2020年10月22日 21:20
幼い息子が旅行先で突然失踪…母親の10年にわたる葛藤と再生の物語
短編を長編の冒頭としてそのまま使用し、新たな物語を紡いでみせるという珍しい手法で完成させた本作に込めた思いや現場の様子などについて語っていただきました。
―まずは、息子を失う母親を主人公にした物語を描こうと思ったきっかけを教えてください。
監督正直言って、自分でもなぜ描きたいと思ったのかはわかりません。ただ、短編の『Madre』がこの映画の出発点であったということだけは、間違いなく言えると思います。この短編というのは、もともとひとつの“試し”のようなつもりで作ったものでした。
その過程で感じていたのは、ここで描いているような母親が子どもを失うという体験が何よりも重い感情であり、非常に大きな“爆発”を生む題材になるであろうということ。特に今回の場合は、生死が不確定な失踪という状況であるため、愛する人を亡くしてしまうというのとはまた違う深い悲しみを生むものだと考えました。―母と息子という関係性を取り上げたことに関しては、何かご自身の経験が反映されている部分もあるのでしょうか?
監督おそらく、僕と母の関係も少しは投影されているところがあるかもしれないですね。
というのも、僕と母親は20年間2人だけで暮らした経験があり、その間にまったく問題がなかったわけではないですが、ものすごく深い繋がりがありますから。