国内での消費)も激減するでしょう」(経済ジャーナリスト)具体的にはどのぐらいの経済的損失となるのだろうか?第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣さんは次のように語る。「’03年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、WHOが3月に世界へ注意喚起を促し、4カ月後の7月に終息宣言を発しました。新型コロナウイルスが同じような経過をたどるとすれば、5月ごろに収束すると仮定できます。しかしSARSのころと比べて、日本のインバウンド消費は5倍ほどに増えており、それだけホテルやレジャー施設への影響も大きくなります。インバウンド消費に関して言えば損失は3,400億円以上になるでしょう。さらにGDP(国内総生産)では、損失額は5,270億円になります。日本人による旅行なども減るからです」奈良市内ではホテルのキャンセルが3,000件以上にのぼったというが、その予兆ということなのだろうか。永濱さんより、さらに大きな経済損失を予測しているシンクタンクもある。「野村総合研究所の試算によれば、SARSのときと同程度に観光客が減り、その期間が1年間続くと仮定すると、日本のGDPは実に2兆4,750億円も押し下げられてしまうそうです。それもインバウンド消費に関してだけの数字です。日本人の個人消費が悪化したり、企業の生産活動が停滞したりすれば、さらに大きな損失になるそうです」(前出・経済ジャーナリスト)中国に工場や店舗を持つ企業の一部は、一時休業を余儀なくされている。さらに、その影響はすでに日本国内にも及んでいるのだ。トヨタが生産している自動車の部品を作っている工場の関係者は言う。「トヨタさんの(中国国内での)生産が止まっていることもあり、うちが作った部品も納入できない状況が続いているんです……」日本経済の冷え込みのほかには、どういった事態が起こる可能性があるのだろうか?中国事情に詳しい拓殖大学教授の富坂聰さんに聞いた。「冷凍食品や生鮮野菜も中国からの輸入が増えています。特ににんにく、玉ねぎ、にんじん、キャベツなどは山東省の生産量が多いのです。もし山東省で感染者が激増すれば、それらが輸入できなくなる可能性もありますね。また日本の100円均一ショップでは、多くの中国産の製品が販売されていますが、それらが品薄になってしまうこともあるでしょう。2月上旬ごろに、感染がどのぐらいまで広がるのか見えてくるといわれています。多くの日本企業もそれまでは静観するようです」爆発的な感染は防ぐことができるのか、それとも……。経済評論家の森永卓郎さんはこう語る。「もし感染を封じ込めることに失敗した場合、最悪なら今年夏の東京五輪の開催ができなくなってしまうかもしれません。’08年のリーマン・ショックのように、一気に坂を転げ落ちて、不景気になってしまうことを憂慮しています」「女性自身」2020年2月18日号 掲載
2020年02月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「反緊縮」です。先に借金を減らすか雇用をまず生むか日本は揺れている。現在、世界で「反緊縮(財政)」を支持する声が広がっています。緊縮財政とは、増税や公共投資の削減により、国の支出を減らして財政を縮小することです。経済危機に陥ったギリシャは、EUから緊縮財政を促され、公共工事や公務員の数を減らしました。そうして赤字国債の発行を抑え、国の借金を減らそうとしたのです。しかし、緊縮財政にすると失業者が増え、国民の消費は冷え込み、経済がよいほうに転じません。それよりも、まず先に国はお金を投入して公共工事をガンガン増やす。そうすれば、労働力、資材、業者が必要になり、新たな雇用が生まれます。長期工事になれば、ホテルや食堂の需要も喚起されます。緊縮財政よりも「反緊縮」財政策をと、いま、アメリカやフランスなどでも反緊縮ムードが高まっているのです。日本では、2013年のアベノミクス第1第2の矢で、大胆な金融緩和と大規模な公共投資を掲げていました。雇用をまず生んでから消費の活性化を狙う、いわば反緊縮策でした。ところが、日本の慢性的な財政赤字に、国際社会から「そんなに負債を抱えて大丈夫?」という指摘がなされました。IMF(国際通貨基金)によると、日本の債務残高は、GDP比で237.7%。ドイツの58.6%やアメリカの106.2%に比べてダントツの多さ。