2015年12月22日 20:00
「女の子の不幸が全部盛り」新人作家・伊藤朱里が描く25歳女性のリアル
いとう・あかり作家。1986年生まれ。今年「変わらざる喜び」(「名前も呼べない」に改題)で第31回太宰治賞を受賞、作家デビュー。本作が初の単行本。
注目の新人作家がまた一人誕生した。今年、第31回太宰治賞を受賞した伊藤朱里さんだ。
「子供の頃から好きな本を真似して書いてみたり、高校生くらいから短いものを書いてみたりしていました。でも社会人になってからは読む時間も書く時間もなくなってしまって。一度ちゃんと試してみたいと思い会社を辞めて、去年1年間、書いては応募していたんです」
太宰賞を受賞した表題作は、幼い頃父親に虐待され、接触恐怖症になった25歳の女性・恵那が主人公。契約社員だった会社を辞めたばかりの彼女は、元同僚から不倫相手に娘が生まれたと聞かされて動揺する…。
「実は、どういう話になるのか決めずに書きはじめたんです。私自身が会社を辞めた時に、不倫していたという噂があったと知って。
事実無根だったのですが、男の人と女の人が少しでも近づくとすぐそう考える人がいるのを不思議に感じました」
家族との関係も、恋愛も仕事も、将来のことも不安な状態にいる彼女。
「まっとうに生きている女の子に降りかかりそうな不幸を全部盛り込んで、一緒に苦しんで書きました」