村上Tって何のこと?と思うかもしれないが「村上」といえば村上春樹、「T」といえばTシャツ。『村上T僕の愛したTシャツたち』は作家、村上春樹さんのTシャツコレクションを綴ったエッセイだ。
村上さんはジャズを中心としたレコードコレクターとして知られるが、レコードはある程度熱心に集めているのに対して、Tシャツは自然にたまったコレクション。旅先で目について買い込んだり、いろんなところからもらったり、マラソン大会でおなじみの完走Tシャツだったり……。段ボール箱に詰めていたものでも、引っ張り出してみるとこだわりや好みが徐々に見えてくるのが面白い。
たとえばコレクターにはありがちなのかもしれないが、自分で買ったものでも必ず着るとは限らないこと。ロックバンドのツアーTシャツは記念の意味もあるのでなんとなくわかるが、動物柄はそのかわいさに“遠慮”して、なかなか着る機会を持てなかったり。もらいものはさらに勇気が必要で、その筆頭がいわゆる販促Tシャツ。
海外では本の出版に合わせてノベルティを作ることがよくあるそうで、佐々木マキさんの表紙の絵が使われた『ダンス・ダンス・ダンス』のTシャツなんかはファン垂涎だが、たしかに本人はなかなか着にくいだろう。