2018年5月28日 22:00
会社員がアイドルをプロデュース? 著者の体験から生まれた一冊
「グループというと4~5人いるので、そこから一人一人の個性を考えていきました。地下アイドルというと悪徳プロデューサーがいたりとネガティブな話も聞きますが、今回はポジティブな面を書きたかったんです。家にも学校にも居場所がなくても、地下アイドルを目指すことが救いになる子もいるだろうし、容姿に自信はないけどアイドル活動が好きでやりたい、という子にしっかりファンがついたりもしますし」
女装した男子高校生の応募者もいて、個性豊かな面々が登場。みな何に悩みつつアイドルを目指すが、「仙台にいると、芸能人になるルートなんてなかなかない。そんななかで10代のうちにアイドルになろうと決断するのは大変。かといって20代からアイドルを目指すのはちょっと遅いですよね。地方で自分のやりたいことをやる、という側面も書きたくて、舞台を仙台にしたというのもありますね」
意外な方向へ進んだ末の結末にも、納得するものがある。自分も自分の「好き」を追求したくなってくる、そんな一冊だ。
わたなべ・ゆう作家。1987年、仙台市生まれ。2015年「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著作に’17年に出た『自由なサメと人間たちの夢』がある。