2019年4月20日 21:10
「知りたくなかった怖い話」勧誘を装い…一人暮らしの女宅を訪れた男の正体 #11
ドアを少し開けて廊下のほうを覗き込むと、顔は見えなかったが、帽子をかぶったトレンチコート姿の男が隣の部屋をノックしているのが見えて、そのままそっとドアを閉めた。
「なんだ、お隣か。こんな時間に訪問するなんて非常識な」きっと新聞の勧誘か何かだろうと思った。
しかし隣が留守だったのか、しばらくするとY美の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「コンコンコン」
今度は本当に自分の部屋のドアを叩いているが、ドアまで行って勧誘を断るのは面倒くさかったので居留守をしていると、しばらくしたら諦めたのか、音は止んだ。
その次の日の夜の事だった。
「コンコンコン」
またノックの音が聞こえる。どうやらまた隣の部屋をノックしているみたいだ。
「チャイムがあるんだから、ノックしないで鳴らせばいいのに……」と、Y美は不愉快に思った。
しばらくすると、やっぱりお隣が留守だったのか、今度はまた自分の部屋のドアがノックされた。
なんてしつこい勧誘だ。どんな奴か見てやろうと、ドアスコープに目を近づけて外を覗いた。おかしな事に、真っ暗で何も映っていない。そしてまた、「コンコンコン」とドアを叩く音がした。