2020年9月7日 19:10
落下するコアラ、ワニの洗髪屋…劇作家・藤田貴大が描く初の小説とは
誰かに何か言われたのかなと思って切なくなって、それが原体験にあります。東京も、産毛を剃るように森を伐採して作られた都市だと思うと、“毛を剃らなきゃ”と“森を伐らなきゃ”が同義に思えて、それをランドスケープ的に描きたかった」
実験的なこのテイストで書けてよかった、と藤田さん。
「劇作家は、ある意味ドライに戯曲を書いているんです。役者が感情を演じるので。でも小説って作者が一人で何役も演じるようなものでもあるので、僕には恥ずかしくなる部分があって(笑)。こういう書き方なら、俯瞰したりあえて主観的になったり、“演劇をやっている人が小説を書くとこうなる”というものにできるなと思いました。今回、大変だったけど楽しかったし機会があればまた書きたいですが、その時も小説家ぶるのでなく、演出家という立場のままで書きたいです」
『季節を告げる毳毳は夜が知った毛毛毛毛』コアラが降ってくる世界を描く掌編をプロローグに、東京に住む人々と動物の姿を季節のうつろいのなかにちりばめた著者初小説。河出書房新社1700円
ふじた・たかひろ1985年生まれ、北海道出身。
演劇ユニット「マームとジプシー」の作・演出を担当。