くらし情報『元anan編集者が”ホームレス”を選択! 海外留学の後に住所を持つのを辞めたワケ。 #71』

元anan編集者が”ホームレス”を選択! 海外留学の後に住所を持つのを辞めたワケ。 #71

2018年4月7日 19:00
 

私筆者土居彩は14年間勤めたマガジンハウスを辞めて、まずは幸福心理学を学ぶためにアメリカへやってきました。英語も心理学もわからない私に奇跡が重なりバークレー大の研究室で学ばせていただいたり、街のさまざまな人に助けられ3年が経ちました。その大好きなバークレーを離れて、住所を持たない生活を始めることにしたんです。そのきっかけは大きくふたつあるのですが…...。
写真/文・土居彩

土居彩の会社を辞めて、こうなった。】vol. 71
みなさんこんにちは!
突然ですが、カリフォルニア大学バークレー校・心理学部で学ぶために長らく住んでいたカリフォルニア州のバークレー市を離れ、しばらく住所を持たない生活をします。

ところで現在バークレーで住んでいる家は8人でシェアしています。ということもあってカルマを作らないために(笑)、次に私の部屋に住む人を責任持って決めてから出て行くことにしました。まずバークレー大の学生が利用するFacebookグループFree & For Saleで募集し(見よ、この私のテンションの高い投稿を! アメリカヴァージョンです笑)、

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すべてのやりとりを窓口となって行い(私の部屋は相場から考えると激安だったので、毎日何十通とFacebookメッセージが)オープンハウスをして一人ひとり面接し、契約まで立ち会って……。そしてついに次の入居者が決まりました! いい人が決まって、今はホッとしています。ハウスマネージャーもいまだかつてここまで徹底的にやってから退居する人がいなかったようで、「ものすごい、助かったよ!!」と笑顔で感謝され、最後に握手。どことなくクールでシャイな彼の笑顔を見たのは8か月間ここに住んでこれが初めてだったので、「やってよかったな」と心から思いましたね。自分の行き先はまだ決まらないけど、とりあえずは立つ鳥跡を濁さず!

“ホームレス” を選んだワケ。

さて大好きなバークレーを出て、住所を持たない生活をしてみようと決めたきっかけは、大きくふたつあります。ひとつめは、ヴィパッサナー瞑想合宿でボランティアをしたこと。12日間朝の5時半から夜10時まで80人分のご飯を作ってセッティングしたり、先生に食事を届けたり、合図の鐘を鳴らしたり、ダイニングホールやキッチンを掃除したり、生徒のみなさんのお問い合わせに答えたりしていました。男性と女性がわかれて奉仕するというルールがあるのですが、女性のキッチンサーバーは私ひとり。かなりの肉体労働だったので、肉体的にも精神的にも追い込まれました。ゴミ出しの合間に見る美しい風景にどれだけ救われたことか。


©Tony Antonio Natera

とはいえ実は2日目の朝まではもうひとり女性サーバーがいたんです。彼女はメインディッシュを作るけれど、生徒さんが助けを求めてベルを鳴らしても一切応えない。皿洗い、ダイニングホールやキッチンの掃除といった後片付けはせずに、自室に帰ってしまう……という人で。キッチンマネージャーには愛想を振りまきますが、他の人たちを強い命令口調で、アゴで使うところもあって。5人の男性サーバーのうち3人に至っては「耐えられない」「気分がすぐれない」とキッチンに出てこなくなってしまったんです……。いまだかつてここまでの強烈キャラ、会ったことないよ!

存在を含めて全否定される。

そこで思い切って彼女に直接話してみました。心を込めて話せば、理解し合えるはず。「私ひとりでは力不足でできないから、できれば、後片付けを手伝ってくれないかな」と。すると大激怒されたのです。「私は奉仕の経験があなたよりもあるのよ! 今後バカなことを言ったり、質問したりするのもやめてちょうだい。私はキッチンでは聖なる沈黙を実践しているの。あなたの存在はその妨げになるのよ」と。ガーン、言った言葉だけじゃなくて存在を含めての全否定だよ。

