2021年6月28日 21:10
道尾秀介の“神”シリーズ完結! 『雷神』で描いた「逃れられなかった何か」とは?
落雷の様子も関東で見るのと違って、日本海側の雷光は本当にヤマタノオロチのように分かれていくんですよね。その違いも楽しんでもらえるなと、物語舞台も決まっていきました」
既出作『貘の檻』で登場した郷土史研究家で写真家の彩根が再登場。
「なぜかすべてを見抜いて解決をアシストする彼を、どこかでまた出したいなと思っていたんですよね」
藤原父娘のみならず、幸人の両親や姉の亜沙実とも関わる、一家を襲った悲劇。その封印は解かれるのか。
「初めての試みとして、後半に一枚の手紙の画像を入れています。物語は文章だけで成立しているので、それは素通りしてもらってもいいし、あのページをじっと見ることで真実を言い当てることもできます」
小説を書くときは、プラモデルのパーツを組み立てるのではなく、少しずつ手を加えて仕上げていく“粘土細工”のようなイメージだそう。
「トリック優先で物語を組み立てると、どうしても動機が甘くなってしまう。ストーリー、仕掛け、テーマを、同時進行で描くことで、3世代を串刺しにする、逃れられなかった何かが描けたかなと思っています」
『雷神』幸人は姉とともに父親に連れられ、30年前に羽田上村を逃げ出した。