財政健全度ランキングでは最下位の188位でした。そこで、安倍政権は、2020年度までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字にすると約束。緊縮財政に転じ、「だから、安心して日本に投資してください」とアピールしました。しかし、目標達成は難しく、期日は延期されました。日本の借金は、国債を発行してまかなわれています。国債を購入しているのは日本銀行や民間の銀行。ほぼ日本人なので、国全体でみれば、借金を増やしても同等の資産が日本に貯まるため、財政破綻はしないと考えられています。しかし、国債を買う日本人は減少傾向。一方、高齢化により医療費や社会保障費は嵩み、国の借金は膨らむばかり。借金を返したいのなら、増税ではなく反緊縮に舵を切れと、れいわ新選組などが主張しているのです。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。※『anan』2020年1月15日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年01月09日国内では低金利が続いていて、大手都市銀行の定期預金は年率0.01%、100万円預金しても1年間で100円しか利息がつきません。ATMの手数料を1回支払っただけで1年分の利息が飛んでしまいます。しかし、海外では預金金利の高い通貨があります。そうした通貨にお金を預ければ、ある程度のリターンも期待できます。海外での預金といっても、現地に口座を開く必要はありません。国内の銀行で「外貨預金」をすればいいのです。この記事では、外貨預金の仕組みとメリット・デメリットについて解説します。外貨預金の意味と仕組み現在の日本経済は停滞し、預金金利も低い状態が続いています。円の価値が下がり、外貨の価値が上がれば、日本円だけ持っていると資産の価値は下がってしまうのです。そこで、外国への投資や外貨預金に関心が高まっています。日本円に加え、外貨を保有しておけば資産の価値は変わらない、もしくは増えることがあるからです。金融機関も、そうしたニーズに応えるために、さまざまな外貨建て金融商品を揃えています。その中でも手軽にチャレンジしやすいのが外貨預金。いつも利用している国内の銀行でも取り扱っていますし、「預金」という安心感があるからです。外貨預金(海外の預金)の基本的な仕組みは国内の貯金と同じ外貨預金とは、アメリカの「米ドル」やヨーロッパの「ユーロ」など外国の通貨で預金することです。預ける通貨が異なるだけで、基本的な仕組みはほぼ日本円の預金と一緒です。預金なので、株やFXのような専門知識はいりません。ただ、たくさんの国の通貨を管理したり、ブラジルや南アフリカなどの新興国の情報を入手したりするのは、多少手間がかかるので外貨預金に慣れてからにしましょう。外貨普通預金と外貨定期預金外貨預金には、「外貨普通預金」と「外貨定期預金」があります。外貨普通預金は、預金の出し入れが自由にでき、「満期」という考え方はありません。また、金利が変動する「変動金利」が適用されます。出し入れが自由で利便性が高い代わりに、金利水準が外貨定期預金よりも低めに設定されています。一方、外貨定期預金は満期日が決まっているので、出し入れが自由にできません。ただし、利便性がよくない代わりに、外貨普通預金よりも高い金利が設定され、預入時の金利水準が満期まで適用されます。預入期間や最低預かり金額は金融機関によって異なります。外貨預金のメリットそれでは、外貨預金のメリットについて確認していきましょう。為替差益が狙える外貨預金なら自分の資産を分散できます。もし、大幅な円安(円の価値が下がる)が起こると、円建ての資産しか持っていない人は資産価値が大きく下がってしまいます。しかし、外貨預金をしていれば、為替差益を得ることができます。食料や衣類など私達の生活に欠かせない品物の多くは海外から輸入されています。円の価値が下がると、こうした品物の調達コストが上がるので、国内の物価は上昇します。米ドルやユーロなどの外貨を持っていれば、円安による為替差益を得られるので物価上昇の影響を和らげることができますが、日本円しか持っていなければ大きなダメージを受けてしまうのです。外貨預金のデメリット外貨預金は利息だけでなく為替差益にも税金がかかる円預金は利息にだけ税金が引かれますが、外貨預金は為替差益が生じた場合にも税金がかかります。