2016年5月17日 08:00
天才女絵師の情熱に現代女性も共感 直木賞作家・朝井まかての最新作
という答えに迫る。
「北斎と応為との関係は、杉浦日向子さんの『百さるすべり日紅』でも読んではいましたが、いい具合に記憶が薄れていて、イメージに引っ張られることなく消化できていました。目の前の仕事に、寝食を忘れて没頭するようなところが私にもあって、『わかるわかる』とうなずきながら執筆していました(笑)」
いまで言うなら、タダで配るチラシの小さなイラスト仕事までも全力でやってしまったという応為。
「依頼主が『こんなにすごいものを描いてくれなくても』と言っても、『いつのまにか精密に描いてしまうのだ』と答えたという逸話が残っています。他愛もない仕事も手を抜くことのできない、本当の意味でプロフェッショナルだったと思います」
恋にも仕事にもまっすぐに情熱を注いだ応為は、働く現代女性と相通じるものがある女性。時代小説の垣根を越えて、楽しめるはず。
◇光と影を艶やかに浮かび上がらせる応為の20代から60代までを、史実を織り込みながら追う。彼女の鮮烈な生き方に触れてみたい。
新潮社1700円
◇あさい・まかて作家。1959年、大阪府生まれ。2008年に小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。