これからの10日間どうやっていこうかと思い悩んだ末、先生にインタビューの時間をもらいました。彼女の貴重な時間にわざわざ愚痴を聞いてもらいたいわけじゃないし、ありのままを正しく見るというヴィパッサナー瞑想を実践する人の前で自分を正当化するほどアホらしいこともありません。そこでゆっくり座って呼吸を整えてから、「どうやったら思いやりを持って働けるのか、そしてそれをどうヴィパッサナー瞑想に落とし込んで捉えたらいいのでしょうか?」とシンプルに質問します。

自分の内面を整えると、世界が変わる。

すると先生が言います。「山積みの仕事に追われて心がせわしなく落ち着かなかったり、人の心ない言葉や理不尽な態度に怒りや憤りを感じたりしたら、まずあなたの感覚を感じてみて。それは熱さ、冷たさ、硬さ、重さ、それとも麻痺した感じ? 今のあなたは実際にどう感じているの? 手と足は神経系が多く走っているから、感覚を捉えやすいと思うわ。そうやって感覚を研ぎ澄まし、加工したり抑圧せずに今そのままの感覚を受け入れていくとしだいに思考が洗われてきます。あなたの内側がクレンジングされていくと、おのずと外側の環境も癒されていきますよ」。


大興奮して、「キッチンにいてもヴィパッサナー瞑想の実践なんですね! さっそくやってみます」というと先生がにっこりと微笑みます。「それからこれも大切。夜の慈悲の瞑想では、まずあなた自身に優しい気持ちを贈ってあげてね」と言われました。休憩時間を終えてキッチンに入り、「あの人またサボっている」と意地悪な感情が沸いたらそれを否定せずに受け止め、野菜を切る手の感覚に集中。「で、私なんで人生の瀬戸際にここでひたすら掃除しているんだろう?」と疑問を抱いたらそれを受け止めつつ、ほうきで床のごみを集めることだけに向き合ってみる。ティク・ナット・ハン師と過ごしたマインドフルネス瞑想合宿での実践を思い出します。そんなふうに過ごしているとマネージャーから彼女が合宿所を出て行ったことを知らされます。その後はより少ない人数になったことで、本当にみんなで助け合いました。

助けられ続ける喜びと、その辛さ。

実は女生徒さんのなかに塩を含んだものが一切食べられないという人がいて、彼女のためにスペシャル食も作っていたんです。いつものように彼女に食事を届けると、「ただでさえ忙しいあなたに余計な負担をかけてしまって、罪悪感を感じるわ」と言われてしまいました。「とんでもない! お役に立てるのは私の喜びなんですよ」と答えるけれど、彼女の心の痛みが伝わってきます。ただただ世話になることを受け入れるというのはとても有り難いいっぽうで、辛くもあるのです。会社を辞めてからそれを体験し続けてきたので、今はすごくよくわかります。

実は彼女から食事の後の掃除を手伝いたいと何度か言われていたんです。でも生徒さんは瞑想に集中する必要があるので、お断りしていました。でもこの状況では何が正解なのかがわからない。そこでこのセンターに長らく住むという先生に相談してみることにしました。すると「彼女が心から手伝いたいというのなら、そうさせてあげなさい。昔センターは今ほど大きくなくて、普通の家のガレージだったんだよ。当時は奉仕する人間もすごく少なかったから、それこそこちらから頼んで生徒さんに手伝ってもらっていたんだ。だからそれが本当に彼女がしたいことなら、手伝ってもらいなさい」と。彼女がテーブルを拭きだすと、今度は無言で料理を一緒に片付けだす女性も現れて……。本当にいろんな人に助けてもらいました。女性側の先生をアシストする瞑想マネージャーのジェイも頻繁にキッチンに立ってくれました。

歪んだモノの見方、誤解に気づく。

今まで自分は人を頼るのが下手な人間だと思い込んでいたんです。頑張りすぎてしまうと。でもあるときテーブルを拭こうと清潔なクロスを取ったときに気がついたんです。「これをきちんと洗って乾燥機にかけて、畳んでここにおいてくれた人がいた。だから、私はこのクロスでテーブルを拭けるのだ」と。私の努力や頑張りは全て、必ず誰かの支えのもとで初めて成り立つことにようやく気がついたのです。ひとりぼっちで戦っている気分でいたとしても、何もひとりではできないのです。サポートを受けている自覚がなくても、生きるということは必ず誰かに助けられているということ。それを体験を通じて腹に落とした瞬間、言いようもない感謝の気持ちと、世界と自分に対する絶対的な信頼感が胸の奥から熱いエネルギーのような形で湧き上がってきて…。その力に圧倒され、もっと謙虚にならなければと思いました。そして自分が無意識に設定してきたコンフォートゾーン(自分が心地よいと思う領域)を超えたいと感じたのです。