利息にかかる税金は20.315%(所得税15%+地方税5%+復興特別所得税0.315%)ですが、分離課税なので源泉徴収されます。一方、為替差益にかかる税金は、「雑所得」で総合課税の対象となるので、原則として確定申告が必要です。ただし、年収が2000万円以下の会社員で、為替差益も含めた給与以外の所得が20万円以下であれば申告しなくてもいいことになっています。外貨預金は預金保険制度(ペイオフ)の対象ではない外貨預金はペイオフの対象ではありません。ペイオフとは、銀行などが破綻した場合に預金者を保護する仕組みのこと。1金融機関ごと、1預金者あたり元本1000万円までとその利息は保護されます。普通預金や定期預金など大抵の預金がペイオフの対象ですが、外貨預金は対象外です。つまり、外貨預金をしている銀行が破綻してしまった場合、預金が戻ってこない可能性もあるのです。こうしたリスクを避けるために、複数の金融機関で外貨預金を行っていると安心です。為替レートで外貨預金の価値が変わる外貨預金にも、国内の円預金と同じように「普通預金」と「外貨預金」がありますが、あくまでも預金なので「元本(預けたお金)」は保証されています。ただし、保証されるのは「外貨建ての元本」である点に注意が必要です。円から外貨に交換したり、外貨から円に交換したりするときには為替手数料がかかります。また、為替レート(外国為替相場)次第では、円ベースでの「元本割れ」が生じることもあるのです。それでも、外貨預金を選ぶ人が増えているのは、「円金利よりも高い金利が魅力」、「為替レート次第で利益が得られる」といったメリットや目的があるからです。為替レートとは(米ドルで説明)為替レートで外貨預金の価値は変化するので、為替の仕組みについても確認しておきましょう。為替レートは需要と供給の法則に従って、その通貨を買いたい人が多ければ価値が高くなり、その反対なら低くなります。為替の動きに影響を与える要因としては、主に経済の状況や金利の変動、為替介入などがあります。それぞれ見ていきましょう。景気まずは景気です。景気がよくなると株価や土地の値段が上がり、ビジネスチャンスも増えます。現在は米国の景気がいいので、外国からお金がどんどん集まって、米ドルが強くなっています。反対に景気の悪い国からは、どんどんお金が逃げていってしまうので通貨が安くなります。ですから、景気の判断材料となるGDPや株価などの状況によって、為替レートは上下するのです。金利次に金利について見ていきましょう。一般に金利の低いところから高いところへとお金が流れる傾向にあります。金利の低い通貨で預金するよりも、金利の高い通貨で預金した方が、よりたくさんの利息を受け取ることができるからです。金利の高い通貨は人気が高くなります。ただし、新興国通貨などは国の情勢や物価が安定していないので、通貨安になることがあるので注意が必要です。米ドルなど、その国の情勢や物価が安定していることが前提です。為替介入為替介入とは、政府が経済の保護のために売買を行うこと。日本のような貿易国の場合、急激な為替変動は特定企業だけでなく、経済全体への影響を与えかねません。そこで、政府が大量の円を売買することで為替の動きを安定させることがあります。これを「為替介入」というのです。政府による為替介入には、実際に売買を行うほかにも、「これ以上為替レートが変動すれば介入を行う可能性がある」といったコメントをする「口先介入」もあります。外貨預金のリスク[adsense_middle]手数料外貨預金をする時は、金利の高さばかりに目がいってしまいがちですが、高い手数料を支払うと利息が台無しになってしまいます。外貨預金には為替手数料がかかります。日本円から外貨への交換する際と、外貨から日本円に交換する際にかかります。為替手数料は金融機関によって異なります。従来型の銀行よりネット銀行の方が手数料は安い傾向にあります。大手銀行の為替手数料は片道1ドル=1円ですが、ネット銀行大手のソニーでは15銭としているなど、大きな違いがあるのです。為替差損為替レートによって利益が生じたり、損失を被ったりすることを「為替リスク」といいます。外貨預金は、外貨建ての元本と利息は保証されているものの、円高に進むと円ベースで元本割れになる恐れがあります。また、通貨によっても値動きが異なります。米ドルやユーロなど先進国通貨よりも、ブラジルレアルや南アフリカランドなどの新興国通貨の方が為替レートの変動は大きくなります。