2020年9月24日 19:10
“愛されなくても…”武田綾乃の新作はヒリヒリとした青春小説
この江永も複雑な事情から親と縁を切っている。もう一人、過保護で過干渉な親を持つ木村という女子学生も登場。
「それぞれ母娘間にいびつなものがあるけれど、みんな自分の家庭環境しか知らないから、それが当たり前だと思っているんです」
彼女たちの会話がどれもリアルで突き刺さる。そのなかで、陽彩は母親との関係を見つめ直していく…。
「母親は陽彩のことを愛しているけれど、その愛情が娘の人生をプラスに向かせる動力になっているとは限らない。もし“愛されているから我慢しよう”と苦しんでいるなら、逃げるという選択もあるのでは。家族と縁を切るのは難しいけれど、自己犠牲って結局みんなを不幸にする」
作中にも出てくるタイトルの言葉が、力強さを持って響いてくる。
「“あなたは愛されているのだから自分を大事にしましょう”というメッセージはよく耳にしますが、“愛されなくても自分の人生はこれでいい”と、自分で自分を肯定することが大事じゃないかなと思っています」
『愛されなくても別に』浪費家の母と暮らし学費と生活費のためにバイトに明け暮れる大学生、宮田陽彩。
彼女の生活に変化をもたらしたのは、一人の同級生だった。