エネルギーヒーリングの世界。

もうひとつのきっかけは、瞑想合宿から帰ってからのこと。バークレーの街を歩いているとどうしても気になる店があって入ってみたんです。『The Wisdom of Heart』という名前のお店で、ああいう経験を合宿でしたばかりだったので店名も気になって。中に入るとエンジェルカードやペルーの神木のパロサントを用いたお香、セージのスプレーなどが販売されています。するとオーナーらしき男性からまっすぐな目で「もしよかったら、これを受けに来なさい。初回は無料ですよ」と一枚のカードを渡されます。それはエネルギーヒーリングのセッションカード。


©The Wisdom of Heart

実はアンアンやハナコで編集者をしていた頃からエネルギーヒーリングやボディワークには興味があって、そういった特集を編集させてもらったり、さまざまな施術も受けてきました。けれどもアメリカに来てからはちょっと封印していたところがあって。ひとつは経済的な理由です。そして “スピリチュアル” とされるものの科学的な根拠をまずは学ばないと、広く深くは伝えられないはずだ、と意識的に遠ざけていたところもあります。そのうえヴィパッサナー瞑想を始めたことでプラクティスの方向性が異なる部分もあって中断せざるを得ないところもありました。


©The Wisdom of Heart

けれど、これも何かのご縁だとエミリオ(カードを渡してくれた男性。写真上)のセッションを受けてみたんです。彼はペルーのクランデロ(ラテンアメリカ土着の男性精神治療医、祈祷師)の末裔で、レイキ、エンジェルヒーリング、ビオマグネティスム、フラワーエッセンスなどさまざまなエネルギーワークも一緒に用いてヒーリングをしていきます。

セッションの後で、これはすごいとわかりましたね。頭の中のザワザワが止んで、からっぽになるんです。ヴィパッサナー瞑想合宿8日目の夜にいつも抱くあの感じです。もっとわかりやすく言えば、夢の記憶がない朝、目覚めたばかりのちょっとまどろんでいるときのような感覚でしょうか。


今の私は将来に対する不安でいっぱいなので、いつもどこかしら未来への漠然とした恐れとともにあります。ところがセッションの後はそれがスカッと飛ぶというか。抱えていた問題などがある意味どうでもよくなって、「なんとかなる」という世界と自分に対する絶対的な信頼感が増すんです。ちょっと危ないですか?(笑)。エミリオが言うには、自分は何も教えていないし、何も加えていない。ただ、私本来のエネルギーに戻るための手助けをしているだけだと。彼自身自分のことをヒーラーだとは捉えておらず、みんなそもそも自分自身を癒す力がある。自分は彼らのヒーリングの過程を助ける友達だよ、と。ではそれを踏まえると、そもそもの私は、根拠のない自信と好奇心が強い、ちょっとクレイジーな人間なのかもしれませんね、苦笑。「今後続けて行く場合はどれくらいの費用がかかるのですか」とたずねるとセッションは90分で$60〜100。その人の経済状態に合わせて一緒に決めていくのだそうです。非常に良心的な施術料です。それでも今の私には払えない。そこで「あなたのやっていることを考えるととても良心的な金額だと思います。すごいパワフルなのもわかる。今の私には難しいけれど、違った状況でいたら絶対に受けていたと思います」とお返事すると、エミリオは全部わかっている。


「実は新しいヒーリングの技術もみなさんに届けたいと思っていて、その体験をして率直なフィードバックをくれる人が必要なんだ。週に二度、何度か受けてもらって、正直な感想や体験を教えてくれたら、研究の治験者のような形であなたに無料セッションをしばらく受けてもらいたいと思うのだけれど」と私が受け取りやすい形で助けることを申し出てくれたのです。私の答えは当然、イエス。そしてエミリオに「セッションで心をオープンにして、前に進むために自分を信じられるようになりたい」とリクエストしました。

