2021年3月2日 20:40
中1で「人生、終わってるかも」とぼやく主人公…『町田くんの世界』作者の最新作
『地図にない場所』は、『町田くんの世界』で爆発的な人気を博した、安藤ゆきさんの最新刊。
〈俺の人生、終わってるのかも……〉という、中学1年生・土屋悠人(ゆうと)のぼやきから、物語の幕は開く。兄は優等生で弟はイケメン。学校でも家庭でも居場所がないと感じている悠人の孤独を埋めてくれるのが、隣人のコハクさんこと宮本琥珀だ。
世界的バレエダンサーだった琥珀だが、ケガにより引退と報道される。実は琥珀は母親とも死別したばかり。挫折を抱えているはずなのに、存外に明るい表情を見せる彼女に、悠人は最初とまどうが…。
「自分にとって何が日常なのか、人はわりと認識できないもので、失って初めて気づくような部分があると思います。
と同時に、失ったその状態が日常になっていくということもありますね。そのもろさや不思議さについて考えてみたかったんです」
バレエ一筋できた琥珀は、いわゆる生活能力が皆無。そこで悠人は、倍も年上の彼女の部屋を訪ね、何くれとなく世話を焼く。琥珀の本心をつかみかねながらも、そんなひとときに悠人自身の寂しさも慰められる。
「大人から見ると、悠人の悩みは絶望するほどではないと感じるかもしれませんが、中学生の閉じられた世界ではとても深刻な問題になります。