一般に、金利水準は新興国通貨が高いものの、為替リスクも高くなるということに注意が必要です。為替リスクを軽減させるには、分散投資が有効です。分散投資とは、値動きの異なる複数の通貨を組み合わせる方法です(通貨の分散)。先進国と新興国など、異なる値動きの通貨で外貨預金をしていれば、ひとつの通貨で損が出ても、他の通貨で利益が出たりして、損失を軽減させる効果があるのです。初心者は積立投資がおすすめ為替レートは短期的に大きな動きを見せても、長期的に見れば戻ることがあります。ただ、一度にまとまった資金で購入すると、大きな損失を抱えてしまいます。短期的にまとまったお金を動かすのではなく、時期を分けて運用することで、為替リスクを軽減できます。ただ、時期を分けて投資する時も、初心者の人が為替レートを見ながら自分でタイミングを考えて外貨預金するのは難しいでしょう。ですから、時期を分けて運用するには「積立投資」がおすすめです。積立投資とは毎月一定額を購入しながら、外貨預金を積み立てていくことを指します。また、円預金のように外貨預金にも「自動積立サービス」があります。すでに銀行に持っている円預金の口座から、毎月一定額を引き落として米ドルやユーロなどに交換していくのが、「自動積立型外貨預金」になります。自動積立サービスを利用していれば、円安の時でも円高の時でも継続的に外貨預金を購入できます。そのため、購入する外貨レートを平均化できるというメリットがあるのです。ただし、為替レートを平均化するといっても、元本が保証されているわけではありません。通貨の分散も行い、リスクを軽減させるようにしましょう。外貨預金は長期的な運用を心がけ、余裕資金で始める外貨預金は常に為替変動リスクが伴います。為替レートの変動によって損失が出る恐れもありますし、外貨や円に交換する時に手数料がかかります。元本が減る可能性があるので、外貨預金は必ず余裕資金で行うようにしましょう。外貨預金は最低購入金額が設定されているのが通常です。まずはその金額を確認して無理のない金額から始めましょう。短期的な為替レートの変動に惑わされないよう、運用は長期で考えるようにします。また、自動積立投資を利用し、無理なく運用を続けるようにしましょう。外貨預金に関するまとめ今回は外貨預金の仕組みとメリット・デメリットについて解説しました。円預金よりも高い利回りが期待できる外貨用金ですが、為替レートの変動や手数料などによって元本がマイナスになるリスクもあります。通貨を分散させることや、積立投資を利用して購入タイミングをずらすなどして、リスクを軽減させながら、長期で運用するようにしましょう。
2019年12月14日第12回目となる日本最大級のコーヒーイベント「TOKYO COFFEE FESTIVAL 2019 autumn」が、10月19日と20日の2日間、青山・国連大学中庭にて開催。約60店舗が出店する他、ゲストシティーとして、「ポートランド」のコーヒーを取り巻くカルチャーをピックアップする。会期中、日本だけでなく世界のコーヒーを体験することができる本イベント。約60店舗のロースターやコーヒーショップ、コーヒーのおとも、アイテムなどが集まる。世界各地の都市に焦点を当て、その土地のコーヒーカルチャーや歴史、注目のロースターを紹介する企画「ゲスト シティー(GUEST CITY)」では、アメリカ・ポートランドをピックアップする。人口約60万人と決して大都市ではないこの街は、2008年以降、GDP(国内総生産)成長率が全米1位を記録。自然に溢れ、「ネイバーフッド」や「DIY」、「クラフトマンシップ」などその土地の持つ自然や、地域に根ざすカルチャーを支持し守りつつ、リベラルな思考を持ち併せるクリエイティブシティとして知られている。今回は、日本初出店となる「Prince Coffee」、「Proud Mary」を始めとしたコーヒーロースターやカフェと、クラフトチョコレートメーカー「Cloudforest Chocolate」、レストラン「Tusk」などが来日し、出店する。毎回好評の「飲み比べ」には、今回も会場に集まる約30ロースターが参加。普段なかなか感じることのできない、国や生産者、ロースターや淹れ手の違いによるコーヒーの味わいをオリジナルマグカップで飲み比べて楽しむことができる。公式ウェブサイトでは事前にそれぞれの店舗で飲めるコーヒーがチェックできるので、狙いを定めて会場に足を運んでみるのもおすすめ。