2021年6月7日 22:10
男女の心理的&社会的なジェンダーを描く オカヤイズミ、2作品を同時刊行
その意味を掴みかねながら、それぞれが目の前の悩みやこれまでの来し方に思いを馳せていく。
「ヒロミは家族もいなくて孤独死してしまったけれど、背景が見えてくるにつれ、幸せってそんな単純な話ではないとわかるというか。そんなことを描きたかったんです」
一方、『いいとしを』では、息子と父という、女性にとっては興味深い関係性を眺めるのが楽しい。灰田俊夫が父と同居してからあらためて〈親についてなんて、知らないことの方が多いんじゃないか〉と独りごちたりするリアリティが見事。
「私の家族は父が2年前に他界していて、灰田家のように“聞けば/聞かれれば答える”くらいの距離感でした。生んで育てた/育てられたわけだから密な感じはするけれど、家族は親密で感情を共有するものだという空気には違和感がありますね」
また、両作品ともフェミニズムと関わるテーマにも触れられていて、その手さばきにも心を掴まれる。
「女性同士ならとっくにがしっと手を取り合うくらいの話も、男性たちには“そんなにわかり合えていなかったんだ”と思うことがあります(笑)。ただ指摘しても響かないと思うので、日常の中でだんだんわかってくれればいいなと思います」