2017年8月11日 21:15
「I understand. 」~私は理解する。~|12星座連載小説#138~射手座 最終話~
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。
文・脇田尚揮
【12星座 女たちの人生】第137話 ~射手座-11話~
―――1ヶ月後……
白い岩壁の出窓から見える、一面スカイブルーの海々。
カモメの鳴く声と寄せては返すさざ波の音が入り混じって、耳に優しい。
私はシチリアの爽やかな風を浴びながら、ワインを飲んでいる。そして、その横ではクリスが何やら本を読んでいる。
今回の仕事場はイタリアのシチリア島。クリスのお爺様が彼に遺した別荘を拠点に、コーラルやデマントイドなどの買い付けに行くのが、ミッション。
……っていうのは、表向きで、今回の目的は“クリスとのイタリア旅行”なの。
「Hey, beautiful. Come over here. (こっちにおいでよ)」
クリスが本をパタンと閉じ、メガネを外してこちらを見ている。