2018年6月19日 07:00
「母は息子に対して彼氏を求め…」悲劇の予感に満ちた『血の轍』とは
ふたりの間で、言語化されないまま関係性ができあがっているところが不気味だし、その空気感が出せていたらいいなと」
静子の過剰な母性に、じわじわと搦めとられていく静一。そうとは知らず、クラスメイトの吹石さんは静一に好意を寄せる。
「静一にとっては、違う世界への扉ですが、正義のヒロインというだけの存在にせず、彼女が抱えているものの正体も探っていきたいです」
押見さんの圧倒的な画力に惹かれるファンも多い。母や静一のうつろな表情をどう読み取るかで、物語の印象が変わってくるのも面白さだ。
「画では光もテーマです。顔にかかる影や逆光のときの表情、夏空などから、光を感じてもらえれば。斜線の塗り残しだけで輪郭線を出すなど、小さな実験を繰り返しています」
トーンを使わずにすべて手描きにしているという本作は、押見作品の魅力を堪能できること間違いなし。
押見修造『血の轍』3「思春期には親に気を遣うあまり、ちゃんとした反抗ができなかった」と語る押見さん。
私小説的な要素も入っているとか。待望の第4集は、9月末ごろ発売予定。小学館552円。©押見修造/小学館ビッグコミックスペリオール
おしみ・しゅうぞうマンガ家。