2015年5月26日 21:00
イボ神様にガイラボーシ? 和歌山の怪談が怖いけど面白い!
ひがし・なおこ1963年、広島県生まれ。歌人、作家。1996年、『草かんむりの訪問者』で歌壇賞受賞。
2006年、『長崎くんの指』で小説家デビュー。評論集『短歌の不思議』など著書多数。
歌人、作家として、やわらかな口語と独自の世界観で読者をとりこにしてきた東直子さん。今回は和歌山県が舞台の新刊『晴れ女の耳』について語っていただきました。
「人柱や神隠し、カッパ伝説など、民間伝承は日本各地にありますが、高野山や熊野古道を有する和歌山にも残っています。山深い神秘的な空気が日本の聖地みたいなイメージもありますし、カッパにしても“ガイラボーシ”と呼ぶとか、地域独特の感じが面白い。和歌山は亡くなった祖父母が住んでいたので、子どもの頃はよく訪れていました。私にとっては原風景みたいな場所なんです」
『晴れ女の耳』は、そんな和歌山に縁故のある東直子さんが、紀州の自然の中で命をつなぐ女たちを軸に描いた怪異譚集。
「私にとって“怖い”って何だろうと考えていたときにふと浮かんだのが、あの和歌山の奥深い森や、近しい家族もよく知らない、遠い親戚も入り交じる濃い人間関係だったんです。それを現代と切り結びながら書こうと思ったのがきっかけでした」