2020年12月10日 18:30
アートか? わいせつか?…20世紀を最も騒がせた写真家の知られざる真実
―ヘルムートさんの作品については、ポルノまがいや女性差別と批判する者も多かったと劇中でも触れていますが、紙一重とも思えるアートとわいせつさの差を生んでいるものは何だと思われますか?
監督これもまた興味深い問題ですよね。ヘルムートはつねにその境界線を操るように、そして遊ぶように写真を撮っていたように思います。ただ、そのなかでもつねに何かしらのストーリーを伝えようとしていたというのは、大きな違いではないでしょうか。
つまり、女性をただの物としてとらえるのではなく、そこにきちんとメッセージがあるのが彼の写真が持っていた特徴でした。とはいえ、当時もそこが伝わらずに「女性蔑視だ」という批判もあがったのも事実です。
―監督にとって印象に残っている作品はありますか?
監督映画にも出てくる2枚の写真が対になっている作品で、左側にはオートクチュールの服に高い宝石を身に着けた女性たちがいて、右側には同じ女性たちがすべてを脱ぎ捨てて裸でハイヒールを履きながら同じポーズを取っているという写真があります。
これは「服がなくても、女性たちは強く見える」ということを言っていますが、そんなふうに彼は写真を通してつねに何かしらのメッセージを見る人に送り続けていたのです。