2018年10月28日 18:30
バリキャリ女性と良き妻…27歳の本音が胸に刺さる小説とは
作家の伊藤朱里さんの小説『緑の花と赤い芝生』は、対照的な2人の27歳女性を描いた作品。立場の違う2人それぞれの本音が、胸に刺さる一冊です。
「“隣の芝生は青い”や“隣の花は赤い”という言葉は、芝生は青いほうがいい、花は赤いほうがいいという価値観で成立していますよね。でも緑の花や赤い芝生だってある。多数派は“そういう花や芝生があってもいいよね”と言いがちですが、そんなふうに他人に認められなくたって、すでに“ある”んですよね」
誰かの存在や価値観は他人がジャッジしていいものではない―そんな思いが表れたタイトルが、伊藤朱里さんの『緑の花と赤い芝生』だ。
「価値観が多様化する中で、まったく違う二人が同じ空間にいたらどうなるだろう、という着想でした」
飲料メーカーで研究開発にいそしむ志穂子と、結婚して良き妻として振る舞う杏梨。共に27歳、義理の姉妹となった二人が同居することに。
「彼女たちをそういう状態に追い込むものがなんなのかを考えずに“女同士はケンカする”という言説がありますが、私はそれに違和感があって。
“女ってこういうもの”という枠組みの中に閉じ込められたら何も解決しない。それに価値観が相容れない相手がいたとして、手を取り合って仲良くまではできないにしても、争わずに共生できるのが多様性のある世界だと思うんです」