2020年12月20日 19:10
“異色”の漫画!? 『約束のネバーランド』をファン目線で英米文学者が解読
ついに実写映画化された、大ヒットコミックス『約束のネバーランド』。随所に文学的エッセンスを感じることができる『約束のネバーランド』の世界を、英米文学者・戸田慧さんの考察で説き明かします。
「文学」としての『約束のネバーランド』
『約束のネバーランド』は、あらゆる点で「異色」の漫画だといえます。『週刊少年ジャンプ』という少年雑誌において、主人公が少女であること、巧みな心理戦やミステリー仕立ての物語の複雑さ、多彩な登場人物たちの秘められた感情や葛藤……。これらの要素は間違いなく『約束のネバーランド』が多くの読者を虜にした魅力の一つなのですが、もう一つ忘れてはならないのが、この作品の持つ「文学的」な深みです。
「文学」とは何か、と問われると一言で説明するのは難しいのですが、ここでは仮に拙著『英米文学者と読む「約束のネバーランド」』で定義した「筋書きを超えた深い意味や象徴に満ち、現実世界や他の文学作品と深く結びついた物語」とさせていただきます。
他の文学作品との結びつきという点では、まず『約束のネバーランド』というタイトルが大きなヒントになります。「ネバーランド」といえばイギリス児童文学の古典、ジェイムス・バリーの『ピーター・パン』に描かれる、永遠に大人にならない子供たちが暮らす楽園を意味します。