それを表現できるかどうかということなんです。もちろん、映画と歌舞伎では表現の技法は違いますし、この映画でも歌舞伎とは変えています。ですが究極は、愛の表現に限らず、表現という意味ではどのエンターテインメントもすべて同じだと思いますね」
そのうえで、愛するという表現で大切にしていることは?
「自分が人を愛した記憶を思い起こすというか。その人をイメージするわけではないですが、演じるうえではそのときの感情が大きく役に立つと思います。今回でいえば、何よりその瞬間に吉乃さんを愛してるという気持ちをちゃんと持つことですかね」
自分の経験が反映されるとなると、当然、年齢を重ねることで変化もあるのだろうか。
「全然違ってきますよね。好きという感情はあっても、一緒にいると悪い部分も見えてきたり、我慢しなくてはならないこともあります。20代前半の頃は、そういう自分にとって嫌なことは全部受け入れられなかった。
ですが、年齢も経験も重ねるなかで、相手を変えるのは無理ですので、結局は、相手の駄目な部分や自分とは違う部分も受け入れられるかどうかだと考えるようになりました」
それは吉乃が自分のことを愛してくれないという認めたくない現実を受け入れ、彼女の幸せを願うことに通じる。