2015年6月2日 22:00
紫式部もジェンダーで悩んでいた? 古川日出男の「源氏物語」
ふるかわ・ひでお作家。1966年生まれ。‘98年『13』でデビュー。
‘02年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞、‘06年『LOVE』で三島由紀夫賞受賞。著書に『聖家族』等。
『源氏物語』の終盤、光源氏が死んだ後を描く宇治十帖は、かねてより紫式部ではない人間の著作では、と噂されてきた。その真相について、『女たち三百人の裏切りの書』で“古川版源氏物語”を生み出した古川日出男さんに話を聞いた。
「僕は宇治十帖は紫式部本人が書いたと思う。前半の宮廷の恋愛模様は技術がある人間だったら書ける内容だけど、この後半の部分には紫式部本人でないと書けないと感じる。ジェンダーや文化や宗教の問題で、きつい思いをして生きているという彼女の気持ちが滲み出ているから。式部の語る部分では、『源氏物語』を読んだことのない人にも細部の構図まで伝わるよう配慮しました。
彼女が“あなたたちよ”と語りかけ断定口調で話を進めていく部分は自分で書いていても楽しかったですね」
舞台はほかにもいくつかある。奥州の武士たち、瀬戸内海の海賊たち、山陰道の沖合の島にいる蝦夷たち…。
「『源氏物語』には東北に赴任した人たちがなまっているとか九州の豪族は粗暴だという記述がある。