2020年10月1日 18:00
コロナ禍で孤独を感じたら…名匠が訴える「心を救う助けとなるもの」
では、リヒターさんと過ごした時間のなかで思い出に残っているエピソードがあれば、教えてください。
監督リヒターと出会って何週間か経ったとき、彼が子ども時代を過ごしたドイツのドレスデンという街に行こうと誘ってくれました。そのとき彼は「一緒にプライベートジェットで行かないか?」と言ってくれましたが、そういう部分は僕が作り上げたキャラクターのイメージとはまったく異なるものだったんですよね……。
そういった思いから、その誘いを断った僕は冷たい電車に乗り、10時間もかけて自力でドレスデンまで行ったんですよ(笑)。
人生の大事な瞬間にリヒターの作品と出会うこともあった
―作品のためとはいえ、すごいですね。その後、リヒターさんは完成した作品に対して感想をお話されることはありましたか?
監督実は、彼はまだ観ていません。でも、その理由はよくわかります。なぜなら、クルトは彼とは違うキャラクターであるとはいえ、自分の半生にあまりにも近く、しかも人生のトラウマ的な部分を大きなスクリーンで観ることは、つらかった時期をもう一度生き直すことであり、痛ましいことだと思いますから。
もし、僕だったら同じように観たくないと思うでしょうね。