2020年2月26日 21:00
性的にゾワリとする場面も…注目作家が描く『最高の任務』に感動!
「同じ場所に向かう時、はじめて行く時と2回目に行く時とはまた違う。そういう記憶を連動させたかった」
作中、実在の本の題名も多数登場。
「その時考えていることを全部入れこむ枠組みを考えるので、実際に読んで影響を受けたものは書きます」
景子はもちろん、教養あふれる叔母や言動が可愛い弟が魅力的。
「周囲の人物はエピソードの集合で作りあげている感覚ですが、主人公は登場人物というより、自分と影響を与え合う存在というか。書いていると日頃自分が考えている言葉が出てきたり、逆に自分には思いもよらない言葉が出てきたりするので」
心がざわつくのは列車の中で景子が痴漢に遭遇する場面。前2作でも性的にゾワリとする場面があるが、
「毎回、書き手の自分と語り手が影響し合うなかで、そうした部分が出てくる。いつも(景子の大きな話の流れの中の)一部分を区切って書いている感覚なので、今回もそこを無視するわけにはいきませんでした」
そして最後に明かされる、叔母を含めた家族の思いに目頭が熱くなる。併録の「生き方の問題」は、ある男から従姉に宛てた手紙という形式で、こちらも最後にぐっとくる。
ぜひ。
乗代雄介『最高の任務』大学卒業式の後で両親、弟に連れられて北関東への日帰り旅行に出た阿佐美景子。