2度目のセッションの後でしょうか。「バークレーを出よう。旅に出よう」と強く思って、ハウスマネージャーに退去の意志を申し出ました。行き先も決まっていないのに、出るってどういうこと? 頭で考えてもわかりません。でもこれは瞑想中にも何度も思ったことと同じで、勇気が持てずに決められなかったこと。エミリオのセッション後には、その直感を信じてみようと強く思ったのです。

直感を信じると、扉が開きだす。

とはいえ「決めたはいいけど不安だな」と4度目のセッションを受けた後に「セッションルームを掃除させてもらえないか」と、恐縮するエミリオに頼み込みます。ギブアンドテイク信仰が染みついている私には、無償で与えてもらってばかりではエネルギーがうまく循環されない気がしたからです。すると掃除を終えて店を出た直後にエサレン研究所から連絡が。エサレン研究所とはスタンフォードの卒業生二人が始めたエッジィなスピリチュアルセンターで、雑誌ブルータスでCEOの方を取材させてもらったこともあるのですが、あいにくの天候不順で道路が閉鎖されており(太平洋を臨む崖の上にあるので)、当時訪ねることができず苦い思いをしました。振り返ればアンアン編集部に在籍していたころ、8年ほど前でしょうか。山川紘矢・亜希子ご夫妻に取材させていただいたときにも「あなたはエサレンに行ったほうがいいよ!」と言われたことがあったっけ。

エサレン研究所へ。

そこでバークレーを出ると決めてすぐ、働きながら1か月間住んで勉強するというプログラムがエサレンにあったので、志望動機エッセイなどのアプリケーションフォームを提出したのです。ところがエサレン側からの返事がこず、うなだれていました。それが無事に受け入れてもらえるとの連絡だったんです。そこでとりあえず1か月間は行き先が決定! あとは依然として真っ白ですが、笑。


エサレン研究所で学ぶのは、生活のバタバタや人間関係のアレコレのなかでも体感覚を鋭くして体の声を聞きながらプレゼンス(存在感)を高め、自分の内側の声を聞く方法。驚くことに、これはエミリオから言われていた私の課題ズバリ。つまり「思考だけで人生をコントロールしようとする傾向があるね。体には独自の叡智があって、いつも私たちに語りかけているんだ。それを私たちは無視しがちだけど。だから肉体感覚ともっと繋がってみると驚くことが起きるよ! 体の声に注意を傾け、聞いて、対話し、感謝を示してみて」とずっと助言されていたのです。

エミリオのエネルギーワーク中に、思考と感情のブロックが取り払われると、物質ではないもののはずなのに何か石のようなものが胸の真ん中から動いていく感覚がしたり、呼吸を用いて体のエネルギーを巡らせていくと、いつも冷たい手先足先がびっくりするほど熱くなっていくのを体感して、「すごい!」と感動していました。アメリカに来てから大学や研究機関の自然科学の世界では真理を追究するうえでの客観性の重要性を学び、計測、計算できるものだけを現実と認めると教わってきました。でも、それはあくまでも現実の一部。もしかしたら一番重要な部分ですらないのかもしれません。

点が線になり始める。

少しづつではありますがバラバラだった断片が繋がり始めました。バークレー大学では心理学の基礎と自分のなかに強いアカデミックコンプレックスがあったことを学びました。そしてUCSF Osher Center for Integrative Medicineという研究機関で体内感覚と感情の繋がりについての研究のお手伝いをしたきっかけで、ヴィパッサナー瞑想やマインドフルネス瞑想の世界により深く入りこんでいって。その結果、感覚を鋭くすると信念体系が変わって外側の現実も変わることを実体験。エミリオのエネルギーワークではその感覚をエネルギーレベルで捉えることを経験させてもらいました。次はそれをどう実生活に落とし込んでいくかをエサレン研究所で学んでいく……。

まだまだいろんなことが起こりそうで、ワクワクします。もっと言えばマガジンハウスに採用してもらってアンアン編集部で働いていなければ、今ここでこんなふうにみなさんとお話することもできなかったでしょう。全ては意味があって、ベストなタイミングに必要なことが起こるのだなと強く思います。それにはいいことも一見悪いこともあります。今後住所も持たないし行き先もはっきりしない。正直不安です。でも不思議といずれ全てが繋がって全体になるときがくるのだと信頼しています。

SEE YOU!


©Tony Antonio Natera

Information

エミリオさんの詳しいインタビューはOur Giftismでも!

『The Wisdom of Heart』

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