2015年12月8日 20:00
地方で生きることの苦悩を描く こざわたまこ『負け逃げ』
高校1年の田上は<この村いちばんのヤリマン>同級生・野口を家まで送る役目を引き受けて…。逃げ切れない焦燥を抱える人々の群像劇。新潮社1600円
村にとどまり、とっかえひっかえ村の男と寝ることで村に復讐しようとする女子高生の野口、いつか村から出ていく決意を固める同級生の田上や、村から逃げそびれた同級生の友之、いったんは脱出したのに戻ってきた高校教師のヒデジや妙子…。
こざわたまこさんの小説『負け逃げ』は、地方の閉塞感から逃れようとあがく人々を描いた連作短編集。「私の故郷は、帰ろうと思ったらすぐ帰れるくらいの中途半端な距離なんですよね。だからなのか、いまでも田舎にからめとられているような感覚が取れないんです」
6つの章に登場する語り手たちやその家族が、それぞれに抱えている苦い記憶。
だが、みなその出来事をなかったことのようにふるまい、痛みから目を背ける。
「そんな欺瞞がキライで、暴いてやりたいという衝動もあったかもしれません。その一方で、周りから浮かないようにという意識は強かった。合わせるふりがヘタだったとは思わないのですが、その分、違和感は澱おりのように溜まっていきました」
それを各章の主人公に重ね、ぶつけた本作。