特殊な状況のなか、人と人との絆について誰もが考えさせられた2020年。そこで今回は、時代に翻弄されたある2人を描いた注目作をご紹介します。それは……。
『この世界に残されて』
【映画、ときどき私】 vol. 350
ナチス・ドイツによって、約56万人ものユダヤ人が殺害されたと言われていたハンガリー。終戦後の1948年、ホロコーストを生き延びたものの、家族を失った16歳の少女クララは、ある日寡黙な医師アルドと出会う。言葉をかわすうちに、クララは彼の心に自分と同じ欠落を感じるようになり、父を慕うようにアルドになついていくのだった。
ホロコーストの犠牲者であったアルドもまた、クララを保護することで自分の人生を再び取り戻そうとする。ところが、ソ連がハンガリーで権力を握るようになっていくなか、世間は彼らに対してスキャンダラスな誤解を抱くようになっていくことに。“残された者”としてともに生きる2人の関係は、どうなってしまうのか……。
ハンガリー映画批評家賞3部門受賞をはじめ、さまざまな賞に輝いた本作。今回は、こちらの方に見どころなどをお話しいただきました。
バルナバーシュ・トート監督
短編を中心に手がけ、ハンガリーのみならず国外でも高く評価されてきたトート監督。
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