2020年12月25日 19:40
「家族が重荷だった」…“普通じゃない”家族を描いたエッセイ『しくじり家族』
でも、ただ恨みつらみを詰め込んでも意味がない。一番辛かった子どもの頃の自分を励ます感覚で、重苦しくならない文章と読んだ後に考える余地が残る内容を心がけました」
その言葉通りの淡々とした語りが、自身の心の揺れや不器用ながらお互いを思う家族の姿を鮮明に浮かび上がらせる。そして終盤に明かされる五十嵐さんの誕生までの経緯と両親の愛情が胸に迫り、温かい気持ちに。
「書き終えた時、本当にスッキリしました。書くことで心の整理ができたのと、幸せな瞬間もたくさんあったのだと再認識できたから。家族を憎んで悩んでばかりいた昔の自分も救われた気がしています」
五十嵐さんは現在、手話や視覚を中心とした「ろう文化」や社会的マイノリティの取材を精力的に重ね、今後も続けていくという。
「当事者に近いから聞ける話もあるし、祖父母の話題はフックになる。物書きとしての武器をくれた家族に感謝したいですね。
…なんて言えるくらい、大人になりました(笑)」
『しくじり家族』ややこしい家族から離れ、東京で“普通”を擬態して暮らすぼくのもとにある日、祖父が危篤という連絡が入り…。CCCメディアハウス1400円
いがらし・だい1983年、宮城県生まれ。