2021年3月25日 19:10
斎藤工にとっての“色気”とは? 「雨の日に母親が…」
衣装はシンプルな白いシャツで、どんどん要素を削いでいき、西谷さんが僕の素材を生かし、絶妙に味付けしてくれました。ただ、その後も色気というニーズに応える作品に出演したけれど、やっぱり、『昼顔』に比べると、色気は薄まっていくしかなくて…。でも、それもそのはずで、僕にとって色気という角度は『昼顔』で突発的に生まれたものであり、色気に対して無作為な自分はその時にしかいないからです。無作為は演じられないものだからこそ、すごく難しいものだと思いました」
でも、そこを追求した俳優が日本には存在すると斎藤さん。それが原田芳雄さんだ。
「『原子力戦争』という映画には、監督と一緒にアポなしで原子力発電所に入っていくドキュメンタリー的なカットがあり、もちろん施設の人に止められるんだけど、芳雄さんは芝居を続けていく。本人の意思と表現がリンクしていて作為が1ミリも感じられず、本当にすごいシーンになっています」
無作為の色気は、作品と観客の距離を近くする装置にもなる。
「オフのような瞬間が見えることで、“作品の中にもちゃんと生活がある”ということを、見る側はキャッチします。
作品の世界に奥行きが足され、観客は自分の暮らす世界とつながっているような感覚に陥る。