なお、オリジナルミニマグカップのデザインは、ポートランドで活躍するアーティスト、シエラ・ローファーが今回のためだけに描き下ろしたもの。この他、2019年春に始動したアジアのコーヒーシーンをフィーチャーする「CUP OF ASIA」も今回スペシャルブースとして会場に登場。前回、生産者から直接話を聞いて行われたオークションで生豆を落札した店舗を含む、4つの店舗が杯数限定でコーヒーを提供する。また「RELATED GUEST CITY」として山梨県からユニークな店舗が会場に集まり、ポートランドを思わせる地元のつながりや土地柄を生かした場としての店舗の在り方を会場で体感することができる。限定オリジナルバッグなど、オリジナルグッズの販売も。事前予約や、その他の詳細は公式ウェブサイト()にて。【イベント情報】TOKYO COFFEE FESTIVAL 2019 autumn会期:10月19日、20日会場:青山国連大学前 中庭(Farmer’s Market @UNUと同時開催)時間:11:00〜17:00入場無料
2019年09月30日「安倍政権において、消費税をこれ以上引き上げることはまったく考えていません」「今後10年ぐらいの間は、上げる必要はないと私は思っている」参議院選挙の公示日前日の7月3日に行われた日本記者クラブ主催の討論会。安倍晋三首相はこう語り、10月から消費税を10%に引き上げることに理解を求めた。「この状況下で“消費税を増税する”というのは“日本経済を破壊します”と言い放っているのに等しいのです。『10年間上げない』という言葉も、はたして額面どおりに受け取っていいかどうか……」そう憤るのは、京都大学大学院教授の藤井聡さんだ。6年にわたり、安倍内閣で内閣官房参与を務めたが、増税などに反対する「言論活動に注力するため」、昨年12月に参与の職を辞している。「すでに安倍政権になってから1世帯当たりの年間の平均所得は実質値で40万円も減少しました。10月の消費増税は、さらなる所得の落ち込みを招くでしょう」消費税は所得が低い人ほど、負担が大きくなる。ファイナンシャル・プランナーの有田美津子さんが解説する。「2%の増税による消費税の負担額は、年収252万円の世帯だと約3万9,000円、年収1,183万円の世帯だと約8万2,000円増えることになります。負担額だけ見れば高所得世帯のほうが大きいんですが、収入に占める負担額の割合は、低所得世帯になるほど、高くなります。年収が252万円の世帯では負担の増加率は1.54%、一方、1,183万円の世帯では0.69%です。つまり、低所得のほうが2倍以上も負担額の割合は増えている。消費増税は、所得が低い世帯ほど家計への影響が大きいんです」だが、これはあくまでも2%の増税が家計に与える直接的な影響にすぎない。所得は増えていないのに、税負担が増えれば、当然、消費を抑えて支出を減らさざるをえないことになる。藤井さんはその影響をこう指摘する。「消費は経済成長のエンジンです。消費が冷え込めば、物価が下落し企業業績も悪化する。その結果、労働者の給与が減ってしまう。’97年に消費税が3%から5%に増税されてから、1世帯当たりの平均所得は多いときで年間20万円減り、’13年にはピーク時より135万円も減少しました」10%への増税は、5%への増税時以上の影響を日本経済に与えるという。「10%という税率だと、買い物する際に、簡単に税額を計算できます。常に、税が意識されることで、消費行動に大きなブレーキをかけてしまうのです。とりわけ女性の場合、5%から8%への3%分の増税より、10%への2%分の増税のほうが、“購買意欲”を減退させる力が4.4倍も高いという研究結果もあります」(藤井さん・以下同)さらに、最悪のタイミングの増税となる。「『働き方改革』のために、残業代が減り、所得は確実に減っています。ここ数年、日本経済を活気づけていた“オリンピック特需”も終わってしまう」世界経済が好調だったおかげで、輸出企業が収益を上げて、日本のGDPは押し上げられていたが……。「米中の貿易戦争に、原油高。世界経済の見通しは立たない状況にあります。これまで日本経済を支えていた外需が、落ち込みつつあるのです。この経済状況下での増税は自殺行為だといっていい。現在、年間の平均所得は550万円ほどですが、10%の心理的効果も相まって、短期的には50万円、長期的には最悪のケースで200万円ほども、所得が減少すると考えています」
2019年07月16日親友から受けた最低の裏切り
義兄嫁は鬼嫁様
うちのダメ夫