2018年5月5日 18:00
兄は精神障害者…通っていた精神科が出入り禁止に。さまよう母子の苦悩 #14
“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。
お世話になっていた近所の病院へ勝手に出入りする兄は、気づけば迷惑行為をするようになっていました。
文・心音(ここね)
【兄は障害者】vol. 14
「家からすぐそこ」が逆効果だった
田舎だった私の実家は、スーパーに行くのもコンビニに行くのも、徒歩30分はかかりました。近くにあるものといえば、自動販売機と雑貨洋品店くらい。ですから、車がないと生活ができません。そんな環境ではありましたが、母は車を運転できなかったので、遠出をするときや買い物をするときは、いつも父が出向いていました。
困ったのは兄の通院です。
平日、父は仕事で朝から晩までいないため車を出すことはできません。すなわち、病院はなるべく近い場所が好ましかったのです。幸運にも、近所の精神科は徒歩10分程度。自動販売機の次に近い場所にあったと言ってもいいくらいの距離でした。つまり、兄の通院は「すぐそこ」に行くだけ。これが、母にとってメリットだったのですが、兄にとってはデメリットでもありました。
ひとりで勝手に病院に行く兄
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