2020年11月23日 19:15
現代、江戸、平安…時空超えた恋を描く『三度目の恋』 セックス観の違いも
「たとえば、平安時代は一夫多妻で女系家族というのは資料としては残っているのですが、そういう境遇にいる女たちの気持ちは、小説家である私が想像するしかない。なので、現代の自分が考えているいろいろなことが投影されていると思います。女として置かれている状況や男女の関係性など、異質の文化の中で考えることによって、かえって現代のことがわかる。そういう感じがあったのは書いていて面白かったです」
梨子の相談相手であり、夢の中では華麗な恋もする高丘さんとの関係は物語が進むにつれ、より親密に。
「高丘さんは、権力争いに負けて廃太子となった高岳親王を重ねた人物です。実は業平の叔父。高丘さんはこれまで書いてきた中でいちばん大好きな男性だけど、恋愛相手としては人間が大きすぎて、ついていけない気持ちになるかも(笑)」
三度目の恋が意味するものを、本を閉じても考えたくなる。
かわかみ・ひろみ作家。
1994年に「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞し、デビュー。’96年に『蛇を踏む』で芥川賞、2001年に『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞受賞。’19年に紫綬褒章受章。
『三度目の恋』『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03』(河出書房新社)