2018年11月13日 19:00
完全な善人も悪人もいない…敗戦後のベルリンに女流作家が見た希望
そこには完全な善人も完全な悪人もいない。ただ、みな、生き抜こうとしているだけだ。幕間にはアウグステの来し方も語られ、当時の市民生活の細やかな描写も読みどころ。執筆前にベルリンを訪れたというが、
「博物館でドイツ人のおじいさんに“君はドイツの歴史に興味があるのかね?”と話しかけられ、当時は家の湿気をとるためだけに住む“湿気とり”という仕事があることを教えてもらったりしました(笑)」
ユダヤ人をはじめ様々なバックグラウンドを持つ人々の置かれた窮地に胸が痛む。そして後半には、恩人の死に関しても驚きの真実が浮上。そこで突き詰めてくるのは、やはり善悪、そして正義とは何か、である。
「人間は弱いなと思う。善良であろうとしている人が、どうしようもない状況の中で過ちを犯してしまうこともある。
その現実にひるみそうになっても、ひるまないでいくこと。それが私にとっては希望なんです」
ふかみどり・のわき小説家。1983年生まれ。2010年「オーブランの少女」がミステリーズ!新人賞で佳作入選。同タイトルの短編集でデビュー。ほかの著書に『戦場のコックたち』など。
『ベルリンは晴れているか』戦後のベルリン。