2021年4月20日 18:40
平穏な住宅地に脱獄犯が! “ナイトスクープ”のエピソードも入れた津村記久子の新作
「誘拐を企む望という男は、自分は世間から奪われてきたから奪い返さないといけない、と図式的に考えている。そういう人が近所の人たちの中に放り込まれた時、違う窓が開くんです。望が隣のおばあさんに萌えポスターを見られて意外な反応をされる場面は、力を入れて書きました」
見張りを置くことを提案したのは自治会長の丸川だが、彼はシステマティックに物事を考えるタイプ。
「礼儀正しいけれどビジネスライクな人ですが、そのほうが接しやすいこともある。感情のこもった交流のほうがいいと言われがちだけど、それは言いすぎやと感じています」
一方、笠原家の老夫婦と松山という壮年の一人暮らし男性は、普段から一緒に七並べをする仲。
「以前、『探偵!ナイトスクープ』で、母親が夜出かけるのが怪しいという調査依頼があって、調べたら近所の人たちと七並べしていたんです。それがすごく楽しそうで、いつか小説にしてみたかった(笑)」
ただ、多くの住民は日頃は交流はなく、隣人のこともよく知らずにいた。それが逃亡犯のニュースによって変わり、人生に影響を与えていく。
「日置は目的があって逃亡していて、住民たちのことは考えてもいない。