彩夏はエネルギーがある人だけれど、全力投球するあまり燃え尽きそうになっていく」
彩夏について頭にあったのは香港の俳優、故レスリー・チャン。
「俳優として天才で、カミングアウトして、鬱病の噂もあって、2003年に飛び降り自殺をして。私は、精神的に演じてきた役の影響もあったかもしれないという気がしていて。カミングアウトした当時バッシングもあったそうですが、現代だったらどうなるのかなとも思いました」
恋に落ちた二人が影響を与え合い、関係を育んでいく。互いが触れ合う場面が、どれも鮮烈。
「自分をむき出しにしなくちゃいけない緊張感と、ロマンティックな感情という正反対なものを持ちながら裸で接していく。そうしたシーンは書いていて楽しかったですね」
さまざまな困難に直面するなかで、二人の関係はどこにたどり着くのか。
「今の時代のなかで、素直に生きたい気持ちを選択したらどうなるかを真剣に考えて、ああいう結末になりました。
少し前だったら小説も“禁断の恋”などと言われそうですが、そうした触れ込みは見かけない。時代が変わっているなと感じます」
わたや・りさ作家。1984年生まれ。2001年に『インストール』で文藝賞受賞。