くらし情報『“ある夫婦の話”にみる時代性 注目の芥川賞候補作が訴えるもの』

2019年3月5日 20:00

“ある夫婦の話”にみる時代性 注目の芥川賞候補作が訴えるもの

目の前のものはデッサンできるのに、知っている場所でも地図を描こうとすると曖昧になってしまう」

古い地図と今の地図、昔の記憶と現在…幾層にも重なったそれらが厚みを作る。その様子は著者の中で立体的に再現されているようで、

「不自由なレイヤーの中を進むと、建物の吹き抜けのようにスコーンと抜けた場所がある。スカッと見通せる瞬間があって、今見えたのはなんだったんだろうと思いながら元に戻って書く感じですね」

微生物、外来生物、謎の壺と液体の思い出、ミイラ…。説明の多すぎない文章世界に触れて、読み手の中でさまざまな空想が生まれるはず。

「行間を読ませようとしているつもりはないんです。いろんな要素を拾ってレゴのように組み立てられるようにしたかった。出来上がったものが人によって違っていいし、同じ人でも読む度に違うものができてもいい。自由度を保っていたいんです」

それでも意識しているのは、

「その時代の社会性、共時性はつねに入れているつもりです。
今の時代の人たちが対面しているものを書いておきたいんです」

『居た場所』家業を継ぐ〈私〉は、異国出身の小翠と出会い結婚。彼女が以前住んでいた街を再訪したいと言うのでネットで調べると、その場所はぼやけていて…。

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