くらし情報『ディストピアを描く『徴産制』 男性に女性になる義務を課した結果…』

2018年5月1日 22:00

ディストピアを描く『徴産制』 男性に女性になる義務を課した結果…

多様化していく性や、恋愛、結婚、家族、介護など、彼らが抱える苦悩や葛藤は、現代日本や日本人の問題を映す鏡だ。その中には、「第三章タケルの場合」のように、見つめるのさえ苦しいテーマもある。下敷きになっているのは、レイプや慰安婦制度など性的虐待の問題。

「普段すごくフェミニスト的な視点を持っているような男性でも、こうした性暴力に対しては他人事で、驚かされます。なので、女性に課せられている社会規範や慣習、モラルなどを、男性に体験してもらって見つめる、逆視点の世界で描きました」

男が産む性を担うという、先行の作品とも違う設定。現実を反転させたことで、生殖や性意識をめぐっての社会の矛盾や不自由さ、残酷さなどが誇張され、深い思索へと誘う。

「第五章のイズミのように、セックスも含めて他者を必要としない人も出てくるでしょうね。結婚する必要がない社会だからこそ、残るのは“愛”だけで、そうした人との交わりをどう求めていくかは生き方そのものになっていく。
イマドキの婚活も裏テーマにあります。大きな社会制度の変化の中で、誰もが自分なりの幸福を見出せるように書きました」

たなか・ちょうこ2011年、短編「べしみ」

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