2019年3月15日 19:50
「知りたくなかった怖い話」エレベーター恐怖体験 雨の夜に乗ると… #6
扉の透明のガラス部分に、口元を手で押さえている自分の姿が映っていたのだが、その後ろに人が立っていたのだ。
正確にはそれは、この世の人ではなかった…。
それは黒い服を着た髪の長い女で、Eの真後ろにピッタリと張り付くようにして立っていた。髪から覗くその顔は、半分が何かに押しつぶされたように潰れていて、頭部の一部が欠損していた。
Eは恐怖で心臓が止まりそうになった。絶対に振り向いたらダメだと、強く思った。一刻も早くエレベーターから出たかったが、身体がこわばり動くことができなかった。
Eの部屋は9階。
いつもなら、ものの1分もかからずに着くはずなのに、果てしなく遠く感じた。恐怖で目をそらすことも、唾をのむことさえもできない。
その女が崩れた顔で、嬉しそうに笑っているように思えた。
「早く9階に着いてくれ……!」心の中で必死で祈った。エレベーターが…3…4…階を通り過ぎた。とにかく今すぐに、エレベーターから降りたい。
エレベーターは5階を過ぎた。9階で止まって扉が開いたら、一目散に走って部屋に逃げ込もう。
そう思ってじっと気を失いそうな恐怖に耐えた。
6…7…8…
やっと扉が開く。