2019年1月24日 18:30
5歳児だって生きるのは辛い…大人にこそ響く、能町みね子の初・私小説
読めばみな、幼少期の記憶が喚起されるはず。それくらい、能町みね子さんの小説『私以外みんな不潔』の中には、生身の5歳児がいる。
「自分は幼稚園の頃の記憶が人より鮮明なようなので、その頃の感覚を今大人の言葉で書いたら面白くなるんじゃないかなと思いました」
子どもの内面を大人に響く小説として成立させている巧さに驚くが、
「会話文が多いと大人の語彙が使えず子どもっぽい文章になるので、地の文を多くしました。それと、親は子どもにとってあまりに絶対的なので、存在感を薄めています」
読み書きを早くにおぼえ、イラストを描くのが好きな誇り高き幼稚園児・なつき。転居により新しい幼稚園に通うが、それが苦痛だ。
「うちは家族が円満だったのですが、子どもだからそれが当たり前だと思っている。でも幼稚園に行くと誰もが自分を愛してくれるわけじゃなくて、それが嫌で仕方がなかった。家では絵を褒められたので、幼稚園では何も言われないだけでマイナスに感じていました。
ようやく褒められた時も“当然なのに、なんで今まで気づかなかったんだ”と(笑)」
絵や文字が下手な子への眼差しは冷淡。一方できないことがあってつらくても、ひどく恥じたりはしない。